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パラダイスシフト ~ある意味楽園に迷い込んだようです~  作者: 藍敦
十七章

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第二百十八話

(´・ω・`)ティアキンは買うよ! FF16は様子見するよ! FF7リメイクは……買うかもしれない。

「結構楽しみだったりするんだよね、この間のBBQで覚えた技。かなりコツ掴めて来たから、実戦でどれくらい使えるか試したいんだ」

「カナメいいなー……私まだ実戦で使えるレベルじゃないもん。同じ技なのに……」

「俺達なんてまだまだ片鱗すらつかめてないんだぞ、それよりはいいじゃないか」

「……そうだな、まだイマイチイメージが湧かない。かといって父様に相談する事も出来ないからな……」


 教室に行くと、既にクラスメイトが集結しつつあった。

 どうやらこの間修行してもらった内容について話しているようだ。


「あら、皆さん早いですわね」

「あ、キョウコさん。ごめん俺邪魔だったか、すぐ入る」


 背後からキョウコさんもやって来た。


「コウネは今起きたってさ。メール来た」

「今日は講義がなかったんだな」


 なんだかもう、みんなすっかり日常に戻ってきているな。

 福岡での一件、あの時受けた衝撃も徐々に薄れ始めている、と。

 リフレッシュ大成功じゃないか。


「まだ時間あるし、ちょっと後ろの方で横になるわ俺」

「なんだユウキ、眠いのか?」

「昨日珍しく深夜テレビ見てたらうっかり徹夜した」

「なんだい、ユウキ君まるで高校生みたいじゃないかそれ」

「すげぇな当たりだぞカナメ……マジで高校時代ぶりに夜更かしした」


 教室の後ろの席って、そういえばアラリエルの定位置だったな。

 アイツ本当どうしてるんだろうか。ノースレシアの情勢ってこっちまで届かないんだよなぁ……。

 目を閉じて、眠りはしないが体を休めていると教室の扉が開く音がした。


「やっぱり皆さん早いですね。私もう完全にオフモードでぐっすりでしたよ?」

「コウネ……お前はもう少し緊張感を持て。いくら講義がなくても同じ時間に起きる癖をつけるべきだ」

「いえね、昨日ちゃんと寝ていたんですけど……昨日珍しくシンビョウ町で夜にパトカーがサイレンを鳴らしていて、それで目が覚めちゃったんですよぉ……」

「ふむ、何か事件だろうか……」


 あ……やべ、それたぶん俺とアリアさんだ。ごめんコウネさん。


「ところで、ユウキ君はまだ来ていないんですか?」

「ああ、彼なら後ろで横になっているよ。夜更かししていたそうだ」

「なるほどなるほど……」


 あ、こっちに来る予感。じゃあ自分で起き上がりますか。


「やぁやぁコウネさん」

「おはようございます? 夜更かしって、もしかしてユウキ君の家にもパトカーの音聞こえたんですか?」

「いや、普通にテレビ見てた。たまにはいいよね、夜更かしも……」


 心の中でごめんなさいしておきます。

 と、ここで全員が揃ったところで再び教室が開かれる。

 カズキ先生がやって来たのかと思ったのだが――


「突然のお呼び出し、申し訳ありませんでした。皆さん揃っていますね?」


 やって来たのはいきなりリョウカさんだった。

 いつもなら先生が先に来るのに……。


「実は、今回は実務研修の予告というよりも、もう一つ大きなお知らせの為に集まってもらいました。研修地についてはもう少し調整が必要ですので、お待ちください」


 ふむ、そういえばいつもならみんなに知らせる前に俺に行先を伝えたりしていたよな。

 今回も面倒な事になりそうなのか?


「今回はまだ確定ではありませんが、海外となる予定です。また、今回は討伐ではなく護衛任務となる予定ですので、万全を喫して人員の補充を考えているのです」


 一之瀬さんとカイの挙手。


「どうぞ」

「カイ、私から。あの、人員の補充と言いますと、前回の実務研修前に立候補してきた彼、でしょうか? 現状、私達のクラスに追加するとなると、中途半端な生徒では確実に足を引っ張るかと思います」

