10話
始まりはボッチのベッドの中で
さみしくなんかないさ。
起きて洗面所で顔を洗う。
毎日の習慣で両手にダガーを持ち、訓練ができる場所へ移動する。
最近は両手持ちでの訓練に切り替えていた。
はっきり言って独学だが、左のダガーで受け、右で切る。足で蹴って回り、左手を振り上げ、右手で受ける。回るように切ったり受けたりをしながら、蹴りも混ぜ、演武の様に訓練を行う。
少し疲労感が出てきてから、投擲の練習もする。ナイフも混ぜながら、右、左、交互に的を狙う。
体感で1時間の訓練を終え、洗面所で体を拭き、朝食に向かう。
ご飯は宿以外で済ます。屋台の飯が案外うまい。今日はたこ焼きもどきだ。
ソースはないようだが、塩のつけだれが秘伝の様だ。
朝からパクパク食べ、今日の討伐クエストに向かう。
ブラックボアーは1匹狩ったら直ぐ町に持って帰り、それ以外は連続で狩りを続ける。1人になったので、無理をしない様にしているが、数匹かかってこられた場合危ないシーンはある。
切り傷、擦り傷、打撲など軽いものは水洗いだけしておく。深い傷を受けた場合はポーションを使う。
放置していた場合、HPが0にならなければ死なないと思うが、黴菌が入ったり、化膿した場合はやはり命に関わると思う。
そこらへんはどうなのかな、異世界。
少しずつお金が増え、レベルも上がる。体感的にはあまり強くなった気がしないのだけれど、予定通り次の町に向かわなければ。
レーコとケーゴのペアも頑張っているようだ。遠目で確認したがことがある。
レーコは風の魔法が使えるようだ。風魔法レベルが上がって癒しの風ができる様になったと、この間立ち話で聞いた。
もう少ししたら更に北へ行き、ケーゴの固有武器を手に入れるらしい。
「さて、そろそろスケルトンと戦ってみよう」
次の町に向かうのであれば、スケルトンと戦わなければいけない。
本日の目標は町の西側だ。
街道沿いに西に向かい、はぐれスケルトンを探す。
ここら辺は冒険者も多く、モンスターはある程度討伐されている。危険は少ないが、それでも遭遇したとき勝てるようになっておかなければいけない。
街道から少し外れ、森に向かう。鬱蒼とした森を進み、帰り道の目印をつける。
あまり奥に入ることもなく、スケルトン1匹が蠢いていた。
ナイフはもったいないので、足元から石を拾い投げつける。
投擲術の影響もあり、割と「ぼこっ」と音がした。
こちらに気づき、走ってくる。骨なので早くはない。今の敏捷度であれば逃げ切れそうだ。
スケルトンは錆びた剣を担ぎ上げ、袈裟切りに向かってきた。
左手のダガーでそらし、右手で切り付ける。
「かーん」
切った部位は頭蓋骨で、ほとんどダメージは入らなかった。
スケルトンの返しの剣をしゃがんで捌き、一旦離れる。
「関節を狙わないと、ダガーでは厳しいな」
ぶつぶつ言っている間に、またスケルトンは近づいてくる。
次は逆袈裟切りの様だ。今度は左手のダガーで剣を捌き、右手で左肘関節を狙う。
「がこっ」
関節が外れた音がする。
「うりゃぁ」
足でそのまま蹴とばし、体勢を崩す。
相手が木にぶつかった瞬間、「しっ」首の関節を狙い、首を跳ね飛ばした。
「はぁはぁ」
スケルトンの動きを観察する。この異世界では、首が落ちるとスケルトンは死ぬようだ。
そのまま崩れ落ちてしまった。
討伐証明部位は第2頸骨、喉仏と呼ばれる部分を採取する。
スケルトンの剣はそのまま崩れてしまい、ドロップ品にはならない様だ。
尚、第2頸骨をとってしまえば、再び立ち上がることはないらしい。
「ふぅ、少し休憩して、後2・3体戦っておこう」
久しぶりの緊張を体感し、数分蹲った後、今日は合計5匹のスケルトンと戦って町へ帰った。
スケルトンと他のモンスターの違いは、やはりその防御力の様だ。ゴブリンやグレイウルフ、ブラックボアーはどこを狙ってもある程度HPは削れる。
スケルトンは打撃武器でなければ、関節を狙わないとHPは削れない様だ。攻撃力はそんなに高くない、といってもゴブリンよりは強い。ダガーで受ければ負けてしまうだろう。
僕は数日スケルトンと戦って、戦い方を研究することとした・・・




