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オサキ怪異相談所  作者: てくす
2/4

第二話 揺れる心

男女比 男性1:女性1:不問1


登場人物

山本 茜

尾先 仁狐



茜:『ゆれる ゆれる』

『私は ゆれる』

『ゆれる ゆれる』



【間】



尾先:今回はこれで済んだからいいが

自分の行動に責任を持つんだな

それが分かればそれでいい


茜:……


尾先:それじゃ、この口座に振り込んでおいてくれ

じゃあな


茜:あ!気をつけてお帰りください!

…ちょっと!もっと優しく応対できないんですか!?


尾先:はぁ?


茜:趣味は人助けなんでしょ!?


尾先:…あのな、誰彼構わず助けるわけじゃない

さっきのやつは自業自得だ

それに、人助けで言えば助けただろ?

嘘の除霊もできたわけだ


茜:それはそうですけど!

一応、お金を貰ってるんですよ?


尾先:自分がやったことに対して責任を取れないから

俺が尻拭いをしたんだろ?対価だよ、対価


茜:はぁ…


尾先:いいか?

幽霊…怪異現象なんでもいいが

相手から取り憑かれたのなら仕方ないが

自分から、取り憑いてくださいって言ってるような行動をする奴は、俺は嫌いなんだよ

お前も分かるだろ?呪われ女


茜:ちょ!酷いと思います!その言い方は!


尾先:この前のお前の場合は、相手が異常だった

だが、アレがお前の責任であぁなっていたなら

俺はお前を助けるなんて思わなかったかもな


茜:それは…そうかもしれませんけど…


尾先:子どもじゃないんだ

俺…いや、怪異に関わる以上、時には非情になることもある

命に関わるからな


茜:…はい…


骸:オサキの言っていることは間違ってないよ

僕も彼と同意見だ


茜:へ!?


尾先:骸!?


骸:やぁ、随分と賑やかになったね

ふーん、君が噂の子かな?


茜:噂…?


骸:うん、呪われたんでしょ?

今時、珍しいよ

僕は骸…あぁ

これはあだ名であり、ハンドルネームであり

二つ名だったり、通り名だったり、異名と……

まぁ、そんなもんだよ


茜:あっ、えっと私は、あか…

い、苺です


骸:ははっ!偽名だね?

僕と同じだ、オサキはよく教育してるね


尾先:まぁな


骸:だけど、大丈夫だよ


尾先:あぁ、コイツは同業だ


茜:え!?そうなんですか!?


尾先:怪異屋、前に少し話題にしたか


茜:あっ!そう言えば…

えっと、山本 茜です!はじめまして!


骸:僕は事情で本当の名前は言えないからすまないね


茜:大丈夫です

それで、骸さんは何しにここに?


骸:あ、そうだった

貸したものを取りに来たのと報酬を貰いにね


茜:貸したもの?


尾先:お前の件だよ

呪いのことを色々準備したって言ったろ?


茜:そういえばそんなこと言ってましたね


尾先:コレだよ


茜:舌?…に何か書いてる…?


骸:へぇ、見えるんだ

てことは覚醒したんだね、呪いで


尾先:察しがいいようで


骸:此処に居る理由も分かった

なるほど、面白いね

この情報も含んで計算してあげる


尾先:気前がいいんだな

(舌を出しながら)ほら、早くしてくれ


骸:もっと舌、出して


尾先:無理言うな!


茜:あの…これって一体


骸:僕が貸したのは呪言だよ

正確に言えば、言霊を操れるように舌に呪文を書いた

所謂、目には目を歯には歯を、だ

呪いには呪いをってね

この状態で言霊を使うと、それが呪言になり

謳えば呪歌になる


茜:呪言…呪歌…


骸:フフ、色々オサキに聞くといいよ

こう見えて面倒見は良さそうだから


尾先:さっさとしてくれないか?


骸:はいはい……3回か

4回分だったけど間に合ったね


尾先:あぁ、コイツの呪い、俺への呪い

それと、呪いに対してで3回だな


骸:それじゃ、差し引いて…はい、終わり


茜:え?もう終わりですか?


骸:うん、終わったよ


茜:…あの、一つ聞きたいんですけど

呪いって、そんなに簡単にできるものなんですか?


