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まるきゅうっ! ひとりのハル

今日一日で何回死に戻りしただろうか。とハルは自問自答する。

今日のハルのしたことを簡単に説明するならば、ひたすらウサギの大群に突っ込み死に戻っているというのがいちばん正しいだろう。

ならば何故ハルはこんなことをしていたのかというとである。


ヨウに追いつくためでも、ヨウがウサギの大群を倒しきったからでもない。


ヨウとの関係が明確に変わってしまった、ここがハルにとって人生のターニングポイントだったからである。後悔や、情けなさ、そしてひときわ強い覚悟を抱えて、ハルはウサギの攻撃を避け続けていた。

ハルにとっては心の整理をつけるための、戦である。


一羽一羽のウサギの攻撃は単調。けれど多数による波状攻撃は、どうしても死角からの攻撃を受けてしまう。

幾多の死に戻りを続けてきたハルは、現在避けることだけに専念していた。ウサギの数は大体30程度。それだけいたとしても、一度に攻撃してくる数は限られている。


右3、左2、前4。


位置を確認し、その突撃の軌道を予測し後ろへと振り返る。


後ろ1.


前後左右の把握をし、目を閉じる。

それぞれの攻撃の軌道に触れないように、脳内で位置と距離から自分に攻撃が届くタイミングを計って、ハルは体を動かす。

避けることに失敗して何度も体に感じた衝撃は襲ってこない。


すべてをよけきったことを確信し、再び目を開く。


右4、左2、前2。


そして再び後ろを確認し、避ける。

ただひたすらに、避け続ける。


最後の死に戻りから、かれこれハルは2時間程ウサギの攻撃を避け続けていた。


いつからだろう、かわすのがずいぶんと楽になった。ウサギの動きが、攻撃が、手に取るように分かるのだ。

手に持ったサバイバルナイフで、一羽のウサギに狙いを定め、大量のウサギの攻撃を避けながらも一撃、また一撃と加えていく。

何回サバイバルナイフを振っただろうか。狙いを定めたウサギが光の粒子へと還る。


だいじょうぶ。いける。


ハルは同じことの繰り返しで、ウサギを狩り続ける。一羽狩ってしまえばあとはやり方も同じだ。そして一羽減れば、その分ウサギの攻撃の密度は小さくなる。

数が減るに連れ、殲滅するスピードは速くなっていった。


「はぁ!」


ハルの掛け声と共に、最後の一羽が光の粒子に還る。


「はぁ、はぁ……」


集中力を使い切り、ハルはその場に膝を着いた。


「はぁ……街に帰ろう」


ドロップはウサギの革×37に、ウサギの肉×28だった。




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




街の西門の近くに戻ってきたハルは、ウインドウを開いてスキルリストを確認する。


『刃物の心得』のスキルレベルが1から3へ上がっており、『直感』というスキルに『気配察知』というスキルまで追加されていた。

ウサギの攻撃が簡単に避けられるようになったのはこれのおかげだろうか。



直感:前触れのあるなしにかかわらず、第六感に何か囁きかけることがある。ただしこのスキルは使用者により精度が変わる。


気配察知:使用者の周囲に存在する反応を感じとることが出来る。但しこのスキルは使用者により精度が変わる。



スキルが増えたのは有難いことだが、これからどうやって戦っていこうかとハルは悩む。

もともとヨウのサポートが出来ればよいと思っていたのだ。一緒にいたときも結局プレイスタイルは決めないままだった。


でも必要なことはわかっている。

一人でも戦えて、それでいていつかヨウの隣に立てるようになったとき、ヨウのサポートを出来るようになりたいから。


何度も死に戻っていた最中に一度だけ遠くに目にしたヨウの姿。全身ウサギ装備で身を覆っていて、薄ピンク色のそれはエメラルドグリーンの髪や瞳とどことなくミスマッチだった。けれど、それが今のゲームの最高装備といわれるもので。


(ヨウは私の何歩も先を行っている)


それは分かっていたことだったけれど、確かに現実としてハルの目にしっかりと刻まれた。


まだどんなことをすればいいかは分からないけど。

基礎的能力はハルはヨウに遠く及ばない。

でも、今までヨウがハルにあわせていてくれていたように、今度はハルがヨウにあわせるのだ。それが、ハルがウサギとの戦いのときに決めた覚悟。


「絶対離されてやらないんだから」


とりあえずハルはウサギ革で今作れる最高の装備を作ろうと、街の中へと歩いていった。



次回は現実パート

ハルとヨウの高校入学式です

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