第二百二十九話
(´・ω・`)実質エピローグなので短いです
「以上が俺からの報告となる」
「……ヨシキさん、飛行機をお借りします。このまますぐにグランディアに向かいます」
「それでどうする。異界に続くゲートはサーディス大陸沖から消え、今も所在が分からないんだろう?」
「目星はついています。ゲートのような存在を見つけられない、それ即ち外部の人間が観測できない場所に移動しているという事。グランディアでそんな場所、一つしかありません」
「……エンドレシア、いやノースレシアか」
「はい。止めさせませんよ、今回ばかりは」
「止はしないさ。だが戦力不足だ。イクシアさんを連れて行くと良い。いや、連れて行かないと彼女は暴走する」
「そのつもりです。カズキ先生の帰還を待つ余裕はありません、これから発ちます」
学園の理事長室。ヨシキの報告を聞き、リョウカはすぐに行動を起こす。
「もしもし、イクシアさんですか? 戦闘と旅の支度をして今すぐ理事長室にお越しください。ユウキ君を含む生徒達の危機です」
『すでに準備は出来ています。中継でトラブルの瞬間を見ていましたから。その関係ですね』
「流石です。では今すぐ」
イクシアも当然式典の様子をぶうつべで視聴していた。
無論、事件が起きる瞬間も。既にユウキの元へ向かう事になるかもしれないと、福岡の経験から予想していたのだった。
「では俺は失礼する。リョウカ、もうそろそろ俺が俺として動く事になるかもしれない。もし今後近い将来、R博士……リュエに何かを頼まれたら、全力でそれに協力してくれ」
「……分かりました」
そうして、ヨシキは理事長室を後にする。
それから数分、入れ違うようにイクシアが到着した。
「リョウカさん! ユウキ達は無事ですか!?」
「不明です。ですが、恐らくグランディアに……異界の中にいます」
「なぜ!? どうしてドバイではなく!?」
「事故に巻き込まれたとしか言えません。異界へ続くゲートは現在、ノースレシアにあるはずです。そこまで一気に移動します。飛行機ですので安心してください」
「分かりました。全力でサポートします」
「所要時間はおよそ一週間。長い空の旅です、覚悟してください」
二人は理事長室から出たその足で、空港へと向かう。
グランディアの中でも最果ての地、かつて魔王が……前世のヨシキが治めていた地、ノースレシアに向かう為に――
一人自分のレストランに戻ったヨシキは、胸ポケットの中で振るえるスマート端末を手に取り応答する。
「マザー……レイス、どうしたんだい?」
『今、正式に今回の事故がアルレヴィン社の実験による物と発表されました。無数のゲート、転送門も含めて。BBとスクード氏はその事故に巻き込まれ、どこかに転送された疑いがあるとの発表もあります』
「なるほど、そう落ち着いたか。恐らくリョウカがある程度の筋書きを国連に回していたんだろうね。一応、今の国連はリョウカに首根っこを掴まれているような物だし」
『……転送事故によりSSクラスの生徒はどこかに消失、BB……ヨシキさんは“繰り返しの秘宝”によって帰還した……では、スクード氏はどうなったのですか?』
「彼も事故に巻き込まれて――」
ヨシキがそう口にしようとしたその時、その言葉を遮るようにマザーが続ける。
『貴方が殺した。殺したと、死んだと分からない状況の中で。貴方は最初から……どうにかしてスクード氏を殺す為に今回動いていた。そうではありませんか?』
「そう思った根拠は?」
マザーは問う。
『彼は、私に何度も関わろうと動いて来た。急造のマリンスポーツ部門を使った製品レビュー依頼、急遽開催を宣言されたフィッシング大会への招待、断った次の日には料理大会を開き、貴方を招待した。私が同行すると確信して』
「ふむ、確かに全部実際に起こった事だね」
『貴方は私を守るためなら、邪魔な存在を排除する為ならなんでもします。だからあえて誘いに乗った。違いますか?』
「流石だね、正解。そう、俺は今回アイツを殺す為だけに動いたよ。さすがに影響が大きすぎるからね、暗殺するにしても状況を作る必要があった」
『……では何故、生徒さん達を巻き込んだのですか?』
「確証が欲しかった。彼等がいると世界が大きく動くと。それも悪い方向に」
『っ!? では、彼等も消そうとした……と?』
「いや、そんなつもりはないよ。だが、これで確証が持てた。俺はもうすぐ行くよ、彼のところへ」
『……分かりました。動機はどうあれ、貴方は世界を救った。それも“私を守るついでに”』
「そういう事になるね。さて……今、リョウカとイクシアさんがノースレシアに向かっている。異界に最も近いあの場所に。だから俺も行くよ、グランディアにも『彼』の居場所がないのか判断する為に」
その会話はどこか歪んだ、人としての常識が欠如したようなものだった。
だが、既に賽は振られたのだ。今回はまだ目が出る前ではあるのだが。
「君もノースレシアに向かって欲しい。飛行機はリョウカに貸してしまったからね、船旅になってしまうけれど」
『……分かりました。R博士と共に向かいます』
「ん、そうして欲しい。じゃあ、俺はもう出るよ」
『……心中、お察しします』
ヨシキは通信を終え、そのまま家から完全に消える。
まるでどこかに転送されたように、忽然と。
彼のいたカウンター席にはR博士にあてた一枚のメモが残されていた。
『ちょっとファストリアの屋敷に行って来る』と。
既に、世界は混迷の渦に飲み込まれ始めていたのだ。
今回はそれを強引に解決したが、それはまだ終わっていないのだとヨシキは確信していた。
そして……解決の為にその元凶を討つべきか否かをその目で判断しに向かったのだった。
(´・ω・`)次章はまた少し時間がかかるかもしれやせん 申し訳!




