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パラダイスシフト ~ある意味楽園に迷い込んだようです~  作者: 藍敦
十七章

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第二百十九話

(´・ω・`)じつは先月から我が家の水道使えないんですよ。今日クラシアン来たけど治るのはまだまだ先だろうなぁ

 秋宮グループ所有のドームスタジアムにて、BB主催スポンサー秋宮の料理大会が始まろうとしていた。

 目的は『とある国で開かれる祭典でBBと共に戦う料理人を選抜する為』。

 無論、BBの実力は昨年度放送されたネット番組で知れ渡っており、隣で戦いたいと願う料理人達が世界中から応募していた。

 その数四〇〇を越え、そこから経歴や資格を審査され、四〇人まで絞られていた。

 その四〇人が今、ドームスタジアムにセットされていた四〇ものキッチンにそれぞれ配置され、大会の始まりを今か今かと待ち構えていた。


『さぁ、ついにこの日がやって来ました! お兄さんと共に“あの式典”に挑む人間を決めるこの大会! 厳正な書類審査を潜り抜けた四〇人の料理人達をご紹介しましょう!』


 そんな中、今日は審査員兼MCとして参加しているBBが、順番に選手を紹介していった。

 有名店の料理長、リーダーシェフ、有名な研究家に同業でもある動画配信者。

 そして――


『エントリーナンバー三九番。まさか君が来てくれるなんて思ってもみなかった! 唯一このお兄さんと戦った事のある男! その実力はお兄さんが保証する! “シグト・リーズロート”!』


 紹介されたのは、かつてBBに敗れた、グランディア出身のハーフエルフの料理人。

 以前はコウネの実家であるシェザード家で料理長を務めていた事もあるというその経歴は、他の出場者と比べても頭一つ抜けている、そんな印象。


『せっかくなので意気込みを聞いてみたいと思います。お久しぶりですシグトシェフ。この大会に出場してくれて嬉しく思うよ!』

『当然です。一度は競う為に戦った。ならば今度は、協力する為に共に戦ってみたいと思うのは自然な事でしょう。必ず、同じ舞台に立ってみせますよ』


 優勝候補筆頭の登場に会場は盛り上がり、出場者達は警戒感を示す。

 そして最後の一人の紹介が始まった。


『えーと……こちらの参加者についてはお兄さんに事前に連絡が来ていなくて驚いているんですよ。選考には秋宮の経営するレストランの料理長や秋宮の総帥さんも関わっているんですけどね? この最後の一人の参加はお兄さんには伏せられていたみたいなんです』


 最期のキッチンに立っていたのは、誰が見ても目を引く一人の女性。

 顔に付けた小さな仮面、抜群のプロポーションに濃い紫の髪。魔族の証である特殊な器官、彼女の場合は小さな蝙蝠の翼がこめかみの近くから生えている人物。

 BBチャンネルの第二アシスタントにして、釣り系ぶぅチューバーのマザーその人だった。


『マザー、自分のチャンネルのロケで外国から戻ったばかりなのによく参加出来たね?』

『はい。折角の機会ですし、自分一人でどこまでやれるのか挑戦してみたくて』


 そうして出場者の紹介が終わり、最初の課題が発表される。

 四〇人の出場者がそれぞれの調理を開始したところで――中継の回らないところでBBことヨシキは、もう一人の審査員として招かれていたリョウカと密かに言葉を交わす。


「マザーの件は知らなかったんだが。知っていたら俺が出場を止めていた」

「何故です? 任務の成功確率を上げる意味でも、戦力は少しでも送り込めたほうが良いでしょう。それに、確実に盛り上がるかと」

「……今回はまぁ、俺の事情があってな。あまりマザーには同行して欲しくなかった。まぁ勝ち残れるとは限らないがね」

「目的、ですか? ドバイに向かうのに個人的な理由があると?」

「ああ、ちょっとな。お前や生徒を呼び出すのはあくまでついでだよ。まぁこの機会を精々利用してくれ。あの国が魔力を規定以上に使っているのは疑いようがない、叩けば埃が出るだろうさ、“アルレヴィン家”からは。まぁ……後ろ暗い連中のペーパーカンパニー辺りは乱立していても不思議じゃないがね」

「そちらについてはノータッチですよ、それはそれで秩序が保たれているのですから。ただし魔力の過剰利用のからくりは一度調べたいと思っていましたし、良い機会を貰えたと思っておきます。貴方がどんな目的であの国に向かうのかは……この際気にしないでおきましょう」

