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パラダイスシフト ~ある意味楽園に迷い込んだようです~  作者: 藍敦
十八章

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第二百四十話

(´・ω・`)ゼノブレイドの今後の展開も気になるね。

とりあえずブレイドシリーズはこれで終わりなのかな?

「皆様。アートルム様がお見えになりました」

「んあ? ああ、ここに通してくれ」

「!? アラリエル様!? 何故表の席に!」

「いちいち驚いてねぇで通せって。そっちの方が話も早いだろ」


 予告通りアートルムさんの来訪の知らせを受けると、店員のお姉さんがアラリエルの姿を見て大層驚いていた。

 やはりアラリエルは今……ここの実質的なトップ、旗印として屋面に立たされているのだろう。

 予想が当たっていた事に内心『逆にこれ面倒な事になりそうじゃね』なんて考えていると、アートルムさんが俺達のいるボックス席にやって来た。


「待たせたかな、SSクラスの諸君。既にアラリエル様と接触したという事は、君達の予想がほぼ正しかった……という事になるのだろうか」

「ですね。アラリエルは今、首都で起きたクーデターに対抗する為の、前王家とはまたさらに別な勢力の神輿として担がれている。違いますか?」

「神輿とは言ってくれる。彼は正当な、本来であれば玉座に最もふさわしいお方だ」

「まぁおっさんの発言については今言い合うつもりはねぇよ。で、だ。そっちもそっちで事情があるんだろ。そっちの状況を説明してくれねぇか?」

「それはこちらもお願いしたい。君達は今この隔絶された大陸に唐突に現れた。砦から来た……という話だが」


 二人も語るべきことが沢山あるのだろうが、まずは俺達が保護を求める事になった経緯を……ドバイの事件から合わせて全て説明する。

『ゲートのような物が大量に現れた事』も『異界からと思われる魔物が現れた事』も、そして『突発的な事故により異界に続くゲートが発生し飲み込まれた』事も。

 流石にジョーカーに纏わる事だけはこの場で話す訳にはいかないからな。

 あくまで偶発的に生まれたゲートに飲み込まれた体で説明する。




「地球から直接異界に……」

「いやそこじゃねぇ! なんで異界からゲートをくぐったらノースレシアに……砦の中に出て来るんだよ! 異界のゲートはサーディス大陸の海上にあったはずだろ」


 アラリエル達は外部からの情報が遮断されていた。

 それに加えて……異界へのゲートの消失は、本来であれば一般人に知られていない極秘事項だ。俺もカイと一之瀬さんに教えて貰ったくらいなのだから。

 異界へと続くゲートの消失。その事実を伝え、その消えたゲートがなんの因果か、首都の砦内部発生した事を知らせる。


「連中、異界行きのゲートを抑えてるって訳か。この情報は恐らくどこにも出てねぇだろうな。しかしなんでまたあの連中が城を占拠した後にあの場所に発生したんだクソが」


 ……思えば、ドバイで起きた小規模のゲートの発生と魔物の出現や、日本の福岡海中で発生したと思われる異界へと続くゲート、そして……膨大なエネルギーを相殺する為にジョーカーが対消滅させた力場が変化した異界へのゲート。

 これらから推理すると『ゲートの発生は人為的に操作する事が出来る』のではないだろうか?

 それだけじゃない。そうなってくると、一昨年のフロリダ海中に出来たゲートだって……。


「……何者かがある程度ゲートの発生を操作出来る、とは考えられませんか?」


 俺は今自分の中で浮かび上がった考えを披露する。

 思えばタイミングと場所の都合が良すぎるじゃないか。

 始めは何か神がかり的な物、くだらないと思いつつも『運命』なんて物も考えた。

 だが、何らかの方法で暗躍している人間がいるって方が説得力もある。


『一度失策を犯し、対グランディアの交渉の席に着けなくなった、強硬派の議員が所属する政権が治めるアメリカ』の領海内に発生したゲート。

『暗躍する上で邪魔な存在(俺)がいる国で発生した危険な異界のゲート』

『国連に加盟せずに独自にグランディアとコネクションを持つ人間が勢力を拡大しつつあるドバイで発生した大規模なゲート災害』

『その災害が起きる原因になったアルレヴィン家と接触していた謎の男』


 こうしてリストアップすると、何者かの思惑が、意思が介在していたと見た方が自然ではないか。

 そして今度は『クーデターが起き、国が荒れているタイミングでクーデターを起こした側が占拠した砦の中に異界へのゲートが現れる』もう、完全に人為的としか思えない。


「まぁあくまで俺の考え。とまぁここまでが俺達がこの場所に辿り着くまでの経緯って訳だ」

「まさかそんな事が地球でも起きていたなんて……しかしその詳細は君達も知ることが出来ない、と」

「ええ。現状この国は外部と自由に交信出来ないみたいですし」

「ああ。悔しいが、他大陸との通信に必要な海上の中継局をクーデター軍に奪われてしまっている。場所も場所だ、中々奪還する事も難しい上に、そちらに戦力を割くには少々背後に抱える敵が厄介だ」

