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マッチングアプリ

 「若気の至りって、お前まだ20にもなってないだろ……」

 

 頬杖を突き、呆れたような声でそう話す彼は友達であり、最近彼女ができて若干調子に乗っている澤田亮輔(さわだりょうすけ)だ。

 俺の名前は河崎七瀬(かわさきななせ)、札幌の保育専門学校に通っている専学2年生で放課後、俺は亮輔と一緒に過去の恋愛について話していた。


 「うるせぇなあ、後悔しかねぇんだよこっちはよぉ……」

 「それだったらお前もマッチングアプリ入れて新しい人探せばいいだろ? お前なら絶対すぐに彼女できるって! 俺にでもできたんだからさ?」

 

 「いや、確かに彼女は欲しいけどさぁ……」

 

 先日、亮輔に彼女が出来た。

 出会いは話に出て来た通りマッチングアプリで、亮輔は一年生の頃から彼女が欲しいと言っていたが学園内だと出会いはあるが攻略が難しいという独自の結論に至り、試しにマッチングアプリを入れてみたところ大ヒットしたという。


 俺も確かに彼女は欲しいが、マッチングアプリというと少し抵抗がある。

 マッチングアプリというと、今の風潮的にも否定的な部分もあるし、何よりもヤリモクという体の関係だけを求めて迫ってくる人もいるという。

 男性からしたらヤリモクの女性とマッチングすると嬉しいというか、むしろ好都合かもしれないが、中には性病を移す目的で行なっている女性もいるという噂を耳にしたことがある。

 今年で20になりマッチングアプリは登録できるし、誕生日を迎えればお酒も飲めるようになる。

 酔った勢いで体を交え、そのまま変な事に巻き込まれたりする可能性だってあるしその他にも弊害はたくさんある。

 だから俺は、マッチングアプリに対してあまり乗り気では無いのだ。


 「だろ? 後悔はさせねぇ、何なら入れて後悔したと思ったら慰めとして飯奢ってやるからさ?」

 「は? もうそれどういう理論だよ……」

 

 俺が断り続けるも、亮輔はどうしても俺にアプリを入れて欲しいらしく折れる気配は無い。

 結局俺の方が先に折れて、面倒だがアプリを入れる事にした。


 「もう分かったから、面倒だなぁ……」

 「マジか、ありがとう! じゃあこの招待コードってやつを打ち込んでくれ、一ヶ月分の月額費がタダになるんだ!」

 

 最初からこれが目的だったのか……

 俺は心の中で呆れながらも亮輔の指示に従った。

 

 そして全ての設定が終わり、亮輔が言う月額費も免除されて俺はマッチングアプリデビューをした。

 アプリ名は『アイブル』といい、最新のAI技術を用いて設定した趣味などから相性率100%の相手を見つけてくれると言うもの。

 最近できたばかりのアプリらしいがその実績は凄いらしく、ダウンロード開始から1ヶ月でおよそ500組のカップル成立を達成したそうだ。

 そして現在、キャンペーンによりまだアイブルを入れたことが無い人を招待してコードを入力してもらうと、一ヶ月分の月額費が二人とも無料になるという。

 それを利用したいがために、亮輔は俺に迫って来たのか。


 「いや助かった、後払い設定にしてたんだが今月厳しくてさ」

 「金なら貸してやったのに」

 

 「母さんから人に金を借りたり貸したりするのはトラブルの元になるからって強く言われててさ」

 「人にアプリ入れるように迫るくせして、そういうとこには厳しいのかよ……」

 

 俺は亮輔の呆れた態度に苦笑した。

 

 アプリの設定に関しては亮輔に教えてもらいながら設定をし、初期設定はすべて完了した。

 あとは自分で「マッチング」という機能を使い、相手の女性を探すか相手からのマッチングを待つだけで良いそうだ。

 ここ一年は女性に対して興味も湧かなかったし、そもそもバイトで明け暮れていたからそんな暇すらなかった。

 金もだいぶ溜まったし、今年は羽目を外してみるのも良いのかもしれない。 

 

