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薄暗い町を、あいつと俺は歩いていく。あいつはいはば女装で、おれは茶髪の


ポニーテールのウィッグ(かつら)。


しかもそれが肩以上ある。黒色のサングラスをかけ、


水色のカッターシャツに黒のスーツ姿。こんな格好ぜったい誰にも


みせたくない。恥ずかしすぎる。


どうみても俺らって、女と男だよな……




しばらく行くとネオンがぎらぎらに光っている場所に行き着いてくる。


もう夜の街っていうのは言われなくても、はだで感じる。


「ここだよ、この『HISUKA』ってかいてある店」


けっこうその建物は大きい。姉貴がボスって、どんなやつだ?


文字は金色で思いっきり点滅している。




「青汰。念のために裏から入ったほうがいいよね。お客と間違われる


かもしれないし。姉さんにはぼくから言っとくよ。たぶん、怒らないと思うよ」


「わかった。姉貴以外にお前が男だって知ってる人いんの?」


「いないよ。いたとしても何か手段をつかって、ねじ伏せちゃう


かもね。」


笑ってるけど真剣(マジ)に言ってるのが恐い。




裏の右らへん。おれはそこでしばらく立ち尽くしていた。


裏からって言われても入りづらい。そういうふうにしていると、


俺のうしろからラベンダーの香りがほのかにただよってきた。











































「名前は青汰か?」

名前を呼ばれた瞬間、心臓がとまりそうになった。

こんな所でいきなり声をかけられ、驚くなというほうが無理だ。

「心配しなくてもいい。私はれんの姉だ。」

「曽根崎の姉さん?」

「そうだ。あいつから話はきいた。ついてこい。案内する。」

俺の想像した姉貴とは全然ちがうタイプだった。黒髪に肩ぐらいまである

ストレートヘア。切れ長めのビー玉のような瞳。もうちょっと弾けた姉を

想像していた。でも、弟をこんなほうで働かせてるんだよな…


店の客とかいる部分にはたくさんの女がいた。(当たり前だけど)俺は

隅っこぐらいに見つかんないように。幸いなぜか、だれも声をかけない。

おれは辺りをきょろきょろ見回した。(いたっ!!)30歳代後半の男の接待を

している、れん。


「いやー弥生やよいちゃんて、本当にかわいいよねー!!」

「ありがとうございます。そういうおじさまこそしぶくてかっこいいですよね。」

うわ〜。女やってる。ていうかここでは弥生だったのか。髪には優雅な蝶の飾り物。


しばらくそんなやり取りを、見ていたら客が帰り際れんにキスをした。

まあ、客はれんのこと女と思ってるしなー。俺だったらキスされた瞬間殴りたおす。


見ているこっちとしては、すごく痛い。何人目かのお客の相手をした後、れんはこっちに近づいてきた。

「青汰。ぼく、そろそろあがりなんだ。帰ろう。」

「お前、大変だな……」

「周りにばれた方が大変だと、思うよ。」

そういって少しわらった。


そのころ、お客の中に

「我が高校の1年、れん君と青汰君じゃないですか。

だめな子達ですね、こんなところにいるとは」

そうつぶやく男が一人いた。20代前半ぐらいの男だった。








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