1話
初投稿です。宜しくお願いします。
始まりは森の中
抜けるような青空、鬱蒼とした木々、木漏れ日の中に僕は立っていた。
周囲には鳥の鳴き声や、川のせせらぎが聞こえる。傍には竹藪が存在した。
持ち物は、左腕に腕時計状のカウンター、ポケットには鞘に入ったナイフがあった。
「さて、どちらに向かえばいいかな」
まずは森を抜け、人里を目指すこととした。
歩きやすそうな所から北を目指す。
目印になるよう枝を折りながら、慣れない森の中を歩いて行った。
少し歩いた先に見慣れぬ生物がいた。草むらに隠れる様に存在していたが、こちらからは一部がはみ出ており、不自然なほど青みがかったゼリー状の物体が波打っていた。恐らくあれがスライムであろう。
スライムには核があり、それを抜き去るか壊せば倒すことができる。核は上手に抜き去ればお金になるそうだ。
「じゃあ、最初の狩りをはじめようか」
身を隠しながら、ゆっくり近づいて行く。
スライムに目があるかどうか分からないが、今は気づかれていない様だ。
後1mでスライムに手が届く。その時、
「びゅんっ」
スライムの一部が変形し、こちらを攻撃した。
「つっ」
スライムの触手が右手に当たる。ナイフは落とさなかったが、当たった手首に痛みを感じる。
僕は後ろに数歩下がった。
掠っただけなので、外傷はない。スライムを確認すると、その場から動いていなかった。
「もう一度だけ挑戦しよう」
今度は攻撃を受けた場所よりちょっとだけ離れた場所から一気に攻撃することとした。
「たあっ」
ナイフをスライムに切り付ける。ざくりとした感覚がある、しかしスライムに効いた雰囲気がない。
前回と同じ様に触手が飛んできた。慌てて左手で受ける。
「痛い、痛い」
触手をナイフで切り裂きながら、急いで距離を取る。
5m位離れてスライムを確認するが、スライムは動かない。1m位のところがスライムの攻撃圏内の様だ。
攻撃された左腕は赤くなっていたが、触手を切り離してからは痛みは無くなっていた。
ついでに左腕のカウンターを確認する。
HP 6/10
一度の攻撃で2ポイント減少する様だ。
このままではスライムを倒すことができない。僕は元の場所へ一旦帰ることとした。
「どうしようか、このままじゃだめだな」
冒険初日からの行き詰まりを感じる僕であった。・・・
僕は佐藤潤一、17歳、高校2年生である。
帰宅部で、ネットゲームなどをしていたが、最近おもしろいことがない。
その日は特に少々むしゃくしゃしていたため、異世界への門の話しを聞き、お試しがてら入ってみることにしたのである。門の管理人にお金を払い、少しの知識を教えてもらって門をくぐった。近くに村があり、近辺では最弱のモンスター、スライムしかいないこと、スライムは核を壊せば倒せて経験値になること、上手く核だけを抜き去れば核は村で売ってお金になることなどを聞いた。
「最初の持ち物はナイフだけだよ。後左腕にはカウンターをつけておく。自分のステータスが確認できるからね。HPが0になると死んじゃうから気をつけるんだよ、ひっひっひ」
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ここに来るまでの変な婆さんの話しを思い出しながら、どうすればスライムが倒せるか考える。
季節は初夏であり、時刻はまだ午前中のようだ。すこしずつ喉も渇く。
川の音もするから、水は手に入るだろう。手ですくって飲めばいいが、少し蓄えておきたい。近くの竹で簡単な水筒を作ることとした。
竹を削り、節を残す。2か所の穴をあけ、簡易な水筒を作った。
残りの竹を見て、ふとひらめく。
「そうだ、竹槍を作ろう」
長い竹槍を作れば、スライムからの攻撃は受けないのではないか。幸いナイフはよく研いである。無理をすれば刃こぼれするが、少しずつ削れば綺麗な竹槍が作れる。握りのいい竹を選び、少しずつ削ってゆく。竹を倒し、2m程度の長さにする。先端を削り、立派な竹槍となった。1本作るのに1時間程度かかったが、もう1本作ってゆく。
時刻は昼過ぎとなり、空腹感と喉の渇きを覚える。
モンスターと遭遇しないように、ゆっくり川までゆき、空腹を水でごまかす。
水筒にも水を汲み、再びスライムと戦うこととした。
先ほどのスライムを見つける。
竹槍を構え、少しずつ近づく。竹槍を近づけても反応がない。よく見ると、スライムの中心付近に灰色の毬藻の様な核が確認できた。
核をめがけ、一気に突く。うまく核を竹槍の中に入れることができたが、少し躊躇したため、討しきれていなかった。
スライムから反撃がくる。まるでカメレオンの舌の様に、ゼリーの部分が太ももに当たる。
「じゅっ」とした感覚で、皮膚が焼ける。
「うおっ」
痛みを堪え、更に押し切る。核と周囲のゼリーが切れたとき、ゼリーの部分の動きが止まる。
痛みは続いていた。
「っく、痛い痛い」
竹槍を土に差し込み、損傷部分を確認する。幸い皮膚は赤くなっただけで、傷はできていないようだ。
水筒から水を流し、皮膚を洗う。少し痛みが引いた気がした。
左腕のカウンターを確認する。
HP:4/10
MP:0/0
一回の反撃で2ポイント削られた。
「ふう、攻撃を受けないようにしないと、すぐ詰んじゃうな」
緊張のため、首周りの汗がやばい。のどもからからになっている。
水を飲み、腰を下ろす。
「休んではいられないけど、初討伐が終わったよ。つかれた~」
数分休んで、スライムの核の状態を確認する。念のため、周囲のゼリーを遠くに跳ね除け、ゆっくりと竹槍から核を出してみる。
「まだ、ゼリーが動いているな」
核の周囲に残ったゼリーがうようよと動いていた。
竹槍で少しずつゼリーを切り取り、ほぼ動かなくなったところで、
「どうしようか。手で持っていけないし。とりあえず水筒に入れて持って行こうか。」
水筒の節をとり、中に核を入れ、土を少々入れて、核が見えないようにした。
少々の休憩の後、移動することとした。
慎重に森の出口に向かって進む。遠くに森の切れ目が見えた。
次のスライムの影は見えない。
すると、バッタの様な虫が飛んだ。
ひゅっと触手がバッタをとらえた。第2スライム発見。木の向こう側に隠れているようだった。
回り込むように、スライムを見つける。
ゼリーの中にバッタが捕食されているのが見える。
ゆっくりと竹槍を核に近づける。
「ふんっ」
今度は一気に核を貫き、地面に突き刺した。反撃は受けなかった。
「ふぅ、やっぱり慣れないから、緊張するな」
見るとゼリーの一部が触手となっていたが、崩れていた。
前回と同様に、核の周囲を切り取り、水筒に入れた。
「少なくとも、後3匹位は狩りたいな」
重い腰を上げ、また歩いてゆくのであった。