アザゼル対??? 序
遂に始まる対???戦!まあ皆さん誰かはわかると思いますが……
アザゼルは分体を城下に残して全速力で北方向へと駆け抜けていた。そして城から30キロ北方にて…
「おっとぉ?魔皇直々のお出ましですかぁ」
「そうだよ。君をエルシアに会わせるわけには行かないからね。それに傷付くのは僕1人で十分だから」
「さすがは最優の魔皇の称号持ちですねぇ!ですがただ優しいだけでは私には勝てませんよぉ?」
「闇の弾丸!!」
「その程度でやれると思わないでね?」
「強制遮断」
「僕を舐め過ぎだよ?ヴァンプ。最凶の魔皇はそんなもの?」
アザゼルは侵入し攻撃してきた吸血の王、ヴァンプ・レイブンを煽りながらも、少しの焦りを感じていた。
(やばいな。第二封印に封じてた分の魔力も尽きそうだ。まさかこのタイミングを狙ってくるとは…)
アザゼルが前日に解放した封印の魔力はオズロックが言っていたとおり前日の神域魔法と今日の結界でほぼ全て使い切っていた。そのためかろうじて攻撃は相殺していたが思った以上に消耗するのだった。
「そうでしょうねぇ。このくらいの攻撃ではあなたには効かないでしょう」
「そうだね。次はこっちからいくよ!」
そこでアザゼルは魔法ではなく武器を顕現するのだった。
「収納魔法解放 蒼き氷の剣」
「ほぅ?私を相手に物理で戦おうとはあなたのほうこそ私をなめてるんじゃないですかねぇ?」
「それはどうかな?」
「氷蓮華」
アザゼルはすばやくヴァンプのもとへ移動すると剣を振るい始めた。
「ははぁ!この程度ですかぁ?」
「油断してると痛い目を見るよ?ヴァンプ」
そうアザゼルが告げると同時に剣が接触した部分が凍結し始めた。
「チッ。なるほどぉ、付加効果付きの武器ですかぁ…この周りに張ってある結界といいその武器といい、あなたの万能性にはさすがの私もこの姿では少々分が悪いですねぇ」
「だろうね。君も人型形態じゃ力も出しにくいでしょ?本気出してくれても構わないよ?」
「そうだねぇ、まあ出し惜しみだしてられないよねぇ!」
「真装解放 怪異 吸血の王!」
アザゼルの煽りを受けてヴァンプは真の姿を解放した。それは人間の顔に蝙蝠の羽、そして人の3倍はあろうかという巨体だった。
「この姿を解放するのは何十年ぶりかねぇ?…まぁでも真装を使った私に勝てるのなんていないんだけどねぇ?」
アザゼルはヴァンプの言葉に対し沈黙を貫いた。それはその言葉があながち間違いではないことを肌に感じていたからである。
「さぁ私も真装を使ってあげたんだ、君も真装を使ったらどうだい?」
「まあ確かにそうかもしれないね。でも僕のは君たちのとは違って特殊なんだよ。だから今回使う気は今のところ無いね」
アザゼルがそう告げるとヴァンプは怒りを顕にしながら攻撃を始めた。
「あなたには失望しましたよぉ?もうあなたの命はないものと考えたほうがいい」
「真魔 生命吸収」
「くっ…流石にこれは防げないか」
「そうですねぇ、ですがこの魔法の効果は永続。つまりはあなたが死ぬまで私に生命力を奪われ続けるんですよぉ」
その事実に少し表情を歪めながら対応策を思案していたときだった。その声は突然響いた…
「ここから先は私が相手になります!」
「…どうやらあなたの作戦は失敗したようですよぉ?アザゼル」
「まさかここを突き止めるなんて想定外だったよ………エルシア」
その声の主は聖女エルシアだった
〜エルシア×アザゼル(分体)〜
エルシアはアザゼルが城を離れて数十分後にクロムウェル城へと着いた。
「ここがクロムウェル城。8年前は隠し通路から出たので白の姿を見ることはありませんでしたが、こんなに綺麗な城だったのですね」
「そう言ってもらえると嬉しいね。エルシア」
「貴方は!」
エルシアに話しかけたのはアザゼルの分体だった。
