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パラダイスシフト ~ある意味楽園に迷い込んだようです~  作者: 藍敦
十八章

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第二百三十九話

(´・ω・`)あと今年はマリオRPGリメイク来るね! 楽しみだ!


「どうやら本当にシュヴァインリッターの生徒のようだな。先の非礼、お詫びしよう」

「いえ、それくらい警戒しているのなら、そちらにも相応の事情があるのでしょう? そして……それは今この大陸を取り巻く状況に大きく関係している。違いますか?」


 皆と再び通された応接室。

 俺達が学生であると確認が取れた事で、漂っていた緊張感が若干薄らいだのを感じる。

 そこでようやく俺も、支部長の対応に裏があるのだろうと、踏み込んだ質問をしてみる。


「説明する前に、君達に向かって欲しい場所がある。そこに後から私も合流しよう。そこで全てを話すと約束する。どうかこちらの状況を察して欲しい」

「……みんな、とりあえず俺がここで支部長とどんなやり取りをしたのか説明する。その上で、この提案に乗るかどうか意見を出して欲しい」


 ここに来てからの全てのやり取り、過剰なまでの警戒、俺達の人数に強く反応した時の様子、これら全てから想定する。全ての可能性を。


「俺はこの人の指示に従ってみても良いと考える。たぶんだけど……この人は『極めて俺達の事情に詳しい人物から情報を得ている』可能性があるんだ」

「それはどういう事だ、ササハラ君」

「まだ確証は持てないけどさ、このクーデターに思うところのある様子だ。もしかしたら『抵抗しなければいけない理由』がシュヴァインリッターの規則以外にあるんじゃないかって」


 一之瀬さんにそう説明してみせると、支部長さんの表情が微かに動いたのが見て取れた。

 ……当たらずとも遠からずかな。


「そうだな、ここで悩むよりも事態が動く方に行動すべきだろう。俺もユウキに賛成だ」

「そうですねぇ、私もなんとなくですが……ユウキ君が言いたい事、分かる気がします」

「な、なんだ? 俺はさっぱり分からないぞ? 俺達に詳しい人間ってなんの事だ?」

「残念だけど僕もカイもこういうのは向いてないからね。うちの知恵者が賛成するなら従うよ」


 全員からの賛同を得られたことで、改めて支部長にこちらの方針を伝える。


「流石のSSクラスだ。よくこれだけの会話でこちらの状況を読み解こうとした。君達はこの建物を出た後、街の東、川に面している地区へ向かって欲しい。そこに観光客向けの隠れた名店ってヤツがある。私からの紹介だと伝えてくれれば問題ないはずだ。店の名前は『プロミスメイデン』神話時代から続くとされる由緒正しいレストランバーだ」

「了解しました。その場所に支部長からの紹介だと伝えたら良いのですね?」

「ああ、すっかり名乗り遅れてしまったな。私の名前は『アートルム・レスト』と言う。アートルムからの紹介だと伝えて欲しい。念の為これも渡しておこう」


 そう言うと、支部長あらためアートルムさんは、小さな翼と豚の蹄が重なったバッジを手渡してくれた。


「あら? これはシュヴァインリッター所属証明のバッジ……とは少し違いますね? 翼と蹄の重なり方が逆です」

「詳しいな。ああ、これは特別な物だ。これも一緒に店主に見せると良い」


 そう指示され、俺達はこの支部を後にした。

 街の東……川の方って事は、俺達が来た方向だな。もしかして運河としても利用しているのだろうか? 港の様な区画でもあるのかね。




「ユウキ。先程は濁していたが、俺達の事情に詳しい人間に心当たりがあるんだろう?」

「ああ。そうか、ショウスケは知らないんだったな。実は俺達のクラスメイトの最後の一人……問題児でもあるアラリエルは『この大陸と深い関わりがある』ヤツなんだよ。今の状況から察するに――」

