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僕らの冒険1  作者: じっつぁま
第六章 西へ向かおう
36/59

36話



「こっこれは!非常に貴重なアクセサリーです」


鑑定を依頼した魔道具屋の主人が叫んだ。


「効果は無属性魔法のシールドを生み出すことができます。魔力を込めれば込めるだけ強い防御力を生み出し、前衛はもちろん後衛職にとっては垂涎の逸品です。今なら数千万、いや、数億の値がつくでしょう」


「いや、売りませんから」


「えー、そんなことを言わず売って下さいませんか?公爵家に仕える魔法職の方が、10億懸かってもいいから探して欲しいと頼まれているんですー」


お願いしますーという声を後に、僕らは店を後にした。


「いやー、むちゃくちゃラッキーだね。本当にトントン拍子で必要なものが手に入ったよ」


「でもあの店のご主人さん、泣いてて可哀想だったね」


「でも僕らにも必要なものだからねー、しょうがないよ」


これでレッサーデーモン対策はできた。後は使いこなすだけである。

さっそくその日から訓練をすることとした。


ギルドの訓練場に行き、シールドを発現する。そこへ僕が投擲することでシールドの強度を確認していった。

徐々に投擲の威力を高め、最後には巨大な剣まで作り試して見た。


僕の最高強度の剣には一度は耐えれたが、そのまま壊れてしまった。

その後は、受け流す訓練に切り替えた。

一度壊れると再作成するのに若干のタイムラグが発生する。受け流しの練習は数日間続けた。


ある程度形になった頃、ようやくクエストメンバーが揃ったと連絡が入った。

顔合わせの為、予定された時間にギルドへ向かった。

中に入ると会議室へ案内された。


「ゴールドパーティーの皆さん、今回はクエストを受けて頂きありがとうございます。それではそれぞれ自己紹介をお願いします」


「・・もうすぐプラチナに手が届くアクソンパーティーリーダーのボルシェだ。お前ら足を引っ張るなよ」


いきなりの強者発言をするパーティーがいた。

レッサードラゴンを討伐したこともあるらしく、このクエストを完了すればゴールドの次のランクになるらしい。

面倒だったので、そのパーティーをリーダーチームに決定した。


出発する準備を整える。といっても今回はバスターズがほとんどものを購入した為、僕らは食材だけ買った。

そのまま町を出発する。

隊列は、僕らが先頭を任された。


何もしないのは心苦しかったので、御者を申し出た。申し訳無さそうにしていた為、その代わり夜営を免除してもらった。

リョウは僕の横に来たがったが、女性のメンバーに幌の中へ引きずりこまれていった。

今までと同様にモンスターを索敵したら、さくさく倒していった。


途中でイェローボアーの様なモンスターを発見したので、仕留めて置いた。貴重な食材をゲットした。

東の王国にいた種類より3ランク上の魔獣であり、その味は黄金の豚に匹敵するらしい。

おかげでおいしい食事を作ることができた。

作り終わってからボルシェがやって来て、


「おい、それを分けろ!」


と言って来てので、仕方なく分けてやった。

まだ味付けをしてない状態だったので、鍋ごと渡してやった。微妙な顔で食っていた。

僕らはきちんと味付けをして、購入した野菜等も投入し、非常に贅沢な逸品を味わった。


食後の紅茶を飲んだ後、片付けもささっと終え、幌の中で休ませてもらった・・・



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



始まりはリョウの寝顔の前で


朝起きると目の前にリョウの顔があった。

いつの間にか僕の毛布に潜りこんで来たようだ。

びっくりしたが起こさない様に、毛布から出る。


「おはようございます」


夜営をしていたメンバーに声をかけ、顔を洗い、朝食の準備を始める。今日の朝ご飯はサンドイッチだ。昨日の肉をスライスし、買い込んだ野菜とチーズをパンに挟む。マヨネーズはないので肉汁に塩胡椒で味付けしたものを振りかけた。後は紅茶を作るだけの簡単なものとした。


