第三話 新たな教え
ミラ姉からの最初の教えやいかに。
ちょっと怖い。
どんな過酷な試練が!?なんて。
「良いかい、2人とも。まず強くなる上で一番大切なことを教えるよ。」
さあ来た!
筋力?
体力?
魔力?
精神力?
どれも想像つかないな?
「それは…」
ゴクリ。
「洞察力です。」
「「…はい?」」
不覚にも、カイとハモってしまった。
でも、はい?なんて声こそ出たけど、カイはしっくりきた様子。
「では、ジオくんに質問です。強くなるために必要なこととは?」
「はい、鍛えることです!」
「正解!では、鍛えるためには何をする?」
「はい、えっーと…準備?です!」
「うん、半分正解!鍛えるにしろ何にしろ、まずは前提となることが必要です。」
「その''こと''とは…?」
「生きることです。」
「はい?…はい。」
ていうか、カイはジト目になってんな。
まあ良いか。
「それでは、カイくんに聞こう。生きるためには何が必要かな?」
「は?……死なないことです。」
「大正解!」
今の沈黙の間にどれほどの思考の巡りがあったんだか。
オレには理解できん。
こんな当たり前の解答だからこそ、時間掛かったのかもな。
やっぱ頭いいな、こいつ。
「そう、鍛えるためには、当然生きてなきゃいけない。そのためには、死んではいけない。でも鍛えるという過程には、当然戦いが付きまとう。そんな時に、戦っていい相手かどうか、見極めなきゃいけない。そこで役立つのが、まさしく洞察力ってわけ!」
「おお〜〜?」
「自分に拮抗した実力で、かつ危険がない相手に戦いを挑めという事ですね。」
「おーカイ、なんだかんだノリノリじゃん。要約サンキュ。」
「オマエのためじゃない。」
「はいはい、2人とも。洞察力の鍛え方なんだけど、正直実際に経験を積むしか無いんだよね。でも、コツはあるよ。」
「相手のことを深〜く観察するんだ。よく見てね。履いてる靴とか髪の色、着けている装飾に持ってる武器。相手の表情に、服のボタンの数まで数える勢いで。そして、常に聞き耳を立てておくこと。目標の情報は、何一つ漏らしては行けない。良い?」
「一つ良いですか?そんなにジロジロ見たら逆に怪しまれません?」
オレは、まず真っ先に浮かんだ疑問をぶつける。
「ふっふっふ。その質問は対策済みさ。カウンターでの会話に私が聞き耳立ててた時、きみは少しでも私を疑ったかな?」
「あっ!確かに、気づかなかった!」
そりゃ気づかないと言えば当たり前だけど、違うんだ。自然すぎて不自然なほどに自然だったんだ。
それくらい、気づかなかった。
「そう、極めれば気づかれないうちに情報で有利に回れる。目が合った瞬間に相手のことを知り尽くすことだって出来るよ?」
な、なるほど。すごいな。
「でもね、さっきも行ったようにこれは実際に経験を積んで磨いていくものだから、当面の課題として回しておこうか。」
洞察力、か。
考えたこともなかった。
流石はミラ姉だ。
「2人とも、次からはまず相手を見たら情報収集することを意識してね。よぉーし、一つ目の教えは終わり!」
「はい!」
「はい。」
そして一つ目という含みのある言い方は、期待して良いんですか?
「じゃあ、今から二つ目の教えです!」
「キタああ!!」
やべ、めっちゃ声に出た。
「ジオ、ほどほどにしとけよー?」
カイめ、ニヤけながら煽りやがって。
「んだとカイ?なんで僕が〜とか言って結局縮こまって授業に参加してるおまえの方が面白いぜ?」
「ふーん、やる気なんだな。ジオ。」
「はいはい、ストップ。2人とも、落ち着いて。」
うっ、やり過ぎた。
学習しねぇな、オレも。
「「……すみません。」」
ここでハモったことにムカついたら二の舞だ。
「よろしい。では、二つ目の教えについてです。二つ目は…」
来た。なんだ?
「魔力、についてです。」
おお、めっちゃ王道だ!
遂に魔法を!?
