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パラダイスシフト ~ある意味楽園に迷い込んだようです~  作者: 藍敦
十八章

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第二百四十二話

(´・ω・`)今章はこれにて終わりです。

書籍化についてお知らせ出来ると良いのですが、この話を予約投稿した段階ではまだ出来なかったんですよねー

 シュヴァインリッターの支部に到着するも、その物々しい様子に思わず足を止めてしまった。

 建物を囲む、恐らくシュヴァインリッターの構成員、一種の私兵団のような人間達。

 武装し、まるで中を警戒するように入り口を睨みつけていた。

 近くにいた剣士と思しき人間に話を聞いてみると――


「野次馬……いや、その逆翼勲章は……」


 念の為、アートルムさんに渡されたバッジを付けていたが、正解だったようだ。


「あ、これの事分かるんですね?」

「ああ、俺みたいに『知っている奴には通じる』。同士のようだから事情を説明するが……」


 聞くところによると、支部長が不在の間に見慣れない人間が訪ねて来たそうだ。

 だがその問い合わせ内容が少々不穏な物だったらしく、事情を詳しく聞く為に拘束すると言ったところ、激しく抵抗された上に『今すぐ支部長を連れてこないとこの支部を破壊する』と宣言、その言葉を信じさせるような力で建物を制圧してしまったそうな。


「で、話を聞く為に一人入っていった支部長を待っている、と」

「ああ……幸いこちらに死者は出ていない。と言うよりも、殺さないように手心を加えられている。恐らく本当に元々は支部長に用事があっただけなんだろうが……対応を誤ったな。時折、人知を超えた力を持つ人間がいる。そういう人間を丁重に持て成す訓練も受けてるはずなんだがな、特に『この大陸の支部』は」

「それだけ『個の力が突出している人』が多いんですね、この大陸って」

「ああ。有名な例で言うなら、セカンダリア大陸の『緋色の剣聖』みたいなヤツだな」


 なるほど、ディースさんみたいな人か。

 確かにあのクラスの人間がちょいちょい生まれるとか、最強の大陸と呼ばれるだけはあるわ。


「ササハラ君。私の力を使うべきですわね、ここは」

「そうだね、ハムちゃんに中の様子を探ってもらえないかな?」

「ええ。では、行って来なさいハム子」


 いや想像以上に修羅の国だなノースレシア!

 けどまぁ……シュヴァインリッターって、言うなれば『よくあるファンタジー物の冒険者ギルド』みたいな立ち位置だし、荒くれ者も多いのだろうか?

 そもそもシュヴァインリッターの前身になった組織って冒険者ギルドなんだっけ?

 なんかそういう話を歴史書で見た気がする。


「……どうやら外に逃げ遅れた人が何人かいるみたいですが、特に拘束もなにもされていませんわね。本当に支部長と話す事だけが目的だったみたいです」

「その相手が持ってきた話って、一体なんだったんだろう? いきなり拘束するなんてそりゃ、俺だって暴れはしないけど抵抗はするよ」


 逃げた人間の中に、対応した職員はいないかと訪ねる。

 すると、避難した人間の中から一人、受付の制服を着た女性がやって来た。


「あの、私が対応しました。その『女性』は『ここにササハラユウキが来ているか?』と尋ねられたのですが、支部長の指示で『ササハラユウキの名前を出す人間が現れたら必ず確保するように』と言われていたので……」

「……あの、ちなみにササハラユウキって知ってますか?」

「シュヴァインリッターの職員なら知っていて当然ですが、この大陸にいるはずがないので」


 あー……この姿の俺ってあんまり知名度がないんだろうか……?

