モンシロデパート
2人が撮った2ショット写真はミミィのスマホで撮ったのでず。ミミィはスマホで撮った写真をケンタに送りました。ケンタはスマホを開きます。
「ケンちゃん、そういえば不思議だよね。どうして私と旅に出ようと思ったの?」
「どうしてって仲間が欲しかったからさ。だって1人だと寂しいじゃん。そもそも旅をするきっかけになったのは自分探しの旅に出たかったんだよ。僕は将来世界中を旅する旅人になりたくて。」
「随分大きな夢ね。でもケンちゃんならその夢を叶えそうだなぁって思う。だって今も夢に向かって輝こうって頑張っているもんね。結構挫折する人も多いんだって。私の夢は、色々な街で美味しいご飯を食べ歩きしたい。」
「このサルチッチャ美味しいね。肉汁が良い味を出しているよ。口の中でとろけるような感覚。凄くジューシーだよ。」
「ケンちゃん、何をそんなにグルメレポーターみたいな事言ってんの?私のトンネルロールは甘くて舌の中で糖分が分解されてキウイと混ざり合いめちゃくちゃ甘いスイーツな味になったわよ。」
「まるで口の中でデザートが踊ってるみたいだね。」
「そうそう、そんな感じ! あー、もう一個食べたいなあ……でも太っちゃうかも……」
「大丈夫だよ、ミミィは何食べても可愛いから。」
「ちょ、ケンちゃん、今さらっと何言ったの? ……もう、ほんとに。」
「「うーんうまい〜」」
2人は息を揃えて言います。お金を払ってミニィとケンタはお店を出ました。
ミミィとケンタの2人はモンシロプルースを出ると街の中心街の方へと歩いて行きます。辺りには高層ビルとモンシロストリートにはモンシロデパートがあります。でもケンタはモンシロデパートに用がある訳ではありません。何故ならデパートは高いから色々とお金に困るのです。
ミミィはケンタに言い始めました。
「私、モンシロデパートによりたいなって思っているんだ。ケンちゃんも付き合って。」
「うん、まあ良いけど。」
そっけない感じの返事にミミィはムッとした表情でケンタを見つめて来ました。そして怒った言い方でケンタに言います。白うさぎの顔が真っ赤になっています。
「なんでそんなにそっけない言い方なの? 良いよ、一緒に行こうって言えば良いじゃん。いっつもそうだよね、ケンちゃん、素っ気無いような言い方で。」
「ごめんってば。照れてるだけなんだよ、ほんとは。別にそんな事は無いよ。むしろ白うさぎの女の子と2人で行けるなんてこんなに嬉しい事は無いんじゃないかってね。」
「……ほんとに? もう、変なとこで照れなくていいのに。」
そう言うとケンタとミミィはデパートの中に入って洋服売り場を見て回ります。上着やスカート、女の子が着るようなおしゃれな洋服が売っています。ミミィはるんるんと歌いながら可愛い犬のキャラクターが印刷された洋服を試着するのでした。
「ねえ、これ似合うかな、でもあんまりだったらだけど、ケンタ見て、このワンピースもおしゃれで良いかなって思うんだ。これ買うね。」
「うわぁ、見違えたよ。ミミィめちゃくちゃ似合っている。とても良いよ。」
「ほんとに? 嬉しい……えへへ。ケンちゃんが褒めてくれるとなんか自信出ちゃうな。」
その言葉に喜んだのか、ミミィは更に嬉しそうにしてレジに持っていくのです。ミミィの家はお金持ちだからお母さんが沢山お小遣いを出してくれるのです。ミミィは電子マネーであっという間に買い物をしました。2人が歩いているとケンタやミミィよりも小さいリスの女の子が2人に近づいて来ました。
「お姉ちゃん、お兄ちゃん、もしかしてお姉ちゃん達って恋人さん達?」
「いや、違うわよ。ただの友達.一緒にお出かけしているの。」
「えー、でもお兄ちゃん、お姉ちゃんのことずっと見てたよ?」
「ちょっとショコラ、辞めなさい。ごめんなさいね。いきなりうちの子が。」
「だってお姉ちゃんが着ている洋服や耳につけているリボンがとっても可愛いから。お姉ちゃん、これあげる。」
「えっ……これ、私に? いいの? ありがとう、ショコラちゃん。すっごく可愛いね。」
「似合うと思ったんだ〜。バイバイ!!」
真っ直ぐに手を振ってショコラとお別れをしました。ミミィはショコラにずっと手を振り続けていました。
その頃ショコラと別れたショコラの母親は駐車場にやって来ました。そしてショコラを乗せて車に乗りました。
「シートベルト閉めてね。ねえ、ショコラ、ママもう疲れちゃった。ショコラ全然言うこと聞かないし、ママのわがままばっかり、ショコラ、私もう限界なの。」