「ご存知の通りだと思う。魔力は何処にでも存在するんだ。とは言っても、物質とは根本的に違う。」
「はい、目に見えないし、重さが無いです!」
「そうだね、ジオくん。イメージで言うと、光子の方が近いね。」
確かに、光だって目に見えないし、重くない。
でも、そんな物を扱えるようになるなんて、やっぱりロマンがある。
「だからまずは、魔力を感知するところから始めようか。魔力の本質を理解するのは、そこからだね。」
いよいよ、だな。
独学でも魔力については何にも分からなかったもんな。
「魔力は"意志の力"とも深く繋がってる。強く意識すると、魔力は顔を出してくれる。まあ、それだけが目覚める方法ってわけでもないけど。最初は外部よりも、体の中に有る魔力について感知してみよう。生物には必ず、"魔力の器"があるんだ。大小は人それぞれだし、中には穴がある人もいる。幼い頃から矯正してくればある程度は修復できるけど、きみたちは17歳だし、これができるかは賭けだったんだけど…」
「いいね、2人とも。ジオくんは魔力こそ感知できなかったと言うけど、立派な器が出来てるよ。物は試しで色々鍛えてたのが良かったのかな?カイくんは…凄いね。これは多分元からの才能型だね。巨大な器だ。」
カイに負けた…?
いやいや、オレにだって立派な器が出来てるよって言ってたし…まだ負けてない。はず。
「感知の方法についてだよ。五感とは違う、第六感を使うんだ。魔力専用の感知器官みたいなものだね。2人とも才能には溢れてるから、ちょっと鍛えればすぐだと思うよ。」
マジか!この時が来た!もう5年以上は魔法に恋焦がれてたんだ。
何がなんでも習得してやる。
――――――――――――
ちょっとなんて言葉を信用したオレが馬鹿だった。
「うあああぁぁぁぁあぁ!!!」
崖から落ちてる!死ぬ!
あ、もう目の前に地面が…
「はいストップ。またダメだったね。もう一回行こうか。」
「…分かった、ミラ姉。」
57回目のダイブ。
死を間近に感じると第六感が開花するらしい。
それで連れてこられたのが、342mあると言う崖。
こんな高い崖あんのかよ。なんでだよ。
カイは4回目くらいで開花してたのに。
ミラ姉曰く、オレは成長性は異次元だけど、習得するのが苦手なタイプなんだと言う。
今から58回目。
「うおおああぁぁぁあ!!」
くそっ、どうしたら開花する?
見えない、聞こえない、匂いはない、味もしない、触れられない、そんなものをどうやって!?
「感知しろ感知しろ感知しろ感知…」
地面が目の前だ。
感じろ、感じろ。
体の奥底で燻ってんだろ!?
「おっと、危ない危ない。キャッチしました。」
くっそ、また無理だった。
そんなに習得が苦手なタイプだなんて思いもしなかった。適当な今までの独学では何にも出来なかったのも納得だ。
だあもう、もう一回だもう一回!
そっからさらに沼った。
「うおおお!!」
「はいキャッチ。」
「ぐあああああ!」
「おっ、危ない。」
「せやあぁぁぁぁぁ!!」
「ほいキャッチ。」
「うがぁぁぁぁぁああああ!!」
ドゴオオォォォン!!!
「やば受け止め損ねた。えーっと回復回復…」
あ…これが三途の川か…。
――――――――――――
目覚めると、街に戻っていた。
これは…宿の中か。
今日も失敗だ。
なんだかんだで1ヶ月。
危ないから、と1日のダイブ回数を3回に制限されなければ、もっと行ったんだけどなあ。
でも、1ヶ月で進展もあった。
存在が有るんだろうなとは分かったんだ。
でも、それだけ。
確かに有る。でも感じない。今はそんな状態。
カイはもう一段階上の、魔力操作に移行していた。
負けられねぇーなぁ!