「8年ぶりかな?」
「はい!あの時貴方が助けてくれなければ今頃私もアルベルトも生きてはいなかったでしょう」
「あの時のことが懐かしいよ」
「そうですね。それで、今回こうして来たのは…」
「知ってるよ?うちにも優秀な部下がいるからね。僕の討伐に来たんでしょう?」
「やはり知っていたのですね」
「うん、そうだね」
エルシアとアザゼルは普通の会話をしていたが、ここでアザゼル本体も予想していない事態が起こる。
「それで、エルシア。君に僕、いや俺から頼みがあるんだ」
「頼み…ですか?それに俺って」
「まあそうなるよな。俺はあいつの中に存在するアザゼルでありアザゼルではない存在。まあエルシアも知っての通りあいつは純粋善だろ?」
「そうですね。彼は聖人ではないかと思うほどに純粋な善です」
「それも当たり前なんだ。なにせあいつはそもそもの存在が人とも魔族とも違うからな」
「それはどういうことですか?」
「あいつはな、聖天使アリエルと魔神ベリアルとの子供。つまりは半天半魔の神性持ちなんだよ。だからこの5年間自領内で一人の死者も出さないなんて離れ業をやってのけられたんだ」
「そうなんです!それなのに我が国は討伐などと…」
「いいやエルシア、君の国の王は端から討伐の意志なんか無いんだ」
「なぜそれがあなたにわかるのですか?」
「それはな、まあ少し違う話から入るんだが…ここ1、2年あいつは精神が摩耗しすぎていた。それに伴い弱り始めていたんだ。もともと自我の発生しない自分の分体にこうして俺が入れるくらいにはな」
「そしてエルシア、君もまたその頃から聖女としてのあり方に嫌気が差していただろ?まあそれは8年前から蓄積されていたものだと思うが」
「確かに…」
「そんな時、あいつが魔族と人間の戦闘の仲裁に入るために城に分体を残していった時にな?俺はふと王国の状況を知りたいと思って千里眼で覗いたんだよ。そしたら…」
(「今はまだいいがジークフェルト、君はもう長くないんだろう?」)
(「そのとおりだ。俺がいなくなったらエルとアルを守れる後ろ盾が減っちまう」)
(「そこで余は考えたんだが、君が亡くなって遠くない内に聖女と第一騎士団でアザゼル討伐に行かせようと思うんだ」)
(「あのアザゼルを討伐させるのか!!?……いや、そういうことか」)
(「理解したかい?」)
(「ああ、つまりはエル達をアザゼルに保護させるつもりだな?」)
(「その通りだよ。余達は彼女に頼りすぎた。もう自由な人生を謳歌させてあげるべきなんじゃないかな」)
(「そうだな。問題は勇者パーティーだが…」)
(「そればかりはアザゼルに託すしかない」)
(「そうだな…あれを止められるとすれば魔皇しかいないか」)
「って言ってたからな。てっきりエルシア、君達もそれを知ってきてるのかと思ってたんだが…」
「そんなの初耳ですよ!……でもそれならアルベルトを残してきてしまいました。というか通れなかったのです」
「そうだろうな。あいつがかけた結界は強力だ、それでいて精密にエルシアだけを通した。それはあいつがここで果てるつもりだったからだ」
アザゼルの分体はそう言いながら北の方を向いた。
「まあそもそもあいつは俺の存在を感知できてないからな。こんなことになってるとは思ってないだろうよ。それとそのアルベルト?だったか、そいつなら問題ないはずだ。というかそいつとうちの部下にはいてもらわないと困るからな」
「それってどういう…」
「おっと、噂をすればなんとやら。二人が来たみたいだ」
そう言ってアザゼルが指した方を向くとそこにはアルベルトとオズロックの二人がいたのだった。
次話でアザゼルが覚醒します!そして分体の方のアザゼルの名前はアベルになります!次回からは出てきた場合はその名で出ますのでよろしくお願いいたしますm(_ _)m