「ママ、どうしちゃったの??? ねえ、ママ??? ねえ、どこか痛いの? それとも、お腹すいたの? ママ、私、ちゃんと言うこと聞くから……」
ショコラは心配そうに見つめます。するとショコラの母親は紙バックから液体を取り出しました。そして自分とショコラにかけ始めたのです。そしてポケットからライターを取り出すと目を光らせてこう言いました。
「ショコラ、私と一緒に燃えよう。」
「やだ……やだよママ、やめて!! ママ、そんなのだめっ!! ママ!! お願い、やめてぇえぇえっ!!!」
火を付けた次の瞬間、ドカーンと車が凄まじい爆発をしたのでした。車の後部座席は吹き飛び辺り一面に火が燃え広がります。
その音に気が付いたミミィとケンタも異変に気がつきました。
「なんだよ、、今の音、爆発か?」
「爆発って……嘘でしょ! な、なにあれ!? 火が……車が燃えてる……!!」
『緊急事態発生、緊急事態発生、ただいまモンシロデパートの駐車場にて車が一台爆発しました。直ちに避難して下さい。』
「でも駐車場って事は関係ないわよね。……だよね、ケンちゃん?」
「う、うん、でも……こんな大きな爆発、ただの事故とは思えない……!」
緊急アナウンスにびっくりしたケンタとミミィはエレベーターから外に出ようとするが既に人混みが酷く避難するには時間がかかってしまいました。
「こっちだ、ミミィ、手を離さないで!」
「うんっ、こわい……こんなのおかしいよ……っ!」
なんとか避難して外へと出れました。しかしこの後、ケンタとミニィは知る事になるのです。
避難した公園でミミィはスマホでニュースを調べました。
誰が爆発に巻き込まれたのか、そしてニュースを読んで知る事になるのです。そのニュースを読んだミミィの手が震え始めました。
「ど、どうしたの? ミミィ?ミミィ?おい、ミミィ!」
「ケンちゃん……さっき爆発に巻き込まれて親子2人が亡くなったって……その女の子の名前、ショコラちゃんって……」
「そんな……嘘だろ……? あの……さっきの……リボンをくれた、あの子が……?」
「ケンちゃん、私……もう無理、耐えられない。だってあんな小さい子が、そんな……そんなの嘘よ。絶対嘘だよ……!」
ショコラから貰ったリボンを見つめてミミィの目から一気に悲しみが押し寄せて来ます。そして目からは大粒の涙が流れ出て来ました。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「ミミィ……しっかりして……! 大丈夫、僕がいるよ……!」
泣き叫ぶミミィをケンタは抱きしめていたのです。
ケンタは、嗚咽の止まらないミミィを、ただ黙って抱きしめていました。強く、けれど優しく。彼女の震える肩が、ケンタの胸元に沈み込む。
「……ごめんね……ミミィ……」
ケンタはかすれた声でつぶやきました。自分には何もできなかった。あんなに優しく微笑んでいた小さな命が、わずか数分のうちにこの世から消え去ってしまったことに、言葉も見つからない。
「ショコラちゃん……なんで……どうして……あんなに優しくて……リボンまでくれて……!」
ミミィはリボンを握りしめたまま、地面に膝をつき、泣き続けます。そのリボンは、あの小さな女の子の笑顔の残り香のように、まだ温かく感じられました。
「ねえ、ケンちゃん……」
「……うん、なに?」
「ねえ、私たち……生きてるって、当たり前じゃないんだね。こうして旅して、笑って、食べて……それがどれほど奇跡なのか、今になってわかった気がする。」
「……そうだね……ほんとに、そう思うよ。だからこそ、俺たちは――ちゃんと生きなきゃいけない。ショコラちゃんの分まで。」
「……うん。……うん……!」
ミミィは頷くと、ケンタの手をぎゅっと握り返しました。涙はまだ止まらなかったけれど、彼女の瞳には、ささやかな決意の光が宿り始めていました。
「ケンちゃん、約束しよう。私たち……絶対に、後悔しない旅をしよう。誰かのために、何かを残せるような旅に。」
「……ああ、約束だ。俺たちは、絶対に忘れない。ショコラちゃんのことも……今日という日のことも。」
そのとき、どこからともなく風が吹いた。優しく、木々の間をすり抜ける春風。まるで、ショコラの小さな魂が、ふたりのまわりを舞っているかのように。
「ありがとう、ショコラちゃん。あなたの優しさ、ちゃんと受け取ったよ……」
ミニィはそっとリボンを髪につけました。鏡も見ずに、ただ静かに、胸を張って。
その後、ふたりは静かに立ち上がり、公園を後にしました。
泣いて、叫んで、想いを知ったその先に、ふたりの旅は――ほんの少しだけ、大人になって、続いていくのです。