「俺も同意見です。うぬぼれでもなんでもなく、任務の成功確率を下げかねないので、人員の補充はちょっと……あ、でも生徒とは限らないんですよね?」


 あ、そっか。なら誰か、こうエリさんやカズキ先生クラスの人が助っ人に――


「いえ、今回追加予定の『二人』は学園の生徒です。いえ……正確には『生徒になる予定』です。現状、このクラスは欠員が出ている状況です。本来であればもう少し早く補充を考えるべきでした。また……このクラスには致命的に足りていない人材がいます。こちらも早々に解消すべきだと思い、今回の補充に踏み出した次第です」

「足りていない人員、ですか? 確かにアラリエルが欠けた事で、遠距離からの援護が減ったのは事実ですが……」

「アラリエル君による狙撃、魔術、そして近接への対応力は高い水準で完成していました。このクラスは元々、術師経験者、術師としての適正が高い生徒も多数在籍していましたが、現在セリアさんは前衛での力をより発揮できるように訓練を受けています。それはコウネさん、キョウコさんも同様です」


 確かにそうだ。セリアさんはヨシキさんになにか技を教えてもらっていたし、キョウコさんは術師というより司令塔、かつ最近は近接格闘を覚え始めている。若干、前衛よりになりつつあるのは否めない。


「また、これまではセリアさんとコウネさん、両名による回復術がある意味では生命線でした。事実、それでほとんどの場合は対応出来ていましたが――例外もありましたね。一年目での京都、そして……最近では非公式ですが、セリュミエルアーチでユウキ君が命を落としかけました。助かったのは正直偶然、奇跡と言い換えても良いでしょう。つまり、圧倒的にこのクラスには回復力が足りていないんです」

「確かに……私、正直回復術はかなり最低限しか使えないかも……」

「私もさほど変わらないですね……」


 あー、それは思った。薬での回復にも限りがあるし、確かにヒーラーは必要だ。

 ゲームではないけど、仮にゲームだとしたら、ヒーラーは必須だよ絶対。


「そういう訳です。ですので、今回は術師としての腕を持ち、近接格闘も高い水準でこなせる人物と、回復魔法に特化した人物を新たにSSクラスに編入、試用期間として次回の実技研修に同行してもらいます。無論、今日からは合同訓練も行う予定です」


 さすがにその発表には皆がざわつく。

 果たして本当に頼れる相手なのか、足を引っ張られないか、と。

 正直俺も、連携が取れなさそうなタイプだと、逆にいない方が助かるとか思っちゃってます。

 正直三年目で新しい人間が加わる事には不安も大きいのだが――


「では、入って来て下さい」


 が、扉を開けて入って来た人物に、俺は驚いて声も出せなかった。

 それはクラスメイトの皆も同じだ。

 入って来たのは……ショウスケとサトミさんだったのだから。


「こちらが今回SSクラスに編入する可能性のある二人です。今日から合同訓練を行い、次回の実務研修で適正を判断、その結果次第で正式にSSクラス入りが決定します」


 サトミさんは、去年のセリュミエルアーチの一件、俺とセシリアの対決の場に居合わせた関係でSSクラスとも面識がある。コウネさんの家にも同行したから一応顔見知りだ。

 だが、ショウスケは……一期生の頃の合同合宿に参加したメンバーしか知らないはずだ。

 つまりキョウコさんとコウネさん、カイは初めて顔を会わせる形になる。


「この中の何人かは顔見知りではあると思いますが、改めて自己紹介をお願いします。サトミさん、貴女からお願いしますね」

「は、はい! えと、ご無沙汰しています。今回研修生という形でこのクラスに配属されました、ヨシカゲサトミと言います。回復術専門です。魔法も少しだけ使えますが、正直戦力にはなれないと思います。その代わり、回復なら任せてください。宜しくお願いします」


 サトミさん……ファストリアの魔導学院に在籍していたはずなのにどうして……?

 俺と関わった所為で学院に居辛くなったとか……? 聞いてみないと!

