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第6話:物資探索(スカベンジ)と、届かないSOS

エコハウスに籠もって十日が過ぎた。

 精神の限界が来ていた私は、生存に必要な物資の補充という名目を作って、麓の街へスカベンジ(物資探索)に出ることにした。


オフロード仕様の電動ボードに跨り、山道を下る。

 麓の青梅市周辺も、新宿と同じく静まり返っていた。道路には主を失った車両が並び、コンビニの自動ドアは電力が尽きて半開きになったまま、夏の熱い風を店内に引き込んでいた。


私は、放置されたホームセンターに滑り込んだ。

 狙いは、より高効率な発電機や、長距離通信が可能な無線機だ。

 店内の奥にあるキャンプ用品売り場に足を踏み入れたとき、私の右手が突然、激しく反応した。


バチバチッ!

 青白いスパークが勝手に指先から弾け、周囲の棚を照らす。


「なに……? また暴走?」


違う。これは拒絶反応ではなく、何かに「共鳴」しているのだ。

 私のバグが、周囲の空間に漂う微かな「エラー」を検知している。

 私は磁石に引かれるように、家電コーナーの隅にある、山積みのラジオやトランシーバーの棚へ向かった。


そこから、一台の古いアナログ式短波ラジオが床に転がっていた。

 電池はとっくに切れているはずなのに、そのラジオのスピーカーから、ざぁ、ざぁ、という不気味なノイズが漏れ出していた。


『……ざぁ……たす……けて……だれ……か……ざざっ……』


心臓が止まるかと思った。

 人の声だ。合成音声ではない、かすれて震える、生身の人間の声。

 私は無我夢中でそのラジオを掴み、電池蓋をこじ開けた。中身は空だった。


「なんで……電池もないのに……」


その瞬間、ラジオから迸るノイズが私の脳に直接流れ込んできた。

 それは言葉ではなく、圧倒的な「絶望」の感情。

 私のバグが、実体を持たないはずの電波の死骸を、無理やり音声として再構築してしまったのだ。


『……世界が……消え……システムが……管理者……承認……を……』


声はすぐに消え、後にはただの不快な静電気が残った。

 私は震える手でラジオを抱きしめた。

 どこかに、私と同じように取り残された人間がいる。

 そして、この世界を管理していたシステムは、まだ完全に死んだわけではない。


私はこの壊れたラジオをエコハウスへ持ち帰り、少しでも広範囲の電波を拾えるようにアンテナを拡張することを決意した。

 14歳の『エラーコード』である私に、もし役割があるとするなら。

 それは、この声の主を見つけ出し、消えた100億人の行方を探り当てること以外にない。

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