 そもそも戦ってる時の映像くらいでしか今の姿の記録って残ってないし。

 ……おかしいな、最初の頃は大きい姿の方が有名だったのに。

 もう地球で過ごしている時間の方が長いから、地球の姿で定着しちゃったのか。


「すみません、支部長の正式な客人として俺が彼の元へ向かいます。その女性の話も気になりますし」

「い、いけません! まだ危険があるかも――」


 静止を振り切って中へ向かう。

 俺を探してこの場所に……? 誰だ、タイミング的にここまで来られる人間なんて想像出来ないぞ。それも女性だなんて……。


「ササハラ君、警戒を。どうやら相手の女性も一人のようですが、相当な手練れでしょう」

「でも、正直今の状況でこの場所で俺の名前を出すなら……こっちの状況を推理できるだけの情報を持ってる相手になるよね。下手な刺激はしないように友好的に接しよう」

「そう、ですわね。秋宮の手勢……? それとも……あの人物、ジョーカーの……?」

「俺は前者だと思う。ジョーカーは……本当はあんなに優しい人じゃないから」


 そう、実は引っかかっていたのだ。

 あの時、ジョーカーは『BBという便利な身分』を捨ててまで俺達と接触し、さらに『ジョーカー』という秘匿すべき正体をも俺達に晒した。まぁ正確には正体だとは言っていないけど、あの状況で分からない人間なんて俺達の中にはいない。

 つまり……『SSクラスを生かしておく必要があった』だけなのだ。


「じゃあ、支部長の部屋に向かおうか」




 部屋の扉の前に立つ。

 中を探る事も出来るだろうが、それで中の人物の不興を買う訳にはいかない。

 だが探るまでもなく、威圧的な声が部屋の中から漏れ聞こえて来た。


『そっちが勝手に警戒する分には構わないよ。けれども私の要件を無視したりしらを切るつもりなら、こっちも手段は択ばない。そっちの勢力全部、今すぐ潰しに行ってあげてもいいんだよ』

『それが本当に可能だと? 生憎、その手の脅しには慣れていてね。しかし君もおかしな事を言う。件の英雄が何故、地球ではなくこちらの世界、それも最果てのこの大陸にいると言うのだね?』


 次の瞬間、轟音と振動が廊下にいた俺達にも伝わって来た。

 すぐさま扉を蹴破り中へ踏み込み、支部長の安否を確認しようとするが――


「なんだ、やっぱりいたんじゃん。なんで隠すかな? や、ユウちゃんお久しぶり」

「な……リオちゃん!? え、何この惨状……」


 踏み込んだ先は、部屋の壁の一方向が消し炭になり、その余波で隣の建物の屋根すら一部えぐり取られるという、あまりにも恐ろしい光景が広がっていた。


「ごめんね? こっちも素人じゃない、本物の『武装組織』って事でやって来てるからさ、シュヴァインリッター程度に舐められる訳にはいかないってこと。それに……少しくらい力を見せつけないと話が進まない事だってある。ねぇ、そうでしょうアートルム支部長」

「……謝罪する。どうやら……ササハラユウキとも知り合いのようだな」

「こっちも切羽詰まってる状況でここに来た。問答無用でユウちゃん……それにクラスメイトがいる場所に案内してもらうよ。そっちの事だってある程度は調べてるんだ、こっちも。悪いようにはしないよ」

「ここで拒否する程の心臓も、判断力も持ち合わせていないさ」


 呆気に取られている間に、あれよあれよとリオちゃんは支部長さんを丸め込み、俺とキョウコさんも一緒に再びアジトへと戻る事になった。

 なんか俺達が来なくても、ごり押しでなんとかなってたかもなぁリオちゃんなら。






「へぇ、中々良い隠れ家だね。広さも良い感じだし、立地も良い。これ、たぶん奥の方で川に繋がってるでしょ」

「……ササハラユウキ、彼女は何者だ? 恐らくカタギの人間……表で活動する人間ではないだろうが」

「あー、まぁ裏の人間の中でもたぶん最上級かと」

「そうだね、たぶん長い付き合いになるから先に自己紹介しておこうか。USH幹部兼戦闘顧問のリオって言います。まぁ支部長クラスの人間なら、私の事は分かるんじゃない? 古いとはいえ指名手配されてるんだし」


 バーレストランからアジトへ繋がる通路の中でリオちゃんが自己紹介をする。

 そういえば彼女、指名手配されてるって言ってたな……かなり昔の事らしいけど。


「な……! 君があの『氷濁の魔導師』とは……」

「うわ、その呼び方なっつかしい! 表立って活動したのは九年くらい前が最後だったかなー?」

「リオちゃんなんか凄い二つ名持ってるね? 由来は?」

「私がガチの戦闘で氷を作ると『赤黒く濁る』から。どうして濁るかは想像にお任せします。でも大ヒントをあげましょう。人間って水分たっぷり含んでるんだよね」

「こわ」


 やっぱりこの子あれだよ……気に入った人には凄いフレンドリーだけど、絶対敵対しちゃいけない類の人だ。

 で、たぶん今目の前にあるアジトの扉だけど、俺達が来るって事でまた中の構成員が総出で待ち構えているんですよね?


