魔皇対聖女対??? 因縁再び
いよいよ討伐作戦の前哨戦が始まります!
アザゼルは、聖女が近づいてくる気配を感じて城のベランダへと出た。
「遂に来たか。あの時の僕の事をエルシアは覚えてるのかな…まあでもここに来るということはちゃんと覚悟を決めることができたんだろう。でも僕にはやっぱり無意味な戦闘は無理かな。だから申し訳ないけど僕の領地に他の人間は入れないよ?」
『聖域魔法 聖なる結界』
そしてアザゼルは領地の境界に結界を張ると悠然と玉座に腰掛けるのだった…
「いよいよアザゼル領にはいります。皆さん気を引き締めてくださいね」
「さあ、戦闘態勢をとっておけ!」
エルシア軍はアルベルトとエルシアの号令に気を引き締め、全員武器を装備した。そしてエルシアはアルベルトとともに領地へと足を踏み入れようとしていた。その時だった。
「団長た、大変です!」
「どうした?」
「ここより先に入れません!」
「……何?」
「何らかの結界が張られていて入ろうとしても見えない壁に阻まれてしまいます!」
「剣で切れないのか?」
「ビクともしません!」
「エルシア、どうする?」
「一度私とアルベルトで試してみましょう」
「わかった」
そしてエルシアとアルベルトの2人が結界の前に立ち1歩足を踏み出すとエルシアのみが結界を超え、アルベルトは阻まれてしまった。
「やっぱりアザゼルが展開した結界か。しかし、俺達の予想の斜め上を行くなあいつは」
「どういうことです?」
「一昨日話していたおそらく彼なら一対一の状況を作るだろうっていうのがまさか領地に入るタイミングとは思ってなかったっていう話だ」
「そういうことですか。でもどうしましょう…」
「あいつのことだ、君に対していきなり不意打ちとか攻撃を仕掛けることなど無いだろう。だから俺達はここに待機しておくよ。俺も入れないしな。というわけで俺達はここで待機だ!」
「了解しました!」
こうして、アルベルト達とエルシアは分断されエルシアは1人クロムウェル城へと向かうのだった。
〜第一騎士団〜
エルシアが見えなくなってしばらくして団長でもあるアルベルトは団員達に今回の作戦で行うエルシアの行動を説明し始めた。
「みんなに伝えないといけない事があるんだ」
「なんでしょうか!」
「おそらくだが確実に、今回の作戦でエルシアがこちらに戻ってくることはないだろう」
そのアルベルトの言葉に団員達は驚きを見せることなくアルベルトのほうをただ見つめていた。
「みんな、驚かないのか?」
そして、アルベルトの質問に答えた現副団長のケティの答えにアルベルトは驚くこととなるのだった。
「ええ、私達は驚きません。いつかこの日が来ることをわかっていましたから」
「それはどういうことだ?」
「今回の作戦、おかしいと思いませんか?」
「確かに、時期や編成などがおかしかったな」
「そして、最近起こったことがなにかありますよね?」
「……第一騎士団前団長のジークフェルトさんが亡くなられた」
「そうなのです。そして我々第一騎士団はジークフェルトさんから事情を聞いていました。我らの国王はあなたやエルシア様が現状を嘆き辛い思いをしていることをわかっておられました。そしてジークフェルトさんとともにエルシア様の出撃回数をなるべく抑えてこられたのです。ですがその折にジークフェルトさんが亡くなり過激派の権力を王では抑えきれなくなったのです。そのため苦渋の決断としてエルシア様とアルベルト団長をアザゼル領へと逃がすために今回の作戦を組まれたのです」
「そうだったのか…つまりこの作戦の真意に気付けていなかったのは俺とエルシアの方だったったってことか」
「はい。ですから私達としてはアルベルト団長にもこの結界を超えていただかないと困るのです」
「だが俺でもこの結界は破れんぞ?」
こうして、結界を破る方法を考え始めた騎士団のもとに一人の人物が現れた。それこそが最後にクロムウェル城を後にしたオズロックであった。
「これはこれは王国第一騎士団の方々。何をしているのです?」
「この結界をなんとか超えてアルベルト団長をエルシア様のところへ行かせたいんです」
「ほう?そうですか…それはどういう意図でですか?」
「意図ですか?」
「ええ。その前に申し遅れましたがワタクシはオズロックと申します」
その名前に反応したのはアルベルトだった。
「あなたがそうでしたか」
「ワタクシの事をご存知で?」
