表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オサキ怪異相談所  作者: てくす
1/4

第一話 呪いトモダチ

男女比 男性1:女性3


登場人物

山本 茜

尾先 仁狐(長木)

町田 詩織

春香

茜:『叩け、叩け』

茜:『人ならざる者に出会ったなら』

茜:『この戸を叩け』


【間】


春香:ね、ねぇ…本当に行くの?


茜:うん…だってこのままだと私


春香:だけど、ここ凄く不気味だよ?


茜:それは…確かにそうだけど


春香:ていうか、人住んでるの?

春香:とても人が住めるような雰囲気じゃないよ


茜:うーん…ここのはずなんだけど…

茜:ネット掲示板に書かれてたのは


春香:絶対、信用できないよ!

春香:しかも、ネットでしょ!?


茜:けど!私にはもうこれに頼るしかないの!


春香:っ…


茜:嘘でもなんでもいい!

茜:もし、何か少しでも今の状況が変えれるなら

茜:…私は行くよ


春香:…わかった

春香:だけど、危なそうならすぐに連絡するよ

春香:携帯は構えとくから


茜:ありがとう、春香

茜:…ふぅ

茜:じゃあ、行くよ


【怪しい店に入る2人】


茜:…すみませーん…


春香:暗い…電気も付いてないみたい


茜:あのー、誰かいませんかー?


春香:人の気配も全くないみたいな


茜:あの!すみませーん!

茜:誰かいませんかー!


長木:(遮るように)いるし、聞こえているよ


茜:ひっ!?


長木:おいおい、人を見て驚くなんて

長木:随分、失礼な人だな


茜:え、あっ!ごめんなさい!

茜:けど…どこから


長木:ずっと此処にいたんだけど

長木:ちゃんと見てなかったんじゃないかな?


茜:そ、そんなはずは


長木:思い込みは思考を止める

長木:ちゃんと周りを見ることをお勧めするね

長木:ま、そんなことはいい

長木:それで?何か用かな?


茜:あ!あの!

茜:幽霊のことを聞くにはここだと聞いて


長木:ネットかい?全く困ったモンだよ

長木:ここは店でも相談所でもないってのにさ


茜:え、あ、ごめんなさい


長木:名前


茜:え?


長木:な・ま・え


茜:山本 茜です…


長木:ふーん、普通だね


茜:…はぁ?


長木:まぁいいや

長木:俺はオサキ、長い木でオサキ

長木:今日は暇だし聞いてあげるよ、話


茜:え?いいんですか?


長木:怪談話だろ?暇潰し程度に聞いてあげるよ


茜:……


長木:ここに来れば何とかなると思ってたのかい?

長木:取り憑かれでもしたのか

長木:普通そういうのは神社とかでお祓いしてもらうものだろ


茜:意味がなかったんです!

茜:調べられることは全部しました!

茜:でも、全然意味がなくて!


長木:最後に此処ってわけ?


茜:…はい


春香:私、無理、外に出てる


茜:あっ


長木:ふーん、まぁいい

長木:話す分はタダだろう

長木:減るモンじゃないし、どうぞ?


茜:……

茜:(何、この人…話していいのかな

茜:でも、もうやれることもないし…)

茜:わかりました、話します


【間】


長木:…長い

長木:要約すると、心霊スポットに友達と2人で行った

長木:その後から霊障がある

長木:お祓い等、よくあるものは全部試したが効果なし

長木:これでいいね?


茜:はい…


長木:山本茜、一緒に行った友達は?


茜:その子は全く何もないみたいです

茜:私のことは全部、話したんですけど

茜:気のせいじゃないかって言われて


長木:名前は?


茜:町田 詩織です


長木:ふーん、普通


茜:あの!さっきから何なんですか!

茜:人の名前に普通普通って!


長木:名前は意味を持っているんだよ

長木:名前1つで霊に好かれやすい人だっているんだ

長木:色々調べたんじゃないのかい?

