白いうさぎ
小さい頃に好きだったのは白うさぎの女の子でした。
小さい頃から、いつも一緒に遊んでいました。雨の日も、風の日も。近所に住んでいて、いつも小さなお菓子の袋を抱えて笑っていた、優しくて、おしゃべり好きな女の子。それが――白いうさぎのミミィです。
「おはよう、ミミィ。今日も早いね。
あのね……ぼく、楽しみすぎて、全然眠れなかったんだ。」
「ふふっ、ケンタ、眠れなかったの?
かわいいなあ。わたしはね、夜、パパとママにたくさんぎゅーってしてもらったの。
絶対に、他の街でかわいいお人形さんを買って、お土産に持って帰るんだから。
だから……一緒にがんばろうね?」
「うん……うん!ミミィがいてくれるなら、きっと大丈夫。
つらいことがあっても、一緒に乗り越えられると思うんだ。」
「ありがとう、ケンタ……。ほんとに頼りになるなあ。
わたし、ちょっと泣き虫だから……ケンタがいてくれると、本当に心強いの。」
そう言いながら、ミミィはケンタの手をやさしく取りました。
ふたりはしっかりと手を握り合い、まっすぐ前を向いて歩き始めました。
旅の始まりの朝。澄んだ空気の中で、ふたりの気持ちがひとつになった瞬間でした。
やがて、ミミィがくるりとケンタの方を向いて言いました。
「ねえケンタ、歩きながらでいいから、ケンタの好きな食べ物とか、趣味とか、教えてくれない?」
「うん。えっとね……好きな食べ物はカレーライスとおにぎり、それからサンドウィッチも好き。ラーメンもよく食べるよ。
あ、あとね、甘いクッキーも好きなんだ。」
「わあ、たくさんあるんだね!
わたしはね、スパゲティとおにぎり、それからうどんも好き。
お菓子ももちろん好きだよ。特にいちごのショートケーキがいちばん好きかな。」
「スパゲティにおにぎり……和食も洋食もどっちも好きなんだね。
うどんとお菓子も、うん、やっぱり女の子らしいなあ。」
「えへへ、ありがとう。
でもケンタの好みも、なんだか元気が出そうでいいなあ。冒険にはぴったりって感じ!」
ふたりは小さく笑い合いました。そして、歩きながら持ち物を確認しはじめます。
「そうだケンタ、ウォッチフォン出して。連絡先、交換しておこう?
もし途中ではぐれちゃったら、すぐに連絡できるようにしておかないとね。」
「うん、そうだね。えっと……電源を押して……このボタンかな?」
ケンタが小さな指でボタンを押すと、画面にアプリのアイコンが浮かび上がりました。
「そうそう、それそれ。その中の連絡帳アプリをタッチして……うん、出てきた。
これがわたしのQRコード。読み取ってね。」
「うん、わかった。えいっ……うん、できた!
あ、ミミィのアドレス、ちゃんと登録されたよ!」
「よーし、これで準備万端だね。
どこへ行っても、ちゃんとつながっていられるよ。」
ふたりの画面に登録された連絡先が、やさしく光りました。