 手を上げ、質問の許可を貰う。


「サトミさん、この学院に転校したいきさつとか教えてもらえる? なんだか意外だなって」

「あ、ええと……私、魔導の適正がなくなっちゃったんだけど、元々回復術の適正がかなり高かったみたいで、魔導学院だと回復術ってあまり高度な指導はしていないみたいだから、学院の理事長の推薦でシュヴァ学に……」

「……たぶん、適正がなくなったのって俺の責任だよね」


 俺が、彼女の召喚獣の力を使ってしまったから。

 それで彼女は……。


「あ、でも私元々回復魔術の専門に進むつもりだったから実質ノーダメージだよ? それに、シュヴァ学に入るきっかけになった回復術も、召喚実験の時に目覚めてくれたみたいだからさ。気にしなくて良いよユウキ君」

「えー……いや多少は気にするよさすがに。改めてありがとう、サトミさん。それとこれから宜しく」

「こちらこそ。通学が楽になるから助かるよー」


 あ、それはそうですな。確か毎日一時間以上かけてグランディアまで通学していたらしいし。


「では、次の紹介に移ってもらいましょうか。ショウスケ君、お願いします」


 そして問題のこっち。ショウスケお前、なんでこんな事になってるんだ!?


「ご紹介に与りました。既に見知った方もおりますが、始めましての方の為にも改めて自己紹介させて頂きます。『コトウショウスケ』と言います。仙杖門大学の異世界科に在籍していましたが、諸事情により秋宮理事長に編入を打診されました。自分の適正からして、異世界と関わる機会の多いこのクラスに配属されました。若輩者で経験も不足している身ではありますが、何卒よろしくお願いします」


 相変わらずの優等生感満載の自己紹介。いやいや、諸事情ってなんぞ!

 今度もすかさず手を上げ質問する。

 あ、許可して下さって感謝しますリョウカさん。


「質問いいですか」

「む、なんだユウキ」

「諸事情について詳しく。お前少し前に電話した時なにも言わなかっただろ」

「ああ、その時はそのまま仙杖門を卒業するつもりだったからな。その少し後に就活に備えて秋宮の召喚実験に参加したんだ」

「なるほど。で……そこで召喚した物の関係でシュヴァ学入りを打診されたと?」

「察しが良いな。ああ、詳しい話はその……」


 そりゃ俺も同じ理由でシュヴァ学入りしてますから。誰にも教えてないけど。

 しかしまさかショウスケも誰かの魂を召喚したとでも言うのだろうか……?


「ここの皆さんは秋宮の暗部にも多少関わりを持っています。ショウスケ君の事情については私から説明したいと思いますが、構いませんか?」


 すると、リョウカさんがこの件について話してくれると言う。


「分かりました。お任せします」

「はい。では……そもそも召喚実験とはどういう物なのか、その詳しい解説を……と言いたいところですが、長くなってしまいますので概要だけ説明致しますね」


 確か『過去の遺物や希少な魂を呼び出す』だったかな? 何故か地球産の物が呼び出される機会が極端に低いらしいけど。


「簡単に言うと『人々の記憶に残っている』『膨大な魔力を秘めていた』この二つのどちらかに該当した物が、世界に記憶されているのです。この場合は魔力……でしょうか。その関係で、どうしても魔力の多いグランディアの物品が召喚されるのが一般的です。ですが、中には地球の有名な品が最盛期の姿で呼ばれる事もあるのです」


 うん。まぁ大体俺の知っている知識と同じだ。どうやらみんなもそれは知っているようだ。


「ですが、ショウスケ君は『今から四年前に地球で作られた品』を召喚しました」


 教室がざわめいた。

 え、マジかよ……そんな最近の物が……?


「それは秋宮で開発されましたが同時に『危険なので世に出さず封印していた』品です。それを呼び出したのです。つまり『現代に作られたのにも関わらず、歴史あるグランディアの品々を差し置いて呼ばれる程力を秘めた品』を彼が呼び出したのです。この事態を重く受け止め、私は彼を秋宮の管理下に置く決断をしました」

「補足すると、元々僕は卒業後に秋宮に就職する事を考えていましたので、この機会を生かそうと提案を飲んだと言う訳です」


 マジか。お前そんな凄い物引き当てたのかよ……。

 ていうか秋宮でどんな物を作っていたというんだ……。


「私からは以上です。ショウスケ君、他に言うべきことがあればお願いします」

「はい。では……自分は術師であり、近接戦もある程度はこなせますが、聞いた通り戦闘に関わる教育機関の出身ではありません。恐らく皆さんと比べるには粗末な物でしょう。ですが、ここに合流すると決めた以上、誠心誠意皆さんと協力し戦いたいと考えています」


