題1話
第1話
某国首都
「たっ……助けt……ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
黒服を着た男の悲鳴が暗い路地裏に響く
「しっ………死にたくねぇ………死にたくねぇよぉぉぉぉ」
「俺の……俺の腕が………腕がァァァァァァァァ」
部下の悲鳴や呻き声が響き渡るなか、男は一人自問自答していた
「チクショウ……せっかく掴んだ組織の次期ボス候補だったのに……チクショウ……チクショウ……チクショウ!」
男はとある組織の最高幹部で、その組織の次期ボス候補の中でも最も次期ボスに近いとされている存在だった
その男の周囲には彼のボディーガード達が………否ボディーガードだった者が物言わぬ骸となっていた
「恨むんなら、俺に狙われた己自身を恨むんだな!DoLLのこの俺になぁ!」
「このッ!化け物がァァァァ!」
「死ねェェェェェェ!」
少なくなった腹心の部下達が必死に応戦している中、男は大型コンテナの影で一人呟いていた
「あれが人形計画の産物なのか………?だがあの計画は破棄された筈だ……」
ガンという音に我に返った男が辺りを見回すと、部下達もまた、物言わぬ骸の仲間入りとなっていた
「後はアンタだけだぜ?まぁそんな事はどうでも良いんだがね」
「……ッ!」
男はグロッグ17を引き抜き発砲しようとしたが、
「遅せぇよ!あくびが出るぜ」
と紙一重で躱し、忍ばせていたコンバットナイフで男の首目がけて切り付けた
「ガッ!」
と声をあげ、男は絶命した
「嗚呼、何て甘美かつ芳しい、刹那の快感……もうたまんねぇ……っと、忘れるところだった。あぶねぇ、あぶねぇ」
と男は胸のポケットから携帯電話を出すと、電話を始めた
「旦那ッスか?俺ッス、ドールッス」
「定時に此方に連絡を寄越したということは任務は成功したということだな?ドール」
「旦那は千里眼か何か持ってるんッスか?まぁその通りッスが……」
「どうした?何か任務に不備でも有ったのか?」
「いえ、ただ今回の目標が、思いの外雑魚だったのが少し残念だっただけッス。あんな腕でよく次期ボス最有力候補って言えたッスね」
「そう言ってやるな。『狂気の殺人人形』であるお前からしてみれば対した事ではないのかもしれないがな、あの男は若手の有望株としても有名だったんだ。まっ、最も最高幹部の地位に居たとしても、あの組織の中での序列はあまり高い方ではなかったらしいがね」
「あの組織の内部抗争はかなりの規模になっているって聞いたことがあるッス。それと旦那、その二つ名正直嫌いなんで言うの止めてもらえないッスか?」
「これはすまない、もう言わないと約束しよう」
「言質はとったッスよ、ところで旦那、次の依頼は何かあるッスか?」
「いや依頼はないから、取り敢えず一回戻ってこい。サマーとウォーターがな?お前がいなくて寂しいっていっていたぞ?」
「サマーとウォーターッスか……正直戻りたくないって言うのが本音なんですがねぇ………」
「まぁ、組織の連中の中でも群を抜いてお前の事を溺愛しているからな。あの二人は」
「冗談やめてほしいッス。いつか性的な意味で食われないかが心配ッス」
「そいつは御愁傷様だな」
「じゃあ電話切るッスよ」
と言い、男は電話を切った
「ハァ……アジトに帰るか」
そう言うと血塗れの衣類を替え、カバンにしまうと、人混みの中へと消えていった




