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まるさんっ! 初ログインそしてはじまりのまちで

ブックマーク増えてた!

ありがたいです! 趣味全開ですが付き合っていっていただけたら幸いです。

目を開けるとそこは中世ヨーロッパを髣髴とさせる石造りの街並みが広っていた。実際の中世ヨーロッパでは汚物等も道にばらまかれていたらしいが、ここはそんな事とは無縁な様で清潔感に溢れている。


出た場所は始まりの街の西門付近に当たり、遠くには街のシンボルである巨大な噴水が悠然と構えていた」。


おまけに考えていたよりも人が多い。ゲーム自体が発売直後である現在、プレイヤーは第一陣目の人間しかいないはずである。ざっと見ただけでも、ハルと同じ初期装備の格好をしているのは一割にも満たない。

つまり、ほとんどの人々が個々にAIを持ったNPCという事になる。運営、本気過ぎだ。


ハルはとりあえずと、ウインドウを開いてみる。

念じればすぐに出てくるあたり、便利なものである。


(でも、むやみに出さないほうが邪魔にならなくて良さそうね)


目の前に浮かぶ半透明のウインドウを眺めながら、ハルは思う。

事実βテストの時にも、自分の残りの体力を確認しようとウインドウを開いたときに敵の攻撃をくらってしまうといったあまり笑えない事態が頻繁に起こっている。


ウインドウを多用しないというハルの考えも、意外と理にかなっているものだったりするのだ。


因みに、今のハルのステータスはこんな感じだったりする。


職業:

HP:100

MP:100

Str:20

Vit:20

Int:20

Age:20

Dex:20

Luck:10


所持金:50000G


おそらくこれが初期の人間のステータスだろう。ハルがサイトで見た初期ステータスと一致している。さすがに人によって違うという事は無いようだ。

職業も空欄のまま。これが各々のプレイスタイルによって変わっていく。

所持金は多いのか少ないのかよく分からないが、初期の金額なのでけして多額というわけでも無さそうだ。


今後の方針は未定だけれど。

まずは……


ハルよりもほんの少し先にログインしているはずの親友を探しに行こうと、噴水に向かって一歩を踏み出した。






「とりあえずついたけど……」


体感時間で30ほどかけてたどり着いた噴水の麓でハルは独り呟く。

一人ではこれからのことが決められないのは確かである。まさか勝手に決めるわけにも行かず、ゲーム開始直後であるというのに途方にくれる。この場所自体が目立つ場所ではあるため、相手がハルをみつけることを期待する。ログインしていれば親友もハルを探しているはずなのだ。


しばらく悩んだ末にハルは待つことを決めた。遭難したわけでもないが、考えの根本は同じである。


余った時間をただボーっと突っ立っているのももったいないため、ハルは道行く人々を観察していた。

鉛色のいかつい鎧を着た人、派手で立派な服を着た商人っぽい人、大通りの端っこで呼び込みをする怪しい人。服装だけでなく髪の色から肌の色までさまざまな人がいる。

ハルは自分が外国に来たかのような錯覚をしていた。けれど言葉は日本語であるため違和感もある。


そんな中、ひときわ目立つ少女が一人。道行く人々もまた少女のことが気になるようで、すれ違うたびに振り返っている。


エメラルドグリーンのボブカットが風に揺れている。肌は透き通るように白く、それは見るものに対して病弱な印象も与えている。何よりも目を引くのはその格好である。春の新芽の色彩をまとった服装、それはまごう事なきプレイヤーの初期装備。


日差しと噴水の水しぶきに囲まれて、誰の目にも少女は神秘的に映っていた。

ハルも例外ではなく、少女に目を奪われていた。


少女の視線がハルに向けられる。同時にハルの視線も彼女の新緑の瞳に吸い込まれて……


「あ、ハルだ! こんなところにいたー!」


少女はよくみればいやよく見なくても、ハルの親友でもあり幼馴染でもある小陽こはるだった。


「……ってヨウ、どこにいたのよ! 探してたのよ!」


ハルは軽く叫び気味に返事を返す。

ちなみに、ヨウは小陽の渾名である。由来は言うまでも無く、小陽の『陽』という文字からである。

ハルとヨウは家が隣同士で、同じ日に同じ病院で生まれ、しかもそれが四月一日であるというなかなか物語チックな関係である。その関係は幼馴染そして親友以上のものとして今もずっと続いている。


基本的にはお互いに心を許せる気軽な間柄なのだ。

だが、明らかに遅れてきたヨウに対してはハルも寛容ではないらしい。それに対してヨウは謝りつつも反省は無いようで、朱色の舌をぺろっと出している。


「ごめんごめん。ちょっとナナちゃんと遊んでたんだ」


「ナナちゃんって……ああ、あのちょっとうるさいAIの子ね」


ちょっとうるさい、というのはハルとしてもだいぶ言葉をオブラートに包んだ結果である。それでも明るいとかにぎやかという前向きな表現にならないあたり、ハルのナナに対する評価が伺えよう。


「ところでヨウ、あなたその派手な格好は何よ。そもそも初期装備で色が変わってる人なんて街中でもいなかったわよ」


ああこれ? と言いながらヨウは自分を見るかのようにその場で一回転する。


「ナナちゃんに教えてもらったんだー。ほとんどの人には教えていないらしいけど、服も色が変えられるんだって」


「私はそれ教えてもらってないんだけど」


「じゃああたしはらっきーだったのかな?」


「ていうかあなたの好きな色オレンジじゃなかった? なんでまた緑にしたのよ」


んー? と微笑みながら、ヨウはまっすぐにハルと目を合わせる。


「だってほら、ハルの好きな色って緑でしょ?」


「~っ……//////」


それが当たり前であるかのように言う。

ハルはまっすぐに見つめるヨウに決まりが悪くなり、少しだけ目をそらした。


「もう……それにしても、私が言えた事じゃないけどあなたのプレイヤーネームも渾名なのね」


「あ、話そらした~」


「うっさいわね……で、これからどうするのよ。私あんまりゲームのことって分からないからほとんどあなた頼りなのよ」


尋ねるとヨウはにこっと笑った。


「まずはフィールドに出てみよっか。西に行ったところに『小麦色の草原』があるからそこに行ってみよう。βテストやってた人たちがいろいろ書き込んでるスレ調べて見たけど、はじめはそこが一番オススメだって」


「西、ね」


来た道をまた戻るのね。とハルはため息をついた。





ちょっとだけ補足。対等な二人ですが、ハルは基本的にヨウの手のひらの上で気付かないうちに好きにされていることが多いです。


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