尾先:んなわけないだろ、コイツが特別なんだよ

あと、これだ


茜:えっ…それって…


骸:へぇ…純度が高いね

藁人形じゃないところも良い

現代の呪いって感じがする

肝心の中身が弱かっただけで相応のモノだったら……

フフ、苺ちゃん死んでたかもね


茜:やっぱり…


尾先:ん?どうした?


茜:…ずっと気になってたんです、あの後から


尾先:何をだ?


茜:詩織はコレをどこで手に入れたのかなって

私、この人形知ってるんです

ゲームセンターで今取れるやつで


骸:人形は関係ないかな

何処の誰かは知らないけど、この人形を呪具にした人がいる

僕たちと同業、または逆か


茜:逆…ですか?


尾先:俺たちが怪異から守る側だとすれば

怪異をばら撒く側と言えばわかりやすいか

一定の需要はあるんだろうな

お前の友達もそうだっただろ?

今回の件はお前と同じだろうな

お前は除霊の方法を探して俺を見つけた

町田詩織は呪う方法を探してコレを見つけた


骸:需要と供給が合うとね…どうしても見つかるから

ま、大半は紛い物だけど、これは本物

うん、これも買い取るよ

それとそのペンも、紙は要らないかな


尾先:処分しておくよ


茜:え?ペンは要るのに紙は要らない…

全部使ってたものですけど大丈夫なんですか?


骸:紙からは何も見えないから大丈夫


茜:見えない?


骸:うん、茜ちゃん…僕って結構、見えるだ


茜:ひっ…!…あっ…えっ…

(怖い…けど目が離せない…なにこれ…)


尾先:そのくらいでいいだろ、骸


骸:ははは、つい


尾先:コイツの眼は特別だ

あんまり見ると廃人になるぞ


茜:…はぁ、はぁ…え…?


骸:六ノりくのめって言うんだ

僕はね、全部見える


茜:…全部?


骸:死者も、呪いも、怪異って言われているモノ

生きてる者も全部…全部見れるんだ

六道って分かるかい?


茜:いえ…分からないです


尾先:仏教における六つの世界だ

そこは勉強しておけ


骸:と、簡単に言えばその世界が全部映るんだ

映るということは、相手にも映せるからね

オサキが言ってたのは、僕がその気になれば…ってこと


茜:…あまり、見ないようにします…


骸:残念、可愛い子の顔が見られないのは

僕としては損失なんだけど?オサキ?


尾先:揶揄うな


茜:私、まだ全然わかんない事だらけで

本当に大丈夫なんですかね?


尾先:安心しろ、家にいる間は大丈夫だ


茜:尾先さん…


骸:はいはい、いい雰囲気壊して悪いけど

呪文と身代わり用の護符、それに相談料…

呪文一回分と護符は使わなかったから無しでいい

それとー、この人形とペンを買い取ってその差額

はい4万円


尾先:…はぁ…やっぱこのくらいか


骸:人形の中身は空のようだからね


尾先:あぁ…もしかしたら


骸:その時はアフターサービスとして、無料でやっておくよ


茜:中身?…もしかして呪いのことですか?


尾先:あの馬鹿、まだ反省してないみたいだな


茜:っ…


骸:そこに関しては僕は関わらないからね

それでいいんでしょ?

やってあげてもいいんだけど


尾先:なんだ?今日はやけに気前がいいな


骸:…あぁ、つい先日、面白いモノが見られてね?

海外の都市伝説系怪異だったんだけど

中々に素晴らしかった

連れの人間はクズだったけどね

だから、気分が良いんだ


尾先:都市伝説…ねぇ


茜:あの!詩織を助けられるんですか?


尾先:……


骸:助ける、とは言わないけど

呪いを消すことはできるよ


茜:本当ですか!?だったら!

…あっ、いえ…何でもないです


尾先:…ふぅ


骸:うん、正しい選択だよ

一度でもこういうモノを使うと、人は人でなくなるものだよ

今回は幸運な方だと思った方がいい

オサキがいなければ君は死んでいたし

君の友達も死んでいたかもしれない


茜:…え?詩織も…?


骸:そういうモノなんだよ

怪異も呪いも何が起こるか解らない

解らないから怖いんだ


茜:…覚えておきます


尾先:んじゃ、用事は済んだな

あぁ、そうだ…骸、暇か?


