カブト幼稚園とデージーの正義
犬のケンタと白うさぎのミミィは語り部としてクワガタ幼稚園の悲劇を伝えていたのです。こんな悲劇が2度と起こらないようにと紙芝居を通して語り終わった時にカブト幼稚園では拍手が起こりました。園内の共同スペースに集められた園児達や先生達が拍手をしていたのです。
「火事が起こったら真っ先に口を塞ぎ、避難を行う事です。皆んなも自分の命は自分で守らなければダメよ。」
女性のネコのカルターン先生が言いました。カルターン先生が言うと園児達は質問します。
「どこに逃げれば良いの?」
「園庭?」
「先生達の指示に従って、口元をしっかりと覆って煙を吸わないようにする事、そして、非常口から皆んな逃げるように。」
ケンタとミミィはじっくり話し合っていました。
「何がなんでもこの幼稚園で火事が起こるのだけは避けないようにしないと。」
「でもどうやって?いつどこで誰がどのタイミングで起こすか分からなのにケンちぃはそれが分かるの?探すの?
怪しいガソリンを持ってそうな奴を?」
「ああ、そうするしかなさそうだ、あれ、
なんだ。僕達は何の為に、ここに。」
「ケンちゃん、何言っているのよ。火事を、教訓として伝える為、あれ火事って何かしら。」
頭がぼっーとしていきます。ケンタもミミィも火事に対する防災の意識のことも何もかもが記憶から消え掛かっていくのです。そんな中カブト幼稚園の窓から1人の少女が振り子を揺らしていました。デイジーです。
「ねえ、マリンはミミィが大切だって思う場所を消したかった。その思いをあたしが受け継いであげるんだから、あんた達には邪魔させるわけにはいかないの。
大人しくそこで見ている事ね。」
暫くするとケンタとミミミィは我に帰りました。園児達が近づいて来ます。子供達はケンタとミミィと遊ぼうとしています。ケンタに話しかけるのはレッサーパンダの女の子のリーナです。
「ねえねえ、ケンタお兄ちゃん遊ぼうよ。一緒におままごとしよう。ケンタお兄ちゃんは、お父さん役でそこのミニィお姉ちゃんは、お母さん役だね。」
「良いよ、じゃあ僕がお父さん役になってあげるけど、ミミィがお母さんっていうのはなんか恥ずかしいな。」
「良いよ、私がお母さん役になってあげる。じゃあ私が今日はカレーライスを作ってあげるね。良い子の皆んなは机で待っていてね。」
「「はーい」」
子供達は一斉に返事をします。するとネコの女の子のラナがミミィをくすぐり出しました。ラナは楽しそうに笑っています。ミミィも楽しそうに笑いながら、くすぐり返しています。しかしケンタはこの光景に違和感を覚えています。
(何だ、何なんだよ、この違和感、前にも似たような光景が、さっきまではっきり頭で覚えていたような、)
レッサーパンダのリーナが言います。
「ケンタお兄ちゃんとミミィお姉ちゃんは、将来結婚するの?私がケンタお兄ちゃんのお嫁さんになりたいよ。」
「お、リーナちゃんは良い夢を持っているね。僕も大きくなったら考えてあげるよ。」
時間が経つとお昼寝の時間がやって来ます。園児達がすやすやと眠っている様子を見ています。ケンタとミミィはすやすやと眠る園児を見ています。そんな2人に背後から近付いてくるものがいたのです。ケンタとミミィは口元を塞がれてその場に倒れました。デイジーはケンタとミミィを縛り上げると外まで運び出しました。それだけじゃありません。その時間に幼稚園にいた園長も先生も全員がその場で眠ってしまっていたのです。
「うふふ、ねえ、ミミィ、あの時、あそこまで痛ぶってやったけど、やっぱり足らなかったね。じゃあ、そこで見てなさい。あんたが出会った子供達が焼けてしまう瞬間を、あはははは。」
そう言うとデイジーはスイッチを押しました。すると上から液体が散布されて言ったのです。そしてその液体に火が付けられました。次の瞬間カブト幼稚園は大爆発を起こして一瞬で火の海になりました。カブト幼稚園に仕掛けられたガソリンに引火して大爆発が起きて幼稚園で火災が発生したのです。その日の夜ケンタとミミィは目を覚ましました。目を覚ました時には2人は木に縛られて身動きが取れない状態でした。そして目の前には火事で激しく燃焼するカブト幼稚園が眼下に写っていたのです。
「そんな、、嘘だろ、おい、皆んなは、カブト幼稚園の園児達はどうしたんだよ!!!!!
おい、皆んな!!!皆んな、避難しているよな!!」
「そんな嘘よ、、どうして、これじゃ一緒じゃない!!クワガタ幼稚園と一緒じゃない?園内の皆んなは無事なの?ねえ!!!」
ミミィとケンタは幼稚園に向かって走っていきます。だが、幼稚園の中から何人もの遺体が運びここまれていく様子を見ました。消防が消火活動を行っていますが、火の手が早く幼稚園の火を消す事は出来ません。ミミィは思い出しました。前の街のクワガタ幼稚園でも起きた悲劇を。そして悲劇は現実のものとなりました。園児55人が命を落としました。園児達の遺体は焼け焦げて、原型を留めないほどになっていました。リーナとラナ、エレナ、ルーナは腕も曲がってしまい黒焦げになってしまった遺体で発見されたのです。中にいた幼稚園の先生も焼死体で発見されました。
その遺体の数々を見たミミィは激しく嗚咽しました。
「酷いよ、こんなのあんまりだよ。
まださっきまであんなに笑っていた子供達だったのに、何で死ななくちゃいけないのよ!うわぁぁぁ!!!!」
(ちくしょう、まただ守れなかった。でも何故だ。僕達はクワガタ幼稚園で起きた悲劇を知っていた。それを先生に伝えたはずだ。火事が起きた時の避難の様子も全てを先生達は知っていた。でも、何故、避難できなかった?)
そして火事を起こしたデイジーはうすらと笑っていました。
「これが正義なんだよ。命が奪われていく世の中こそ、私の中の正義なんだから、ミミィ、いずれはあんたが、本物の殺害者になる時がやってくるんだから。」
翌日、ミミィとケンタはカブト幼稚園を訪れました。カブト幼稚園は全焼していました。そして信じ難い光景を目にしたのです。リーナの母親はリーナの黒焦げになった遺体を抱き抱えて歩いていました。リーナの遺体は小さくなり下半身は亡くなってしまっていたのです。母親はミミィに気がつくとミミィの方まで来ました。
「ねえ、うちの子、こんな姿になっちゃってどうしてくれんのよ!あんたさ、幼稚園にいたんでしょう。なんであんた達だけ助かって、私の娘が死ななきゃいけないのよ、何よ。語り部って、誰も助けられてないじゃない!!
返してよ!リーナを返してよ!!!!!!!うわぁぁぁぁ!!!!
リーナまで、もう私3人も娘死んじゃったのよ!!!あんたが、あんたが火つけたんでしょ!!!」
「違う!!ミミィは犯人じゃない!
ミミィをそんな風に言うな!!
あんたは取り乱してミミィにぶつけてるだけだ。
良い加減に現実を見ろよ。子供を守れなかったのはあんたの責任だ。親なんだから当然だろ!!」
ケンタは冷酷にリーナの母親に言うのでした。