長木:だとしたら勉強不足だ

長木:ま、それは分かっていたことだからいいとして

長木:山本茜、次はその町田詩織を此処に呼べ

長木:一人で来るように言うんだ


茜:え、私は?


長木:来なくていい、とりあえず普通に生活してくれ

長木:どうせ死にはしない


茜:信じていいんですか?


長木:さぁ?それは自分が決めることだ

長木:なんとかしたくて俺を頼ったんだろう?

長木:だったら俺に文句を言う筋合いは無い筈だ

長木:俺のやり方に文句を言いたいなら

長木:俺と同じ場所に立って経験することだな

長木:少しネットで調べた程度で出てくる怪談話では

長木:助かることも助けることもできないぞ


茜:……はい


長木:今日は帰っていい

長木:暇潰し程度には関わってやるよ


【店を出る茜】


茜:…なんなのあの人、全然信用できない


春香:あ!出てきた!


茜:春香…大丈夫?


春香:なんか、雰囲気と匂い?かな

春香:気持ち悪くなっちゃって


茜:なんか、ジメジメしてたしね


春香:けど、もう大丈夫だよ

春香:そっちは?


茜:うん、少し話しただけ

茜:信用していいのかも全然わかんない


春香:やめとけば?なんか胡散臭い


茜:うん…だけど他に頼れる場所もないから


春香:…そっか


茜:よし、今日は帰ろう


春香:そうだね、じゃあまた明日、学校でね


茜:うん


【窓から茜を見る長木】


長木:霊障…ね

長木:本当にそんなものがあるのか

長木:知ってるのかね、あの子は


【次の日】


春香:おはよう


茜:あ!おはよう、春香


詩織:茜!おはよ〜


茜:おはよう、あ、そういえば昨日行ってきたよ


詩織:例の怪奇現象?


茜:うん…ただ話をしただけだったんだけど


詩織:解決しそうなの?


茜:うーん…全く


詩織:なにそれ、大丈夫なの?


茜:あ、そういえば詩織に来て欲しいって


詩織:私?


茜:一人でって言われたんだけど


詩織:えぇ…それこそ大丈夫なの?


茜:…なんとも言えない


詩織:ま!親友のためだからね

詩織:明日にでも行ってくるよ


茜:ごめんね


詩織:それで体調は大丈夫?


茜:少し寝不足かな

茜:やっぱり気になっちゃって


詩織:幽霊の視線、だっけ?


茜:…うん


詩織:…あ、そうだ

詩織:今日の放課後だけどさ

詩織:美紅たちとこの前できた、あの店行くんだけど

詩織:茜も来ない?


茜:え!今日?


春香:あ、ねぇ


茜:あっ…そうだ

茜:ごめん!詩織!今日予定あるんだった


詩織:そう?それは残念

詩織:少しは息抜きになるかと思ったのに


茜:ごめん、また誘って


詩織:うん、じゃあまた誘うね

詩織:ちゃんと寝なよ


【放課後】


春香:ごめんね、遊び行けなくて


茜:ううん、先に予定してたのは春香だから

茜:えーっと…道は確か…あれ?

茜:えっと…こっちで…良かった…?


春香:うん、そうだよ

春香:そのまま真っ直ぐ


茜:…だよね…

茜:疲れてるのかな…


春香:大丈夫?


茜:う、うん…


春香:行こ?真っ直ぐ進めば着くから


茜:うん、行こう


長木:山本茜


茜:へ…?


【目の前を車が通る】


茜:わっ!!


長木:そんなに車道に寄ってたら轢かれるぞ

長木:ぼーっとして、疲れてるのか?


茜:え、私、今轢かれそうだった…?


長木:おいおい、死にはしないとは言ったが

長木:不注意で死ぬことはあるぞ

長木:そこは俺も助けられん


茜:す、すみません…

茜:あ、明日詩織が行くと言ってました


長木:そうか、お前は気をつけて帰れよ


茜:あ、ありがとうございます


春香:ねぇ、今のって


茜:うん、昨日の…


春香:ていうか、大丈夫!?


