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僕らの冒険1  作者: じっつぁま
第三章 メインヒロイン
15/59

15話



ダンジョン内部はシンプルな作りであった。

火口付近ということで、暑さは相当であるのだが、火魔法を取得しているため暑さに強い。火属性防御が高いというわけである。


道なりに進んで行くが、特に罠の類も、モンスターとの遭遇もない。

楽々ダンジョンの最終地点に着いた。


そこはもう一つの火口となっており、中央の島へと続く道以外は全てマグマが流れていた。

実際の温度は、加護がなければ一瞬で燃えてしまう様な環境である。

しかしリョウは涼しげな顔をして、中央の島へと歩いてゆく。


島には大きい洞窟があり、少し薄暗かった。

ひょいとのぞき込むと、中には真っ黒なレイピアと、ドラゴンの顔の偶像があった。


「こんばんはぁ」


誰に話しかけてるのか分からないが、とりあえず話しかけてみた。


「ぐぉんぶぁんわぁぁ」


すると、地の底から漏れるような低い声で、偶像の方から音が漏れてきた。

少しずつ偶像の目が開いてくる。


「お前が、わしの主になるものかぁ」


「ええと、そうだと思います」


「ならば、わしの目を見るのだぁぁぁ」


リョウはドラゴンと目を合わせた。

ドラゴンの目は金色をしており、縦の瞳であった。

見つめあう間、ドラゴンの感情が流れてくる。

威圧的で、見つめあうものを屈服させる感情が流入する。

これくらい強い感情は初めてであったが、リョウにはそれを受け流すことができると思われた。

まともな精神の攻撃を少しずつ受け流してゆく。強くなったり弱くなったりする流れを読む。

すっと弱まった瞬間に、今度は自分の感情を押し付ける。

自分に好意を持つように、自分に敵意を抱かぬように。自分の助けになるように。


どれ位見つめあっていたのだろうか。もはやドラゴンからは威圧的な感情が流れてこなくなった。


「わしの主の資格を確認した。お前の武器を刺し、この武器を手にするのだ」


どちらが主導権を持っているのか分からない状況だったが、言われるがままドラゴンの前のレイピアを抜き去り、自分のレイピアを代わりに刺した。


「そのまま、武器をわしに向けておくのだぁ」


取ったレイピアをドラゴンに向けた。

かっと目が光り、ドラゴンが動き出す。

ずるずるとレイピアに向かってドラゴンが移動する。

レイピアの先端に引き込まれるように、ドラゴンがレイピアへ吸収されていった。


「ずるずるずるずる」


どんどん吸収されていく。どれくらいの長さなのであろう。

胴体部分は少しずつ熱を持ち、しっぽの部分は鉄を熱したような状態であった。

火属性防御を持っているとしても、マグマが2m先のところにあるようなものだ。火傷をしたようにひどく熱く感じた。


最後の尾の部分が吸収され、あたりが静かになる。

レイピアは熱せられ、全てが真っ赤になっていた。


『適切な鞘に入れない限りは使いこなすことができない。しばらくわしは眠りに就くこととする。鞘が見つかったら話しかけるのだ』


頭に響くように声がし、レイピアはまた元の黒い状態に戻って行った。

洞窟からでると、島の周りのマグマがなくなっていた。周囲のマグマはドラゴンの体の一部だったようだ。

冷えていることを確認し、ベルトにレイピアを挟んで、ダンジョンを出ることとした。


ダンジョンの出口を出ると、ちょうど夜が明けたころだったようだ・・・



*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*:;:*



ジュンイチは火口に向かって座って待っていた。

じっとダンジョンの入口を眺めながら待っていた。日が落ち、当たりが薄暗くなっていったが、火口付近なので寒さは感じなかった。


モンスターは出現しない。

鳥類しか出ない場所であり、夜間は静かさに満ちていた。

でも寝る気にならなかった。


何を考えるでもなく、何をするでもなく、じっとダンジョンの入口を眺めている。

すると”ぞくっ”とした何かが通り過ぎていった。


「何だったんだろう?」


厄介なことが起きなければいいがと考えながら、その気配の方向に目を向ける。

ずっと、同様の感覚が流れてくる。

ふと、その感覚が弱くなり、ついには無くなった。

しばらくすると、火口に変化が起きた。下にあるマグマの量が徐々に減ってきているのだ。

どんどん枯渇して行き、ついにはなくなってしまった。


夜も更けていったため、徐々に周囲が寒くなってくる。

すると朝日が昇った。一瞬ダンジョンから朝日に目が行く。


「ジュンイチー、終わったよー」


また、ダンジョン入口に目を向けると、リョウが手を振っているのが見えたのである・・・




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