「そうしてくれ。きわめて個人的な理由だからな。じゃあ俺は……出場者のキッチンの様子を見てこようかな」


 そう意味深なやり取りを切り上げ、BBはスタジアムへと降りていく。

 一つ目の課題は『子供が喜ぶお菓子』。

 充満する甘くかぐわしい香りに包まれながら、BBはキッチンの様子を一つ一つ確認して歩くのだった。






 それからさらに二時間後。限られた短い制限時間の中で、出場者達はそれぞれお菓子を仕上げていく。

『どのお菓子なら時間以内に仕上げられるか』『勝つ為にどこまでこだわる事が出来るか』

 制限時間と勝つためにかける手間を天秤にかけ、その中の最適解を探すと言う、難易度の高い勝負。

 その結果が出ようとしていた。


『いやぁ、やはり“特別審査員”の反応が芳しくないですな! もちろんお兄さんとこの総帥さんは評価しているんですけどね? やはり課題が“子供が喜ぶお菓子”というのを重視する必要があった訳です』


 審査員はBBとリョウカだけではなかった。各ラウンドにて特別審査員をBBは用意していたのだ。

 そして今回は――秋宮グループ傘下の幼稚園から、園児を三人、審査員として招待していたのだ。


「食べるのむずかしー」

「ちょっとからいー」

「かたいー」


 趣向、工夫を凝らしたお菓子たちも、子供達の前ではその価値を発揮出来ないでいた。

 あくまで『子供が喜ぶお菓子』なのだ。それを失念し、技巧を凝らした菓子を提出し、撃沈していく出場者達も少なくなかった。

 が――


「おいしいー!」

「ふわふわ! おかあさんが作るのよりおいしー!」

「おっきい! ゆれるー!」


 中には、子供の心をとらえ、喜ばせ、抜群の評価を手に入れる出場者も確かにいた。


「おーっと、これは驚いた。シグトシェフの作ったスフレパンケーキ……盛り付けの美しさは勿論ですが、子供受けが凄いですね」

「ええ、コンテストという事で飾り付け、盛り付けには当然力を入れていますが、メインとしたパンケーキ部分とソースは私が以前仕えていた屋敷……シェザード家のお嬢様が幼少期によく私に作って欲しいとせがんでいた物です。子供が喜ぶ場面というのは、恥ずかしながらこの頃の記憶しか持ち合わせていないのです」

「なるほど、これは素晴らしいチョイスですな。今回の祭典、どんな課題が出されるのか想像だに出来ませんからね。あらゆる場面に対応出来る、幅広い知識と技術、発想力を計る為に開いた予選です。シグト選手、見事に暫定一位の選手を抜きトップに躍り出ました」


 それはかつてBBに敗れたシグトシェフの作品だった。

 当然、この大会には本業のパティシエ、パティシエールも参加していたが、シグトはそれらを抑え、トップのスコアを叩き出していた。


「いやぁ……このソースが美味しいね。子供が喜ぶとは言っていたけれど、個人的にはブランデーと一緒に食べたい、そんな上品で洗練された味だったよ。総帥さんはどう思います?」

「そうですね、私もパンケーキには少々煩いと自任していますが、これは確かに過去に食べた中でも一、二を争いますね。気泡の細かさ……シュワシュワとはじけ溶ける生地、ソースの後味も甘すぎなく、添えられたマスカルポーネもまた、味に層を生み出しています」