 凄い気になるな、ショウスケの召喚した物。

 というか、だ。それって開発した人……R博士だったりしない? 可能性としてはそれしか考えられないんだけど。


「本日はお二人の紹介の為に集まってもらいましたが、研修先の調整が済み次第お知らせします。今日の所はみなさんで親交を深めてもらいたい、というのが目的でした。それと……ヤナセカイ君は明日、召喚物の定期検査の後、特別指導が入る事が決定しました。問題がなければ明日、予定よりも長く研究所に居て貰いますが、問題ありませんか?」

「え? あ、はい大丈夫です」

「分かりました。では、今日の所はこれで失礼しますね」


 そう言ってリョウカさんは教室を後にした。

 ふむ……? カイも定期的に検査なんてしていたのか。


 リョウカさんが去ったところで、本格的に二人の話を聞く事に。


「マジで驚いたんだけど! サトミさんもだけど、ショウスケ、お前もかよ!」

「正直、まだあまり実感も湧かない上に自分の未熟さを自覚しているからな、戦々恐々としているよ」


 相変わらず謙虚な親友様。いや……お前なら絶対俺と同じタイミングで受験しても合格できただろ……。

 まぁ確かに受験資格を得る事は難しかったかもしれないが……。


「謙遜はよくないよショウスケ君。君が強いのは僕とユウキ君が知っている」

「そう言って貰うのはありがたいが……」


 カナメに続くように意外な人物が話し始める。


「ふふ、確かに謙遜だとは私も思いますわね。初めましてコトウ君。私は『カヅキ キョウコ』と言います。ササハラ君とはお知り合いのようですわね?」

「初めまして。ええ、ユウキとは同じ高校の出身です」

「なるほど、そうだったのですね。しかし仙杖門大学の異世界科となると、元々私が入学を希望していた場所ですわね。貴方と同じく、召喚した物の関係で秋宮へ入学する事になったのですけれど」

「なんと! そうだったんですか、これは奇遇ですね」


 へー! カヅキさんって元々別な学校希望してたんだ。

 って事は有名な学校だったのか?


「なぁショウスケ、センジュモンって有名なのか? 確かお前特待生だったよな」

「む……まぁ、そうだが。有名と言えば有名だな。向こうの一部国家に就職する事も可能な学校なんだよ」

「それは驚きですわね。あのセンジュモンの特待生……このクラスの編入も納得出来ますわね」


 え、なになに、お前やっぱ凄かったんか?


「センジュモン卒業生の中には、グランディアの国で内政の一部を任せられている人材すらいるという、言わば『学問におけるシュヴァインリッター』のような存在ですわね。私もセンジュモンの異世界科へ進み、魔導具開発の分野を学ぼうと考えていたんですの」

「へー……自分の物の知らなさを痛感しておりますハイ」

「くく、確かにお前はそうだな。なにせシュヴァインリッターすら知らなかったんだからな」

「や、やめろよ……」


 いやぁ懐かしい。ほんの三年前の話なのに、随分前の事のようだ。


「それで、君がシュヴァ学にスカウトされるくらいの品について僕は興味あるんだけど」

「そうだな……これから一緒に戦うのなら、情報の共有は必要か。だが、その前にしっかりと挨拶周りをしなければいけない。まだ初めまして、となる人間が二人もいるのだから」


 そう言うとショウスケはコウネさんとカイに向き直った。


「改めて、ユウキの高校時代の同級生のコトウショウスケです」

「はい、どうもご丁寧に。コウネ・シェザードと申します。ユウキ君の元婚約者です」

「な……! ユウキ、それはどういうことだ……! しかも元だと!? お前、まさか女性に不義理な真似を……!」

「違うから! コウネさんやめて! こいつ融通も冗談も効かないタイプだから!」

「なんだ……冗談でしたか……」

「いえ? 本当に婚約者でしたよね?」

「ユウキ!」


 やめて! コウネさんやめて!


「ユウキの同級生だったんだな。俺はヤナセ・カイだ。カイでいいからな」

「了解だカイ。俺の事もショウスケで構わない」

「カイ、こいつあれだぜ、俺の高校時代の好敵手ってヤツ。今は流石に俺の方が強いだろうけど、魔術師の癖に組手で俺に一応勝ち越してるんだぜ」

「な……凄いなそれは……」

「いや、真に受けないでくれカイ。卒業間近になる頃にはもう、ユウキには手も足も出なかったさ」


 でも、正直ショウスケは『頭が良い戦い方をする』んだ。そういう意味だと、このクラスにはいないタイプと言える。それに、凄い物を召喚したみたいだし……油断は出来ないぞ、俺もお前も。


「んで、カナメも言ってたけど召喚した物ってなんなんだ?」

「そうだな……秋宮でかつて開発されたデバイスなんだ。だがその性能が危険だからと封印されていた曰く付きの品でな」


 なにそれかっこいい! 由来がもうかっこいい!