骸:僕は予定はないけど


尾先:ほーう、じゃあ新人研修ということで

暇潰しに怪談話でもするか


茜:なんですかそれ!新人研修が怪談って!


骸:今までも結構教えた方だと思うけど

面白いね、いいよ

と言っても、僕もこんなの持ってるし

早く帰らなきゃ行けないことは確かなんだよね

うーん…よし、じゃあ質問しようかな


茜:質問…ですか?

私そんなに怖い話知らないですよ?


骸:ううん、そういうのじゃなくて

霊感が覚醒してから、何が見える?


尾先:良い質問だな、骸

よし、それについて話そうか


茜:見える…ですか、そうですね…

幽霊かそうじゃないかの区別は、尾先さんに聞きました

えっと、確か霊糸ですよね?


尾先:そうだ、糸だったり紐だったり

種類は色々あるが霊界との繋がりが見える


骸:厳密に言えば霊界じゃないんだけど

わかりやすくする為にそれでいいかもね


茜:ただ、私はそれも見えるんですけど

あんまり人の幽霊はちゃんと見えなくて

視界の隅に何かいた気がするような

モヤが見えたような…そんなことが多いです

けど、時々はっきり見えることもあります


骸:それが普通だから気にしなくて良いよ

僕やオサキが見え過ぎるだけ、だからね


尾先:お前程じゃないけどな


茜:ただ、クダ様ははっきり見えるし

多分、幽霊なんだろうなっていう動物?

っていうのかな…、それははっきりと見えます


骸:クダに関して言えば霊体の格が違うからね

はっきり見させてもらってるが正しいかな


尾先:霊にも序列みたいなもんがあってな

クダくらいの霊体なら自分の意思で

相手に自分を認識させることができる

最初、呪いからお前を守るようクダに頼んだ時は

お前が見て、触れらるようにクダ自身が認識させたんだ


茜:す、凄いんですね…ありがとうございます!クダ様!


骸:この子、面白いね


尾先:…まぁな


骸:うん、大体分かった

霊能力者的性格判断~


茜:へ!?


骸:フフ、君は動物霊に好かれる傾向がある

そんな君は、優しい性格の持ち主!

ってそんなことは今回の件で分かっていることだけど

信念を曲げないタイプ、意外に頑固者だね

あと、危険な部分もあるけど善悪の区別がしっかりしてる

だけど、この世界と関わるならもっと柔軟な考え方も必要だよ

それからアドバイス、大切にした方がいい


茜:大切にする?何をですか?


骸:君が見える動物たち

動物霊っていうのは妖怪にも居るけど

悪意を持って見える霊はまた見え方が違う

そこはオサキに聞くといいよ

今、君が見ている動物たちはいい子たちだ

人を護るタイプの霊だね

だから、大切にしたほうがいい


尾先:だな、だからといって関わるなよ

自分から関わるんじゃない

相手から関わってきた時に、いい関係を築くんだ


茜:相手から…ですか


尾先:悪意を持った霊、怪異に関しては

見れば解ると言ってもいいだろう

本能が教えてくれる

コイツの目を見た時、何か感じただろ?


茜:あっ…


尾先:まぁ、他のことはまた追々な


茜:自分から関わるんじゃなくて相手から

それでいいんですね


尾先:それでいい、本来見えるはずのないモノだからな

俺も骸も自分から関わろうとはしない


骸:僕の場合は別件で関わったりはするけどね

基本は相手にしない


茜:覚えておきます

けど…そっか、いい子たちなんですね

ちょっと安心しました


骸:それからこれもアドバイス…なのかな

霊糸のこともそうなんだけど、人に霊が取り憑く時…


尾先:それは俺が教えた

…まぁ、覚えていればの話だが


茜:ちょっと!失礼ですよ!ちゃんと覚えてます!

映像が見えるんですよね?

幽霊が何なのか理解できるような


骸:そうそう、絶対じゃないけどね

それじゃあ、これは知ってるかな?


茜:なんですか?


骸:取り憑く時じゃなくて、見える時


茜:見える時?


骸:今は霊感があるから気付きにくいと思うけどね

霊感がない人が見えたり、霊障にあう時

鈴の音がする


茜:鈴の音…ですか


尾先:鈴っていうのは、この世界では

色んなものに使われている

例えば、装飾品、風鈴、インターホンも呼び鈴なんて言って鈴だ

それにお前なら知ってるだろ?