「……お兄さんより料理人らしいコメントするのやめてもらっていいですか?」


 そんな中、最後の料理人の審査時間がやって来た。

 現れるのはマザー、そして運んできた皿に乗っているのは――


「それは……箱ですか?」

「はい、箱です。そして中身はクッキーです」


 綺麗な装飾のされた箱。その蓋を開けると、そこには何の変哲のないクッキーの姿。

 無論、よくできている品ではあるのだが、それだけだった。

 子供達は箱の中身を嬉しそうに食べる。

 が、クッキーを焼いて来たのは何も彼女だけではない。むしろ彼女よりもレベルの高いクッキーを焼き、凝った盛り付けをした出場者なんて何人もいる。


「クッキーすき!」

「チョコクッキーだ!」

「おいしいね」


 まぁ、ただ単にお菓子をたくさん食べられるだけで子供達は喜ぶのだが。

 が、さすがに四〇人分の審査となると、そろそろ飽きて来るのだ。

 少量ずつの審査とはいえ、子供達に審査員としての責任感などはなく、飽きたら食べなければ良いと考えてしまう。

 この審査、順番が後になる程不利なのだ。

 しかし――マザーのたった一言で、その状況が一変する。




「みんな、その箱も食べて良いですからねー」




 静まり返る子供。何を言っているんだろうと言う表情。

 だが次の瞬間――


「これ食べれるの!?」

「お菓子なの!?」

「ほんとに!?」


 目を輝かせ、箱の蓋を三人で割って分ける。

 噛り付き、本当に食べられる事に驚き、夢中で食べ進める。

 審査員であるBBとリョウカは無論、初見で箱も焼き菓子である事は見抜けていた。

 だが、ここまで子供が喜ぶとは思ってもみなかった。


「なるほど、流石ですね。子供の心をよく分かっています」

「ははは……確かに食べられる箱とか、そういう『やっちゃいけない』『やれるわけがない』と子供が思う事を逆手に取るのは良い手法だね。……クッキーそのものも美味しいし、この審査員相手になら……勝負ありだろうね」


 BBの予想通り、子供達の甘めな採点の中でも、マザーのクッキーボックスは文句なしの首位に躍り出た。

 子供達の『これが一番!』という言葉によって。


 そうして一回目の審査が終わり、続いて他の分野の審査も始まり、徐々にトップ層とそれ以外との得点に差が生まれる。

 マザーは一つ一つの技量ではその道に達人には遠く及ばない。だが、審査員の心を着実に掴み、センスと人への理解で食らいつき、追いすがる。

 それはやがて――


「最終審査が終わった段階で……優勝はシグトシェフだね。おめでとう、君がスーシェフだ」

「……感謝します、BB。これで貴方と同じキッチンに立てる」

「さて、あと五名程お兄さんが個人的に気になった出場者をスカウトするつもりなんだけど――シグトシェフ、君も一人選んで欲しい。スーシェフ……第二の司令塔として君にはその権利がある」


 最終的にトップになったのはシグト。そしてマザーはわずかに及ばず準優勝という形になった。


「自分が選ぶ、ですか。……では、その権利を今行使しても宜しいですか?」

「お、もう決めている人がいるのかい? じゃあその選手を連れて来てくれないかな」


 シグトはそのまま静かに、淀みなくその出場者の元へと向かい、連れて来る。

 それは、何を隠そう自分としのぎを削っていたマザーその人だった。

 だがそれだけでなく――


「BB、私は今回の大会で痛感しました。スーシェフとは統括者。指示を出し、自分の世界を他人と共有する者。技量ではなく人を見て、適切な方針を決める者こそが必要です。残念ですが……私にはそれが出来ない。技量は誰にも負けないと自負していますが、スーシェフに相応しいのは……彼女、マザーだ」


 勝利こそすれど、スーシェフとして第二の司令塔にはマザーの方が相応しいと言うのだった。


「高い技量で他を引っ張る役目は貴方だけで事足りる。そこに第二の司令塔、副官として必要なのは私ではない、彼女だ。貴方ならそれが理解出来るはずだ」

「……そうだね、一理ある。君に権利を与えたのも僕だ。ならば、それを反故にする訳にもいかないね。が、肝心なのはマザー、貴女がどうしたいかだよ」


 先程から静かに成り行きを見守っているマザーは尋ねられ、ようやく口を開く。


「BB、貴方は私をアシスタントとして五人のうちに選ぶつもりはありましたか?」

「正直に言うと、この会場に君が現れた当初は選ぶつもりはなかったね。けれども……君はその実力を遺憾なく発揮し、結果を示した。選ぶよ、今の君なら五人のうちに必ず」

「……それが聞けてよかったです。ふふ、少しは私も成長出来ているみたいですね」


 そしてマザーはシグトに向き直る。


「そのお話、お受けしたいと思います。貴方の厚意を受け取り、そして貴方という最高の人材を使いこなし、共にBBの勝利の要となりましょう」

「感謝します、マザー。……始めはただの賑やかし、盛り上げる為の出場者だと思っていた自分を恥じます。貴女は紛れもない……我々と同じ研鑽を詰んできた一流のシェフだった。これは……もう一人のアシスタントであるRさんも侮れませんね。この選考会に出場していないのが惜しい」


 そのシグトの発言に、思わず苦笑いを浮かべるマザーとBBであった。








「はー……面白かった……やはりマザーの腕は確かなのですね……」


 生配信を見終わったイクシアは、既に時刻が夕方を周っている事に、部屋の暗さでようやく気がつく。


「ああ! もうこんな時間に……! 急いでお夕飯の支度をしなくては……!」








 ショウスケとサトミさんの紹介が終わり、本格的に合同訓練が行われるようになるのは明日からだと教えられた俺達は、今日の所は学食で軽く歓迎会でもしようという話になり、学食三階へとやってきていた。

