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パラダイスシフト ~ある意味楽園に迷い込んだようです~  作者: 藍敦
二十章

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第二百六十二話

(´・ω・`)お待たせしました

ラストに向けた話づくりが冗談抜きに難航しております。

「……つまりセイメイさん、お兄さんから一ノ瀬さんに接触があるかもしれない、と?」

「そういうこった。あの様子じゃどうやらまだ自分の身内が容疑者だって事に納得もいってねぇ。もし接触があったらこっちのマイナスになる事もするかもしれねぇからな」

「なるほど、考えられるな。一ノ瀬さんは真っすぐだけれど、そこが短所でもあるもんな」


 アラリエルの提案を、自分でも驚くほどあっさりと飲み込んでいた。

 たぶん、可能性として頭のどこかで俺も考えていたのかもしれない。

 それとも――一度、仲間を裏切った事のある俺だからこそ、その可能性にすぐに至ったのか。


「本気で言っているんですの? まさかミコトさんが……私情を優先すると」

「思うよ。あの人は冷静で、任務の為に心を律する人であると同時に……誰よりも人を深く愛する人だと思うから」

「俺は……まだそこまで皆の事を深く知っているわけではないから何も言えない。だが……すくなくともアラリエルとユウキはそう、結論付けたんだな?」

「ああ、ワリィとは思っているがな。だが仮にも、今の俺は一国を背負う立場だ。仲間への情よりも、国に住む大勢の人間の安全を優先する」


 納得のいっていない様子のキョウコさんだが、それでも納得してもらうしかない。

 それこそ『私情を優先してはいけない』のだから。

 彼女もそれを理解したのか、自分の召喚獣を呼び出し、指示を出す。


「彼女程の人間ならば、悟られる事もあるかもしれません。遠目から、ギリギリの範囲で探査して様子を伺いますわ」

「俺は、彼女の出入りをチェックしていよう。こういう性分だからな、何かと目ざとく動いていても怪しまれる事はないだろう」

「ありがとう、二人とも」


 そうして、一ノ瀬さんを警戒しつつ、今はこの都市の復興に集中するという方向で、エンドレシア側のクーデターの推移を見守る事になったのだった。








 同時刻。

 ユウキとの定時報告を終え、USMのアジトに戻ったリョウカは、この戦いの行く末について考察していた。


「……このクーデターは成功するでしょうね。その後は……本当にノースレシアと手を取り合うのか、それとも……」

「『確固たる地盤、エンドレシアという後ろ盾を正式に得たUSMが、表舞台で台頭し始め、危険因子となってしまうのか』ってとこかな? アンタが心配しているのは」


 リョウカの部屋にいつのまにか現れたのは、この戦いの先陣に立つ人物、リオこと『リオスティル』。

 リョウカのボヤキを拾い上げ、先の言葉を紡いで見せる。


「リオさん、入るのなら一声かけてください」

「着替え中かもだしね? 相変わらずえっぐい見た目の下着つけてるの?」

「人の趣味にケチをつけないでくださいよ」

「見せる相手もいないのにねぇ?」

「……それで、何の御用です?」

「ちょっとアジトに来客。追い返そうにも太刀打ちできないみたいなんだよね。それで要求がアンタに会わせろだってさ。何者? なんか変なヘルメットかぶってるんだけど」


 リオの発言に思い当たるフシがあったのだろう。リョウカは急ぎ立ち上がり、その人物の元に案内するようにと言う。

 そして案内された先で広がっていた光景に、深いため息をついたのだった。


「……なんですか、この惨状は」

「誰も殺しちゃいないさ。全員足腰立たなくなるまで弱らせて転がしてるだけだ」

「……こっちの最高戦力含めて再起不能になりかけているじゃないですか」


 クーデターの主要人物、そしてUSMの実質的な指導者であるロウヒもまた、床に転がされていた。

 その一連の事件を引き起こした……黒いフルフェイスヘルメットをかぶっている人間に、リョウカは苦言を呈する。


「うわ……この人敵じゃないんだよね? 私嫌だよ『こういう類の相手』と戦うの」

「……安心してください、味方……かどうかは微妙なラインですが、敵ではありません」

「そういうことだ。いやはやこんな恰好で悪いね。ちょっと訳あって『こっちでもこれが必要なんだ』」


 その言葉に、リョウカはすぐに理解した。

『ニシダヨシキとしての姿を見せるわけにはいかない。しかし、グランディアではニシダヨシキの姿ではない。それなのに必要だという事は、グランディアでの姿になれない状況に追い込まれている』という意味だと。


