第二百三十四話
(´・ω・`)そういえば最近も中華製ミニPC凄いね
ゲームのパッド程度の大きさなのに性能はノートPCのミドルモデル程度はあるもん
簡単なゲームなら普通に動いちゃうし(steamの2Dゲーム程度とかドラクエオンライン)
しかもそれでお値段が3万円切るんだよ……
たぶん、命を削るほどではないにしろ、魔力だけではなく、体力を大幅に持って行かれた全力の身体強化。
俺は、冷静ではあるが怒りを感じないなんて事はない。
餌として人間を喰らう、人に似て非なる存在。
今回のような小規模のゲートが発生する事件に、かつて巻き込まれたであろう一般人。
それら被害者が全て、肉として加工されていた。
自分と似た姿の相手を平然と食べる。肉として加工する。それはもう完全に『人類とは精神構造も本能も何もかもが違う』ではないか。
こんな奴ら、根絶やしにしなければいけないではないか。
「……久々に、ガチで疲れた……」
集落はもうどこにも存在しない。
瓦礫も存在しない。死体も何も存在しない。
全てを奥義で、細かな粒子になるまで切り刻んだ。
無論、異界の魔物の強さは俺の想定以上だった。
だがそれでも、重傷を負うような相手じゃなかった。
半球状にえぐり取られた地面、かつて集落があったその荒野、討ち漏らしがない事を確認し、俺はクラスメイトが待つ野営地に向かうのであった。
川沿いに進んで程なくして、先程まではただ石が転がるだけだった河原ではなく、しっかりと整地された場所が見えて来た。
無論、不安そうな表情を浮かべるクラスメイト達も。
「ユウキ! 大丈夫か!? さっき集落の方からとんでもない音がしたぞ!?」
「俺俺! 俺だよ俺!」
「どこの詐欺師だユウキ。それで、お前が出した音、という事でいいんだな?」
冷静に突っ込まれると少し悲しいです。
「集落の内部には幾つか調査団から鹵獲したと思われる物資があったよ。ただ、それらはコンテナだったり資材だったりで、資料やら調査報告書みたいな物はなかった。だから――残りは全部消滅させてきたよ。魔物も、集落も、全て」
「な……そんな事が出来るのか」
「出来る。ただ、たぶん今日はもうこれ以上戦えない。今魔力を使ったら冗談抜きに寿命が縮む事になると思う」
なんとなく本能で分かる。身体が、内臓が、血液が、力を失いつつあるのが。
肉体的な疲労とはまた違う、何か大切な要素が身体から抜けつつある状態だと。
「……ユウキ君は前にも、自分の命を消費して戦った事がありますよね。今回もそれをしたんですか?」
「その一歩手前、かな。たぶん一日しっかり休めば、普通に戦う程度にはなると思う。幸いこの近辺の魔物は一掃出来たみたいだから、もう少し明日からは楽に行軍出来ると思う」
「……言いたいことはまだまだ沢山ありますけど、それはまた今度にしますね。では今日はもう休みましょう。空は相変わらず青空ですけど」
「あ、そうだった。ユウキ君、僕が河原の整地をしていた時なんだけどね、岩の下に手長エビみたいな生き物がいたんだ。たぶん、この川の水はある程度飲んでも問題ないし、探せばまだ食糧になりそうな生き物はいると思うんだ」
「もうコウネのお腹の中だけどね、エビ。明日は起きたら食糧の探索を再開、その後は川沿いに下って行ってみようって話なんだ」
セリアさんとカナメが言うには、水生生物の中でもエビはとくに綺麗な水質を好むそうだ。
で、それが棲んでる川の水はある程度生き物にも優しい水だから飲んでも大丈夫だ、と。
そしてコウネさんのお腹の中に行ってしまわれたエビさんだが、恐らくもっと下流にいけばもう少し数が棲んでるかもしれないのだとか。
「ああ、尾びれの形が少々特殊だったのでな。恐らくなんらかの自然現象か、それとも環境の変化に巻き込まれたのか、別な生息域からこの場所に流されて来た可能性がある。ここは流れが急だ、ここに元々生息していたのではないだろう」
「ほー、ショウスケってそんな事も分かるんだな?」
「ふむ? お前は釣りや川遊びの経験が少ないのか?」
「いや、普通にしてたけど」
「俺もそうだ。で、調べた。子供の頃にな。ヒレの丸い生き物は流れの急な場所には棲みつかないものなんだよ」
なるほど。つまり君は幼少期から優等生で知的好奇心たっぷりであったと。
