第二百六十四話
(´・ω・`)ドグマ2はアンインストールしました。
プレイ時間が10時間くらい吹っ飛んでやる気をなくしました。
替わりに購入したローニンが神ゲーに限りなく近い良ゲーでかなり満足しています。
「そうか……分かった。んじゃ、まず優先するのはそっちとの関係修復、その発表って事か」
『そうだね。これで少しはそっちの国民の不満も相殺されるんじゃない? お互いの行いに大義名分、明確な成果がついてくるんだし』
クーデター事件終結から、今日でまるまる一月が経過した。
明後日にはセリュミエルアーチからの使節団も到着するというタイミングで、本日エンドレシアにいるリオちゃんから、俺達に通信が入った。
それは『無事にエンドレシアを掌握、正式に王家を打倒し私が新たな指導者だと宣言した』という、リオちゃんによるクーデター終結の知らせだった。
「じゃあ改めて言わせてもらうわ。『リオスティル女王』この度のご提案、ありがたくお受けいたします」
『はいはい、どういたしましてアラリエル魔王陛下。そっちにセリュミエルの人間が行くなら、調停式の見届け人にもなって貰おうかな。予定空けといてくれる?』
「んな飲みに行く誘いみたいなノリで言うことじゃねぇだろ。まぁ調整しとくわ」
アラリエルの執務室に急遽設置された通信機で、リオちゃんとアラリエルの会談が通信機越しに行われていた。
それを見守るのは俺達SSクラスの人間と、アートルムさん、そしてイクシアさん。
リオちゃんの方はどうだか分からないが、恐らくリョウカさんも同席していそうだ。
『私は明日にでもそっちに向かうよ。到着は三日後くらいになる予定。ねぇ、そこにユウちゃんいる? ちょっと変わってほしいんだけど』
「仮にも国王同士の会談なんだけどな? まぁ、んなノリでいいか。どうせ俺で最後の魔王なんだ。おいユウキ、女王様のご指名だ」
そんな結構重要というか、普通に重大なやり取りをしている最中だというのに、リオちゃんが俺に話があるようだ。
アラリエルから受話器を受け取ると――
『ユウちゃん久しぶりー、元気してた?』
「はい、もちろん元気ですリオスティル女王陛下」
『冗談でもそういう口調、やめて?』
「はは、ごめんごめん。リオちゃんお疲れ様。正式に……女王様になったんだ?」
『まぁ一応この国の中ではそういう扱いかな。ここから他国の人間にも認めてもらって、正式に指導者として他国の王様と会談して、それで正式にって感じ』
「なるほど……なんだか不思議な感じだ。あの日、訓練所でつまらなそうにしてた女の子が女王様になってるんだもん」
『私だって同じこと思ってる。あの日、ただの暇つぶしの相手が偶然異質な力を持っていたから、ちょっと興味を持ったんだ。それが成長して……巡り巡って今じゃ地球を飛び出して、グランディアでも英雄扱いなんだもん』
お互い、随分と立場が変わってしまった。
『ねぇユウちゃん、後悔していない? 東京に出て、大きな戦いの運命に巻き込まれて。今のユウちゃんを取り巻く環境は……たぶん、私が発端になったんだと思う。もしかしたら、ユウちゃんは私に会わなければ平穏な生活を送れたのかもしれない。その力だって、変に悪目立ちせず上手に付き合えていたかもしれない。だから、後悔してない?』
間髪入れずに答える。
「してない。考えたこともない。感謝ならした事は数え切れないほどあるけど」
『……そっか。うん、それが聞けて安心した。私もあの日、あの場所に行って本当によかった』
「あ、そういえば前から気になってたんだけど、リオちゃんはどうしてあそこにいたの?」
今思えば、あんなド田舎に裏組織の構成員、しかも主要メンバーのリオちゃんがいたのはどうしてなのだろうか?
『ああ……敵対組織っていうのかな、まぁ原理回帰教の人間に怪しい動きがあってさ。どういう訳かあの場所に向かってるって知って、その動向調査だね。私はもしもの時の戦力として待機してたんだ』
「原理回帰教が……俺の地元に……?」
……なぁ、もしかしてだけど。
俺って……あの頃からもう……目をつけられていたのか?
