31話
サンドラまでは残り3日かかった。幌の中は狭くなったため、御者はレーコが希望し、僕が中に入ることになった。すぐ動けるように、リョウとトーベも御者台に移動した。
僕はレッサードラゴンの肉を腐らせないようにするために、冷凍の魔法をかけなければならなかった。地味に疲れた。
それでも食事はレッサードラゴンの焼肉、レッサードラゴンのしゃぶしゃぶ、レッサードラゴンのすき焼きなど、肉三昧を楽しめたのはよかった。
馬車は満員になっていたので、他のモンスターが現れても討伐証明部位のみ剥ぎ取り、土の中へ捨てた。ちょっともったいなかったが、しょうがない。
そうこうしているうちに、ようやくサンドラの町が見えてきた。
ギルドに入り、素材を売りさばく。売れたお金を分配しようとしたが、それは断られた。大金が手に入った。
「本当にありがとうございました。この恩は忘れません。また、会う機会がありましたら何かお礼を致しますので、言ってください」
そういうと、ギルドから出て行った。
名前を聞くのを忘れていた。
「あー、君たちは全員シルバープレートに合格となった。ジュンイチは今までの功績があるから、ゴールドプレートになる」
サンドラのギルド受付で、プレートのランクアップをしてもらった。
レッサードラゴンの討伐はゴールドプレートでなければクエストが受けられない。僕らは充分ゴールドプレートになれる素質をもっていると判断されたが、僕以外はまだブロンズプレートだった為、今回はシルバープレートへの更新に留まったのだ。
「あと数回のクエスト達成で、みんなゴールドプレートにランクアップできるから、頑張るように」
「ありがとうございました」
ゴールドプレートのありがたみは分からないが、とりあえず感謝を述べる。
「さて、俺は固有武器を取りに行く。数日ここで身の回りの準備が必要だから、留まるが、みんなはどうする?」
サンドラの町は田舎町であり、特に見るべきところもない。周囲に強いモンスターが居る為冒険者の数は多いが、食事も観光もすることがないので、さっさと帰りたいと思った。
「じゃあ、また王都に戻ってくれ。俺も武器を手に入れたら、王都に向かうことにする」
とんぼ返りになるが、他のメンバーも帰りたがったので、2・3日ゆっくりした後、王都へ帰ることとした。
というか、次の日には町を離れた。はっきり言って、食事がまずかったのだ。
ワイバーンの肉はここでは提供されず、香辛料も割高で、パンも固いこの町の食事より、自分たちで料理をした方がなんぼかましな食事ができる。
また、ここの地方にはお風呂の風習がないため、宿でお風呂に入ることもできない。
フルーツだけは日持ちするものがあったので、数箱購入し、サンドラの町を旅立った。
「いやー、せわしないなー。王都に帰ったらしばらくのんびりしたいな」
そんなことをいうと、忙しくなるフラグが立ちそうだったが、思わず口に出たジュンイチであった。
帰り道は順調で、トーベははっきり言って武器の都合上さほどパーティーの役には立っていなかったせいで、4人でもサクサクモンスター討伐を行いながら帰って行った。
ワイバーンの肉はある程度確保していたため、帰りの道中でもおいしい食事を作ることができた。トロールの肉や鳥肉も確保でき、飲み水には事欠かないし、MP切れも少なくなってきた。行きはお風呂を遠慮していたが、帰りは女性の入った残り湯へ入らせてもらった。久しぶりにのんびりお風呂に入った。
馬車はのんびりパールの町に着き、数日後メイプルの町に向かったのだった。
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その頃トーベは南の山に向かい、道なき道を進むのであった。
この山は、地元の民は入ることのない神聖な山として崇められていた。許可なく入山した民人は、ことごとく雷に撃たれて、雷死してしまっていたのだ。
ほどなく頂上へと至ったトーベは辺りを見渡した。正面には、地面に突き刺さる真っ黒い武器が目に入った。
それが自分の固有武器と確信したトーベは、少しずつ近づいて行った。すると頭に響く声が聞こえた。
『我を欲するのは、汝か?』
「そうだ!」
『我が欲しければ、試練を乗り超えなければならない』
すると日は曇り、厚い雲が空へかかる。
「ごろごろ」と空が泣き、「ピカッ」と光り出した。
次の瞬間「ドガーン!」という音とともに、武器の周囲に雷が一斉に落ちた。
トーベはすぐさま数歩下がり、次々と落雷する様を確認する。
落雷の間には人ひとり入る隙間が存在しているのが確認された。
「ふっ」
軽く息を吐き、雷の隙間を走るトーベであった・・・




