表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
256/315

第二百三十七話

(´・ω・`)そういえばPSO2NGS、最近面白いね

主にクリエイティブスペースがだけど。

 無造作に転がされていた物。

 それは高そうという言葉よりも『大切な物』という言葉が当てはまりそうな杖であったり、誰がどう見ても『資格ある物以外が座る事は許されないであろう椅子』であったり、『本来であれば国の象徴になりえるであろう頭上を飾る為の宝冠』であったり。

 分かる人が見れば『国の重鎮、導く者が使うべきであろう品』を含む、数多くの品、豪華な鎧、儀礼剣が打ち捨てられていたのだった。


「なんだ……これどういう事だよ……」


 クーデターでも起きたのか……? この国を取り巻く状況がさっぱり分からない。

 でももし……王位を簒奪する為のクーデターなら、玉座も王冠も、絶対に自分達で使いたいはずだ、簒奪の証として。


「ただのクーデターじゃない……のか……?」


 この地下牢に囚われている人間に話を聞いてみるべきだろうか?

 いや、でも今は……。


「本来の目的を一時の感情で忘れるなんてエージェント失格だな」


 俺は新しく徴収された品、俺達の装備を根こそぎ回収し、静かに元の部屋に戻るのだった。






「みんな、装備の回収は出来たけれど、問題発生だ」


 俺は知りえた情報全てをみんなと共有する。

 恐らく、ここの内情に最も詳しいのはコウネさんだ。

 彼女は元々グランディアで情報を集めていた。ならば、この国の直近の情勢にもある程度通じているだろう。


「以前よりノースレシア内で王位継承をめぐる争いは起きていました。アラリエル君が学園を去ったのも、恐らくそれによるものだったのでしょう。しかし情報では、当代の魔王である『シリウス・ノースレシア』が病に臥せ『次の魔王を誰にするか揉めていた』程度の情報しか入手出来ていませんでした。この国は……他国の介入が難しい土地柄と、下手に刺激し逆鱗に触れては、戦争にまで発展しかねないほど『圧倒的な武力を持っている』のです。ですので過度に干渉、情報収集を行う事が出来ない、というのが実情です」

「なるほど……なら最悪、既に魔王様は亡くなっている事も考えて動かないといけない、か。なぁ、アラリエルはこの城に閉じ込められていると思うか?」


 もう一つ。アラリエル自身がもしもこの城に今囚われているなら……俺個人としては救い出したい。だが、まずは皆でここを抜け出すのが一番の目標だ。


「分かりません。今この城を使っているのがどんな勢力なのかすらわかりませんから……ですので、今は一先ず脱出を優先しましょう」

「結局はそうなるか。分かった。一応さっき装備の回収で地上に向かう階段の位置もある程度把握出来たから――今回だけは強行突破だ。立ち塞がる相手は『どんな手段でも倒す』方向で」


 立ち止まる訳にはいかない。いや、そもそもここは敵地であり自分達は今まさに命の危険に晒されているかもしれないのだ。

 なら、殺す。邪魔する相手に容赦はしない。

 ましてやお前らは簒奪者の可能性すらある『他国に認められていない、王家を騙る者』ってのが濃厚だ。

 俺達は隔離されていた部屋を抜け出し――容赦なく、見張りや巡回の兵士を手にかけて外へ向かうのだった。




「……みんなごめん。手を汚させた」

「いや、今になって実感している。俺達は生徒ではなく戦士、生きる為に戦地を駆る人間だったのだと。これまでお前だけに背負わせていた重責……俺も共に背負わせて貰う」

「私もこれまで、心のどこかで忌避していたのだと思う。だが……この状況、甘い事を言っていられない。今、私達は命の危険に晒されていたのだな。こちらを発見した兵士の様子を見て確信出来た」

「だね。あれ、デバイスとして使う武器じゃなかったよ。確実にこっちを殺すつもりの武器を使っていたし」


 砦の中を走り抜け、皆が返り血を浴びながら外を目指す。

 そもそも『ここの兵士が強すぎる』のだ。

 スタンなんて狙えない、強靭過ぎる身体。不意打ちで仕留める事が出来ない程の反射神経。

 伊達に『最強の国』『最強の北方魔族』と呼ばれてはいないって事だ。

 下手をしたらアラリエルクラスの人間だってゴロゴロいるのかもしれない。


「正門から抜けるのはまず不可能だし、一先ず外壁の上に出るルートを探そう」

「了解。コウネ、要所要所で扉を氷で封印して。攪乱の意味もこめて関係ない扉も」

「分かりました。通路も幾つか氷で封印します」

「ユウキ君、どこか外壁から外に飛び降りる気だね? 僕が最初に降りて探るよ」

「分かった。そっか、カナメの武器って空中で足場にもなるのか」


 ある程度の高さならどうとでもなるが、限度があるからな。空中でのジャンプだって完全に身体にかかる重力を消せるわけじゃない。高高度から飛び降りて、地面すれすれでもう一度ジャンプで勢いを殺す……なんて真似は出来ない。