茜:ごめん、ぼーっとしてた


春香:今日はやめとく?帰った方がいいんじゃない?


茜:う、うん…そうする

茜:ごめんね、春香


春香:ううん、大丈夫だよ

春香:機会はいつでもあるから


茜:…疲れてるのかな…


【間】


詩織:茜に言われてきましたー

詩織:お邪魔しまーす


長木:あぁ、君が町田詩織か

長木:…少し話しを聞かせてくれ


詩織:本当に幽霊の仕業なんですか?

詩織:私には何もなくって


長木:まずは俺の問いに答えてくれ

長木:心霊スポットに行ったのは二週間前

長木:場所は南曜山の拝宗トンネルだっけ?


詩織:はい、ネットでも有名な心霊スポットなので


長木:なぜ二人なんだ?


詩織:二人で飲んでて、そのわノリで


長木:ふーん…ま、詳しく聞くつもりないけど

長木:徒歩でよく行ったね


詩織:そうですか?歩いて30分くらいですよ


長木:山からトンネルまでだろう?

長木:あー、近場に飲み屋はあったか


詩織:そうです、だから行こうって話になって


長木:なるほどね

長木:んじゃ、結論言うよ

長木:俺は幽霊が見える


詩織:はい?


長木:霊感がある、と言えばいいか

長木:何か憑いてればすぐに解る

長木:山本茜、アイツに霊は憑いていない


詩織:え、それじゃあ

詩織:やっぱり茜の気のせい?


長木:だろうね

長木:シミュラクラ現象やパレイドリアの類だろう


詩織:シミュ?なんですか、それ


長木:聞いたことないか?

長木:木目や岩が顔に見えたりする現象さ

長木:多くの心霊写真なんかはコレだ


詩織:え、じゃあ!茜の勘違いってことですよね!?

詩織:もう、やっぱりそうじゃん!

詩織:本当、心配性なんだから


長木:聞いた話、山本茜が霊障だと思っている

長木:視線を感じる、倦怠感、知らない顔が見えた

長木:全て勘違いで説明がつく

長木:ただ、別のパターンもあってね


詩織:別のパターン…ですか?


長木:町田詩織、君に取り憑いていて

長木:近くにいる山本茜に霊障が起こるパターンだ

長木:簡単に言えば煙草の副流煙みたいなもんさ

長木:吸ってる本人より近くにいる人の方が害がある


詩織:なるほど…それで私には?


長木:あぁ、憑いていない


詩織:てことは…本当に人騒がせなんだから、茜は!

詩織:じゃあ勘違いだったって茜に伝えますね


長木:待て


詩織:はい?なんですか?


長木:このことは俺が伝える


詩織:え、いいですよ!そこまでして貰わなくても


長木:こういった場合な、友達に言われようが

長木:本人は納得しない

長木:結局、俺のこともインチキだの理由をつけて

長木:また次に行くことになる


詩織:たしかに、そうかもしれませんけど


長木:だからな、形だけお祓いみたいな感じで

長木:俺がやるから…まぁアフターケアみたいな感じだ

長木:だから明日、山本茜にここにくる様に伝えてくれ


詩織:わかりました、なんかごめんなさい

詩織:色々と迷惑を


長木:いや、本当に迷惑だが

長木:その分、報酬を頂くさ


詩織:ありがとうございました


【間】


春香:じゃあ、今日、行くんだね


茜:うん、詩織から聞いてね

茜:原因がわかったって…なんなんだろう


春香:良くなるといいね


茜:ありがとう、春香


春香:私も一緒に行ってもいいかな?


茜:うん!大丈夫だよ


長木:……来たか


茜:あれ?外で待ってるなんて

茜:こんばんは、長木さん


長木:あぁ、…19時、いい時間だ


春香:どこか行くのかな?


