まるななっ! VSウサギウェーブ
ちょい短め
二回目のログイン。
ハルの手に入れた『魔導師レインの世界観光紀』から、ウサギ革とカラーラビットのあるレアドロップから全身ウサギ装備が作成できることが分かり、二人でカラーラビットを狩りに『小麦色の草原』へと来ていた。
ハルもヨウもめったにカラーラビットからの攻撃を食らうこともなくなり、狩りも順調である。
「ねえよう、もう20羽くらい狩ってるけれど、革と肉以外のドロップが出てこないわよ。レアドッロップなんて言って本当にあるのかしら?」
「ん~、たぶんあると思うよ。本にとはいえわざわざそんな嘘を書いたりしないとおもうんだ」
でもな~、と困った顔をしながらようは続ける。
「スレでも調べてみたけど、ウサギに革と肉以外のドロップがあるなんて情報なかったんだよね。だから相当なレアか、よっぽど出にくいかだと思うんだ」
ヨウの言葉に、ハルも納得する。その件についてはハルも調べてみていたのである。
Colorful days onlineでは、防具が頭、胴、腕、足と存在するのだが、ウサギ装備で作れるのは現状、胴と腕、そして足だけなのだ。
頭があってしかるべきなのである。
ハルはおそらくレアドロップは頭の装備であろうと予想をつける。
攻略組みは早々にこの草原のボスを倒して次のフィールドへ進んだらしいのだが、生産組みといわれる人間達がそれを探しているらしく、スレも熱く盛り上がっていた。
そんなレアドロップを求めて、ハルとヨウの二人はウサギを狩る。
しかし30羽目の、青い色をしたカラーラビットはいままでのウサギ達と様子が少しだけ違った。
見慣れてきたからこそ分かるのだが、興奮して体をバンバンさせているやり方がほんの少し違うのだ。
そしてハルにはその違う動きに見覚えがあった。
はじめてあったあのピンクのカラーラビットと同じなのだ。
嫌な予感がハルの脳裏をよぎる。
ひょこっ。
ひょこひょこっ。
嫌な予感というものはえてして当たるものである。
青いカラーラビットの後ろから色とりどりのカラーラビットたちが現れる。
その数約50。
「ハル逃げるよっ!」
行動は春よりもヨウのほうが早かった。
前のときと同じようにハルの手を掴んで一目散に駆け出す。
「ねえヨウ、あの数のウサギに勝てると思う?」
走りながら、ハルはヨウに尋ねた。
「普通に考えたら無理。ただ、一羽ずつ、攻撃を一発ずつ当てて倒していけばいけるかもしれない」
「囲まれたらアウトね」
「やってみる?」
「ええ。もし仮に倒されてデスペナルティをもらっても今ならそんなにデメリットはないじゃない」
ちなみにこのゲームでのデスペナは他のゲームと比べて意外と軽いほうだったりする。
ランダムで所持している素材アイテムの中からランダムで3割失うのだ。ちなみにそれが種類か数かもランダムであるため、運が悪いと場合によってはほとんどのアイテムを失うことにもなる。
現時点でハルとヨウの二人がもっている素材アイテムはウサギのドロップのみ。つまり肉と革だけである。たとえ失ってもなんとかなる類のものなのだ。
「はあっ!」
ハルとヨウはいちばん近づいてきたカラーラビットに一撃加え距離をとり、また近づいてきた一羽に向かって一撃を加えるという、ヒット&アウェイに近い戦闘を行っていた。だがまあ、自分から攻撃を仕掛けに行けば間違いなく囲まれてフルボッコにされてしまうため、逃げながら攻撃を当てるという先方しか取れないのである。
「『正拳突き』!」
ヨウがアーツを使い押い、一羽のカラーラビットが吹き飛ぶ。それにぶつかり勢いが殺されたのか、二人とカラーラビットたちの距離がいくらか開いた。
「やるじゃない」
「まあね」
と、そこでヨウが渋い顔をする。
「ちょっと本格的に不味いかもしれない……」
「どうしたの?」
ハルはヨウが苦い顔と共に指差した場所を見る。それはウサギ達から逃げている進行方向と同じである。
そこには一羽のカラーラビット。ただその動きは先ほどの青いカラーラビットと同じもので。
つまり……
ひょこっ。
ひょこひょこっ。
ぴょぉーん!
大量のカラーラビットに挟み撃ちされる形になるという最悪の形である。
ハルはしばらくサバイバルナイフを振り回して奮戦していたが、色とりどりのウサギ達に囲まれてついには力尽きてしまう。
最後に見たのはヨウが一人、カラフルなウサギ達の中で立ち回っている姿だった。