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ひとりぼっち、ここどこだ

作者: 星野☆明美、chatGPT

ひとりぼっち、ここどこだ




異常を知らせるアラームは、最初はただの機械音だった。

いつも通りの、訓練でもさんざん聞かされた警告音。

だから最初の一秒は、「対処すれば済む問題」のはずだった。


次の一秒で、それが違うと知った。


船体全体が、軋んだ。

まるで巨大な獣に掴まれて、力任せに捻られたみたいに。

制御系統は立て続けに沈黙し、緊急推進は起動せず、姿勢制御は半ばで止まり、

モニターに並ぶはずの情報のほとんどが“NO DATA”に変わった。


「……嘘だろ」


思わず口をついて出た言葉は、それだけだった。

それ以上取り乱す余裕はなかった。


視界の外で、船体が火を噛む。

空気圏へ突入したのだと理解するより先に、

振動が骨に入り込み、意識を揺さぶる。


コントロール不能。

姿勢角、狂いっぱなし。

本来なら許されない角度で、大気に叩きつけられながら墜ちていく。


耐熱材が焼け焦げる匂いが、金属の匂いと混じる。

警告音がひとつ、またひとつと千切れて消えた。


「……持ってくれよ」


願いなのか、命令なのか、自分でもわからなかった。


視界が何度も白に弾け、地平線が空と地面の区別を失い、

そして――


世界が、途切れた。



目を開けた瞬間、世界が間違っていた。


生きている。

それは理解できた。

衝撃吸収系統は、最後の仕事だけは果たしてくれたらしい。


だが、問題はそこじゃない。


外、だ。


船外ハッチを開けた瞬間、

俺はただ、呆然と立ち尽くした。


空は青いはずなのに、どこか青じゃない。

地平線まで続く大地は確かに「地球」に似ているのに、

木の形も、風の匂いも、鳥の声も、どれも半音ずれている。


通信機はうんともすんとも言わない。

だが、救難信号のランプだけは、規則正しくグリーンに点滅していた。


助けを呼んでいる。

機械の論理上では、救助は「来ることになっている」。


――ただ、それを信じる材料が、世界のどこにも見当たらなかった。


周囲には緑があり、水らしきものも見える。

だがセンサーは、一貫して「不可」を突きつけ続ける。

たしかに“生きられそう”なのに、

“ここで生きろ”とは言われていない場所だった。


非常食でどうにか日数を延ばしていたが、

永遠ではない。


「どうにもこうにも、食糧が尽きる前に助けがくることを祈ろう。

じゃなきゃやってらんねえ」


自分の声がやけに生々しく響き、苦笑する。

マニュアルにも、生存ガイドにも、“祈れ”なんて書いていない。


それでも――祈らずにいられるほど、強くはなかった。


祈ったあとには、やるべきことだけが残る。

ただ「生き延びるために生きる」日々が続いた。


何日過ぎただろう。

風の音と、自分の息遣いだけが、世界のすべてになった頃。


雨も降りゃしねえ。

ただ、空だけがやたらと明るい。


顔を上げた、その瞬間だった。


太陽光の中を、

銀色の翼が飛んでいった。


一瞬、幻覚かと思った。

だが瞬きしても消えない。


「……えっ? あっ!」


胸が爆ぜた。


「ここだ! 俺はここにいるぞおおおお!!」


喉が焼けるのも構わず叫ぶ。

冷静沈着でいようとした男が、その瞬間だけ冷静じゃなかった。


銀の翼は旋回し、こちらを見つけ、

そして――舞い降りた。


ただ、それだけだ。

しかし、それだけでよかった。


世界は、こちらを見ていた。

俺は、切り捨てられていなかった。


こんなに長く待ったことなんて、

たぶん、生涯に一度きりだろう。


誰に言うでもなく呟く。

そして初めて、静かに安堵した。


この見知らぬ大地がどこだったのか。

本当に地球だったのか。

それは、最後までわからなかった。


ただひとつだけ確かなのは――

ひとりぼっちの世界は、ようやく終わったということ。


救難信号のランプは、まだ規則正しく、緑に点滅していた。


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