茜:うーん…どこか行くんですか?


長木:あぁ、拝宗トンネルだ

長木:町田詩織に聞いただろ?お祓いは現場で行う


茜:…わ、わかりました


長木:なんだ、怖いのか


春香:大丈夫?


茜:大丈夫…、大丈夫です


長木:よし、行くぞ


【間】


長木:ここでいいのか?


茜:…はい


長木:……


春香:顔色悪いよ?本当に大丈夫?


茜:大丈夫、ごめんね


長木:ところで山本茜、人に霊が取り憑く時

長木:どうなるか知っているか?


茜:え?…なんですか急に


長木:お前は幽霊に取り憑かれているから

長木:不可解なことが起きてるんだろ?


茜:そうです!視線を感じたり、変なものを見たり

茜:このトンネルに行ってからなんです!


長木:霊が人に取り憑く時、映像が見える


茜:映像…?


長木:簡単に説明すると、白いモヤ、影

長木:あれは幽霊だ、と分かったとしても

長木:それが何か解らないのが幽霊だ

長木:だが、その霊が人に取り憑く時

長木:取り憑かれた人間には、その白い何かが

長木:例えば、老婆だとか、男の人だとか

長木:なんてことが見えることがある

長木:それが何かも解らないのに、だ


茜:そ、それが何だって言うんですか?


長木:お前はソレを見たのか?


茜:え…?…いや、見て…ないです


長木:全員が全員そうなるわけではないが

長木:結構、多いんだぜ?


茜:だから…それが何だって…


春香:大丈夫?


茜:大丈夫だよ…


長木:俺が言いたいのは、お前に幽霊なんか憑いてないってことだ


茜:…え?


長木:お前の友人にも言ったが、俺は幽霊が見える

長木:初めて会った時から、一度もお前に幽霊なんか憑いてない

長木:さらに言えばここは心霊スポットでもなんでもない

長木:ネットに書かれている場所なんて8割嘘だ

長木:だから、ここに来た程度で取り憑かれたりしない


茜:じゃあ!私のこれは何なんですか!

茜:なんでこんな所にまた連れてきたんですか!


長木:必要だからだ


茜:何が!


春香:大丈夫?


茜:だから!大丈夫だって!


長木:あぁ、そうそう

長木:山本茜…

長木:お前、さっきから誰と喋ってるんだ?


茜:誰って…それは…

茜:えっ…だ、誰…?


春香:ダイジョウブ?


茜:ヒッ…!?


長木:俺は幽霊が見える、だが幽霊は憑いていない

長木:だったら俺が見えないものがお前に憑いている

長木:そう考えた時、一番しっくりくるもの…

長木:呪いだな


茜:嘘…何…これ…


長木:さ、役者を全員集めるとするか

長木:なぁ、いつまでそこでコソコソしてんだよ

長木:このストーカー女


詩織:…何よ、話が違うじゃない…


長木:何の話だ?俺はここに除霊しに来たんだ


詩織:ふざけないで!

詩織:アンタ、見えてるんでしょ!?


長木:いや〜、何も見えないね

長木:呪いってのは幽霊とはまた別の存在だからな


茜:詩織…?


詩織:…!!…説明しなさいよ


春香:ア…あぁぁあぁあ!

春香:な、な、何で何も答えてくくくれないののの


茜:嘘よ…詩織…はる…


長木:(遮るように)それ以上、名前を呼ぶな

長木:手がつけられなくなる

長木:全く、意味の無いモノに意味を与えるなよ


詩織:どうして…ここまで来て…全部アンタのせいよ!


長木:人のせいにするなよ

長木:んじゃ、答え合わせといくか

長木:と、その前にーーー"クダ"


茜:え!?キツネ!?


長木:そいつに触れてろ

長木:当分呪いは手出し出来ん


詩織:何なのよ!その狐は!