「ええ、昔あなたの上司であるアザゼル氏に助けて貰った時に俺とオズロックさんが仲良く出来そうとアザゼル氏がおっしゃっていたもので」
その言葉にオズロックは昔の記憶を思い出した。
「ああ、あの時の聖女達があなたとエルシアでしたか。お話は時々アザゼル様より聞いておりました。しかしそれならば話は早い。ワタクシも協力いたしましょう」
「いいのか?」
「ええ、あなた方は信用に足るお方達だとアザゼル様もおっしゃっておられましたので」
「助かるよ。でもこの結界は破れるのかい?」
「一瞬だけなら可能ではありますが…通れるのは1人だけですよ?」
「そうか…」
「アルベルト団長が行ってください!」
アルベルトが悩む間もなくケティ達から声が上がった。
「でもいいのか?俺も戻ってこないかもしれないんだぞ?」
「わかってます。ですがそれも王は予測済みですので」
「そうか。王は思っていた以上にいろいろと考えておられたのだな…ではみんなの意見に従おう。みんな今まで迷惑ばかりかけてしまったな。その上でまたみんなに迷惑をかけてしまうことになるのは忍びないが…もしまた会うことがあればよろしくな」
「もちろんですとも!どうか2人とも元気で!」
こうしてオズロックとともにアルベルトも結界内、アザゼル領へと入っていくのだった。
〜エルシア・ハート〜
「おかしい、この辺りなら少なからず人の気配がするはずなのに何も感じない…まさかアザゼルが手にかけた?……いや、彼がそんなことをするはずがありません」
エルシアは領内に入ってから一直線にクロムウェル城へと向かいながら、その道中に魔物もなにもいないことに違和感を覚えながらも進んでいました。
「彼は私達のことを受け入れてくれるのでしょうか…」
そんな不安にかられていると、前方から歩いてくる集団がいました。しかし、その集団の見た目にエルシアは疑問を覚えました。
(なぜこんなところに人がいるのでしょうか)
そして前方の集団はエルシアを見ると駆け寄ってくるのでした。
「あなたが聖女様でしょうか?」
「はい。私が聖女、エルシア・ハートです」
「良かった。この道で待っていればあなたが通るだろうと思い待っていたのです」
「私を?」
「はい!」
その言葉にエルシアの頭では8年前の出来事がフラッシュバックし、杖を構えました。でも相手から発せられたのは予想外の言葉だったのです。
「どうか、アザゼル様を助けていただけないでしょうか!」
「「「お願いいたします!」」」
「え?」
「俺達はこのアザゼル領の住民なんだ」
「昨日アザゼル様からのお呼びを受けて城下へ行ったらアザゼル様から人魔融合って魔法を受けたおかげでこうして人間領に移動できるんだ」
「アザゼル様から僕達はもらってばかりで何も返してあげられませんでした。だからせめてこうしてお願いすることだけでもと」
「アザゼルはそんなに慕われているのですね。安心してください。私は彼に害を与えるつもりはありませんから」
「「「ありがとうございます!」」」
「それとこの道をまっすぐ進めば第一騎士団の人たちがいますのでその人達に事情を説明したら大丈夫だと思いますので」
エルシアは住民達にそう伝えるとまた城下へ向けて歩みを進めた。
(アザゼルは神域魔法まで使えるのですね…)
〜???〜
「はぁ。聖属性の障壁が張られているとは、驚きですねぇ。しかもこの強度だと私が通る一瞬しか破れませんでした。ですが中には入れたならばもうこちらのもの。アザゼルと聖女を同時に倒すときを待っていたのですから、あの時の借りを返させてもらいますよぉ!」
エルシアが入った場所と真逆の地点では、8年前の因縁の相手がクロムウェル城を目指し突入してきたのだった。
〜アザゼル・クロムウェル〜
アザゼルは結界を張ってからしばらく玉座で待っていたが、城の門の前へと移動していた。
「そろそろ来る頃かな?さあ、あの頃と比べてエルシアはどう変化したんだろう………っ」
ここでアザゼルは気づいてしまった。招かれざる客の存在に。
「あいつ、今日を狙っていたのか?…このタイミングじゃエルシアと鉢合わせになってしまう。仕方が無いか。ここはひとまず…」
『二重人格』
アザゼルは、このままでは鉢合わせを避けられないことを悟り、分体を城に設置して移動を始めた。
???はもうわかるとは思いますが、次回はアザゼルと???との戦いのお話となります。
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