現実まるにっ 華の高校入学式!
遅くなってしまいました~
続きは早くいけるように頑張りますので見放さないでいただけたら幸いです。
ハルは自分の右肩に、柔らかな重さとやさしいぬくもりを感じていた。
スースーと寝息を立てているヨウの艶のある綺麗な黒い短髪がハルの眼に入る。
今日は四月四日、私立百崎高校の入学式である。
全校生徒1200人が入るほどの、中学校のものとは比べ物にならないくらい大きな集会場。その壇上では目元のきりっとした女性の教師や、ゆるふわウェーブな茶髪の新入生代表の話が続いていた。
様式どおりの退屈なそれは、ヨウにとってはなんら聞く価値の無いものだったらしい。さきほどから座ったままハルに体を預け、眠っているのだ。
あいかわらずね。と思いながらもハルはヨウを起こすこともせず、ボーっと長い話を聞き続けていたのだ。なにぶんハルも寝不足なもので、長々と続く退屈の前にその意識は曖昧になってしまっている。
原因は分かりきっていた。
ゲームのやりすぎである。
VRゲームの一日のログイン限界時間である8時間ギリギリまで粘っていたのだ。その甲斐もあり必死に狩ったウサギの装備も完成したが、代償が現在のハルである。
ヨウに関しては小学校のときも中学校のときも、どちらも今のようにハルに寄りかかって眠っていたのだから変わらないだろう。入学式だけでなく、卒業式でも同じだった。
そんな過去を思い出しているうちハルもついぞ睡魔に負け、眠りへと落ちていった。
ちなみにハルがこういうときに寝たのははじめてのことである。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
教室に着き、指定の席に座る。
橘春花
蓼小陽
いちばん廊下側の席で、一番後ろの二つをこの順だ。
ちなみに並びは偶然ではなく名簿順である。いくら私立でも若い名簿の人が少なすぎる。
それでクラスは40人程度いるのだから、不思議なものである。
つー……
「ひあぁっ?」
ヨウに背中を指先でなぞられ、ハルは思わず声を出してしまう。
「ちょっと! 何するのよ!」
「へへ~」
やられた。今年もか。
ヨウのにっこりと満足した顔を見ながらハルは思う。
毎年度の初めにヨウは何かしらハルに対していたずらを仕掛けてくる。
今年はまだ可愛いほうだ。
小学校の入学式のときはいつの間にかハルの長い黒髪は三つ編みにされていたり、中学校の入学式のときは、新品の制服のブレザーのすそをスカートに入れられてあとですっごい恥ずかしい思いをした。
毎年というだけあって合間合間にもいろいろやられていたりするのだが省略。
ハルの背中には目がついていないのだ。
基本的にすぐには気付けずにあとで恥ずかしい思いをすることが多いのである。
「ハルは何か新しく部活やるの? 中学のときみたいに一緒に文芸部はいる?」
ワインレッドのフレームのいかにもといった委員長の女の子が委員長にしっかり選ばれた辺りで、ハルの後ろからヨウがこっそりと聞いてきた。
どうしよう、とハルは考える。
中学校の文芸部は、名前だけの部員がほとんどの実態の無い存在で、ハルはそこでいつも大好きな本を読んで過ごしていた。部室には歴代の文芸部員が放置して言った本が大量に保管されていたのだ。
もちろんヨウもハルのいる文芸部に入っていて、こちらは特に本を読んだりするということもなく、大抵は本を読むハルの膝に頭を乗せてすやすやと寝息を立てていることが多かった。
だから高校では二人は文芸部に入るかどうかは悩ましいことだったのだ。この高校の文芸部がどれぐらいのんびりできるかどうかは、二人には重要な問題なのである。
部活を選ぶのに、積極的に活動しているところではなく消極的なところを選ぶというのもなかなか珍しいことなのではないだろうか。
「一度だけ見学に行ってから考えようと思う。そうね、教室に来るまでに廊下とか見ながら来たのだけれど文芸部のポスターは一枚も貼ってなかったわ。むしろ存在するのかどうか怪しいくらいよ」
「いちおーあるにはあるらしいんだけどね~」
それぐらいのほうが、ちょうどいい。とハルは思った。
のんびり出来そうである。
「ねえ、今日の放課後から部活動って見学おっけーだよね?」
「ええ。あとで行ってみる?」
「うん。一緒にいこ」
「本くらいは沢山おいてあればいいのだけど……」
「無かったら図書館の借りてくればいいじゃん」
「図書館だとどうしても限界があるのよ。この学校の図書館は結構大きいけれど、絶版のものだったり最新刊だったりはどうしても無いことが多いのよ。その点文芸部って結構いろいろ変な人が集まるでしょ。だから昔の本から漫画とかまでいろいろ揃うのよ。名前だけの部員でもはじめの何回か位は部室に来るでしょう? そのときに本を持ってきた本がおいてあること多いのよ」
「うわぁ……すごい偏見」
「中学校だってそうだったじゃない」
「まあそうだけどさ」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
放課後、ハルとヨウは文芸部の部室へと向かった。
校舎の三階の、階段を上がってすぐにある図書館の正面。そこを走る長い廊下をずっと歩いたその先に部室はあった。
「失礼します」
寂れた扉。
それは古びた洋館にありそうな、とてもこの綺麗な学校の一部とは思えないほどにボロボロだ。
ハルは、文芸部の扉を開く。
「ようこそ、よく来てくれたね」
そこには、見知らぬ長髪の先輩らしき女性が一人と、ついぞ最近見た少女がまるで二人を待ち構えていたかのように佇んでいたのだ。
ついにハルとヨウの名前が判明
考えてなかっただけ? そんなことはナイデスヨ……
次回も現実パートです。次回は濃厚に百合百合させるぞー!