 「これで終わりだ。それじゃあ、俺は彼女と予定があるから。今日は本当に助かった、ありがとう」

 「何も気にすんな、じゃあな」


 校舎を出て、俺は劣等感を感じながらも亮輔とは逆の道へ歩き始めた。

 あいつに彼女が居るのは妬ましいが、周りをしっかりと見てるし意外と頼りになるから憎めないんだよな。

 とりあえず今日は好きなラノベの発売日だし、好きなものを買って鬱憤を晴らすとするか。

 

 ラノベを特典付きで買うため、俺は近くにある書店を通り過ぎてアニメショップが詰まったビルへと向かった。


 〜〜〜


 「今日の成果はこんなものか」


 俺はベッドに今日ショップで買ってきたものを並べて、悠々と眺めていた。

 最近、趣味にお金を使っている時が一番生を実感できると気づいたのだ。

 まあでも、欲しいもの全てにお金を使っていてはいくら貯金があるからと言ってもすぐに無くなってしまう。 

 なので、ひと月に趣味に使える金額は1万円と決めている。

 スケールフィギュアが欲しいのならば3~4カ月分の小遣いを貯めて買うし、予約締め切りが近いのならば前借りして買う。

 そんな風にメリハリはちゃんとしているつもりだ。


 時刻は5時過ぎ、流石にお腹が空き始める頃で今日は少し豪勢な物が食べたいと思った。

 そして俺はデリバリーアプリの『デリカ』というアプリを使い、ミートスパを注文した。

 いつもは自炊しているが、今日はなんだか疲れて自炊する気にならない。

 

 俺はテレビを点け、北海道のニュース番組を見始めた。

 番組ではちょうどこの番組の名物である『奥様お絵描きですわ!』がやっていた。

 このコーナーでは日替わりで出て来るゲストの芸能人が絵を描き、それを抽選で当たった奥様が何を描いているのか当て、見事正解すれば最大5万円分のギフトカードが貰えるというコーナー。

 30秒間で何度も答えることができ、難易度はギフトカードの値段によって変化する。

  

 今日の値段は3万円、難しぎずかと言って簡単でもない難易度だ。

 俺はそのコーナーを横目に見ながら、SNSアプリTwllterを見ていた。

 タイムラインが随時更新され、アニメ制作の監督や原作者、ラノベ作家など俺のフォローしている人の投稿が流れて来る。

 

 投稿を見て、新作アニメの放送時期やラノベの発売日などの情報を入手する。

 ラノベに関しては文庫の専用ホームページを見たりする時もあるが、大体が作家本人の告知によるもの。

 その告知を見るためにTwllterを入れて、本人のアカウントをフォロー、そして通知をONにすることで新刊の情報を知る事が出来るというわけだ。

 

 スマホの画面をスクロールし、投稿された記事などを流し見していく。

 興味があるものがあれば途中で止め、詳しく読み気にならない物があればスルー。

 それの繰り返しをしていると気付かないうちにもの凄い時間が経っていたりする。

 しかし今日は、時間が経過する前にTwllterをやめることができた、というかやめた。

 

 やめる事になった要因は亮輔に勧められ入れたマッチングアプリ。

 先ほどからこのアプリの通知がうるさくて仕方がない。

 何も通知設定をOFFにすれば良いだけの話なのだが、面倒臭くてやっていない。

 それに一度アプリ自体を消そうとしたのだが、せっかく会員費が無料になっているのに使わないで消すのはもったいないなと思い消すに消せなかった。

 

 「だぁもう、うるさいなもう」

 

 俺は若干イライラしながらもアプリを開いてみた。

 ピンクや青色などで目立ちやすい色で配色されたホーム画面。

 中央にはでかでかと「マッチング」と書かれており、右上にはアプリ設定、左上にはメールという区切りになっていた。 

 そして左上のメールという部分が4となっていて、押してみると4人からメッセージが届いていた。

 

 どれも似たような内容の挨拶で俺はどうしたら良いのか分からず亮輔の言っていたことを思い出した。

 

 「とりあえず相手からメッセージ来たら挨拶して相手から全然返信来なかったら趣味とか聞いとけ!」


 俺は亮輔の言っていた通りに「こんにちは、今はこんばんはですかね」とメッセージを送った。

 すると「相手からメッセージが届きました」という通知が俺のスマホに届いた。

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