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パラダイスシフト ~ある意味楽園に迷い込んだようです~  作者: 藍敦
十九章

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第二百四十五話

(´・ω・`)既に一部のサイトで発売日の情報が出ていたので、ここにも書いておきます。

『パラダイスシフト ある意味楽園に迷い込んだようです』 の発売日は、来年の1月25日となっております

一部店舗の購入特典などの情報はそのうちX(Twitter)で発表すると思います。

 夜空に浮かぶ月と星。それらの光を歪ませる謎のシルエット。

 それが、にわかに色づき実体を現す。

 少し変わったデザインの、どことなく竜を思わせる翼を持つジェット機。

 それがエンジン音と共にこのカルデラの中に着陸した。


「隠匿の魔術……あんな高等魔術を乗り物に適用させるなんて……不可能だよ」

「いえ、そもそも『この世界に飛行機は存在しない』はずですわ。これは一体……」

「おかしいですねぇ……ましてやこの大陸は魔神龍のお膝元とも言えるのに……」


 着陸した飛行機を前に、グランディア組の二人と、メカニック志望だったキョウコさんが疑問を口にする。


「つまり、この飛行機に理事長が乗っている、ということですか?」

「そういうこと。はい、じゃあみんなでお出迎――」


 瞬間、飛行機の扉が開き、中から人影が飛び出して来た。

 その速度たるや、一瞬誰なのか判別出来ない程だったが、それでも間近に来た段階でその正体を……この身をもって理解させられた。


「グエ」

「ユウキ! ああユウキ! 無事で本当に良かった! どこも怪我はありませんか? 病気はしていませんか? お腹は空いていませんか!?」


 人影、イクシアさんの高速タックルにより地面に転がされました。

 心配をおかけしました……。


「すみませんイクシアさん、人が見ているのでこれ以上は……」

「ああ、私としたことが。お久しぶりです、皆さん。どうやら皆揃っているみたいですね? それに……ショウスケ君とアラリエル君はお久しぶりですね」


 テンションの振れ幅が大きすぎる! 急に冷静に、大人な様子で挨拶を口にするその姿に、一同呆気に取られていた。


「あ、はい、お久しぶりですイクシアさん。しかし何故貴女がこの飛行機に……」

「覚えていてくれたんすね? お久しぶりっす」

「私は、リョウカさんがこちらに向かうと聞いて同行を頼まれました。有事の際のボディガードとして」


 なるほど、確かにイクシアさんは強いからな。

 まぁアラリエルとショウスケは知らないだろうけれど。

 すると、飛行機からさらにもう一人現れた。

 それは意外な人物で――


「いやはや……本当に久々な顔ぶれが集まっているな。久しぶりだな、アラリエル。そっちの事情はうっすらとしか伝わっていないが」

「お、ジェンじゃねぇか。久しぶりだな? SSクラスの担当クビになったんだって?」

「な!? 違うぞ、休職中だ! ちょっと実家の方がゴタついてて――って」


 そう、ジェン先生が飛行機から現れたのだ。

 もしや、既に地球に戻っていたのだろうか? それとも……飛行機で途中サーディス大陸に寄って拾って来たとか。


「話には聞いているぞ。お前が新しくSSクラスに配属されたコトウショウスケだな?」


 アラリエルと二三言葉を交わした先生は、次にショウスケに言葉をかける。

 そっか、復職したらショウスケは新しく受け持つ生徒になる訳だもんな。


「お初お目にかかります、ジェン先生。今年度よりSSクラスに配属されたコトウショウスケと言います。何卒指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」

「……同じ挨拶でもここまで違うとはなぁ……アラリエル、少しは見習ったらどうだ」

「俺が言ったら気持ちワリィだろうが」


 うむ、この展開は読めていました。さすがクラス委員長歴最長のショウスケだな。


「ほらほら、旧交を温めたい気持ちも分かるけど主賓がまだだよ。リョウカ、早くしてよ」

「すみません、少々エンジンの停止に手間取りました。普段あまり自分では操縦しないので」


 リオちゃんが俺達を見て急かす声を上げると、中からリョウカさんが現れた。

 なお、今日もしっかりと豚の仮面を装着しております。


「皆さん、飛行機に乗ってください。中でミーティングをしましょう。幸い、この飛行機の隠匿術式は決して破れませんからね。臨時の作戦本部としては十分でしょう」


 そう彼女に促され、飛行機に乗り込んでいく。

 随分と久しぶりだが、初めて乗る人間にしたら、不思議な光景だろう。

 飛行機なのに中には上等な調度品からなる居住スペースに、簡易的なキッチン、シャワーまで備え付けられているのだから。

 ……ねぇ、前から思っていたんだけど、この中って外観に対して少し内部が広すぎるような気がするんですけど。




「さて、ではまず初めに……皆さん、無事で何よりです。ドバイの状況は既にこちらにも報告が来ています。あの状況で、貴方達は間違いなく最善の行動をしてくれました。あの場にいた各国の来賓の中には多数の政治家、資産家、多大な影響力を持つ人間もいました。各国から正式に感謝の声明が出ています」