長木:俺は所謂、憑きもの筋ってやつでね

長木:こんな具合に自分に取り憑いた霊を使役できるんだよ

長木:狐って言えば人を化かしたり悪さをするやつもいるが

長木:お稲荷様然り、人に祀られ、護るやつもいる

長木:当然、俺の狐は後者だ


詩織:なんなのよ、それ…茜を呪い殺せないの!?そんなモノあるわけ


長木:おいおい、不可思議なモノで人を

長木:呪い殺そうとしてる奴が不可思議なモノを信じれないのかよ


詩織:黙れ!


茜:詩織!なんでこんなこと!


詩織:アンタが悪いのよ!アンタが!

詩織:アンタが真人君に手を出さなかったらこんなこと!


茜:…何を言ってるの…?

茜:そんな話、知らない!詩織!


詩織:うるさい、うるさい、うるさい!

詩織:アンタがいなければ!アンタが死ねばいいのよ!


長木:痴情のもつれだな

長木:そんなもんで人を殺そうとするのか

長木:しかも、自分の手を汚さず呪いなんてモンに手を出して


詩織:アンタに何がわかんのよ!

詩織:みんな馬鹿にして、お前も死んでしまえ!


長木:ほう、紙に人形ね

長木:ヒトガタ呪いか

長木:じゃあ呪いやすいように俺の本当の名前を教えてやるよ

長木:俺は"尾先(おさき) 仁孤(じんこ)"尻尾の先に、にんべんに漢数字のニと狐だ


【紙に長木の名前を書く詩織】


詩織:っ!!


茜:尾先…?


長木:あぁ、すまないな

長木:呪いの種別がわかるまでは本当の名前は言えなかった


茜:え?


長木:よく聞け、山本茜、町田詩織

長木:俺の趣味は人助けだ


詩織:だから何だってのよ!


長木:簡単なことだ

長木:勇者が魔王を倒す物語で勇者が負けちまったら

長木:その世界は悪に支配されるだろ?

長木:俺だって同じだ、助ける前に俺がやられたら意味がない

長木:だから名前も言わないし、お前に興味なさそうに接した

長木:俺に矛先が向かないようにな


茜:あっ…


長木:一目見て分かった

長木:霊はいないが、別の何かがいることをな

長木:お前は俺と別れた後も誰かと話してる素振りがあった

長木:俺といる時も何かをずっと気にしていた


詩織:そんなの!アンタが言ってた勘違いで

詩織:説明がつくじゃない!


長木:俺のことを知った

長木:その時点で何かあるんだよ

長木:俺のことは普通じゃ見つけられない

長木:そういうモノを使っている


詩織:ふざけないで!


長木:まだ言うか?

長木:ふざけた力使ってる奴が

長木:ふざけたモノを信じなくてどうする?


茜:どうして呪いってわかったんですか…?

茜:あの後、別に話も…あっ


長木:車に轢かれそうになった時、少し焦ったな

長木:そこまで呪いが進行してるとは思わなかった

長木:だが、精神に干渉するモンだと思ったよ

長木:お前が日に日に弱っているって聞いてたからな

長木:強い呪いなら、その場で即、あの世行きだ

長木:そんで、ま、俺の友達の怪異屋にも頼んで

長木:呪いの種別とかまぁ、色々準備したってわけ


茜:怪異屋…?


長木:それはまぁ、追々な


詩織:だけどもう終わりよ!ホラ!

詩織:アンタの名前も書いた!これでアンタも呪われて終わりよ!


長木:終わらないから種明かししたんだろ?

長木:その程度の呪いじゃ、俺はどうにもならない


詩織:…え?


長木:さてと、うん!よく見える!


春香:お前!お前!オマエ!

春香:オマエの家、臭かった!

春香:変なものを使ってる!

春香:オマエも殺す


長木:魔除けのお香だよ、呪いちゃん

長木:呪われたお陰でやっと顔が見れたね

長木:ははっ、腐った死体か何かかな?


