人の話を聞かない彼
「そういや、昨日中学生くらいの女の子をすれ違いざまに殺したんだけど」
「うん」
「うっかりコート着るの忘れてて、シャツが返り血でビッショリになっちゃった」
「そうなんだ」
「結構通気性良くて気に入ってたシャツだったんだけど、どうしても血が取れないから捨てちゃった」
「いくらくらいしたの?」
「2000円くらいかな」
「ふーん」
「まあ今のところお金は結構あるんだけどね。最近強盗した時10万円くらい貰えたから」
「へー。じゃあ今度奢ってよ」
「いいよ。知り合いのやってるステーキ屋さんがおいしいから、そこに行こうよ」
「うん」
「お勧めはスペシャリティステーキだよ。もちろん原料は人肉100%」
「へー」
「私も食べきれない肉を卸したりもしてるんだ」
「すごいねー」
「……さっきから何やってるの?」
「うん」
「ねぇ! 何やってるの?」
「将棋のアプリ」
「面白い?」
「うん。勝てそうなんだけどなぁ……」
「……あっそ」
「あっ……! ミスった!」
「ミスと言えばさ、私もこの前監禁してる男の子を毒殺しようとした時……」
「静かにして! 今一番ヤバいから!」
「ごめん」
「あー……クッソ! うそ……マジかぁ……」
「…………」
「あー……ダメかこりゃ……チクショー……」
「…………」
「チッ……あーもう! あークソ!」
「終わった?」
「うーん。……はぁ……なんでだろ……マジミスった……クソ……」
「あのさ、嫌だったら断ってもいいんだけど……今度ステーキ屋行った後、翔太君の事殺してみたいんだけど……」
「うん……いいけどさぁ……はあー……マジかー……もう……」
「殺していいの?」
「別にいいけど、何でだろうなぁ……やっぱあそこは一回受けるべきだったか……」
「ありがとう! 約束だからね。じゃあ私そろそろ帰るから」
「あっ……うん。最近通り魔が出てるらしいから気を付けてね」