ともあれ、俺達の疲労もピークに達していたのだ。キョウコさんにはむちゃんを召喚してもらい周囲を警戒、そのまま俺達は眩しい空を見上げながら横になり、ようやく眠りについたのであった。
正直、瞼の向こう側の光が気になってぐっすり眠れないだろうなと思っていたのだけど……そんなことありませんでした。爆睡していたみたいです。
「あー……寝起きで青空見上げるとここが異界だって忘れそうになるな」
時計を確認すると、時刻は午後四時。ここの本来の時間や空模様を知っている訳ではないけれど、こんな青空とこの時刻は確実に噛み合っていない。
……本当の時間も何もかもが不確定。不気味な世界だ、本当にここは。
「あ、ユウキ君起きたね。ちなみに一番乗りは僕。まだ寝てるのは……一之瀬さんだね、珍しい」
「確かに珍しいかも。じゃあみんなが起きたら早速移動を始めようか。川沿いなら移動中に食糧になりそうな生き物も見つかるかもしれないからさ」
「魚、実は昨日は見かけなかったんだよね。かろうじて川エビだけ」
「なるほど……もしかしたら鉱物の成分が過剰に溶けだしてる所為で飲めないかもって思ったけど、エビがいるなら魚だっていそうな物なのに」
等と話しているうち一之瀬さんも目を覚ました。
あ、そうだ。昨日はもう疲労でなんの説明も報告も出来ていなかったけれど……。
「みんな聞いてくれ。少なくとも……異界には塩があるみたいなんだ。昨日潰した集落で、塩が日常的に使われている様子があったんだ」
「まぁ! ではどうして集落ごと破壊したのです?」
あの光景の詳細を報告するのは……憚れるが、そうもいかない。
俺達はプロなのだから。
もしかしたらグランディアや地球から一般人が迷い込んでいるかもしれないという俺の推測も踏まえ、俺はあの集落で見た全てを……報告した。
「やはり俺は間違っていたんだな……確かに魔物だ、それも凶悪で、自分以外の全てを己の糧としか認識していない、最悪の」
「俺を先に戻らせたのは正解だった。たぶん、どうにかなってしまっただろうな、俺」
「流石に偵察で終わらせるには危険過ぎたかもね。僕もユウキ君くらいの力があったら同じ選択をしたと思う」
「恐らく似たような集落が他にもあるのでしょうね。異界調査団が遭遇した魔物が、この集落から来たとは限りませんし」
「確かに、かなり広そうだもんね、ここ。でも……今は脱出を最優先しよう」
「そうですねぇ……殲滅したい気持ちは私も同じですけど、今は脱出して、その後にこの場所の調査、殲滅について意見を出してみるべきですね」
やはり皆も完全にここの魔物の危険性を理解してくれた。
この異常な空に常軌を逸した生態の魔物、人に酷似した姿。
悪意に満ち溢れているとしか言えない。まるで人がこの場所に来る事を拒んでいるかのような、そんな何者かの悪意すら感じる程の。
報告を済ませ川沿いに下って行くと、次第に川幅が大きくなっていき、やがて自力では飛び越えられない程広くなった頃、唐突に不可思議な光景が俺達の眼前に広がった。
「これは……湖の跡、か?」
「形状からいって間違いないでしょうね。ですが……『辿って来た川と繋がっていない』」
そう、川を下って行くと、目の前に広がったのは『干上がったというレベルではない程乾燥した巨大な湖の跡』が広がっていたのだ。
さらにこちらを驚かせたのは、今まで下って来た川の行先だ。
「……あっちに続いてるけど……何もない。本当に『何もない』よ。どうなっているんだい、これ」
川は、干上がった湖には続かず、通り過ぎるように彼方へと伸びていた。
だが、消えているのだ。文字通り唐突に、陸も、森も、山も、川も、唐突になくなっている。
目の錯覚かとも思ったけれど、確かに何もない。川周辺ではなく、空さえも。どこまでもどこまでも、唐突に世界の終わり、世界がこれ以上広がっていないとでも言うように、何もない。
そこには何もない。闇でも白でも光でもない、ただ『何もない』とだけ脳が認識している。
「あれ……なに? 認識出来ないのに理解出来る……何もない……」
「……異界は本当に『別な空間』という訳なんですね……きっとあれが……異界の端、なのでしょうか」
なんとなく、元の世界で言うところの『ワールドマップの端』を想像してしまった。
でも、大抵のゲームは端に到達すると、反対側から現れるものだ。