バスターズだけに配り、それぞれが適当に食べ出した。好評だった。

リョウは相変わらず起きて来なかったので、彼女の分だけ取り分けて置いた。起きてから、幌の中で食べていた。


ずっと先頭を任されたので、やはり索敵したモンスターはさくさく倒していった。

小型の魔鳥を見つけたので、本日の食材として仕留めて置いた。こちらも3ランク上の強さと味わいを持ったモンスターの様だった。

昼ご飯を作っていると、またボルシェがやって来て、


「それをこっちによこせ!」


と言って来るものだから、中身を乾燥肉に取り替えたものを渡してやった。塩味がついていたので昨日より美味しそうに食べていた。

僕らは魔鳥のスープに舌鼓を打った。


途中でモンスターに邪魔をされなかったので、オランの町まで順調にたどり着けた。通常であれば10日から2週間かかる行程を、1週間で着いたのである。出迎えた領主はびっくりしていた。

ボルシェは自分の手柄にしていた。


そんな些細なことはどうでもいいので、僕らはみんなの後をゆっくり着いて行った。

その晩は歓迎会を模様してくれたが、アクソンのパーティーを置いて僕らはさっさと退席した。


次の日に領主から現状の説明がなされた。

日によって襲撃の個数は違うが、ほぼ毎日レッサーデーモンは現れるらしい。

壁際での攻防で現在はしのいでいるそうだ。

負傷者の数が少しずつ増えて来ており、10匹以上纏まって襲われた場合、陥落の可能性も出て来ていた様だ。


「俺のチームに任せておけ!」


ボルシェのビッグマウスが飛び出す。

作戦は、町の外へ打って出ることとなった。

我々冒険者チームと騎士団チームに分かれ、それぞれ別の個体に当たることになったのである。

個数が4匹以上になった場合は、撤退することになった。


「お前らは遠巻きで牽制しろ。決して邪魔だけはするなよ」


と言われたので、僕とリョウは遠くから小魔法を当てることにした。

レッサーデーモンの襲撃が始まったと報告が入った。アクソンパーティーを先頭に、町を飛び出して行く。僕らも後ろから着いて行った。

左側の1体に向かって駈けて行く。


「お前らは回り込めー、行くぞー」


予定通りアクソンパーティーが接敵し、他のものは周囲をぐるっと取り囲んだ。

小魔法を顔に向かって当てて行く。

前衛職は弓に切り替えていた。


「おーっ!」


ボルシェは敵の正面に大盾を構え、攻撃を牽制する。少し離れたところからアタッカーが攻撃し、更に後ろから魔法職が火魔法をぶつける。

回復職が、ボルシェを回復させる。


するとレッサーデーモンは、広範囲の火魔法を吹きかけた。


「ジュンイチ、彼ら危なくない?」


「大丈夫だ、まだ目が死んでない」


「そう?何か濁った目をしている様にも見えるんだけど」


そうはいっても、まだ介入はできない。

今討伐してしまうと後で何言われるかわからないのだ。


そうこうしている内に、背後にもう1体現れた。


「リョウ、あいつを片付けよう」


「分かった、了解」


ボルシェ達はほっとき、僕らは新たに出現した1体に向かった。


「スノーレインー、今だ、リョウいけ!」


「えーーい」


「どーん!」


宙を飛び、レッサーデーモンの頭上から氷魔法で凍らせる。ある程度動きが鈍くなってから、リョウを突っ込ませる。もちろんシールドは念のため展開させておく。レッサーデーモンの陰部をレイピアが貫き、その後レッサーデーモンは破裂した。


「ジュンイチ、まだ後ろにいる見たい」


「どんどん行こうか」


次の1体も凍らせ、リョウの1突きで瞬殺する。

すると更に後方に3体のレッサーデーモンが現れた。他のパーティーからかなり離れたので見えなくなり、めんどくさくなったので、凍らせてからリョウの最大火力で一編に片付けることとした。


「リョウ、やっちゃってー」


「どーん」


凍らせた後、リョウがレイピアから炎竜を出し、一気に3体纏めて倒した。

さすがに最早後方にはいなかったので、最初の場所に戻ると、まだ戦っていた。

呆れてしまって、先端をかなり尖らせて強固にした苦無を作り延髄に打ち込んだ。

動きが止まり、踞いたレッサーデーモンにアタッカーが留めを刺した。


「やったぞぉ!」


こうして僕らの初戦は終了したのであった・・・




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