37話
その頃トーベ達は異世界の門にたどり着いていた。
「ひっひっひっ、久しぶりだねぇ」
「お母様、その話し方は下品ですわ」
「ひっひっひっ、胡散臭くていいでしょう?」
「・・・これから王様に会いに行きますが、何か言伝ることなどありますか?」
「お酒を飲み過ぎないように言っておいてください」
「分かりました」
金髪の女性と門の老婆は、もう2・3言会話を行い、最後に抱き合った。
「またすぐ会いに来ますから、お母様もお体にお気をつけて下さい」
「わたしゃぁ、もう体を壊すことはないさね」
「・・・もう、それでは失礼いたします」
「あぁ、気をつけてね」
異世界の門をくぐるトーベ達であった。
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レーコとケーゴは急ぐことなく、中央の道を馬車で向かっていた。
「あんまり急がなくていいわよー」
「・・・分かった」
初冬の季節であったが、緯度が高い為安穏とした気候の中、ゆっくり馬車を走らせるケーゴであった。結局ケーゴが御者をしているのだった。
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初戦が終わったジュンイチ達は領主の屋敷に行くのを断り、宿に泊まることとした。
ボルシェ達と顔を合わせるのが嫌だったことと、ある計画を練っていたからだ。
「もう明日中に全部倒してしまおうよ、早起きしてね」
「うん、今晩は同じ部屋で寝るから、明日朝はちゃんと起こしてね」
「体を揺するから、不機嫌にならないようにね」
「分かった、努力する」
明朝早くに全てのレッサーデーモンを倒してしまおうと思っているジュンイチ達であった。ただ、大きな問題はリョウの寝起きが悪いことだった。
一緒の部屋で寝るのはためらわれたが、別の部屋だと起こすのが大変なので今晩は特別にそうすることとしたのだ。
「じゃあお休み」
「おやすみー」
ただ、問題はジュンイチが早く寝れるかどうかである。青春真っ盛りな男の子が女の子と同室で寝る状況では興奮してしまい、目をつむっても熟睡などできないのではないかと思われる。
悶々としながら、壁に向いて目をつむるジュンイチであった。
結局寝れたような寝れなかった様な赤い目をこすりながら、日の出の前に起きることとした。桶で顔を洗い、約1時間揺すってリョウを起こした。
2人で町の門に着いた時には、すっかり日は登っていた。
「外は危ないから気を付けるんだよ」
この時間帯から出ていく人もいるようで、ゴールドプレートを見せたらすんなり町の外に出させてもらった。
街道を歩き、人目がなくなった場所でリョウを背負い、宙に浮く。
前日レッサーデーモン3匹を倒したところまで飛んで行った。
「モンスターはどこから来たのかな?」
「多分、森の中に住処を作っているんじゃない?」
歩いて来たと思われる場所をたどり、森の深部に向かって飛んで行く。
すると、開けた場所を見つけた。少し近づくと、どうやら粗末な小屋の様なものが作ってあるらしい。少し離れたところに降り、ゆっくりとそこに近づいていった。
広場には、焚火の跡がある。誰かいるらしい。
木々に隠れながらゆっくり小屋へ近づく。小窓があったので、覗いてみた。
暗くてよくわからないが、誰かの存在が伺えた。
「どうする?」
「踏み込んでみる?」
「燃やしちゃおうか?」
「それは駄目なんじゃない?」
結論として、少し離れて様子を見ることにした。
小一時間たち、入口から誰か出てきた。
立派な着物を着ているが、顔貌は魔族のようだ。
周囲を見渡し、魔法を唱えだした。
「◆◆◆◆・・・・・・・・・・・・」
広場に召還陣が現れる。
中に黒い霧が立ち込める。
徐々に人型が現れ、レッサーデーモンが出現した。
「あれが親玉のようだね」
「じゃあ、倒しちゃおうか?」
「そうだね、レッサーデーモンはほっといてもいいかな。親玉を狙おう。次に詠唱を始めたら、僕が凍らせてみるから」
「分かった」
出現したレッサーデーモンが町に向かった後、魔力の回復のためポーションを飲んで休憩していた。再び立ち上がり、詠唱を始める。
「じゃあ、いくよ」
僕は飛び上がり、頭上から氷の魔法をぶつける。
「ひゅーー」
気づいた魔族はすぐ詠唱を止め、僕を見つける。
「っく」
防御魔法を唱えようとするが、その時には既に頭部周辺が凍り出し、魔法を唱えることが出来ない様だ。続けて、氷魔法を吹き付けて行く。
逃げようとするが、足元も徐々に凍ってゆく。レッサーデーモンより時間がかかったが、小屋に逃げ込む前に動きが止まる。
「リョウ、出番!」
「はい!」
左手にシールドを作って、リョウが接敵する。背後から首筋を狙い、レイピアで突く。
「どーん」
魔法防御力が高めなのか、全身は爆発しなかったが、首は胴体からはじけ飛んだ。
念のため、氷の剣で相手の頭を貫き、胴体はリョウの攻撃でばらばらにしてもらった。
「ふぅ、若干時間がかかったね。もう動かないかな?」
「魔族はしぶといらしいから、細切れにしちゃおう」
恐ろしいことを言うリョウであったが何となくそうした方がよさそうなので、全てを細切れにした後リョウに燃やしてもらった。
その後小屋を覗いてみたが、特に気になることもなかったので町に帰った。
町では先ほどのレッサーデーモンとボルシェ達が、まだ戦っていた。
長引くのも時間がもったいなかったので、遠くから氷の礫を延髄に投擲した後、こそっと周囲のメンバーの中に混じった。
「うおおおおおおーー」
蹲ったレッサーデーモンに、派手に止めを刺すボルシェ達であった。
「勝ったどー」
「おおおーーー」
勝鬨を上げるボルシェ達を白い目で見るジュンイチであった・・・