と思っていたら、見かねたらしいカイが来た。
「なあジオ、見ていて痛々しいぞ。考えるってことが頭にないのか?」
「う…カイ。永遠に続く気がするぞ、これ。」
「だから、考えろって。」
「何を?」
「だぁーもう。これだから脳筋は。…燻ってるのは具体的に体のどこか、とか、他の五感との違いはなんだ、とか、色々あるだろ…。」
「考える、ねぇ…。」
カイがちょっと照れてたのには気づかなかった。
…閃いた。
次は行ける。
イメージを固めて、明日に備えて寝るんだ。
適切な休養が一番早く強くなれるってことも、教わったんだ。
――――――――――――
63回目。
もうこの景色も見たくない。
終わりにしてやる。
「フゥー…」
集中するんだ。
余計な思考は捨てろ。
今この、自分の体だけのことに。
凄まじい風の音のなか、オレは重力に引き寄せられ始めた。
330m。
ここで決めるんだ。
もう、無駄にはしない。
217m。
カイのアドバイスだって素直に聞いてやるさ。
考えろ。五感との違い。
152m。
ここで気づいた。
いつもと違ってかなり冷静だ。
"慣れ"ってやつだ。いける。
94m。
最初から、答えはここにあった。
燻ってんのは…脳みそだ。
49m。
思考が加速するのが感じられる。
オレがオレじゃないみたいだ。
第六感ってのが分かった。
28m。
あとは簡単だ。
見えなくても、聞こえなくても、匂いがなくても、味がなくても、触れられなくても、確かにそこにあった。
直感と結びつく。その場から感じられる、不思議な存在。
15m。
理解した。
これが、魔力。
オレにとってのそれのイメージは、紫で、蒼みがかっている。光る玉みたいだ。第六感が訴える。使い方というものを。
7m。
体の中に、器を感じる。この魔力という新しい力を、確かに物にする器。初期装備のようにそこに蓄えられていた魔力を行使する。心臓の位置だ。塊を作って、エネルギーとする。それを、地面に向ける。もう、準備は万端だ。
「…へぇ、やるじゃん、ジオくん!」
そんな声が聞こえた。
0m。
有るはずだったミラ姉の支えはなく、無いはずだった着地に成功している。
…。
成功…したのか?
ま、魔力は!?
───感じる。体だけじゃ無い。空気にだって微妙に魔力がある。
てことは…!
「うおっしゃああああ!!!」
魔力、物にしたぞ!このヤロー!!
「おめでとう、ジオくん。流石と言うべき成長性だね。感知だけじゃなくて操作もやってのけるなんて。」
…ヒェッ。
なんだよ…これ。
感知で見ると…やばい。
ミラ姉はバケモンだ。
例えが思いつかない。
多分、顔は青ざめてると思う。
体もガチガチに固まって…
「ん?おーい、だいじょぶ?調子悪い?…!ああ、ごめん、出しっぱにしてた。」
…消えた。
あんなバカでけぇ魔力が、一瞬で。
緊張が一気に解けた。
ミラ姉は、なにも変わらず、そこにいる。
人ってここまでなるんだな…
「なんだよー、そんなに怯えることはないっての。いずれジオくんもこうなるんだからさ。」
こうなることが約束されてしまった。
どうなるんだ、オレ。
「ていうか、それよりも。操作まで出来るようになるなんて、凄いじゃん!」
「え、操作?」
「うん、感知の上の段階。魔力を扱う段階なんだけど、あの一瞬でもうここまで成長したか。やっぱり才能あるよ、ジオくんは。」
「あ、ほんとですか?そうですか…」
ミラ姉が衝撃すぎて、なんか大して喜べなかったな。
まだ放心気味だ。
「…ああ、くそ。おいジオ、操作のやり方を教えろ。」
カイの声で、一気に戻った。
「…あ、ああ。カイ、なんだよ?」
「くそ、こんなこと2度言わせんなよ。操作のやり方を教えろ。」
本来ならカイに勝ったって喜ぶべきだろうが、今のオレはもはや不動心だ。
「あ、マジ?おまえできないの?」
「恥を忍んでんだ。アドバイスしてやっただろ。早くしろ。」
「はは、そうだな、おまえも結局は夢中だな。」
習得こそできるけど、成長しづらいカイ。
習得こそしづらいけど、成長しやすいオレ。
どっちが先に頂に登るか、勝負だな。
まあ、向こうは乗り気じゃ無いかもしれないけど。
また、成長したな。
すみません、書き溜めさせてください!
ちょっと消えます…