除霊する魔除けや呪い(まじない)なんかにも使われる


骸:そう、色んな意味を持ってるんだ

オサキが言ったように魔除けや音を楽しむもの、人を呼んだり、危険を知らせたり…ね


茜:たしかに色んなところにありますね


骸:ただ、霊界じゃ違う

意味は一つしかない

それが……『呼び鈴』


茜:呼び鈴?…って、もしかして!


尾先:段々分かってきたな

そう、呼んでるんだ


骸:それがどういう意味か…考えると怖いよね


茜:急に聞こえたら気をつけろってこと…ですね


骸:ううん、そうじゃない

そういう意味も含んでるってこと

ただ、普通に呼んでるんだけかもしれないし、違うかもしれない

ただ、近くに霊がいるって解る指標みたいなものかな


茜:けど気をつけるに越したことないですよね


尾先:それでいい、お前はな


骸:…それじゃ、新人研修も終わりってことで、この辺で僕は帰るよ


尾先:あぁ…



【帰る骸を見送くる二人】



茜:不思議な人ですね


尾先:あぁ、だが、深入りはするなよ

同業だから仲良くなろう、関わろうなんて死んでも思うな


茜:えっ、どうしてですか?


尾先:俺は、あいつがどんな怪異より一番怖い


茜:…気持ちは分かる気がします

あの目…見た時、凄く怖かった


尾先:それだけじゃないけどな…

だが、頼れる時は頼るしかない

アイツはそれだけこの世界に関しては、スペシャリストだ…俺なんかよりずっとな

さ、今日はもういい、気をつけて帰れ


茜:ありがとうございました

骸さんと、尾先さんのおかげで濃い日になりました


尾先:ははっ、それが良いのかは分からんが、良しとしよう




【茜、自宅】




茜:なんだか凄い一日だった気がする…

あの日も色々…あったけど…

……やめやめ!悩んでも仕方ない!

柔軟に考える!…ってそんなのできないけど

……うん、テレビでも観ますか!


【ザッピング中】


茜:…うーん、全然頭に入ってこない…

あっ!…!!

(やばっ…声出ちゃった

……うーん…?どう見てもアレ幽霊だよね白い…モヤ…?凄い揺れて…それに、いつもと見え方が…そうだ!霊糸!…ってあれ?無い?)

……あれ?アレって何だろう?私、知ってる?

アレって確か…あれ?アレって…あれ、アレ?アレはアレでアレだから…私…は


【突然、鈴の音がする】


茜:はっ!…はぁ…はぁ…だ…め、ダメだ…

あ、あれ…見ちゃいけないやつだ…

尾先さんが言ってた…本能が教えてくれてる……

身体が…重い…動けない…

見たらダメ、考えちゃダメ…だけど…見たい、知りたい、見たい、理解シたい、知ってル、みタい

見なキゃ、見なイと…


【また鈴の音がする】


茜:はぁ…はぁ…ダメだ…考えるとダメなんだ…

けど、さっきから一瞬だけ頭がスッキリして…

あっ!音!音がしてた!鈴!鈴の…音?


【鈴の音がする】


茜:へっ…?あれ…って…クダ様?

あ!?身体が…動く?

うっ…い、今のうちに…尾先さんのとこに…




【尾先の家へ走る茜】




茜:待って!クダ様!…はぁ…はぁ…

付いてきてる…見ちゃダメ!また動かなくなる

クダ様だけ見てないと…だけど…み、見たい…頭がおかしく…なりそう…

はぁ…はぁ…あ、あれ?着いた…?

っっ!!尾先さん!尾先さん!!


尾先:…茜?なんだ…?どうし…ッ!入れ!!!


茜:はぁ…はぁ…


尾先:お前…どんだけ呪われてんだ…


茜:え…アレって…呪い…なんですか?


尾先:もっとヤバいやつだな

目、見せろ…

ちっ、結構やられてんな


茜:私…大丈夫…ですか?


尾先:あぁ、大丈夫だ

しかし、よくここまで来れたな


茜:クダ様が…助けてくれて


尾先:クダが?…いや、俺のそばを離れてないぞ?


茜:え?…じゃあ…あれは…


尾先:なっ!?…なるほどな、お前…助かったな


茜:助かった…?