春香:殺す!殺す!!


長木:山本茜、名前を呼ばれたら顔を伏せろ

長木:いいか?もうあの呪いもデカくなりすぎている

長木:次、本気で呪われたら死ぬぞ


茜:名前…?


長木:一度も呼ばれなかっただろ?

長木:意味の無いモノは、意味の有るものを呼べないんだ

長木:だが、それが呼ぶってことは

長木:お前も意味が無いモノになるってことだ

長木:…どういうことか、わかるな?


茜:…はい…


詩織:何してるのよ…早く二人を殺しなさいよ!


長木:この場の雰囲気で霊感が上がってるハズだ

長木:まぁ、呪いをかけた張本人だもんな

長木:そろそろお前も呪いが見え出した頃か?


詩織:その狐も、ふざけた男も!

詩織:なんでもいいから早くやりなさいよ!


長木:チッ、あっちのヘイトが溜まりすぎてんな


春香:あかね…あかね

春香:こっちに来て、あかね


茜:えっ!?いやぁぁあ!


春香:何で?こっちを向いて、あかね

春香:あかね、あかね、あかね、あかねあかねあかね


長木:来たか

長木:クダ!もうちょい辛抱してくれ!

長木:いいか、そのままよく聞け

長木:お前が辛いのはここからだ


茜:…え?辛い?

茜:これ以上に何があるんですか…

茜:友達から死ねって言われて

茜:変なモノに殺されそうになって

茜:もう、私にこれ以上、何をするの!?


長木:選択だよ、山本茜


茜:…え?


長木:俺はお前を助けることはできる

長木:だが、ここからの選択はお前が決めるしか無い


茜:…なにを


長木:一つ、このままお前が呪い殺され

長木:呪いを成就させ一件落着

長木:二つ、俺がお前の呪いを解いて

長木:お前を助ける


茜:そんなの、二つ目に決まってじゃない!

茜:早く呪いを解いて!


長木:解かれた呪いは成就せず

長木:そのまま消えることはない


茜:え?


長木:人を呪わば穴二つ

長木:呪いが成功せずに行き場を失った呪いは

長木:術者に戻る、同じ呪いとして


茜:それって、もしかして


長木:二つ、俺がお前の呪いを解いて

長木:お前を助ける、そして

長木:町田詩織を呪い殺す


茜:そんなの!できるわけ!


長木:お前を呪い殺そうとするやつだぞ?


茜:だけど!友達をこ、殺す…なんて

茜:私には…できない…


長木:お前が殺すわけじゃない

長木:全部、町田詩織の自業自得だ


茜:助けることはできないんですか…?


長木:……三つ、…


【間】


詩織:何をコソコソしてんの!?

詩織:何だっていいから早くあの二人を殺…


長木:もう大丈夫だ、ゆっくり休め


茜:……っ


詩織:…やった…?やったの?

詩織:アハハハハ!死んだ!これで真人君は私の!


長木:救えねーな、町田詩織

長木:こいつの爪の垢でも飲ませたいくらいだ

長木:残念だが、呪いは解かせてもらった


詩織:は…?何言ってるの?

詩織:茜は死んだ!見なさいよ!そこに倒れて…


長木:死んでねーよ

長木:呪いってのは一種の力の源だ

長木:それが憑いてたんだ

長木:それを祓えば力が抜けて倒れるさ


春香:ドコ…?何処に行ったの…?

春香:あかねーーー!あかねーーー!

春香:いない、みんないない、見えない、殺せない

春香:私、ドウスレバイイノ?


詩織:嘘よ…そんな…ここまできて


長木:お前は日に日に弱っていく、こいつを見て

長木:心配するフリして腹の中で笑ってたんだろ?


詩織:だって、だって!茜が!色目なんて使わなければ!


長木:二十歳越えたいい大人が!