『自分達と同じ境遇と思われる高校生』の存在をなんらかの方法で察知して……接触を図りに来ていたのか……?
偶然、だとは思いたいが……。
『ユウちゃん?』
「あ、うん。なんでもない。そこにリョウカさんっている?」
この考えをリョウカさんにも相談したい。
だが――
『リョウカは今ちょっとこの大陸を離れているね。ほら、ジェット機あったでしょ? あれで人を迎えに行ったんだ』
「あ、そうだったんだ。じゃあリオちゃんもこっちに来るし、リョウカさんもこっちに直接来るかも」
『何か用事があったんだ?』
「うん、ちょっと話があったんだ」
『ふーん。じゃあそうだねぇ……私もそっちに着いたらユウちゃんに話があるから、どこかで時間貰える?』
「あいあい。んじゃ大丈夫だと思うけど気を付けてこっちに来てね」
『おっけい。まぁこっちの護衛にロウヒもろっくんも着いてるからね、余裕よ』
「ジェン先生はいないの?」
『ユウちゃんのところの先生? あの人ならリョウカのお供だよ』
なるほど。
しかし……いよいよ戦争が終わるんだな。
内乱じゃない、エンドレシアとノースレシア、長らく争っていたこの最北の二大陸が和平を結ぶ。
いまいち俺には事の重大さが分からないけれど、グランディアに住む人間からしたら……歴史に残る一大事なんだろうな。
「じゃ、アラリエルに戻すよ」
『はいはい、またねー』
通話をアラリエルに替わる。
リョウカさんはジェット機で誰かを迎えに行ったとなると……事情を知っている人間か?
考えられるのは地球にいる誰か……もしかしてカズキ先生や、一緒に地球に残されているサトミさんを迎えに行ったのだろうか……。
結局、ドバイでの実務研修からそのまま今回の事件に関わった形だし。
「じゃあ今回はこれにてお開きだ。またな、リオスティル女王陛下」
『またね、アラリエル魔王陛下』
考えているうちに二人の会談も終わったようだ。
「ふー……これで両国の内乱は無事に終結、と。お互い被害状況は似たようなモンだな。向こうは国軍の七割以上を失ったって話だが、貴族は結構抱き込めているみたいだな」
「王家のやり方が気に食わないって貴族が多かったのかね?」
「だろうな。元々成り上がりの家が王家に収まったって形だ。そりゃ似たような家が多いエンドレシアじゃ嫉妬やらでボロボロだったろうさ。こっからリオスティル女王がそんな貴族連中を躾けて国としての強さを見せつけていかないと、また第二第三のクーデターが起きちまう」
なるほど……結構危うい立場なんだな、リオちゃん。
「だからこその和平、なのだろうな。偉大な一歩を踏み出したという功績、それを示されては他の貴族は何も言えなくなるだろう。アラリエルも似たような事を考えているのだろう?」
「コトウの言う通りだ。俺も戦争の終結を以って、この国のあり方を見直すって大々的に発表するわ。まぁ俺が魔王をやめて王政の廃止をする為の理由付けだな」
「本当にやめるのか、魔王」
「ああ、もうそんな時代じゃねぇよ。個人が力を持って、その力を広く拡散出来て、誰しもがクーデターとまではいかなくても、変革を起こそうと動くことが出来る時代だ。なら、王政よりも民主的に代表を決めていった方が良い。地球と関わって情報伝達のシステムが発達してきたからこその選択だ」
「……それは、悪い影響もあったのかもしれないな。二つの世界が関わるのは……プラスだけではない、と」
「いいや? プラスしかねぇよ。コトウ、お前は難しく考えすぎだ。どうあがいても王政のままじゃ、進歩が止まる事はなくても周囲には遅れちまう。俺は地球に移住してそれを実感した。そろそろノースレシアは……変わるべきなんだよ。セリュミエルみてぇに強い産業がある訳じゃないからな」
少し、理解出来る話だ。
王政でも問題のない国は地球にもある。
でもそれは、強いアドバンテージを持つか、そもそもその国だけで全てが完結するような小規模な国の場合の話だと俺は思う。
でも、ここノースレシアは……『原初の魔王』という『恐怖』と『力』を中心に、強国として見られてきた国、という側面がある。