なら、もしかしたら……いや、でも最近は『何かの理由でそれ以上に先に進めない』ってな感じで引き返す事になったりしたな。
この異界ではどうなるのか……それを確認せずにはいられなかった。
「みんな、あれは明らかに異常だよね。あそこを目指してみてもいいんじゃないかな」
もし、あそこから異界を抜ける事が出来るとしたら。
なんでも調べてみないと始まらないじゃないか。
が、それに待ったの声が上がる。
「すみません、その調査には賛成なんですけど、先に少しあの干上がった湖? 調べてみませんか?」
「あ、確かに! ちょっとあっちのインパクトの所為で掠んじゃったけど、あれも十分異常だもん」
コウネさんとセリアさんの言葉に納得する。
確かに言われてみればその通りだ。
「それに……少し気になる事もあるんです。初日にコトウ君が行ったこと、覚えていますか?」
「む、俺が言ったですか? ふむ……」
「この場所が『元々はノースレシアかエンドレシア』だったかもしれない、ですよ。実はノースレシアの特産品には『岩塩』があるんです。かつてノースレシアには巨大な塩湖があって、それが長い年月の中で地殻変動に巻き込まれて山になり、それが産出されていると。ですが、さらにもう一つの説があるんですよ」
すると、その言葉を引き継ぐようにショウスケが語り出した。
「まさか……神話の事を言っているのですか? 『その昔、エンドレシア大陸を原初の魔王が切り裂き、ノースレシアが生まれた』たしかその境界には『巨大な塩湖があった』と。それ故に互いの大陸の両岸にあたる山ではそのなごりで岩塩が産出されている、と」
「ええ、その神話です。もし、それが本当なら……この異界がかつて大陸を二つに割った際に消え去った領域だとしたら……ありえませんかね?」
「ん-、僕はちょっと信じられないけどね、その話。でもあそこが塩湖って可能性はあるかもね。なんか少しだけ白っぽいような気がするし」
「確かに少しだけ白い……いえ、微かに日光を反射しているように見えますわね。塩分の補給は私達にとって必要ですし」
確かに。腹は膨れたし飲み水も確保できているが、塩分もまた必要な栄養素だ。
そういえば熱中症対策でもただの水を飲んでいてもだめだったな。
塩の確保の為、まずはその湖跡地に向かう事になった。
「うん……植物が生えてる様子もないし、少なくとも塩湖だった可能性はあるね。ユウキ君ちょっとこの辺りの土舐めてみる勇気ある?」
「ユウキだけにって? いやちょっと恐いんですが? 植物生えない理由が塩分以外の可能性だってあるだろ」
「ふむ……いや、確かにこれは……」
するとショウスケが、足元の土の塊を拾いあげ、指で砕きながらその感触を確かめていた。
「……みんな喜んで良いと思うぞ! 塩の結晶が混じっている! 探せば純度の高い岩塩も見つかると思うぞ!」
「マジでか! 確かに土を舐めたくはないけど岩塩なら良いな!」
良かった、これで手持ちの食料に塩が追加される。
早速手分けして周囲を探る事になったのだが、やはりと言うべきか、案の定最初に岩塩を見つけたのは――
「これは……素晴らしいですね! 異界のお土産として幾つか確保しても良いでしょうか!? こんな上質な青岩塩、下手したら宝石並の価値ですよ!」
コウネさんだった。
何やら青く透き通った塊を幾つも両腕で抱えて戻って来たのだ。
え……あの青い水晶みたいなの塩なの? 普通に綺麗だし玄関に飾っておきたいんだけど。
「素晴らしいですね……特別な味という訳ではありませんが、味付けと同時に美しく料理を飾る青岩塩……貴族や一流レストランでは大人気なんですよ。かつてはノースレシアやエンドレシアでも多く産出した物なのですが、年々採掘量が減少して、その希少性は下手な宝石以上なんですから……」
「へぇー……じゃあ一口大のヤツだけみんなで一つずつ舐めておこうか」
「ある意味究極の贅沢ですね、それ」
いや、なんかもう塩飴感覚ですみません。
そうして俺達は無事に塩を確保し、小指の先程度の欠片を口に含みながら、今度こそこの『世界の端』のような、無の空間へと向かうのだった。
(´・ω・`)だかららんらんノーパソの代わりにモバイルモニタと一緒に持ち歩けるようにして出先で執筆に使ってるよ