長木:一時の感情で呪いにまで手を出しやがって

長木:…そんなお前を救いたいと思うコイツも馬鹿だが

長木:お前は救えないほどに馬鹿だな


詩織:なによ…みんなして私を馬鹿にして…

詩織:ふざけるな!!ふざけるなあぁぁ!


長木:なるほどな

長木:極度の被害妄想癖か

長木:馬鹿通り越して、哀れだよ


春香:みつけた、みつけた、みつけた


詩織:えっ…何、何でこっちに来るのよ!


長木:人を呪わば穴二つって知ってるか?

長木:そう言うことだよ、町田詩織

長木:呪いと仲良く過ごすんだな


詩織:い、嫌よ…!なんとか…しなさいよ!


春香:みつけた、みつけた、し・お・り


詩織:ひっ…


長木:あとはお前次第だ、町田詩織

長木:改心する気持ちが、お前にあればいいな


春香:あ・そ・ぼ


詩織:いやぁぁぁぁぃあ…


【間】


茜:うぅ…ううん…


長木:起きたか


茜:あれ…ここは


長木:俺の家だよ


茜:はっ!詩織は!詩織はどうなったんですか!


長木:あぁ、今頃…


【回想】


長木:三つ、お前の呪いを解いた後、呪いに呪いをかける

長木:町田詩織が今回の件に罪の意識を感じて

長木:心の懺悔できれば呪いから解放される


茜:…それで、できなかったら


長木:わかるだろ?


茜:……

茜:わかりました、三つ目でお願いします


長木:それでいいんだな


茜:少しでも、詩織が助かる可能性があるなら


長木:…わかった


茜:でも呪いって、どうやって


長木:準備してきたって言ったろ?

長木:より強力な呪い…というより

長木:幻惑みたいなもんだけどな

長木:アイツが反省するまで懲らしめろ…ってな


【戻って現在】


茜:じゃあ、茜は…


長木:もうお前が心配する次元の話じゃない

長木:ここからはあいつ次第だ

長木:だがな、人生の先輩として教えてやる

長木:あぁいった奴は縁を切るに限る


茜:それでも、私にとっては大事な友達なので


長木:…はぁ、そうかい、そうかい

長木:それで?気分はどうだ?


茜:はい!なんだかスッキリしました

茜:あ!あなたもありがとう、えっと…クダ?


長木:様を付けろ、様を

長木:これでも神様と同列の霊体だぞ


茜:え!?あ、ありがとうございました!


長木:…はぁ…


茜:え?どうしました?


長木:コイツが見えてるってことは

長木:霊感があるってことだ

長木:呪われて覚醒したか…全く


茜:え!?じゃあ私、これから


長木:おう、正真正銘、霊が見えるぞ

長木:せっかく呪いを祓ったのに

長木:これじゃ元に戻ったのかわからんな


茜:…ふふ、大丈夫です

茜:昨日までとは違う感じがします

茜:それに、悪い幽霊に会ったら尾先さんが

茜:助けてくれますよね?


長木:なんでそうなる


茜:だって言ってたじゃないですか

茜:趣味は人助けだって


長木:……ははっ

長木:そうだったな


茜:頼みますね、尾先さん


長木:じゃあ、ウチで働くか?


茜:え?


長木:俺の仕事の手伝いだ

長木:あぁ、別に幽霊関係だけじゃないぞ

長木:他にもやってることはあるし

長木:本物の霊感がある奴ってのは重宝する


茜:……


長木:あ、いや!

長木:無理には言わん!忘れてくれ


茜:いいですよ


長木:何?


茜:よろしくお願いします


長木:…そうか


茜:はい!


長木:俺は尾先 仁狐

長木:幽霊が見える


茜:私は山本 茜です

茜:幽霊が見えるようになりました


長木:ははは!これからよろしく頼む


茜:こちらこそ!

茜:あ!色々聞かせてくださいよ!尾先さん!


長木:あぁ、追々な


呪いトモダチ 完


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