 イクシアさんに今日は少しだけ遅くなるって連絡しておかないとな。


「学食はまだ利用した事がなかったんだ。良ければ教えてくれないかユウキ」

「あいよ。サトミさんも一緒に教えるよ、まず一階へ」

「りょうかーい。凄いよね、食堂だけで独立した建物だなんて」


 まずは食券制な事を説明。まぁこの辺りは知っているだろう。


「まぁよくあるフードコートと同じだと思っていいよ。で、俺達三期生は三階を利用するんだ」

「ふむ、ということは一期生が一階、二期生が二階か?」

「いや、実は二階は謎なんだよ。二期生も一階で食べる。あ、でも学食の外にテラス席もあるし、料理持ったまま校内移動するのも自由なんだよ」

「へぇ! ユウキ君の穴場とかあるの?」

「俺かー。実は最近学食利用してないんだよね。お弁当持参で、第二校舎の屋上で食べてるんだ。人来ない穴場でさ」

「ほう、そうだったのか。察するにお前の知名度の関係か? 今日はこの時間に利用している生徒はいないようだが」


 さすがショウスケ、良い推理だ。


「ところで……ここの学食高くない? ファミレスより少し高いレベルなんだけど……」

「だよね。ほら、この学園って割と富裕層が多いからさ。でも味のレベルはマジで高いよ。それに俺達SSクラスは、今期からは実務研修である程度の報酬も振り込まれるらしいから」


 実は最近決まったのだ。俺達が請け負う研修の難易度が、もはや一国の所有する特殊部隊すらも凌駕する危険で重要な物が多いからと、秋宮を通して国から報酬が支払われるのだ。

 いや、そうあるべきだよマジで。誇張抜きでうちのクラス、日本の危機救ってるんだから。


「ほう、それは嬉しいな。恥ずかしい話だが、俺はもう実家とはほぼ絶縁状態でな。金銭的な援助は望めない状況なんだ」

「は!? お前なにしたんだよ」

「元々、俺は実家の会社を継ぐように言われていたんだが、最初からそのつもりはなかった。グランディアへ行く為に学んでいたんだ。だが、流石にシュヴァインリッターへの編入も全て俺で決め、今後の道も自分で選ぶと宣言したところ、向こうから絶縁されてな」

「……前々から厳しい家だなとは思っていたけど、そうだったのか」

「成人するまでは実家に義理立てするつもりだった。これから自由にやらせてもらうさ」

「私は普通に時間が出来たらアルバイトしようとか考えていたんだけど……もしかして必要ない?」

「その辺りは俺より他のみんなに聞いた方良いかも。特殊な立場だからさ、俺」

「そういえばそうだったね。秋宮のエージェント……なんだっけ?」

「うん、結構前から」

「ああ、それが気になっていたが、流石に話せないのか」

「流石にね。けど、正直やばい報酬でやばい仕事してたってのは察して?」


 通帳の額がヤバくなってきてるので、さすがに普通預金だけじゃなくて定期預金にまとまった額預けました……。


「じゃ、この時間は注文出来るメニューは軽食に限られてるから、適当に注文して戻ろうか。みんなが購買でお菓子とか飲み物買って来てるはずだから」

「了解した。では……ふむ、ツナサンドがあるな、これにしよう」

「ショウスケ君好きなんだ?」

「ああ、ツナは好物でな」

「じゃあ私は……あ、パンケーキにしよ」


 注文を終え、料理を受け取り三階へ戻ると、そこでは既にクラスメイト達がお菓子や飲み物を用意してテーブルに並べていた。


「あ、戻って来た。ジュース用意出来てるよー」

「お菓子も準備完了だよ。ショウスケ君、チョコ好きだったよね」

「ふふ、まさか学食でこういう物を食べる日が来るとはな」

「今度は本営業してる時間にみんなで来ましょうね」

「ふふ、そうですわね。外部のお店で改めて歓迎会を開くのもアリでしょうし」


 そうして、細やかな歓迎会が開かれ、交流を深めていく。

 が、もっぱら会話の主軸となるのは、これまで俺達が行って来た研修の内容や、俺についてだった。


「今年なんか酷かったんだぜ? ユウキのヤツ、入学式のスピーチで新入生とその家族全員に喧嘩売って」

「ああ、そうだったな。確かに今学園でのササハラ君への風当たりも強いだろうが、同時に恐怖の対象にもなりつつある」

「ま、今年に限った話じゃないからね。もうずっと畏怖、恐怖の象徴だよね」

「まぁ、どういう意図があったのかは察する事も出来ますけれどね」


 やめて、こういう話ショウスケにすると絶対面倒くさいから!


