29話
パールの町が見えてきた。
ほんの数日前に来たばかりであったが、他の人は初めてだったので町が見渡せるところへやってきた。
「きれいですー」
パールの夕日はすばらしい。
壁を取り去ることができれば、もっと幻想的な景色が見れるのにと少し残念である。
しばらく眺めたのち、パールのギルドへと向かった。
「バスターズは西の大陸に向かったよ」
モンスターの換金の間、この前世話になったパーティーのことを聞いてみたが、既にこの町を去った後の様だ。パールからサンドラまでは馬車で約10日かかる。消費した食料、食材、ポーションをここで補充しなければならない。分かれて必要物品を購入し、今日は少しお高めのレストランで食事をとることとした。
トーベは何故か顔が効く様で、懐から何か取り出すとオーナーが素直に個室を用意してくれた。
「王女様から証明書をもらっているんだ」
少しどや顔のトーベにむかついた。
まあ、おいしいご飯に罪はない。見繕ってもらった食事は異世界ながら堪能できるものであり、気分よく食事をした。トーベと何故かレーコはお酒をもらって飲んでいた。
お金は誰が払うのだろう?((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
「大体レベルもそこそこ上がったし、みんなのスキルも見ることができたので、フォーメーションを確認しようか」
「そうね、サンドラまでの道のりではモンスターのランクが上がるから、確認は必要ね」
「大体2~3のフォーメーションを作っておいた方がいいだろう」
「そうだけど、まずは基本フォーメーションが必要ね。ちなみにジュンイチは空を飛べるらしいわね?」
「ああ、レーコもそうだと聞いてるけど」
「私の攻撃力はあまり高くないし、馬車の管理もあるから、戦闘の時は私が御者をするわ」
「できるの?」
「短い間だったけど、メイプルから王都までは私が御者したのよ。それにあの馬は賢いから、誰が操業しても大丈夫だと思うわよ」
なら、今までの道のりで変わってくれてもよかったんじゃない?
などとブツブツ文句を思う(決して口には出さない)ジュンイチであった。
「まずはジュンイチが御者をやって、索敵後は空中から攻撃もしくはモンスターの足を凍らせて移動を制限して。その間に私が御者台に向かい、馬車周囲に風の保護をするわ。ケーゴが接敵するまでリョウが遠距離攻撃を行い、トーベが遊撃ね」
なら、最初から御者しろよ、などと文句は言えない。
「戦闘中は背後から私が指示をするわ。囲まれたりした場合は右がリョウ、左がトーベ、後ろをジュンイチが担当してね」
まあ、なんというか流石英知のスキルを持ったレーコである。サクサク方針を決めていく。
「ソロで撃破できない敵が出てきた時はどうする?」
「さっき確認したけど、そこまでのモンスターはいないそうよ。ちなみに出現予想のモンスターはトロール、アンデッド、レッサードラゴンがいるみたい。トロールやアンデッドの中には魔法を使うメイジもいるそうだから、その場合は私が最初シールドを張るわ。ケーゴのシールドが完成すればそこそこダメージを受けないと思うけど、それまでに倒せるならジュンイチ、リョウ、ケーゴの順に攻撃をお願い」
「各自すぐ回復できるようにポーションを身に着けていた方がいいな」
「特にリョウはシールドがないし、回避もそこまで高くないから、ケーゴのシールドができるまではあまり前に行かない方がいいだろうな」
「もし危なくなったら、僕が氷のシールドを張るよ」
「よろしくね、ジュンイチ」
頼られることはいいことだ。少しほっこりするジュンイチであった。
「レッサードラゴンは一番の強敵だけど、恐らくジュンイチ一人で倒せると思うわ。脅威はブレスだけど、それまでにジュンイチが近づき翼を凍らせれば、地上での強さはさほどでもない様よ。ケーゴの一撃が決まるまで、トーベが牽制ね」
大体の敵の仮想フォーメーションを決め、それぞれの役割を確認したジュンイチ達であった。
ちなみに食事のお金は予想通りジュンイチが支払った・・・
納得できない!
・・・まあ、おいしかったからいいか
翌日は1日パールの町で休みを取り、その次の日にサンドラへ向かうことにした。僕はリョウと行動を共にしたかったが、女の子同士で買い物に行くらしく、一人で行動することとした。もはやパールの町は行くところもなく、北の町ハルツールへ挨拶に行くこととした。
「こんにちはー」
「はー、のめや歌えや、わっはっはー」
昼から宴会をしていた。
食事処の女将さんに挨拶をした。
「おや、こんにちは。また来たのかい?」
「ええ、今度はサンドラへ行くことになりまして、昨日パールに着いたんです。ついでにご挨拶をと思いまして立ち寄りました」
「ああ、それは大変だね。ご飯でも食っていくかい?今日はいい魚が手に入ったんで、少しごちそうできると思うよ」
「ありがとうございます。ごちそうになります」
ついこの間まで頂いていた女将さんの手料理をごちそうになり、何となく暖かい気持ちになるジュンイチであった。
「また寄ってくれれば、可能な限りごちそうするから」
「ありがとうございます。できれば友人も今度連れてきます」
「彼女かい?まあ、一緒においで。漁次第だけど、腕によりをふるってあげるよ」
夕方まで女将とおしゃべりを楽しみ(ガッハは酔っぱらっていて話にならなかった)パールの町に戻るのであった。
そして、翌日からサンドラへの旅が始まるのであった・・・