「その状況でもロウヒを圧倒しますか」

「中々良い手ごたえだった。もう少しで『二日酔いのエリ』に届く程度には」

「……なるほど。ロウヒ、よかったですね。『世界最凶』は貴方を評価しているようです」


 リョウカは床に倒れたままのロウヒにその言葉を告げる。

 それが何を意味するのか理解したのは、ロウヒとリオのみだった。


「っ!? まさかアンタ……ジョーカー……?」

「……ふ、道理で相手にならないはずだ」

「うつ伏せのまま喋るな、なんかシュールだぞ。生憎、今の俺に回復の力はない。頑張って起き上がってくれ」

「うわぁ……よりによってここに来ちゃうのか……なに、私達のクーデターって『正しくない』の?」


 油断なく、リオは背負った大剣に手をかけながらジョーカーと退治する。


「いいや、むしろ賞賛したいくらいだ。よくぞ復讐の炎を燃やし続け……その憎悪の炎をこの戦で燃え尽きさせる覚悟をしたな、リオスティル」

「……なんでもお見通しってこと?」

「ああ。お前はこの無駄な争いを続ける国を終わらせ、新たな国へと生まれ変わらせる選択をした。それは『とてもとても正しい。満天で満点の花丸をあげたい』程に」

「邪魔をしに来た訳じゃない、と。でも結果としてこっちの戦力を潰してくれたね。どういうつもり?」


 そう、USMの主力部隊を完全に戦闘不能に追い込んだのは事実。

 事実、ロウヒすらまだ満足に立てない程のダメージを負っていた。


「お前達にはもうしばらく総攻撃を控えてもらいたいのだよ。理由のない警告で止まる程、お前達は生ぬるくないのは知っている」

「ジョーカー、戦況について知っているのですか?」

「予想だけだがな。近いうちに、エンドレシアの城側が降伏してくるだろう。ここで攻め入って被害者を増やすのは得策じゃない。戦後処理を円滑に進めるためにも、両軍の被害をこれ以上増やすわけにはいかないんだよ」

「……珍しいですね。貴方がそんな忠告をする為に動くなんて」


 リョウカの指摘通り、それは暴力を優先的に振るうジョーカーらしからぬ親切心だった。

 だが――


「想像よりもノースレシア側の被害が少なかったのでな。このままこちらが消耗して戦が終われば、これ幸いにとノースレシアのタカ派が攻め入ってくる可能性もある。今回の二国同時の内乱。互いに協力するところまではよくやったと言えるが……」


 それは、相手を信用していないと断言するような物言いだった。


「両国が同じ程度のダメージを負って戦を終わらせないと成立しないんだよ。どちらかが優位な状況ではこの協力関係は破綻する。それくらい、この二国間の争いの種は育ち切っている」

「……確かに、その可能性は考えていませんでしたね」

「私達がそんな真似を許すと思ってるなんて心外だね。それにユウちゃん達の方もそんなヘマをするとは思えないけど」

「いや、まだ正式な取り決めをしていない以上、幾らでも二国間を再び戦争に発展させる事は可能だ。なにせ……お互いの国に既に『原理回帰教シャンディ』が入り込んでいるのだから。例えばそう、そこに倒れている主力の人間の一人……そこのお前だ、赤髪の魔族」


 そう言うや否や、ジョーカーは突然床に倒れている人間の一人に向かい片手をふるい、その動きだけで身体を両断、絶命に至らせる。


「っ!? 何をする! 彼はUSMの古参の人間だ」

「が、ある時期から人が変わったように力が増し、時折記憶喪失にでもなったかのように一般的な事すら分からなくなる事があった……そうだな?」


 それは、まるで見てきたかのような物言いだった。

 だがそれが意味するののがなんなのか、リョウカにだけは分かっていた。

 そう『突然この世界に迷い込んできた人間の反応』なのだ。かつてのユウキがそうであったように。

 突然、人が変わったような言動を取り、急激に力が増す。

 それは異なる次元から魂だけがこの世界に迷い込んだことによる弊害なのか、はたまた別な何かなのかは分からない。

 だが、確かに今殺された人物もまた、その特徴を持っていた。


「そいつはスパイだよ。ある時期までは確かにUSMの人間だったのだろう。だが、既に別人だと思って良い。『そういう現象が存在する』とだけ知っていればそれでいい」

「一体……どういう事だ」

「原理回帰教はそういう人間だけで構成されているんだよ。今俺が言った特徴を持つ人間が他にいないか調べてみると良い」

「……じゃあユウちゃんの方にも原理回帰教の人間が関わっているって事?」

「そうだ。そして俺が交戦して撤退させたが、近いうちに事を起こすだろう。その際に、こちらの戦力が削れているのは避けたいんだよ。幸い、今倒れているロウヒを含め、ここの連中はそこまでヤワじゃない。エンドレシア王家が降伏する頃にはしっかり身体を休められて万全な状態になっているだろうさ」