「リオちゃん、向こうが警戒しててもあまり刺激しないようにお願い」

「りょーかい。いやぁ、こういうヒリついた空気もたまには良いものだね」


 良い訳あるか!

 扉が開くと、案の定の光景が広がっていた。

 ついでにその光景の中には武装したクラスメイト達もおりました。


「皆、警戒を解け。シュヴァインリッターの生徒諸君も頼む」

「うん、みんな警戒解いてくれて良いよ。この人俺の知り合いっていうか、結構仲良い友達だから」


 今の大人バージョンのリオちゃんを見たことがあるクラスメイトはいないはずだから、とりあえず警戒を解いてもらう。

 あ、やべ。キョウコさんに説明してなかった。道中絶対気になっていただろうな。


「知り合いって……結局支部で起きた問題ってなんだったんだ?」


 クラスの中から代表としてカイがそう訊ねて来る。

 しかしそれに答えたのは――


「あ、それ私が支部を制圧して立てこもり事件起こしたから。いやぁごめんね、お騒がせして」


 その瞬間、和らいでいた警戒心が再びMAXになるアジトの面々。

 刺激しないでって言ったじゃん!


「ちょ、穏便に済まそうって思ってたのに!」

「えー! だから私も嘘つかないで正直に説明したじゃん!」

「アートルムさん、何かお願いします!」


 とりあえずこの組織のお偉いさんっぽいアートルムさんに丸投げしましょう。


「あー……皆、武装解除。元々は支部側の対応が問題だったのが原因だ。そして腹を立てた彼女が意思を通した。彼女はもともと、彼等に用事があったみたいでな。とりあえず今は危険がないと判断した」


 そう彼が説明すると、まだ多少警戒はされているようだが、一先ず溢れ出る殺気や武装を解いてくれた。


「さて……どうやらこの先の話は私も聞く必要があるようだな?」

「そうだね、この大陸の支部長もいた方が助かるかな。出来れば内密に話せる場所で、生徒さん全員も一緒に」

「了解した。皆、着いてきたまえ。アラリエル様もご一緒に」


 戸惑う一同を共にアジトのさらに奥へ向かう。

 すると、リオちゃんの予想通り、近くに川が流れているのか、水流の音が聞こえて来た。


「なるほどね。水路から川に出られるようになってるんだ。本当良いアジトだね。たぶんこれ、相当古い時代の遺跡を改修したんでしょ。察するに……神話時代の遺跡かな」

「……正解だ。いやはや、恐れ入った」

「……なぁユウキ、この人って友達って言うけど、どこで知り合ったんだ? なんかこう……肌がひりつくというか、尋常じゃない気配がするんだけど」

「すげぇなカイ。たぶん彼女も警戒して気を張ってるから、ちょっと纏う空気が重いんだと思う」


 一応、別組織の中枢に単独で入り込んでいるって状況だしな、リオちゃんからしたら。


「ここだ、一応私の私室だが、広さも防音も十分だろう」


 通されたのは、豪華さはないが、ある程度の人数でミーティングをする事も考えられているであろう、小会議室のような広さの一室。

 早速俺達は席に着き、まずは自己紹介から始める事にした。


「ん-、自己紹介の必要ないんじゃない? だってこっちはみんなの事知ってるし、そっちだって何人かは顔見知りじゃん」

「え? あの、会った事ありましたっけ……?」

「……いや、初対面だ。だが顔だけは……知っている」

「僕も顔だけは知ってるかな? ……ロウヒさんの仲間、だよね? テロ組織の一員として、六光と一緒に前に顔写真を見せられた」


 あ! そういえばそうか! 懐かしいな、っていうかよく覚えてたな!

 確かオーストラリアの植樹地防衛任務の時だったか?