「お前は何をやっているんだ……英雄と呼ばれるようになっても何も変わらんな」

「そりゃそうよ。っていうか意図があるんだってば! 内容はともかく、ある程度新入生を警戒させるのは理事長の指示だったんだから」

「そうなのか? しかし何故……」


 まぁ、さすがに裏の事情を全ては話せないよな。


「まぁ……今年の新入生はちょっと事情があってな、学園に相応しくない生徒がかなり多いんだよ。それを警戒させて牽制する為だよ」

「ふむ……そうだったか。俺はサトミさん以上にこの学園、ユウキの巻き込まれた事件から離れていた関係で詳しい話は話せないのだろうが、事情はこれ以上聞かない事にする。が、やり過ぎは禁物だからな」


 あ、そうだ。ショウスケ達の訓練はともかく、講義はどうするんだろうか?


「どの講義を取るのかってもう決めてるの? 二人とも」

「あ、私は決めてるんだ、転入前に既に」

「俺も理事長と相談して決めさせてもらったよ」

「へぇ、サトミさんは何受けるの?」


 恐らくサトミさんは魔術関係だろうな。


「紋章学と魔術理論と、魔力応用学、スポーツ健康科学と医療英語、医療魔法を受けるつもり」

「三期生で編入して六つも受けるの!?」

「うん。ここ、一日に開かれる講義が多いから、毎日みっちり講義受けるつもりなんだ」

「あ、スポーツ健康科学は私も受けてるよ、一緒だね」

「あ、セリアちゃんもなんだ! よかったー友達も一緒で」

「魔術理論はカイとユウキ君、私もセリアさんも受けていますね」

「やっぱり魔術関係は人気みたいだよねー」


 よかった、これならサトミさんが孤立する心配はなさそうだ。


「俺は経済学とグランディア風俗学、デバイス工学と魔術理論、魔力応用学と実戦戦闘理論だな」

「お、マジで? 実戦戦闘理論の研究室には俺、一期生の頃入っていたんだ」

「ああ、ミカミ経論に聞いているよ。SSクラスが多く在籍していたと。実はミカミ経論が俺とサトミさんの訓練を担当していてくれたんだよ」


 あー、だからミカちゃんがなんか匂わせていたのか。

 確かにこの二人の訓練に関わっていたなら、退屈しなさそうだ。


「明日以降は講義が終わった人間は第一スタジアムに集まる……という話ではあったが、合同訓練というのはどういった物だろうか?」

「コトウ君やサトミさんが参加した事で、我々の戦い方も変化するだろう。その確認、調整を主としているのではないだろうか」

「だな。けどまぁ、術師と回復役が増える分には多分対応出来ると思うな、アラリエル込みで戦ってた経験もあるし」

「ふむ、確かにそうだな。だが同時に、後ろに我々の生命線になるかもしれないサトミさんが加わった。多少フォーメーションは変えた方がいいだろうな」


 ショウスケの質問に一之瀬さんが答える。俺も同じ考えだ。

 しかしカイはどこか楽観的に捉えているようだった。

 まぁ確かに後衛が一人増えても、アラリエルがいた時と大差ないのは事実だろうし。


「アラリエル……とは?」

「あ、そういえばもう一人魔族の生徒さんがいたよね、ユウキ君」

「うん。ショウスケとは絶対ウマが合わないであろうクラスメイトがもう一人いたんだよ」


 絶対衝突するのが目に浮かぶようです。


「ふむ……?」

「俺より、不真面目、素行不良」

「把握した。確かに口うるさくしてしまうかもしれない」

「ま、良いヤツだし実力があるのは俺達全員認めてるけどな。今は故郷の方でトラブルがあって、休学中なんだ」

「そうだったのか……無事に戻って来ると良いな」

「故郷でトラブルかぁ……グランディア出身だと距離的にも中々戻れないもんね」


 本当、アラリエルに関しては全く情報がないんだよなぁ。リョウカさんに今度聞いてみようか。


「明日から宜しく頼む、みんな」

「宜しくお願いします」


 明日から忙しくなりそうだな、こりゃ。

 それにそろそろ研修地の方も正式に決まりそうだし、果たして次回はどこにいくのだろうか?


(´・ω・`)お風呂に入りたきゃ町運営の温泉 ゴハンは作れないのでお惣菜か外食

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