「クーデターを起こした人間に対して、さらに反旗を翻す勢力がいるとしたら、その旗印にされていても不思議じゃない、ということですよね?」

「流石コウネさん。あの場で指摘すると警戒されかねないかけど、たぶんこの先に……いるんじゃないかな? 俺はもう一年以上会ってないけど」

「旗印にされる程の人物か。クーデターにより殺害された前魔王には一人娘がいると聞くが、その人物ではないとなると……先々代の魔王の遺児……か?」

「……お前グランディアの歴史に精通しすぎだろ。センジュモン大学で何学んでたんだよ」

「グランディアの歴史や風俗、風習。あらゆる勢力の体系は学んでいるが」


 正解ですよ。いやマジでコウネさんと合わせたらグランディアで知らない事はないんじゃないかこれ。


「この辺りじゃない? ほら、運河も港も見えるし」

「だね。この辺りのお店ってなると……手分けして探してみようか」


 運河である以上人の出入りも激しいのだろう。

 今でこそ外部の人間の数は少ないが、きっとここも観光スポットの一つのはず。

 それを証明するように、飲食店や宿が密集している区画もある。

 が……『隠れ家的な店』だと予測を立て、あえてそういう区画を外れて探してみる。


「……あった『プロミスメイデン』約束の乙女か。みんなに連絡しよう」


 少しして、みんながこの場所に集合する。


「へー、確かに目立たない場所にあるお店だけど、建物はちゃんとしてるし結構大きいね」

「川の近くにある岩山に面した立地。お世辞にも日当たりはよろしくありませんが、隠れ家感を演出するには良いかもしれませんわね」

「たぶん何か目的があって紹介されたお店ですけれど、お料理にも興味が湧きますねぇ」


 女子達のそんな評価。

 いやいや……たぶんここ、どこかの勢力の秘密の会合場所とかそういう感じなんじゃないですか? そんな真っ当にお店の外観レビューはしなくても……。


 店に入ると、思ったよりも広く大きいバーカウンターと、ボックス席、テーブルとイスが雑多に並べられた空間と、中々に大人数を収容できそうなこじゃれた空間が広がっていた。


「いらっしゃいませー! 何名様でしょうか?」

「八人です。後、マスターさんはいらっしゃいますでしょうか?」

「マスターですか? ではカウンター席が丁度空いていますので、案内しますね。マスターは基本カウンター席の対応をしていますのでー」


 店員さんは、やはり土地柄か魔族のお姉さんだった。

 なんだろう……エルフとはまた違った蠱惑的な魅力を感じるのは何故なのだろう?