「クーデター軍がいつ首都の外にまで侵攻の手を伸ばしてくるか分からない、ですか?」

「いや、その程度ならばシュヴァインリッターとして戦っている精鋭揃いの我々で対処出来る。問題は……『エンドレシア大陸』だ」


 エンドレシア大陸。かつてノースレシア大陸と一つの大陸であったはずが、神話の時代にノースレシアを治めていた『原初の魔王』の逆鱗に触れ、大陸を剣により両断、別たれてしまったという伝説が残っている。

 初めて聞いた時は『神話なんてやっぱり誇張されて伝わってるんだろうな』と思っていたが……原初の魔王がヨシキさんの前世であり、そのヨシキさんがジョーカーとして振るった一撃の強さは、この大陸を両断したとしてもおかしくないと思えて来た。

 ……ガチで実話なんじゃないか、これ。


「エンドレシア大陸とノースレシア大陸って、今は冷戦状態だと聞いていますが、未だに侵略を警戒しているんですか?」


 コウネさんの疑問に答えたのは、アートルムさんではなくアラリエルだった。


「ああ、どうやら向こうも早急に資源が欲しいみたいでな、去年くらいからこの大陸に密入国してくる人間が増えて来てやがる。だから互いの大陸を繋ぐ港も封鎖されているし、大陸間を結ぶ『カイヴォン大橋』も互いに閉鎖している。で、こっち側の橋を閉鎖しているのはクーデターを起こした連中じゃねぇ、前魔王に従っていた元正規兵だ。連中はクーデター軍にも俺達にも味方しねぇ、あくまで前魔王の命令を全うしているだけってスタンスだ。連中を動かせるのは『正当な魔王による命令』だけだろうよ」


 なんとも……こっちも不穏だけどエンドレシアも不穏な様子なのか。

 確かエンドレシアとノースレシアの国力差は……規模も軍事力もエンドレシアが上だったはず。それなのに侵略戦争を戦い抜いてこられたのは、ひとえにノースレシアの人間の『個の武力が突出している』からに他ならない。つまり人手を分けた場合、集団としての戦力が大幅に下がりやすいのだ、他の大陸よりも。


「しかしオメェらが俺達に協力してくれるってんなら、話は変わって来る。中継基地の奪還だって夢じゃねぇ……と、考えているんだろうよ、アートルムのおっさんは」

「……そうですね。アラリエル様の意に反するでしょうが」


 ふむ? 俺達としても外部と連絡が取れるのなら協力もやぶさかではないのだが。


「確かに俺もオメェらがここに来た以上協力を求めたいとは思っている。だがそれは極めて個人的な目的の為だ。こっちの事情に巻き込みたい訳じゃねぇ。つっても、結果的に巻き込む事に変わりはないんだろうがな」

「なんかハッキリしないな。アラリエルは俺達に何を協力してもらいたいんだ?」


 アラリエルに問うと、何故かアートルムさんが少しだけ顔をしかめた。

 まるで、アラリエルの頼みを俺達が聞くのを嫌がっているような、そんな印象を受ける。


「砦からせっかく逃げ出して来たお前らには悪いが、俺は砦の奪還、いや首都の奪還を推し進めてぇと思ってる……いや違うな、人質の救出を手助けして欲しい」

「人質……まさか前王の関係者か?」

「いや、前王やその妻も腹心も全員殺された。人質ってのは……俺のお袋だ」

「分かった、手伝う」


 即答する。


「な、ユウキ! 流石にこれは即決するような内容じゃないだろ!?」

「だな。だから、少なくとも俺個人はアラリエルに協力する」

「頼んだのは俺だが、このメガネ、コトウの言う通りだぜ? とりあえず相談くらいしろ」

「いやなぁ……でも俺が元々オーストラリアでみんなの敵に回ったのだって、元をただせばイクシアさんを助ける為……つまりアラリエルと同じ状況だった訳だし。そんなの俺が協力しない訳ないでしょ」