尾先:お前を助けてくれたんだ、こいつがな


茜:あっ…そこにいたんだ…本当だ、よく見ると…クダ様じゃない…


尾先:こいつの話は後だ、しっかり抱いとけ

頼りたくねーが、頼りに行くぞ


茜:ど、どこに…


尾先:いいか?絶対に見るな、目を閉じろ、何も考えんな、頭を空にしろ


茜:む、無理です…


尾先:じゃあ思い切り走れ!




【尾先、茜、家を出て走り出す】



【そして、ある家に辿り着く】



尾先:はぁ…はぁ…今回は近くて助かった…


茜:ここ…って…


尾先:怪異屋だ、行くぞ!

骸!開けろ!


骸:……入れーー"(かんぬき)"


尾先:はぁ…はぁ…


骸:やぁ、先刻ぶり

また面白いもの連れてきたね


尾先:あぁ…久しぶりに走った…


骸:ふーん、まさかあれ…


尾先:(遮るように)言うな!

こいつが理解してしまう


骸:…なるほど、茜ちゃん…目、見せて


茜:はぁ…はぁ…


骸:これは酷いね、どうする?


尾先:頼む!


骸:対価は?


尾先:アイツの権利全部だ


骸:…悪くないね

けど、オサキと相性の悪い奴ばっかりだね

アレは…対処できないだろうから


茜:権利…?対処できない…?


尾先:お前はとりあえず休め

……いけるか?


骸:アハハ!…大丈夫だ

少し張り切るかもしれないけどね

じゃあ、行ってきます



【外に出て行く骸】



尾先:……はぁ…お前、何したんだ?


茜:え…?別に何もしてません…ただ、テレビを観てたら、端にアレが…あれ?さっきまでの感覚が


尾先:あぁ、骸のおかげだ

もう、大丈夫

しかし、なんでアレが出るんだ…

アレは存在して…いや、なぜ茜の家なんだ…?違う存在…?


茜:尾先さん?


尾先:あ、あぁ、気にするな

はぁ…疲れた…


【戻ってくる骸】


骸:あははは!凄いね!これは凄いよ!


茜:なんですか…それ?


骸:あぁ、これ?アレの核だよ


尾先:山本茜から少し話を聞いた

…普通じゃない


骸:あぁ、普通じゃない


茜:何なんですか?普通じゃないって

さっきのも何か分からないし


尾先:アレは俗に言う、くねくねだ


茜:…くねくね?


骸:インターネットで流行った怪異だ

もちろん、都市伝説でそんなもの存在しない


茜:あっ!私、見たことあるかも


尾先:あぁ、似たところで言えば口裂け女は有名だな

それと一緒で嘘、妄想、作り話の類だ

だがな、人が信じれば信じるほど、それは形を持つんだ


骸:そうして生まれるのが都市伝説の怪異

原因は人の脳の優秀さゆえだ

あまりに信じすぎたものは現実になる

実際、海外ではスレンダーマンという怪異が有名だ

そして、それに陶酔し、愛し、憧れ……人を殺そうとした人もいるという

僕が昼間に話したのはこの怪異だ


尾先:だが、今回の件は話が違う


骸:現実になった怪異は本来と別の意味を持つこともある

だが、物語の核になる部分は違えない


茜:物語の核…確か、くねくねは

田舎…田んぼとかに出る白い妖怪で

それを見た人が別のくねくねになる…だったような


尾先:そうだ

もっと言えば見た人、ではなく理解した人が、くねくねになる

そして、ここは田んぼなんて一つもない住宅地

くねくねが出る場所じゃない


骸:そうして考えられることは一つ


尾先:どこかの馬鹿が捻じ曲げて作った

全く新しい怪異だってことだ


骸:これが世に広まるとマズイよね

なんせ、くねくねは都会にも出て

問答無用で理解させようとする…なんて

恐ろしい怪異の出来上がりだ


茜:じゃ、じゃあ私、あのまま見てたら…今頃


骸:君がくねくねになって新しい犠牲者を生んでいた

…ってことになるね


茜:そ、そんな…


尾先:危なかったぜ…目はもう人のソレじゃ無かったからな


茜:よかった…ほんとに…よかった…


骸:にしても、格があるとはね

新しい都市伝説にしては強すぎるよ

強制的に認識させることもそうだけど

これは本格的に僕の方でも調べてみようかな


尾先:あぁ…俺も出来るだけ調べるが

対処できねーんだよなぁ…


骸:そろそろオサキも考える頃合いかな?


