3話
始まりは藁の中
疲れのためか、藁のベッドでも熟睡できたようだ。
カウンターを開き、HPがきちんと回復しているのを確認した。
朝ご飯も100ゼニーかかるのであれば、朝食抜きとなる。
井戸水で顔を洗い、宿屋へ向かう。
「おはようございます。朝食はいくらでしょうか」
「昨日のお金に含まれているから、朝食は出してあげるよ」
おばちゃっ、お姉さんは朝は機嫌がよさそうだった。
「すぐ作ってあげるよ」
昨日と同じ席に座り、待つ。
食事のコールがあり、取りに行く。朝の献立は、少し硬めのパンに、豆スープであった。豆は苦手なのだが、味付けがよく、すんなり食べられた。
「おいしかったです」
「しばらくこの村にいるのかい?今晩も泊まるんだったら、部屋の掃除をしておくよ」
「えぇ、お願いします。今日はもう少し稼いできますので、きちんと部屋に泊まるつもりです」
「連泊するなら、1日200ゼニーにするよ、食事込みで」
「どれ位いるかわかりませんが、10日位は居るつもりなので、ありがたいです」
割と気のいいお姉さんの様だ。
口約束だけで、連泊の旨を伝え、雑貨屋へ向かった。
この村には武器屋、防具屋はないようで、雑貨屋が兼ねているようだ。とはいっても初心者の村であるため、木刀や布の服などが並んでいた。雑貨は布切れが10ゼニーするらしい。しばらくは核は葉っぱにくるんで持ち運ぼう。ただ、袋は必要なので購入することとした。15ゼニーかかった。
財布用の小袋も購入し、体を拭くための布切れを1セット購入した。お昼御飯用の携帯食を購入し、これでお金は無くなった。頑張って稼がなくっちゃ。
村を出て、森に向かう。
レベルが上がったためか、多少体が軽く感じられる。道沿いに居たスライムは昨日狩ってしまったので、少し森の奥に入ることとなる。異世界の門から出た竹藪まで、行ってみることとした。水筒を再作成し、水を入れなければ。
竹藪に向かうまでに寄り道をしつつ、3匹のスライムを狩れた。見つけるまで時間がかかるが、慣れたためか狩る時間から核の処理まで、割と時間がかからなくなった。
「ふう。ちょっと休憩」
竹で水筒を作成し、竹槍が壊れてきたので、もう1本作成し、川で水を汲んで竹藪に戻る。ちょうど昼になった様なので、携帯食をとることとした。いわゆる乾パンである。味も素っ気もない硬い乾パンを少しずつかじり、水を飲む。
「食事なんかは、何とか改善したいな」
特に今まで好物などはなかったが、あまりまずいものも食べたことはなかった。
乾パンなどは、この世界に来るまで一度食べたことがある程度だ。食べれないことはないが、不満がたまりそうだ。
少しの休憩を挟み、スライム狩りを続けることとした。今日はレベル3からレベル4まで目指したい。今のところHPは減っていないが、疲労が増した場合、反撃を食らうことも考えられる。HPが半分以下になったら、村に帰ることとした。
今日は合計10匹のスライムを狩って、村に戻った。レベルは3になり、MPが1増えていた。ただ、魔法は使い方がわからなかった。500ゼニー稼いだので、冒険者登録をすることとした。
「冒険者になるのであれば、100ゼニーが必要だよ」
「割と安いんですね」
「小さい子には大金さ。無理をさせないために登録料を支払うシステムにしているんだ」
冒険者登録に年齢制限はないそうだ。ただ、孤児や戦闘力のないものを冒険者登録できなくするため、登録料を作ったようだ。それでも何とか工面し、冒険者となり、モンスター討伐に行き死んでしまうものもいるらしい。そこまではギルドは関知しないようだ。
クエストに関して聞いてみると、定番の薬草採取があるという。スライムの森奥に群生しているそうで、そこまで行けるのなら、おいしいお金稼ぎになりそうだ。
ギルドプレートをもらい、雑貨屋に行く。乾パンを数個と雨具を購入した。
まだこの世界に来て、雨が降ったことはないが、準備しておく必要がある。
服も購入したいが、残り200ゼニーとなったので、あきらめた。
もう少し稼がなければ。
宿に帰り、お姉さんにあいさつをする。
「ただいま帰りました。200ゼニーしかないですが、泊まってもいいですか」
「お帰り。まあいいよ。ちゃんと連泊してくれよ。ご飯にするかい?」
「お願いします」
食事をとり、井戸で体を拭き、初めての宿泊をする。シーズンオフなので、1人部屋に泊まれた。普段は学生ではなく、一般の冒険者が泊まるそうだ。割と狭いが、きちんとベッドがあり、綺麗なシーツが敷いてあった。
ベッドに横になり、カウンターを確認する。
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ネーム :サトウ ジュンイチ
レベル :3
HP :8/20
MP :0/1
つよさ :9
ちりょく :7
たいりょく:8
はやさ :7
スキル :なし
まほう :なし
パーティー:なし
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簡単な表示な為、あまり情報は多くない。ただ、体感を含め、少しずつ強くなっている気分になる。
「スキルが何も出来ていないな。魔法も使えるようになれば、表示されるのかな?竹槍だから槍のスキルができないのかな。でもスキルと表示されているということは、将来何らかのスキルができるはずだよな」
ぶつぶつ独り言をつぶやきながら、今後のことを考える。スライムを狩り、薬草を採取し、レベルとお金を増やす。装備がある程度整ったら、次の村に行く準備をしよう。
など考えているうちに、眠たくなってきた・・・