 俺の予想と、かつてシュヴァ学の入学式の夜、イクシアさんと二人で食べに行った高級寿司屋の中で偶然聞いた、アラリエル親子の会話。

 恐らくアラリエルのお母さんは、アラリエルが魔王後継者争いから離れる為に地球に渡ったのではないかと考えられる。


『……あの野郎の施しかよ。アイツ、お袋の事狙ってるに決まってる。俺達は誇り高い北方魔族なんだぞ、なんでこんな田舎の金持ちごときに面倒見られなきゃいけねぇんだ』

『……甲田さんは別にそんな下心で私達を引き取ったんじゃないわ。あの人……お父さんに報いる為なの。だからそんな風に言わないで頂戴……』


 恐らく、コウダという人間は先々代の魔王、アラリエルの父親となんらかの取り決めをしていたのではないだろうか。

 だからこそ二人は身分を隠し地球に移り住む事が出来た。

 だが、事態はそれを許してくれなかった。

 コウダとやらが、アラリエルを新たな旗印に掲げようと動き出したのではないだろうか? 一度、アラリエルからそんな話を聞かされた事がある。

 で、どうして急にアラリエルを担ぎ上げようとしたのか。その答えが――今回のクーデターだろう。

 早い段階でこのクーデターの動きを掴んでいたからこそ、その魔王継承の騒動に便乗し、アラリエルこそが正当な後継者だと、第三の勢力として参戦しようと画策した、と。

 俺はここまでの推理をアラリエルに語る。


「はぁ……お前ってやっぱり時々超能力者になるな? そりゃ洞察力ってだけじゃ説明がつかねぇぜ?」

「こればっかりは経験のなせる技でございます」


 主にゲームとか漫画とかいろんなシチュエーション見て来た人間なので。


「……末恐ろしいな。洞察を通り越した何か、一種の魔眼である『天眼』に通ずる何かのようだ。これが……世界を救った英雄の力か」

「そんなんじゃないですよ。俺の運が良いってのと、みんなの話をちゃんと覚えてる。それだけです」

「まぁ、限りなくお前は正解に近づいた訳だが、そこに捕捉すると、俺とお袋はクーデターを起こした張本人、今現在新たな魔王を名乗る人間と顔を会わせた結果、俺はむざむざ破れてお袋を……奪われたって事だ。情けない話だがな」


 そう言ったアラリエルの手が、テーブルに強くめり込み、軋み音を響かせる。


「……アラリエルは中継基地の奪還に力を割いて、その動きを悟られてお袋さんに危険が及ぶのを避けたい。総力戦、つまり首都を奪還する事にこそ全力を使うべきだって言うんだよな?」

「そうなるな。が、結局この場合も後ろが疎かになるのは変わりねぇ。間違いなくエンドレシア側の間者も俺達の動きを探ってる。ここで大規模な攻勢に出たら、間違いなく後ろが疎かになる。かといって手を抜いた手勢でクーデター軍に挑んでも苦戦は必至だ。だからこそ、お前らの協力が必要になる」

「最悪、俺達とアラリエルだけで首都を落とすって訳か?」

「……ああ。だが間違いなくそれでも各方面に戦力を割く以上、総力戦になる。首都に住む無関係の一般人の被害も出るだろうよ。ソイツは……俺が望む事じゃねぇ。ここまで戦力が揃ってもまだ手詰まりなんだよ、少なくとも俺の希望に沿って動こうとすると」


 ……そこまで慎重にならないといけない相手が背後にも正面にもいる。

 なら、聞くべきことはこれだ。


「あの、アラリエル君がそこまで警戒する相手、いえ一度は敗北を喫した相手。クーデター軍のトップはどういう人物なのでしょう? まずは相手方の戦力分析も必要ではなくて?」

「あ、俺もそれ聞こうとしてた。正直今のアラリエルに勝つのって相当難しいでしょ」


 俺は打ち破る事が出来たが、行動を束縛する魔眼に加え、元々の戦闘力の高さもある。

 シュヴァ学で鍛えられたアラリエルが負けて母親を奪われる……そりゃどんな相手だ。


「前魔王『シリウス』は、先々代の魔王、つまり俺の親父の暗殺に関わったと見ている人間もいる。真実はどうあれ、半ば簒奪の様な形で魔王に収まったのが前魔王シリウスだ。だが、そんな裏工作に通じている魔王があっさりとクーデター軍の首領に殺された。なんでだと思う?」

「……その首領が常軌を逸した強さを持っていた、か?」

「半分正解だ。たぶんお前と戦っても五分かそこらだと俺は見るな。だが、それだけじゃない。シリウスも『まさか自分の娘に殺されるとは夢にも思わなかった』だろうよ」


 そう、アラリエルは衝撃の事実を告げた。


(´・ω・`)クロスの続き待ってます。

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