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僕らの冒険1  作者: じっつぁま
第四章 固有スキル
19/59

19話



始まりは、涙の中で


泣いてなんかないやい。これはあくびだ。

寝起きはよいジュンイチである。朝はいつものように目が覚める。


顔を洗い、宿の外へ向かう。

訓練ができる広場に向かい、いつもの演武を行う。

何も考えられない。なぜこんなことをしているかも分からない。

昨日リョウと別れてから、思考が止まった様だ。


いつもより多く回り、めちゃくちゃに体を動かす。

目標に向かい、ナイフを投擲する。ナイフがなくなれば演武の途中で石を拾い、更に投擲を行う。


「はあはあ」


息が切れるまで体を動かし、その場にしゃがむ。

そろそろ、これから何をするかを考えなければ。


「はあぁーあーぁー」


ため息とも分からない声が出る。

数分両手を後ろにつき、空を見上げながら、ぼーとして、意識を回復して行く。


「まあ、いつものことだからな。どうにかなるさ」


投げやりな発言をしながら、水場に向かい、顔を洗う。

ナイフを回収し、宿へ向かう。

歩きながら、一人になった現状を考える。


「まず、今までの様な立ち回りではいけないよな。万が一の為にHPポーションをすぐ使えるようにしないといけない。MPポーションは今はほとんど必要ないな。次の町に行くころには必要分だけ持たないといけないけど。お金は今のところ充分あるから、まずはレベル上げとスキル上げだな。レーコが言った念力を発現しないと次に進めない様だから。投擲は練習だけではもうそんなに育たないから、投擲による狩りを始めよう」


宿に帰り、準備をする。投げナイフは以前山ほど購入したものが残っている。ただ、リュックに入れておいてもすぐ使えないので、ベルトを新調することとした。防具屋へ行き、ベルトにナイフが多量に挟めるものを作成してもらうこととした。また、上着にもさせるように衣服屋に依頼した。

出来上がるまで、スキル上げを行うため、町の外に行く。


リュックの中に予備のナイフを入れて置く。今はベルトに3個位しか挟むところがないので、2個のナイフとHPポーションを挟む。

直ぐ、投げるものがなくなるから、石を拾ってぶつけることとする。


この周囲に現れるモンスターはスコーピオン、ワイバーン、オーガである。投擲で倒せる自信のあるモンスターがいない。

少しずつでも削れる可能性をオーガに求めることとした。


町から西に向かい、周辺の森を探る。両手には大き目な石を持つ。

オーガは何回かリョウとともに戦ったことがある。リョウの魔法で割と簡単に倒すことができた。ダガーで止めを刺したこともある。はっきりいって、討伐することはできるだろう。だが、投擲を行いながら、一人で倒す自信まではない。まずは野良オーガを探さないと。オーガは群れることが少なくないのだ。


いつもの狩場より、少し手前で慎重に進む。群れでいても一匹だけ連れてゆくことができれば、スキル上げができるだろう。

すると、3匹連れ合ったオーガを見つけた。


大きな石は一旦下に置き、小さな石を拾う。

軽めの投擲で一番手前のオーガの頭に小石をぶつける。


「んが?」


声を出し、一匹がきょろきょろしだす。他の2匹は振り返るが、すぐ興味をなくしたようで向こうを向く。

再度手前の1匹に、今度はもう少し大きめの石をぶつける。


「っが」


思った様に1匹だけがこちらへ向かって来た。

数m引き離すように、少しずつ離れて、隠れながら投擲を行う。

他の2匹から充分離れたところで戦闘を開始する。


「ふん、そりゃ」


右手と左手の大きな石を投げつける。

一つははじくが、もう一つは眉間に当たる。


「がー」


怒りながら、オーガが向かって来る。


「しゅっしゅっ」


腰にあるナイフを投げつける。

ぷしゅっ。ねらった両膝関節のすぐ上に突き刺さる。オーガの動きが止まる。


「てやー」


両手にダガーを持ち、オーガに向かって行く。速度が大事だ。

回るように上下を狙い切り付けてゆく。


「がー」


いろんなところから出血し始めたが、オーガが反撃をしてくる。それをかわし、背後に回る。

背中に回り、頸動脈を狙う。


「ぷしゅー」


首の動脈から出血し始める。


「が・・あ・・」


がくんと蹲るオーガ、僕は距離を取る。そのままオーガが沈黙した。


「ふう」


一息つき、ナイフの回収と討伐証明部位の剥ぎ取りをしようと思ったが、後ろからがさがさと他のオーガの音がし始めた。

ナイフを諦め、町に向かって駆け出した。


「はあはあ、まずはうまくいった。でも、ナイフの回収はできないことがありそうだな。こりゃぁ結構お金が必要になりそうだ」


今日は狩りは終了し、町に戻った。

武器屋を回り、投擲しやすそうな武器を見繕う。苦無の様なもの、手裏剣の様な武器、礫などのもの、破裂するものもあった。毒を仕込めるタイプのものもあり、苦無タイプで毒を仕込めるものとそうでないものを多量に購入した。


薬屋へ向かい、しびれ薬を購入する。オーガにも効果のあるものを購入する。

数日はベルト、上着ができるまで狩りに行くのは止めた。ギルドに行き、採取もののクエストを確認したが、現状お金はたっぷりあるので、そのまま出てくる。


することがなくなったので、投擲訓練を行う事とした。町の外に向かい、モンスターが出現せず、訓練ができるところを探す。

少し開けた林の中で的を作り、リュックの中からナイフを取り出し投げる。

投げるものがなくなれば回収しにゆき、また投げる。投擲のスキルはほぼ上位まで上がっているのか、訓練ではなかなかスキルレベルは上がらない様だ。


カウンターを確認しても、スキルレベルは出ていない。投擲としか表示されていないのだ。しかし、体感でスキルレベルは上がっていると思われた。的の位置が分かるのだ。それに吸い込まれる様にナイフが刺さる。

数日間は訓練に費やした。


ベルトと上着が出来たので、また狩りに向かう。今日もオーガを相手にする。

ベルトに合計10本、上着に合計6本の苦無を差し込む。上着のにはしびれ薬が入れてある。できればオーガ1匹を投擲のみで倒したいものだ。


森の奥に入り、オーガのテリトリーに侵入する。

この前の様に3匹のオーガを発見する。オーガは3匹組が多いのだろうか?

小石を拾い、1匹だけを誘因する。徐々に離れる1匹のオーガ。


充分離れた後、薬付きの苦無を投げる。1本目は左肩に、2本目は右大腿だ。


「しゅっ」


左肩に飛んでくる苦無に気を取られ、右太腿にもう1本の苦無が刺さる。


「ぅごー」


すこし引き釣りながら、それでも僕を発見したオーガは向かって来る。

下がりながら、ベルトの苦無を投げつける。


「しゅしゅしゅしゅしゅっ」


右大腿、左上腕、左大腿、右上腕、そして上腹部に投げつける。


「すとととと」


かわすことが出来ず、全ての苦無が突き刺さる。そして、少しずつ薬が効いてくる。オーガはたまらず跪いた。


「しゅしゅっ」


2本の苦無で止めを刺す。狙いは両頸動脈だ。狙い違わず、両頸部から出血した。そのままオーガは前のめりに倒れた。

ダガーを持ち、残心を行い、オーガがこと切れていることを確認する。

今回は一緒に居たオーガはやってこない様だ。刺さった苦無を回収し、討伐証明部位を剥ぎ取った・・・




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