「む……俺は知らないな。転入前の事ならばしかたないか。しかしテロ組織とはまた……」

「いや、俺がお世話になっていた組織の事だからね?」

「え? いやいやいや、普通に会って話したじゃん。いやぁ久しぶりだね? 初めましての子も何人かいるけど」


 いや、だからそれは幼女バージョンの時の話でしょう。

 今の姿じゃさすがにわかりませんて。


「あ、そっか。じゃあヒント。私はこの中で『ミコトちゃん』『カナメくん』『カイくん』『セリアちゃん』と交戦した事があります。ちなみに全勝。さて、私は誰でしょう」

「む……私が負けた相手……だと……直近ではカズキ先生だけだが……」

「僕も心当たりはないかな」

「お、俺だってないぞ」

「……その魔力、耳に特徴は出ていないけど、ハーフエルフだよね、お姉さん」


 すると、何か思い当たったのかセリアさんが推理を披露する。


「……コウネと同じ水色の髪。ハーフエルフ……そうなると該当する知り合いで条件に当てはまるのは一人だけ、かな」

「おお? セリアちゃんやっぱり賢いね? 魔力を感じ取れる分簡単だったかな」

「うん。久しぶり、リオちゃん。いや、リオさん……なのかな?」

「どっちでもいいよ。はい、という訳で正解はオーストラリアの基地でユキさんと一緒に破壊の限りを尽くした工作員、リオでした。いやー……ユウちゃんと一緒で特異体質なんだよね。グランディアだと本来の姿に戻るの」


 ようやくネタばらしをするリオちゃんに驚く一同と、事態を把握していないショウスケとアラリエル、そしてコウネさん。

 完全に初対面だから変化が分からないんですね……。


「今は自己紹介より要件だけ伝えるね。えー、今回私は『秋宮リョウカ』の要請により、君達生徒の安否を確認に来ました。で、リョウカがこっちに向かってるから、合流地点を君達に教えて、まずは皆が揃うようにお膳立てするのが第一目標かな?」

「マジでか! リオちゃん、じゃあ地球からここまで来たの!? 早くない!? まだ一週間くらいしか経ってないのに」

「いや? 私がいたのはエンドレシア。で、そこでリョウカからの通信が入って、そんで単独でノースレシアに侵入してきたって訳。いやぁ、騒ぎ起こさないでここまで来るの、かなり難しかったよ? 子供の姿ならいくらでも油断させられるし警戒もされないけど、さすがにこの姿だとね?」

「……そいつはちょいとおかしくねぇか? 港は既に何重にも警備が置かれてる上に、大陸を結ぶカイヴォン大橋はあの狂信的な前魔王の部隊が厳重に封鎖してる。姉ちゃん一人でどうこう出来るもんじゃ――」


 いやいやアラリエルさん……このお姉さんマジもんの化け物なんですよ。

 たぶん、今の俺と全部を出し切って戦ったら……俺が負ける。

 何せ『記憶と記録を改ざんする』力を持っているのだから。純粋な戦闘力だけならまだ分はある。でも、その力を戦闘中に使われたら……。

 とりあえず現状、俺が知る中では二番目にやばい人だと教えておきます。

 一番? そんなんヨシキさんに決まってるでしょ。


「――まぁ、それくらい特異な力と武力を持ってるんだよ。あれだぜ? たぶん俺含めて全員で勝負挑んで、やっと勝てるかどうかってレベル」

「えー? それは買いかぶりすぎじゃない? あ、じゃあ問題の合流地点の方なんだけど、早速移動の手配頼めない? アートルムくん、君支部長だよね? 装甲車とかバス、観光バスでも良いから手配できない?」

「む、いきなりだが、指定された日にちはいつなのだ?」


 リョウカさん達と合流……通常なら三週間以上はかかる道程だが、リョウカさんにはジェット機がある。

 既にこちらに向かっているとなると……。


「明後日だよ。場所は旧マインズバレー廃鉱山。あの場所って穴ぼこで廃墟も沢山あるから、潜むにはもってこいなんだよね。なんなら私の組織の隠れ家だって一時あの場所にあったくらいだし」