「……そうですか。しかし、それでも多くの犠牲が……出てしまいました。あの時、市街地では正体不明の魔物が多数出現し、そこで……一般の人間が……」

「あれは一種の災害です。多数発生した異界と続くゲート。あんなもの、この世界のどこにも対処可能な部隊は存在しません。普通ならば、国が滅んでいてもおかしくなかった。それだけの未曽有の災害でした。ですが、貴方達が調査に向かって暫く後、大規模な地震が発生、それに伴い大小のゲートが全て消失しました。これは、貴方達が元凶を止めることが出来たから……ではありませんか?」


 それは、違う。確かに俺達は元凶へと辿り着いた。

 だが、そこに待ち受けていたのは『絶対の死』と『避けられない地球破滅へのカウントダウン』だった。

 それを防いだのは……BBことジョーカー……即ちヨシキさんだ。

 ジョーカーの存在は、イクシアさんにもジェン先生にも言えないはずだ。

 だが、俺達はあの事件の詳細を報告するようにと命じられてしまった。

 なら……。


「みんな、代表して俺が報告してもいいかな」


 裏の事情、ジョーカーが関わっている以上……ここは俺が適任だから。


「俺は構わない。ユウキはこういった事情にも精通しているのだろう?」

「任せよう、ササハラ君」


 ショウスケと一之瀬さんの同意に他の皆も頷く。


「では、ドバイにおけるBBの護衛任務から現時刻まで起きた全ての出来事について報告をお願いします」

「はい。ですがその前に『かの存在』が今回大きく事件に関わっています。それらを含めて報告しても良いのでしょうか」

「……それは『あの姿』で動いた、と」

「……はい。あの現場にいた俺達は、BBの正体を知りました」

「自ら晒したのならば、必要な事……いえ、この場合は『正しい事』だと彼が判断したのでしょう。構いません、ジェンは元々こういった事態にも対応する時が来ると控えさせていた人間です。そして……イクシアさんも、もはや無関係ではいられないかもしれません」

「はい。秋宮の暗部に関わる事だとお見受けします。それらを全て知る覚悟は出来ています」


 ジェン先生はどこか緊張した面持ちでリョウカさんの言葉を待つ。

 だが……。


「私も……無関係ではない、ですか」

「はい。これまで、ユウキ君を始め、SSクラスの生徒は一度、その人物に命を『見逃して貰っています』。捉えようによっては『助けた』とも言えます。私の管理下にはない、協力関係でもない。ただ必要な事だけを自分の判断で行う……そんな、世界の裏側に存在する絶対者が」

「……絶対者、ですか。貴女が……リョウカさんがそう言う相手ですか」

「ええ。それに貴女の幻想を壊してしまうかもしれません。BBの正体にも関わる話ですから」

「それは……少し躊躇してしまいますね。ですが必要な事だと判断したのですね?」

「ええ。ユウキ君、話してください。ドバイの任務から今に至るまで、その全てを」

「分かりました。イクシアさん、もう聞こえていたと思いますが、俺達は今回、BBの護衛任務についていたんです」

「……はい、正直とてつもなく驚いています」




 そして俺は語る。あの任務から今に至るまでの全てを。

ドバイで暗躍していた富豪アルレヴィン家と、それに協力していたと思われる謎の男。

 アルレヴィン家が隠し持っていた、世界を滅ぼしかねない、極大の魔力結晶と呼ばれる物。

 臨界に達し、今まさに地球が滅びかねない状況に居合わせたBBと、その正体。

 俺達を守る為に力を振るい、世界の崩壊を一国への災害まで抑え込んだと思われる人物。

 異界に漂着し、そこで見たおぞましい存在。異界から脱出した俺達を待ち受けていた物。

 ノースレシアで今何が起きているのか。アラリエルが今どういう状況に陥っているのか。

 家族を人質に取られている事。グランディアのシュヴァインリッターと協力関係にある事。




「彼が、ジョーカーとしての正体を現したのですね」

「はい。そして彼の機転で俺達は命を救われました」

「……少々意外でしたが、彼も貴方達に生きて欲しいと思ったのでしょうね。しかし、予想はしていましたが、まさか内陸部、城の内部にゲートが生まれていたなんて……」

「あの魔力結晶のような物で、ゲートの出現位置をある程度コントロール出来るのだとしたら、今回のクーデターの裏にもドバイの時と同じような何者かが関わっているとは考えられませんか?」

「……ゲートの発生は偶発的な物だと思っていましたが、可能性が出てきますね。現状、我々は異界についても、ゲート発生のメカニズムについても何も分かっていません。何かしらの秘密が存在していてもおかしくありませんからね」


 全てを語り終えると、ジェン先生はジョーカーの存在について、何か薄々感じ取っていたのか、フロリダの件を呟きながら、どこか納得したような表情をしていた。

 だがイクシアさんは――


「BBが……そこまでの力を……魔力結晶の塊の奔流を打ち消すなんて……そんな事が可能なのは……まさか……いえ、しかしR博士がいるのなら……」


 酷く、狼狽えるような、混乱しているような、普段あまり見せない焦燥の混じった表情で何かを呟いていた。


「じゃあ今度は私の話を聞いてくれるかな? リョウカ、今回私はアンタの要請を受けて、単身でこの大陸に乗り込み、こうしてユウちゃん達を連れて来た。当然、その対価は支払って貰えるんだよね?」