 こう、イメージとしてサキュバス的な物が先行しているからでしょうか。


「ユウキ、さっきのバッジは持っているな?」

「ああ。一応これを渡して支部長の名前を出してみる」


 カウンター席に座ると、マスターと思われる壮年の男性がこちらにやってきた。

 アッシュグレイの短髪に、小さな羽が生えている魔族の男性。

 渋い。渋すぎる。絶対に合わない筈の羽、サキュバスにしか許されていないオプションなのに普通に渋くて似合ってる。


「いらっしゃいませ。珍しいですね、観光ですか?」

「そんなところです。今は中々出国できなくて」


 軽い受け答えした後に、バッジを差し出す。


「すみませんコレを。アートルムさんの紹介で俺達来たんです。なんでも後でアートルムさんもこちらにいらっしゃるようです」

「おや、そうだったんですか。ちょっとキミ、このお客さん達をVIPルーム、その奥にお通ししてあげてくれないかな?」

「分かりましたー! じゃあお席場所変更させてもらいますねー。着いてきてくださーい」


 なんか……凄い自然な流れで通されたな。なんか特別な反応でもないし、普通に良客として対応してもらっているような。

 お店の深部にある個室。隠れ家の中にあるさらに隠れ家のような、それでいてお洒落なインテリアやアクアリウム、計算されて配置された間接照明がうっすらと室内を照らす。


「おお……すげえ……ええと、ここで待てば良いんですか?」

「いいえーここじゃないんですよー。とりあえず今からここで見る事は他言無用でお願いしますね? そのバッジを持っている以上、口は堅いと思いますけどー」


 そういうと、店員のお姉さんは壁に埋め込まれているアクアリウムの水槽に、何やら餌を与え始めた。

 するとその瞬間、水槽が輝いたかと思うと、埋め込まれた壁ごと動き出し、通路が現れた。


「えーと……」


 店員のお姉さんが咳ばらいをする。


「ではこれより深部にご案内します。ここからは客と店という関係ではございません。こちらに害を成すと判断した場合は刺し違えてでも貴方達を排除するつもりで動きます。それを踏まえてお進みください」


 別人のように変化する口調と表情。

 人の良さそうな、愛想のいい姿は鳴りを潜め、冷たい印象を受ける言葉と共に通路の先へ向かって行ってしまった。


「……ササハラ君の予想通り、どうやらここは何か組織のカモフラージュの為の店、ということらしいな」

「実はこういう店、初めてじゃなかったりする。リオちゃんとかロウヒさんの組織もこういう感じで、お店でカモフラージュしてたんだよね」

「へぇ、そうだったんだ。じゃあ……ちょっとワクワクするけど、警戒しつつ向かおうか」


 武器を構えはしないが、いつでも戦えるように警戒しながら、薄暗い通路を進む。

 すると、途中から壁が岩肌に変わり、唐突に通路の終わりが現れる。

 大きな扉の前で店員のお姉さんがこちらを待ち構えていたからだ。


「ではこの先でお待ちください。アートルム様が来るまではこちらから貴方達への接触は控えます。そちらも探るような真似はお控えくださいね」

「分かりました」


 つまり扉の向こうには一人、ないしは多数の人間が待機している、と。

 扉が開くと、そこは先程までいたバーレストランと似た内装の、けれども遥かに広く席数の多い空間だった。

 その席を埋める人間達。魔族だけじゃない、エルフや普通の人間、獣人だっている。

 種族関係なく、なんらかの目的を持って集まっている集団だろう。

 一斉にこちらに集まる視線。それらを極力気にしないように努めながら、空いているブースに通される。


「……ある意味予想通りかな」

「殺気……ではないのは分かるけど、探るような気配がして落ち着かないな」

「ああ、そうだな。カイ……お前もすぐに武器を召喚出来るように集中しておくと良い」


 そう警戒をしつつも、こちらのブースを窺う数多の視線。

 だがその時――


「お前ら!? なんでこんなところにいやがるんだ!? おい!」


 店内に響き渡るような驚愕の声。

 その声の主は――


「お、予想が当たったか。おーいアラリエル、お前もこっち来いよ。席まだ空いてるから」

「おう、じゃあ詰めてくれ……じゃねぇ! なんでオメェらがここにいるんだって話だ! つぅかユウキ、お前……無事にクラスに戻れたのかよ」

「いやーお互い情報交換に時間がかかりそうだな? とりあえず座れ。結構色々あったんだよこっちも。まぁ情報交換の前にアートルムっていう人が来るから、その後でな」

「おっさんが来んのか。……分かった、それまでここで俺も待つわ」


 そう言って、若干不機嫌そうというか、我慢させられている事が不満そうなアラリエルと共に、久しぶりに揃ったSSクラス初期メンバー+ショウスケで過ごすのだった。

 ああ……早速ショウスケが自己紹介でもしたそうにソワソワしているけど、まず少し待とう。

 なんかアラリエルが面倒そうな反応するだろうから……。


「まぁ細かい事はまだ聞かないでおく。だがこれだけは言わせろ。間違いなくお前らはこの先俺の都合に巻き込む事になる。それだけはワリィと思う。だが相応の報酬は支払わせる。先にそれだけは宣言しておくぜ『エージェントユウキサマ』」

