まるよんっ! もふもふの強襲とヨウのやりたいこと
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これからも頑張りますので長い目で見ていただけたら幸いです。
この物語は主人公(女)とヒロインのいちゃいちゃ物語です。苦手な方は回れ右でお願いいたしいます
ハルは『小麦色の草原』を必死に走っていた。
もうかれこれ10分は走っている。二人を追いかけているのは蛍光色のピンクだったりオレンジだったりといった暖色系の毛並みをした30羽ほどのウサギの大群である。
ハルが必死の形相のわりにヨウは微笑んだままというのがまた興味深い。
どうしてこのような状況になっているか理解に苦しむが、事の始まりは少し前、はじまりの街の西門を出てすぐのことだったりする。
以下回想……
「ねえヨウ、門の外に来たのはいいけどこれからどうしたらいいのかしら?」
「あたしがサイトで見た感じだと、初心者はここで体を慣らすのがいいみたい。敵も町の周りではいちばん弱いみたいだから」
「敵って?」
「RPGとかで有名なのだとゴブリンとかスライムかな? この草原では出ないみたいだけどね」
「スライムってよくテレビのCMに出てるあの青くてたまに王冠とかかぶってる能天気そうな顔をしたアレ?」
ハルの妙なイメージの仕方にあははと笑い肯定するヨウ。ハルそのイメージは間違いなく国民的ゲームのアレである。
そんな会話をしながらも二人はゆっくりと歩き門から少しずつだが離れていった。
しばらく歩いたところで、ヨウが何かを見つけ片手でハルの服のすそを引っ張りながら指差した。
「ねえねえ、あれ見て」
「どうしたの? ってウサギじゃない。ちょっと大きいけど可愛いわね」
そこには保護色なんて知ったもんかというド派手なピンク色のウサギが草を食んでいた。
ただハルの言ったようにその大きさは普通のウサギと比べて三倍近く、高さだけでも一メートルくらいはありそうだ。
「あれ、カラフルラビットっていうらしいよ。住む場所によっていろんな色の個体がいるみたい」
「へー、そうなのね~。ほ~ら、怖くないわよ~」
ハルはウサギにゆっくりと近づくとかがみ込んでおいでおいでといった仕草をする。ウサギも声をかけられたことで気付いたのか、食事を止めて自身と同じところに目線のあるハルをまっすぐに見据える。
「こうやって見ると、普通のウサギを大きくしただぶぅ!」
ハルは台詞を最後まで言いきることが出来なかった。
顔面にウサギのタックルが直撃し、少女があげるものとしてはあるまじき声を発して大きくのけぞる。このときウインドウを開いてハルのHPを見れば、半分まで減っていることが見て取れただろう。
「痛ったぁ~」
「だから言ったじゃん。敵だって」
鼻を押さえるハルを見ながらくすくすと笑うヨウ。
「……あなたそんなこと言ってなかったわよ」
「そうだっけ?」
「はぁ……まあいいわ。敵だって事はよく分かったわ。そもそもこんなに大きなウサギが要る分けないものね。けど、どうやって戦うのよ?」
「戦えないよ」
「……ごめんなさい。私の耳がおかしくなったのかしら? 聞き間違えたかもしれないからもう一回言ってくれない?」
「だから戦えないよ」
さらりと言い放つヨウ。
「第一武器も無いのにどうやってハルは戦うつもりだったの? いちおう素手でも戦えるらしいけど、防具も無いのにどうするのって話だよね」
「あなたなんで私を連れてフィールドに出たのよ!」
「きゃー☆」
「あのAIのマネはうっとおしいからやめなさい」
はあ、とため息をついてハルは改めてウサギと向き合う。
どぎついピンクのカラーラビットは興奮しているようで、体をバンバンやっている。大きいだけになかなかの迫力だ。
「あれ? ハルなにするの?」
「素手でも戦えるんでしょう? やってみるわ」
「あたしはやめたほうが良いと思うなー」
「なんでよ」
「だって……」
そう言ってヨウはハルの視線のもう少し先を指差した。ハルもヨウの指差した先に目を向けると、そこには色とりどりのカラーラビット。
少なく見積もっても30羽はいる。そのすべてが興奮して体をバンバンやっているのだ。
「それ逃げろー」
ヨウの垢抜けた声と共にハルは手を強く引っ張られる。
そして冒頭に戻るのだ。
やっとの思いではじまりの街まで逃げてきたハルは、ヨウの柔らかで良く伸びるほっぺたを引っ張っていた。
「ひはい(いたい)……」
「何であんなことをしたのか説明してもらおうかしら」
「はなふからまふはなひへ(話すからまず離して)」
しょうがないわね、とハルは指先の力を抜く。ただしすぐにつまめるように準備はしたまま離してはいない。
だって……ともったいぶった前置きをしてヨウ言う。
「ハルの困った顔とか必死な顔がみたかったんだもん。久々たけど可愛かったよ」
「よし、有罪」
「ひはいひはいひはい!」
涙目になるヨウ。HP的なダメージこそ入っていないものの、仮想現実というだけあり痛みはちゃんとあるようだ。ハルもウサギのタックルを受けたときに痛みもあったことから、ダメージ判定とは別に痛みとしての判定も設定されているらしい。
「ほんとの事いうとね」
「ん? なによ」
「わくわくが止まらなくて、早く街の外を見てみたかったんだ。どんなところなんだろうって。前にハルに言ったかもしれないけど、あたしはハルと一緒にこの世界を旅行したいんだ。いろんなところを一緒に回って、いろんな景色をハルと見たい。それだけだったら、戦闘能力なんて無くても大丈夫だと思ったんだ」
まあ、そんなことはなかったけどね。とヨウは苦笑いする。
そんなヨウにハルは手を差し出して。
「ヨウのやりたいことは私のやりたいことでもあるのよ。最後まで付き合ってあげるから、ね」
「ハル…………大好き!」
ヨウはハルに抱きつき、人目もはばからずに叫んだ。
「ちょっと、AIとはいっても他人の見ているところでそんなにくっつかないでよ! 恥ずかしいじゃない!」
ヨウはハルの胸に顔をうずめて、全身で喜びを表している。このゲーム、セクハラ判定があるものの、同性相手ではその判定も意外と甘いようだ。
「じゃあまずは武器と防具を買いに行こっか」
そう言うとヨウはハルの手を掴み、街の中心部へと向かって二人で走り出した。
ゲーム内では軽めに。
リアルパートで百合百合するときには重めに書く予定です!