「そうですね。今回、貴女には大変なリスクを背負い、自らの立場を顧みずこうして動いてくれた。支払える対価ならなんなりと言ってください」


 リョウカさん語ると、リオちゃんはニヤリと口を歪めた。


「アンタの身柄をこのまま私達の拠点まで引き連れていく。そのまま協力してもらうよ、リョウカ」

「……予想はしていましたが、説明をお願いしても?」


 まさかの身体で支払え(性的な意味ではない)とな!


「今回、私がこっちの大陸に来たのはまさに渡りに船だったんだよ。まぁ元々は使者を送るつもりだったんだけどね。でも私が来る事になった。そこで……ユウちゃんと同時に、アラリエル君を始めとした『反クーデター軍』とも接触出来た。これはとても大きな意味があるんだよ」

「あん? 俺に元々接触するつもりだとでも言うのか?」

「正確には、今のノースレシア王家を抑え込める勢力……かな? ねぇ、ここからはもうジョーカーの話はしないんだし、ノースレシアの支部長も話に加えて貰って良い?」

「……いいでしょう。ユウキ君、彼を呼んできてもらえますか?」

「了解です」


 どうやら、まだ他にも企み、なにか面倒な事情が隠れて良そうだな






「お久しぶりです、ミス・アキミヤ」

「お久しぶりですね、アートルム・レスト支部長。なるほど……以前よりこの組織とは関りがありましたが、まさか貴方が頭目を兼任していたとは思いもよりませんでした」

「……申し訳ありません。事が済み次第、シュヴァインリッターの支部長を辞任する所存です」

「ええ、そうして下さい。絶対中立の理念に反した以上、この場で私に処断されても文句は言えませんからね。ですが――今回の場合、貴方の存在はこれから先のノースレシアに必要になるでしょう。アラリエル君に忠誠を誓うのならば、今回は大目に見てあげましょう」

「……恩情、ありがたく」


 連れて来た支部長さんの顔を見るなり、リョウカさんはこちらが恐怖する程の威圧と共に、支部長に語り掛けた。

 ……絶対中立の立場を破るっていうのは、それだけ大きな罪なのだろう。


「リョウカ、その辺で止めて。まず私の話を聞いて欲しい。支部長さん、今そっちは背後に控えるエンドレシアを警戒して、クーデターを起こした連中に集中して挑めないって状況なんだよね? 他にも外部との通信に必要な拠点もクーデター軍に抑えられてるとか」

「そうなる。エンドレシアに隙を見せ攻め込まれでもしたら、もうクーデター軍どころの話ではない」


 まさに前門の竜、後門の虎ってヤツだな。


「もし、そのエンドレシアの軍が一切ノースレシアに手出し出来ない状況になったとしたら? そうしたら君達は何が出来る?」

「……そうなれば、憂いなく我々は王都奪還に向けて動けるだろうな。中継基地のある海洋の島に部隊を送る事も出来る。そうなれば、友好国であるセリュミエルアーチに援軍を要請する事も可能になるだろう」

「それ、どこまで本当? 私の目から見て君達の組織にそこまで動かせる手勢がいるようには見えなかったんだけど。個々の力量は高いけど、組織として見たらそうでもない。一個人をバラけさせる事なんて出来ないし、数の差を単独でひっくり返すような『強すぎる個』がそこまでいるようにも見えなかったけど」


 リオちゃんは、一体なんの仮定の話をしているのだろうか……?


「確かに今言ったのは理想だ。良くて島の奪還と王都奪還への布石を打つというのが現実的だ。しかし……今、我々の元には『ササハラユウキを含むSSクラスがいる』」


 ああ、それは勘定に入れてくれていい。協力すると俺はもう決めたのだから。

 ジェン先生はやはり、国家の争いに俺達を関わらせる事に若干の不満を述べるも、リョウカさんが今回は俺達の協力を許可してくれた。


「……なら、本当にその案で動いてみる?」

「だが、それには実際にエンドレシア側の動きを封じる事が必要不可欠だ。それこそ理想、机上の空論だ」

「じゃあそろそろ私がなんでこの女……リョウカの要請を受けてこの場所に来たのか、その理由を説明しようかな? ここまでユウちゃん達を連れて来るのはリョウカの頼みであって、私は私でこの大陸に用事があったんだよね」


 そう言うと、少しもったいぶりながらリオちゃんは語り出す。


「現在、クーデターを起こしているのはノースレシアだけじゃない。エンドレシア内部でも大規模なクーデターが進行中なんだよね。その首謀者であり代表が私なの」


 そんな爆弾発言をかましたのだった。

(´・ω・`)少し前に極寒の地に引っ越したせいでかなり体調がよろしくない……

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