尾先:…あぁ、そうかもな


骸:それにしても、よく無事だったね


茜:あっ!そうだ!この子、この子が私を守ってくれたんです!


骸:狐…?へぇ、今日の話が役に立ったね


茜:そうだ、…そうなんです!鈴の音が聞こえて!そしたら、窓にこの子が居て!


尾先:狐の霊は神様に近い存在が多いからな

守り神ってやつだ


骸:2人に謝ろうかな

ごめんね、多分君のところにコイツが来たのは、僕が都市伝説の話をしたからだと思うんだ


茜:え?それだけ?

たった一言くらいで幽霊…怪異って出るんですか?


骸:キッカケなんていうのは、本当に些細なものだよ

解らないから怖い、何がキッカケかも解らない

だけど、少なからず関係してそうだから…

と、いうことでそれを差し引いてお釣りが出るから、オサキには臨時収入が入るね


尾先:あぁ…ここまで走ったんだ

出ないと困るな


骸:なるほど、こうなると分かってて来たね?


尾先:ハハ、持つべきものは親友だな

…山本茜


茜:はい?


尾先:その狐、どうやらお前に取り憑いたようだ


茜:え、…えぇ!?


尾先:心配するな、守護霊だと思え

危険が去ったのにお前のそばを離れない

ということは、そういうことだ


茜:そっか、ありがとうございます

あなたのおかげで助かりました


尾先:敬語はやめろ

たしかに神に近いとは言ったが、お前に取り憑いたということは、お前と同列だと思って接しろ

この先も守ってもらいたいならな

それから…


茜:えっ?


尾先:名前を付けてやれ


茜:名前…


骸:一種の契約みたいなものだよ


茜:意味の無いモノに意味を与える…?


尾先:あぁ、今のままじゃ、そいつはただの狐の霊だ

お前が意味を持たせろ


茜:…凪…あなたの名前、凪でいい?


【頷き、消えていく凪】



茜:あれ?消えちゃった?


尾先:そいつも疲れたんだろ

で、なんで凪なんだ?


茜:凪に助けてもらった時、頭の中がぐちゃぐちゃで

私、どうなってたのかも分からなくて

ただ、鈴の音が聞こえた時だけ

頭の中がスッキリして、澄み渡ってたような……そんな気がして


骸:良い名前だ、別で和という字も当てられる

重ねて守り神に相応しいかもしれないね


尾先:お前にしては上出来な答えだな

そこまで考えてなかっただろうが


茜:酷くないですか!?

…たしかに考えてませんけど

骸さんのおかげで愛着もわきました!


骸:それは良かった


尾先:さ、帰るとするか


骸:あぁ、棚には触らないようにね

危険なモノもあるからね


茜:は、はい…気をつけます…



【帰り道】



茜:あの…


尾先:なんだ?


茜:権利ってなんだったんですか?


尾先:あぁ、アイツの商売みたいなもんだ

怪異屋、名前の通り、怪異の店だ

だからさっきのくねくねの核含めて、アイツのモノにしていいってことだ


茜:よくわからないんですけど?


尾先:まぁ、追々な


茜:そればっかりじゃないですか?


尾先:生き急ぐな、ゆっくり知ればいいだろー?


茜:教える気あります?


尾先:さぁ、どうだろうな


茜:もう…けど、ありがとうございました


尾先:俺は何もしてねーよ


茜:いいえ、居場所でしたから


尾先:居場所?


茜:人助けをしてくれる優しい人がいる場所

尾先さんに言えば助けてくれるって信じてました


尾先:…人を便利屋だと思ってんのか?


茜:こういうことに関しては、ですけど


尾先:お前な…


茜:柔軟に考えろって言ったじゃないですか


尾先:それは俺じゃない…

ハハ、まぁいい

報酬はしっかり貰ったからな


茜:『ゆれる ゆれる』

『私は ゆれる』

『現世と黄泉の合間を』


茜:尾先さん、また何あったら助けてくださいね


尾先:暇潰し程度には…な


茜:『あなたと ゆれる』



揺れる心 終


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