 こうなるとカナメの武器の力、空間に武器を固定する能力は有用だ。

 だが、俺達は砦の外壁に上り、周囲を確認してそれを知った。




「……この砦、結構深い森の中にでもあるのかと思っていたけど……まさか……」

「まさか……ノースレシア城に併設されていたとは思いませんでした。間違いありません、あの城はノースレシア城です」

「じゃあここって首都のど真ん中なの……? 異界のゲートが街の近くにあるなんて……」


 城。そして城とこの砦の周囲に広がる、沢山の家、商店、人々の息づく街。

 自分達が置かれている状況とはあまりにもかけ離れているその光景に、頭が混乱してしまう。


「城下町に紛れて逃亡、ってのはどう思う?」

「止めた方が良いんじゃないか? さすがに一般人を巻き込むわけにもいかないし……俺達はもう少なくともこの街、いやこの砦じゃ殺人犯だ。下手に住人に関わるのはリスクが高いだろ?」

「そうだな、私も同じ意見だ。ササハラ君、城壁を下るなら……少々危険だが崖側にするべきではないか?」


 砦の周りには城や街だけでなく、深い渓谷も面していた。

 恐らく侵入を防ぐ為に崖の上に建設したのだとは思うけれど……流石にこの高さは恐いな。


「カナメ、頼めるか?」

「うん。ついでにもう一人くらいなら抱えられるよ。コウネさん、一緒に崖の下に降りよう。川が流れてるからね。ある程度氷を操作して後続のみんなの助けになれないかな?」

「なるほど、そうですね。ではカナメ君、お願いします」


 正直、身体強化があっても尻込みしてしまう高さの崖を、砦の外壁の上から一直線に飛び降りるカナメ。

 小脇に抱えられたコウネさんが一瞬悲鳴を上げそうになっていたが……根性で耐えたな今。

 谷底に着地したカナメがコウネさんを下ろすと、彼女は川の水を操作し、崖の上まで細い氷の坂、滑り台の様な物を生み出してくれた。


「やっぱり氷魔法って便利だよねー……私苦手なんだよね」

「確かにな。環境さえ整っていれば、ここまでの大きさの物も生み出せる。コウネは魔力量こそ一般的だが、その操作能力は私の知る中では一番だ。水さえあれば恐い物はないだろうさ」


 なるほど。だからコウネさんを先に連れて行ったのかカナメは。

 環境によって起こせる現象も、消費魔力も変わって来る……知ってはいたけどここまで大きく変わる物なのか。


「殿は俺が務めるよ。みんな、先に降りてくれ」

「分かった。ユウキ、無茶はするなよ」


 あれだけ派手に暴れたんだ。砦の中は既に追手の人間が捜索中だ。

 ここにやって来るのも時間の問題だろうさ。

 皆が降下していくのを見届けながら『運悪く』この外壁まで捜索に来た兵士達へと向かう。

 これ以上追手を差し向けられる訳にはいかないからな。目撃者は全員始末しないと。


「……誰も見ていないとタガが外れるな」


 良かった。ここがグランディアで。

 今の身体なら……どこまでも人外めいた戦いが出来るのだから――




「みんなお待たせ。周囲の状況はどう?」

「おかえりなさいユウキ君。一先ずこの渓谷はかなり遠くまで続いている、とだけ。上から降りて来られる場所もこの辺りには見当たりませんから、追手が今すぐ来ることはないかと思います」

「ああ、そうだね。ちなみに最後の最後で兵士が俺達の逃げるところを見たから全員殺したよ。だから俺達がこんな崖下に逃げたなんてそもそも思ってないかも」


 それに、死体も全部砦の中に放り込んだし。多少痕跡は残っていてもここまで捜査の手を伸ばす事は暫くないだろう。


「それで遅かったのか。一先ず川の流れに沿って移動しようと思う。ここがノースレシア城の裏手なら、このまま川を下れば巨大な湖に出るはずだ。その近くに街がある」

「……ショウスケお前、ノースレシアの地理も頭に入っているのか」

「さすがに細かいところまでは知らないがな。だが主都と有名な場所くらいは知っている。ここは『ファーウェル川』と呼ばれるノースレシアを縦断する川だ。このまま下って行けば――」