「マジかよ。まぁ予想はついてんだけどな。ちなみに今俺の預金はとんでもない事になってるから金銭じゃあんまり喜ばないぞ?」

「あん? じゃあ綺麗な姉ちゃんでも紹介するわ。いや……店に連れてってやる。奢りだ」

「グランディアのそういう店とか凄い興味はあるけど間違えても女性陣の前でそういう事言うんじゃねぇよ! なんだよこの空気! お前の所為だぞ!」

「ケケケ。ま、それでも礼はさせてもらう。英雄サマが満足するような品なんて中々用意出来ねぇだろうけどな。どうせセリュミエルあたりからかなり貰ってるだろお前」


 いつもの調子で軽口を言い合い、他の人間とは出来ない様なギリギリアウトな下ネタを交えて、軽いジャブのように報酬について口にするアラリエルと俺。

 そんな俺達の様子が珍しいのが、若干注意をしたくてうずうずしているものの、珍しそうな表情を浮かべたショウスケの様子が気になる。


「んで……そっちの眼鏡のお前。誰だ? 一緒にいるって事はなんらかの作戦の協力者ってとこか」

「……ようやくユウキ以外に話を振ってくれたな。初めまして、アラリエル君。自分はコトウショウスケと言う。先月からSSクラスに新たに配属された生徒の一人だ」

「……あん? お前が? いや、そもそもお前……学園じゃ見かけたことがねぇな。仮にもSSに配属されたってんなら、学園で頭角を現していてもおかしくねぇ。つまりお前は……外部から転入してきたって事か」


 驚いた。やっぱりこいつ、よく周囲を観察している上にしっかりと暗記してる。

 いや、前々から頭が良いって事はわかってたけども。


「アラリエル。こいつあれ、俺の高校時代の同級生でライバル的なヤツだよ。当時の俺と素手の格闘でほぼ互角だったんだ。ちなみに生粋の魔術師タイプ」

「へぇ、じゃあ俺と似たタイプって事か。こんな場所じゃなきゃ新人に先輩から洗礼の一つでもかましてやりてぇとこだが……今はそうもいかねぇ。まぁ仲良くしようや、コトウ」

「ああ、宜しく頼む。流石にSSクラスで修羅場をくぐってきただけはあるように見える。一応自分は外部から転入してきた身だ。ちなみに今ではもうユウキと殴り合っても勝てる見込みはゼロだ」

「ま、だろうな。たぶんこの中じゃ――素手だろうがなんだろうが、コイツに勝てる見込みがあるのは俺とカナメだけだ」


 うん、正解。


「お? 相変わらず僕のこと買ってるね? アラリエル君久しぶりだけど、こっちでなにか面白い事あった?」

「ああん、そんな状況なわけねぇだろ? と言いてぇとこだが、ちょいと絶世の美女に熱烈なラブコール喰らって参ってるとこだ。ちなみに身体もツラも最高級だ」

「本当かい? それは非常に羨ましい話だけど――」


 そんなアラリエルとカナメのやりとり。

 この一連の一幕を懐かしいと感じているのは、どうやら俺だけではなかったようだ。

 肩をすくめつつも、どこか苦笑いを浮かべる一之瀬さんに、話の詳細を聞きたそうなカイ。

 興味深げに話しをききつつも、何やら考え込んでるコウネさんに、もう少し声量を落とせと注意するキョウコさん。


「……なるほど、確かに俺とはあまり気の合うタイプではなさそうだ。だが……良い空気を生み出す男だな。それに、相当キレ者な印象を受ける」

「正解。ま、ショウスケもあまり正面から受け止めないで、受け流しつつ付き合ってくといいぜ。こいつ、結構頼りになるからさ」


 そう小声でショウスケに助言するのであった。


(´・ω・`)SO2リメイクも楽しみだけど……追加要素ってあるのかなぁ……。

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