「……一連の話を私が信じる根拠は?」


 未だ、警戒を解かないリオの問い。

 それに対し――


「リオスティル、信じろとは言わない。だが万が一にもノースレシア側……ササハラユウキのいるあちらの足を引っ張るのは本位ではないだろう? 何せ君は彼に失望されるのを何よりも恐れている。違うか?」

「っ! いいよ、分かった。その話を真実だと仮定して動いてあげる。ユウちゃんに会ったんでしょ? あっちはどういう状況なの?」

「それはリョウカに聞くと良い。さっき報告を受けていただろう?」

「ええ、報告は受けました。現在、あちらは本懐を果たし国の平定に向けて動き出しています」


 その報告を受け、ロウヒとリオは同時に歓喜の声を上げる。


「そうか……あちらは成功したか! ユウキ君は……カノプスに勝てたのだな」

「へー、さっすがユウちゃん。あの化け物の相手なんて私でも勘弁してもらいたいのに」

「くく、まぁ実際にトドメを刺したのは別な人間だったがね。しかしユウキが彼女を追い詰めたのは事実だ。それもほぼ単身で」

「それは……驚きましたね。私の見立てでもまだユウキ君はその域に達していないと思っていたのですが」

「慢心と油断、そして想定外が重なった結果だろう。カノプスは強いよ、本来ならば彼よりもずっと格上だ。だが、彼は格上相手に捨てゲーするようなゲーマーじゃないんだろうさ」

「捨てゲー? 何の話してんの?」

「こっちの話だ。まぁ、とりあえず向こうは順調だ。こっちの方はこのまま行けば王家の蓄えが尽き、本来なら協力してもらえる内通者、今殺した男の協力もなしに八方塞になるだろうよ。そいつの部屋を調べて解析すると良い。恐らくこのアジト全体を対象にしたなんらかの術式でこっちを一網打尽にするつもりだったんだろうさ」

「随分具体的ですね。調べたんですか?」

「調べなくても分かるさ。なにせエンドレシア城には元々『強力な自爆術式が城の随所に仕込まれていた』んだからな。その転用くらい、宮廷魔導師なら余裕だろうさ。安易に危険な術式を城に刻んだ過去の愚か者の責任だな」

「……私以外には起動出来ない、消すことも出来ない術式なんだけどね」

「優れた完成品が目の前にあるなら模倣は容易い。そんな事にも気が回らなかったんだろうな、当時の天才少女には」


 そう言いながら、どこか茶化すようにジョーカーはリオに話を振る。


「……分かったよ、感謝しておくよジョーカー。確かに当時の私は馬鹿な子供だったよ。全部ぶち壊せば解決するって本気で考えてた。でも、実際に立ち上がって戦っている人間……そこのリョウカ含めて無関係の人間を殺すことが出来なかったんだ。随分昔の話だったのに……まさか転用されるなんてね」


 そこまで語り終えたタイミングで、ようやく立ち上がり体勢を整えたロウヒが、急ぎ殺された人間の部屋の調査を指示する。

 ほどなくして、読み通りこのアジトにもリオがかつて生み出した自爆の術式に酷似した刻印が随所で発見されたのだった。




「……さて、やるべき事はやったし、俺はまたノースレシアに戻るとするかな」

「随分と優しいですね、リオさんに対して」


 再びUSMが事態の収束に向かい動き出し、メンバーが忙しくし始めたところで、リョウカとジョーカーは二人で密談を交わす。


「彼女の境遇を考えれば、俺が心配しても不思議じゃないだろうさ。俺の直系で最初に他所の国嫁がせた娘の子孫だ。長年、一族を通して肩身の狭い思いをしてきたのは想像に難くない」

「……それだけ、貴方の直系の力は恐れられてきた、という事ですか」

「ああ。エンドレシアでは特に、な。強すぎる力を持った子供は絶対に王にはさせない、ただの戦闘の道具として育てられてきた。そこに生まれた、過去最高の力を持った大魔導師にして最強格の剣の才能だ。彼女がまともに人扱いされたのなんて、USMに入ってからなんじゃないかね」

「……でしょうね。だからこそ、彼女は『人より強すぎる力を秘めたユウキ君に自分を重ねた』。彼女がユウキ君に抱くのは、同族への親しみと、先達としての慈しみ、でしょうね」

「それに加えて庇護欲だろうさ。まぁ恋愛感情に近い思いもあるんだろうけどな」

「ふふ、そうかもしれませんね。まぁどちらかというと、姉が弟を大切にするような感覚、でしょうか」


 最後にそう言葉を交わし、ヨシキはアジトを立ち去る。

 ほどなくして、エンドレシア王家が正式に降伏を宣言し、王城が見事リオ達に明け渡される事になったのだが、それを見届けることなくヨシキはノースレシアに舞い戻るのだった。


(´・ω・`)それに加えてなろうの投稿者用のページが改悪しすぎていてかなり萎えてモチベが下がってます……なんでこれでGoサイン出したんすかね。

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