17話
始まりは、わりと寝心地のいいベッドの中
最近はリョウさんに稼いでもらっているので、僕も中ランクの宿に泊まらせてもらっている。中ランクからの宿ではうまい食事とお風呂がついている。なんと薬草風呂もあるので、HPMP回復し放題である。
洗面所に顔を洗いにゆき、武器を持って訓練所に向かう。
宿の裏庭にちょっとしたスペースがあり、静かにすれば訓練をすることができるのだ。いつも通り、両手に片手剣を持ち演武を行う。左手でかわし、右手で攻撃する。足技を加えて回り、今度は右手で受け、左手で攻撃する。時計回転、反時計回転、蹴りあげ、後ろ回し蹴り。やはり自己流であるが、最近は少し様になってきているようである。スケルトンを討伐した時のイメージで訓練を続行する。
演武の途中で投擲を行う。最近は百発百中で目標に当たるようになった。少しずつ自分が強くなった気がする。他の3人には多分負けるだろうが・・・
水魔法はレベル9になったが、相変わらず攻撃に使えるものではない。たっぷりの水が出るだけである。ウォーターカッターなんかはできないのであろうか?
夜の魔法練習のとき温度を下げるイメージや、また上げるイメージなんかもしているが、相変わらず常温の水しか出ない。MP消費量はすごく少なくなったのであるが。
立花にもらった”手袋”の効果もまだ不明である。いつか固有スキルが使えると信じている。一通りの訓練及び魔法の練習が終わった後、一番風呂に入らせてもらいMP回復を行う。今日は次の町に行く日だ。
若干朝が遅いリョウさんを起こしに行く。今は隣の部屋の住人である。
「こんこん、おはよー、朝だよー」
「・・・」
「こんこここん、おはよー、朝だよー、起きてー」
「うーん・・・」
「こんこここんこん・こんこん、おはよー、朝だy」
「うるさーい」
隣の部屋の人から苦情が出た。リョウさん起きてください、(´;ω;`)。
「かちゃっ、おはよー」
「(静かに)ぉはよぅ、ご飯食べに行こうかぁ」
「んー、分かった。支度してくる」
もう少し寝起きが良ければなぁ。旅の途中では、体を揺すれば起きてくれるのだが。やはり一緒にねたほうが、げふんげふん。いや、まだ早い。まだあせる段階ではない。
「じゃあ、先に下へ降りとくね」
お先に食堂へ向かう。2度寝するなよ。
食堂のテーブルに着き、2人分の朝ご飯を頼む。
注文が届いたとほぼ同時にリョウさんが下りてきた。
「おはよー、いただきまーす」
「いただきます」
若干まだ眠そうに、朝食のパンを齧るリョウさんであった。
「まずは買い出しに行って、それから出発だね」
「・・・うーん、昨日全部買い出しは済ませておいたよ」
「おぉ、いつの間に。買ったものはどこ?」
「取られそうにないものはもう馬車の中、ポーション類は部屋の中にあるよ」
「お主やるな」
「んん」
まだ寝起きなためか、冗談の反応が鈍い。まあ、町からすぐのところはあまりモンスターが出ないし、馬車の中で寝ててもらうか。
朝食を終え、リョウさんの朝風呂が終わってから、馬車に乗り込み出発した。
今回の旅は長いので、少々の野菜と、なんとちょっとしたお風呂セットを買ってある。もちろんリョウさん用だ。馬車の中で湯あみができる位の風呂桶をセットした。水魔法で満たし、入るときはリョウさんに沸かしてもらう。もちろん僕は見張りだ。決して覗きなんかはしない。けっっっして!
馬車は長閑な道のりを歩む。早い馬ではないが、暑さ寒さに強い。休憩も4時間ごとでよい。
4時間近くなって、木陰を見つければそこにつけ、馬に水をやる。
途中のモンスターはリョウさんが火魔法で、馬車の中から一撃に葬ってゆく。
なんということでしょう。順調な旅路である。
「御者代わろうか?」
「いえいえリョウ様、このジュンイチにお任せください。リョウ様は周囲のモンスター殲滅をお任せいたします」
「・・・もう2時間も何もやってこないから暇なの。少し変わってくれない?」
「いえいえリョウ様はゆっくりして下さい」
はっきり言って御者までしてもらうと、僕の矜持が・・・立場がないです。
「ちょっとだけ、ねっ?」
「しかたがないなぁ、ちょっとだけだよ。はい、ちょっとだけ」
「えー、もう少しさせてよー」
はたから見ていればリア充な会話をしつつ、馬車は進んで行くのであった・・・
夜間は2人ともよく眠れた。リョウの武器は流石と言わざるを得なかった。
地面に突き刺したレイピアから、巨大な炎竜がサークルを描くように出現し、僕らを守る。これに向かって来るモンスターは居ないだろうなと思われた。
馬が怯えるかと思ったが、こいつは心臓が強いのであろうか、出現しても気にせず眠りだした。炎竜が威圧を出していないのが原因だろうけど。
夜間はよく眠り、周囲のモンスターは火魔法で一撃で葬り、馬車はのんびり次の町に進んで行った。