「マインズバレー……か。車での移動ならなんとか間に合うが、目立つ。まだこちらまでクーデター軍は回っていないだろうが、どこから情報が洩れるか分かったものじゃない」


 確かに、バスでそんな場所に移動するとなると、必ず人目につく。

 なんらかの偽装が必要だが……。


「あ、そうだ。リオちゃん、アートルムさん、名案が一つあるんですがどうですかね?」








 街の外れ、荒野しか広がっていない関係で、あまり人々に利用されない門。

 東門に集まった俺達は、一台の大型『ツアーバス』の前に集まっていた。


「ほら、なんだかんだで俺達って旅行者みたいなものじゃん。外から来てる人間なんて俺達以外あまり見かけないし、集団ならツアー希望出してもおかしくないじゃん?」

「ああ、しかし……『旧跡巡りのツアーをシュヴァインリッターに依頼として出す』か。確かに表向きの理由程度にはなるが……」

「何もしないよりはマシでしょう? これで後はマインズバレー廃鉱山に向かうだけですよ」


 とりあえず、見つかっても言い訳が出来る偽装さえすれば後はどうとでもなる。

 実際依頼を出したのは外から来た俺達だし、依頼を受けたのは支部長であるアートルムさんだ。

 何か言われた時は『戦争前にお忍びで来ていたシェザード家令嬢の退屈を紛らわせるため』とでも言えば良い。

 こういう時、こっちの世界の大貴族がいると何かと助かるよ本当。


「でも実際、楽しみなんですよねぇ、旧時代の遺跡。なんでも、その昔はノースレシアでも屈指の大きさを誇る、大変立派な鉱山都市だったと聞きますし」

「ああ、俺も歴史の勉強でそう学んだ。大変学術的にも興味深い。状況が逼迫しているのは知っているが、やはり心が躍る」

「しかし……私達の失踪からこんな短期間で合流可能だなんて、どんな方法を……」


 とりあえずジェット機については到着してからのお楽しみって事で。


「じゃあみんな、出発だ。これは遠足じゃない、ガチの内政干渉になるであろう作戦の一端になると思う。この先の危険だけじゃない、そのさらに先の未来についても相応の覚悟をしてくれ」

「まぁ、頼んだのが俺の手前、本来締めるのは俺の役割なんだがな。おめぇら、頼む。理事長にも俺が協力を要請するつもりだが……ちっとばかし交渉材料になってくれや」


 皆、異を唱える様子はない。

 もう腹は括った。結構な修羅場をこれでもくぐってきたんだ。

 そして今回は……恐らくサーディスで起きた世界樹破壊事件に匹敵する、国の中枢に関わる大事件になる可能性も高い。

 だからこそ、覚悟が必要なのだ。

 しかしもう――


「お任せくださいまし。未来のUSH代表として、秋宮の総帥との駆け引き程度こなしてみせますわ」

「ま、僕もアラリエル君は貴重なナンパ仲間だからね。今度お礼におすすめの場所にでも遊びに連れて行ってよ」

「私も、この戦いに関わると決めた。アラリエル、お前に義を感じた。全力を尽くそう」

「俺も、だ。お袋さん助けるなら、絶対協力する。理事長に止められたって知らない、絶対だ」


 皆が決意の言葉を口にする。


「俺もまだ君とは関りが浅いが……君から聞いた話は全て事実だと受け入れよう。ユウキが、みんなが信じた君を俺も信じる。助けがいるのなら手を貸すのは当然だ」

「そうですねぇ、私の名前も利用できるならいくらでもしてくださいな。それに大切なクラスメイトですからね。報酬はノースレシアのグルメツアーで良いですよ」

「あ、私もそれがいいな。アラリエル、お願いね?」


 覚悟はしても、気負いはない。

 それが、俺達SSクラスが今日まで積んできた経験を元に成長した証だと俺は思う。


「さぁ、出発だ。ちなみに私は大型免許を持っていない関係で、運転は……」

「私がやるよ。そんじゃま、生徒諸君! これより『秋宮リョウカに会いに行こう! ドキドキワクワク旧跡巡りツアー』に出発いたしまーす!」


 そんな気の抜けるリオちゃんの宣言と共に、俺達を乗せたバスが走り出したのであった。


(´・ω・`)ただファミ通文庫ではないです。

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