 だが俺以上に興奮しているのは、何を隠そうキョウコさんだった。


「是非! 是非それを見せて頂けませんこと!? 非常に興味がありますわ」

「っ!? わ、わかりました」


 そう言ってショウスケが手元に召喚したのは、普段使っていたデバイスと同じく、杖型の物だった。

 どこか絵本に出て来る魔法使いが持っていそうな木製の杖。

 だが、その随所に機械が見え隠れしていて、どことなく『機械に浸食された杖』という印象を受けた。


「これが秋宮で開発された……現代に生まれたアーティファクト……」

「そうなります。詳しい材質は知らないのですが、強度は既存のデバイスとは比べ物にならないそうです。自分が以前使っていた物の数十倍はあると言われました」

「それはどういった製品だったのでしょう?」

「秋宮のオールドシリーズのロッド型ですね。型番はR-0103です」

「また秋宮ですのね……しかしその数十倍……」


 そうか、お前も秋宮びいきだったかショウスケ。仲間だな。

 相変わらず秋宮をライバル視しているキョウコさんはやや不満気だけど。


「これは……残念ですが私の知識ではよくわかりませんわね。デバイスというよりも、杖。魔導具としての側面が強いようですわ」

「あ、じゃあ私に見せてよ。良いかな、ショウスケ君」

「ええ、どうぞ」


 今度はセリアさんが興味を持ち調べていく。

 そんな様子を眺めながら、どこか所在なげなサトミさんに声をかける。


「これからは通学にも余裕出来るね、サトミさん」

「そうだね、正直かなり楽になるよー。実は通学と同じくらい帰宅も大変だったんだ。飛行機の時間的にこっちに戻るのは夜八時過ぎだから……」

「それでお風呂入ったり家の事したり……本当大変だったね……」

「うん。もう二年目からグランディアに移住しようか迷ったんだ。実は向こうの寮に入るのにも、移住手続きが必要なんだよね……」

「そうだったんだ、そうなると中々踏ん切りつかないよね」

「そうなんだー」


 そうか、毎朝早起きして通学していた理由の一部はこれだったのか……。


「それにしてもさ、やっぱりみんな意識が違うよね……私別に誰かの召喚した物とか興味持った事なかったけど……みんなは少しでも一緒に戦う人の事を知ろうとしてる。こういう意識がたぶん、私には足りないんだと思う」

「そうかもしれないね。でも……医療の道に進むならさ、相手の事を知るのって絶対必要だもん。これから少しずつ慣れて行こうよ。ほら、手始めにみんなの事を知ろうとしたりさ」

「だね。私、どこか遠慮してた気がするんだけど……そうだよね、一緒に戦地に向かう仲間だもん。もっとみんなの事、知って行かないとね」


 そう言って、サトミさんもみんなの会話の輪に加わった。

 今日から合同の訓練も始まるし、次の研修場所が決まるまで、やれることはやらないとな!








「ああ……会場に見に行けないのは残念ですが生中継が見られるなんて……やはりインターネット配信とはすばらしいものですね」


 その頃、ユウキの自宅ではイクシアがリビングのソファに陣取り、TVに噛り付いていた。

 少し前にユウキが有料動画配信サイトをTVでも見られるようにしたお陰で、イクシアは目当ての番組を大きな画面でゆっくりと楽しめるようになっていたのだ。


 無論、全ての買い物や家事を終わらせ、何の憂いもない万全の状態にした上で。


「さぁ……どんな料理になるのでしょう……楽しみですね『BBアシスタント選抜大会』」


 それは先日BBが発表した、料理大会に出る為のアシスタントや、第二の司令塔を募集する為のオーディションを兼ねた大会だった。

 その様子を生中継するという番組を、イクシアは今か今かと待ちわびていたのだ。

 そうして、書類選考を勝ち抜いた選手達が会場へとやって来る――


(´・ω・`)(女体には)興味あるね

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