「『ヴォンディッシュ』の街に行けますよ。ノースレシアで最も人口の多い街ですからね、情報も集まるかと思います」


 ショウスケとコウネさんのお陰で、これからの行動方針が決まる。

 まずはそうだな、情報を集めるのと並行して、なんとか地球と連絡が取れないか探ってみよう。

 確かこの世界のシュヴァインリッターは支部同士で連絡を取れるはずだし。


「そこまで人口が多いなら紛れ込みやすいだろうね。それに……クーデターが事実だとしたら、まだあの連中は国民の支持を得られていないかもしれない。大々的に僕達を捜索する事は出来ないんじゃないかな、そんな街中で」

「私も同意見だ。やはりこのままヴォンディッシュに向かうのが吉だろうな。ササハラ君、これでいいか?」

「そうだね、俺もそれがベストだと思う。じゃあ……進めるだけ進もうか。今日くらいは距離を稼いでおきたい」


 幸い、戦闘こそあったものの、砦の中で食事もとれたし休憩も出来た。

 異界の中を彷徨うのに比べれば、今の状況なんて全然大したことは無いってのが俺達全員の見解だ。

 俺達は川を下り、少しでも砦から離れ、目的地へと向かっていくのだった。








「よし、この辺りで陸に上がろう」

「はい。じゃあ皆さん、少しだけ衝撃に備えてください」


 川を進む事二日。本来であれば一週間は掛かると予想されていた俺達の行軍は、途中から川をイカダで下る事により、想定よりも遥かに速く終える事が出来たのだった。


「氷のイカダとか正直こんな状況じゃなきゃ乗りたくねぇよなぁ……よく無事だったな俺達」

「そうだな……一応川幅や水深からしてある程度は持つと思っていたが、中々心臓に悪かった」


 はい、正直いつ溶けて沈没するかハラハラしていました。

 いくらコウネさんの魔法でもね、リスキーでしたよ。

 が、少しでも早く移動する為なら、流れる川を利用しない手はないと思いまして。

 しかし、こんな崖の下にイカダの材料になりそうな木が何本も転がっている訳もないので。

 だからコウネさんに今回もご活躍頂いたという訳です。


「私も自分の魔法ながら、こんな利用法は初めてでしたよ。流れがある程度緩やかだったおかげですね……」

「そうですわね。ですがお陰で――そろそろ渓谷地帯を抜けられそうですわ。もうそろそろ崖を登る道も見えて来るでしょう」


 無事に上陸し、崖を登る細道を進む。

 崖の上、遠くに見える大きな街の影に安堵の息をつく。


「よかった、予想通り到着出来たな。このまま普通に街の中に入れるだろうか?」

「検問のような事がされているとは記憶していませんが、情勢が変化している事を考えると油断出来ませんね。一人ずつ他の人間に紛れて入りましょう。難しそうなら一度引き返して作戦を練り直す、でどうでしょう?」

「そうですわね。でしたら侵入に成功した際の合流場所も考えておきましょう」

「なら、最寄りの飲食店とか? 入ってすぐに寄っても違和感ないし」

「そうだね、出来ればシュヴァインリッターの支部に行きたいけど、場所分からないし。流石にショウスケ君もわからないよね?」

「ああ、流石にな」


 俺達は一度バラバラに街を目指す。

 幸い、人の往来は思ったよりも多く、常に街を出る人間、入る人間が途切れる様子もない。

 それにどうやら検問をしている様子もないし、これならこのまま入れそうだ。

 俺は何かの巡業だろうか、少々派手な馬車に並ぶようにして街の中に入る。

 どうやら、俺の次に街を目指していたキョウコさんも、どこかのご老人と一緒に街に入る事に成功したようだし。


「んじゃま……とりあえずこのお店に入ろうかな」


 俺は後続の人間に見やすいように、少し大げさに伸びをしながら、一件の酒場に入っていくのだった。


(´・ω・`)たぶん建築要素があるゲームでこれよりなんでも自由に作れる作品なんて片手で数えるくらいしかないと思うわ。

ネトゲに絞るなら間違いなくNo1じゃないかしら?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