それじゃあ平和な時代を生きていくのは難しい。柔軟に、多くの知識や考え方を取り込んで国が変わっていかないと、アラリエルの言うように周囲に置いて行かれてしまう。
「なんだ、やっぱりちゃんと王様してるじゃん」
「まぁな。コトウ、お前さえ良ければマジでこのまま国に残ってくれても良いんだぜ?」
「確かに俺の最終目標はグランディアやそれに携わる仕事に就く事だが……縁故採用のような形はどうもな。それに、卒業後は秋宮への就職が決まっている。転職するにしても、最低でも恩義を返すまでは秋宮で働くさ」
「惜しいな。お前みたいな同年代で使えるヤツ、さらに武力も揃ってるヤツなんてそうそう転がっちゃいねぇよ。あれだ、転職すんならマジで俺に一報入れろ」
おお……アラリエルが権力者みたいな事を言い出しおった。
「つーか、お前らもだぜ? 立場的にコウネは難しいだろうが、他にも俺の国で働いても良いってヤツが居たら言えよ? 実際マジで人材に困ってんだ。シュヴァ学の卒業生っつったら、そもそも貴重で権力者なら喉から手が出るくらい欲しい人材ばっかりなんだ。特に俺達SSクラスはな」
「在学中の引き抜き行為は禁止、ですわよ?」
「そりゃ分かってる。だがここは学園の外、治外法権だ。ぶっちゃけ今の俺なら理事長よりは社会的地位は上だぜ?」
「はぁ……暴君にでもなるおつもりですの?」
はは、まぁ気持ちはわからなくもないけどさ。
「んじゃ、とりあえず解散すっか。ああ、キョウコとコトウ、ユウキは残ってくれ」
解散を宣言するアラリエル。だが、残るように言われた三人のメンツに、俺達は察しがついてしまった。
……そうか。何か動きが……あったんだな。
皆が退室する中、呼ばれた三人だけが残される。
「んじゃキョウコ。報告を頼む」
「……ええ。ササハラ君、コトウ君、心して聞いてくださいまし」
「承知した」
「了解」
どうやら、今回の話はキョウコさんによるものらしい。
はむちゃんに一ノ瀬さんを監視させていたようだが……。
「今から一週間程前に、深夜にミコトさんが城を抜け出し、砦に侵入するという事がありました。その後、ゲートに侵入し、一時間程後に戻ってきました」
「一週間前となると……大規模な救援物資が届いたタイミングだったな。アラリエル、君が地方貴族に働きかけた結果だが、まさかその物資にまぎれて何かメッセージでも届いたのだろうか……」
「……ゲートの見張りは何をしていたんだ?」
まだ何か決定的な事件が起きたとは言い難いが、ゲートへの侵入は一度、理由を問い詰める必要がありそうだな。
「見張りは気が付いていなかったみてぇだな。危害は加えられてねぇ。ミコトの隠密技術をちょっと甘く見てたな」
「考えられる可能性としては『お兄さんの捜索』か逆に『お兄さんからの呼び出し』もしくは『何者かによる脅迫』や『何者かによる不安を煽る情報を入手、自発的に捜索』この辺りかな」
俺は現状考えられる可能性を提示する。
正直、どれも考えられる。一ノ瀬さんならどの理由でも納得出来てしまうのだ。
誰かに相談するよりも、自分で抱えて、一人で動く。
それが自分の身内のことであるのならほぼ確実に。
「……今からミコトを呼び出す。コトウとキョウコは退室してくれ。ユウキ、お前だけは俺側の人間としてここにいてくれ」
「あいよ。二人はこれから先も監視するためにもバレる訳にはいかないんだ。ここは任せてくれ」
「ああ、分かった」
「……はい」
キョウコさん、凄く辛そうだ。
少し前から一ノ瀬さんと一緒に行動することが多かったみたいだし。
そうして、二人が部屋を出た後、俺はアラリエルに呼び出された一ノ瀬さんを、じっと部屋で待つ。
「ユウキ、なんで残されたかはわかるよな?」
「武力行使。一ノ瀬さんを取り押さえられるのは俺だけだから、だろ」
「ああ。やっぱり分かってたんだな。お前は非情に切り替えられる人間だ」
「……まぁな」
そうして、部屋にノックの音が響く。
(´・ω・`)DLC来るといいなー