第百九十七話
(´・ω・`)おまたせしますた
……間違いない、絶対見られてる。
今日も今日とて人目を避ける為、第二校舎の屋上庭園でお弁当を食べていると、明らかに何者かの視線を感じる。それも、背後にある大きめの藪の中から。
そんなところに潜むヤツなんて本当にいるのか。
「……さすがに気がつくから出てきなよ。ここ、結構虫とか来るっていうし」
「ひぇ!?」
「いらっしゃいアリアさん。どうしたの、ここ数日覗いていたけど」
「き、気がついていたのならもう少し早く声をかければよかったですね。てっきり誰かと待ち合わせなら、邪魔をしてはいけないと思っていたのですが」
「ん-、別に待ち合わせはしてないよ。前に友達が来たのは偶然だと思うし」
「あら、そうでしたか。では、改めまして……」
緑の中から金色の耳がこんにちはしていたんですよ。
出て来たアリアさんは、尻尾に葉をくっつけたまま、綺麗なお辞儀を披露する。
「今年度よりユウキさんの後輩となりました、ミササギ・アリアです。先達ては大変なご無礼を働き、誠に申し訳ありませんでした」
「はは、もう大丈夫だよ。前に謝ってもらったしそんなに気にしていないからさ」
悪い子ではないと知っている。もしかしてずっと謝る機会を探っていたのだろうか?
俺、学食に最近行ってないからなぁ。それに人目のあるところで謝る訳にもいかないだろうし。この人も俺も有名人なんだもんな。
「座りなよ。あ、もしかしてご飯まだだった? なら学食に戻っても良いけど」
「あ、もう食べましたよ。私も先程お弁当を」
「なるほど。まさかその藪の中で?」
「……てへ」
マジか。なんでまた。
「いえね、ユウキ先輩が来るのなら隠れておこうかと思いまして」
「それはなんだか悪かったね。今度からは普通に食べなよ。っていうか学食で食べないの?」
「たぶん、ここで食べているのはユウキ先輩と同じ理由ですよ。」
「あー……確かに。ここ、割と穴場だから今度からここで食べると良いよ。って言ってもお弁当毎日作るのは大変かな? お弁当って事は寮暮らしじゃないんだよね?」
「はい、学園裏の町に家を借りています」
「へぇ、そうだったんだ。今、あの町って報道陣がよく出入りしてるから面倒でしょ。大丈夫?」
「あはは……確かにちょっと不便ですね。一応家の近くには部外者は近づけないようにしているんですけど、スーパーでよく見かけるんですよね、記者の方々を」
「ねー、最近減っては来ているけど」
同じ悩みを共有出来る相手に、ちょっと嬉しさがこみ上げる。
「それにしてもユウキ先輩のお弁当、おいしそうですね? 凄く可愛らしいと言うか『ザ・お弁当』っていう感じじゃありません?」
「やっぱりそう見える? 最近俺の保護者が『初心に戻りクラシックスタイルでバリエーションを出してみようと思います』って言い始めてね。毎日この時間が楽しみなんだ」
「へぇー! 保護者さんはお料理が上手なんですねぇ。ふむ……」
よかった、どこかの誰かさんみたいに『少し頂きますね』と事後承諾よろしく食べ始めたりしなくて。
最近はこちらの事情を知っているため、一人分しか持たせないようにしてくれているのだ。
コウネさんからは不満の声があがりはじめているが。
「ユウキ先輩、明日は私がお弁当、作って来ても良いですか?」
「え? なんでまた」
「いえ、ちょっとしたお詫びも兼ねつつ、親睦を深めようと。ぶっちゃけ好感度稼ぎなんですけど、ダメですか?」
「直球だなぁ。じゃあ……まぁ別に良いけれど、俺に取り入っても良い事ないよ? 機密だらけの人間だから」
「いえいえ、そういう意味で言ったのではないですよ? ただ私のタイプでかつ人柄的にも好みなので、アプローチをかけようかと思っただけです」
何この子恐い。ストレートっていうかデッドボールがんがん投げて来るんだけど。
「……冗談ですからね? 本当に親睦を深める為です。あわよくばお弁当のおかず交換などしたりして、学園生活に花を添えようかと」
「なるほど……割と寂しい学園生活だったり?」
「ん-、女子はそうでもないんですけど、男子がちょっとしつこいですね。最悪家の名前と格で黙らせますけど、それって凄くかっこ悪い気がして」
「はー……確かにアリアさん美人だし有名人だし、俺よか男子からならアプローチも激しそうだなぁ……」
「そうなんですよねぇ。それに一部の女子からも嫉妬されますし」
「ま、一学期のうちは我慢するしかないかもね。大丈夫、問題ある生徒は二学期までに停学、そこから自主退学がいつもの流れだから。入学式の時にスピーチで言ったけど、この学園ガチで厳しいからね」
「まぁあの総帥さんですからねぇ……」
しみじみと頷くアリアさん。そうか、知り合いだったか。
「じゃ、明日はお弁当交換も視野にいれて多めに作ってもらえるようにするよ。じゃ、俺は先に失礼するね。午後一で講義があるんだ」
「はい。お話ありがとうございました」
そうしてアリアさんと別れる。少なくとも、この子は問題のある生徒ではない。
……そう、この子に問題はないのだ。少なくともこの時の俺はそう思ったのだ。
「ユウキ先輩、講義ってこっちの教室ですよね? 一緒に行きませんか?」
翌日、午前中の講義に向かう途中にアリアさんに声をかけられる。
正直、思ったよりも表立って俺に声をかける生徒がいない中、彼女の行動は周囲を驚かせていた。
まぁそれは彼女自身の知名度も関係しているのだろうが。
「アリアさんがユウキ先輩に声を……」
「やっぱり有名人同士で固まるのか」
「く……運だけの人間が……」
ほら。絶対こういう生徒が出てくると思った。
それをスルーしつつ、彼女の付き添いを許可する。
「ん-、人目のある所で話しかけない方良いんじゃない?」
「いえいえ。一種の威嚇行為です。ユウキ先輩程になると、敵対してくる人もいないでしょう? 私も変な人間に絡まれなくてWINWINです」
「俺は人避けじゃないんだけどなぁ。そして俺のWIN要素どこ?」
「私と歩けます」
「そりゃ光栄」
とまぁ、こんな具合で声をかけられる事が多くなった。
そして昼食、約束通り屋上庭園で待ち合わせ。
が、しかし。今日は俺だけじゃないんです。クラスメイトも一緒なんです。
「な……! ユウキ先輩、これは……」
「ん、せっかく一緒に食べるなら俺のクラスメイトも一緒に食べようかと。最近俺一人だったしさ」
「と、いうわけです。お邪魔しますね、ミササギ・アリアさん」
「す、すごい……本物だ……ユウキ知り合いだったのかよ……」
「それよりみんなお弁当持ってて僕だけ菓子パンなの寂しいんだけど。カイ、そのお弁当どうしたのさ」
「わ、私がコウネの家で作った……あまり慣れてはいないのだが」
「私もコウネのとこで作ったんだー。春だからね、菜の花のサラダサンドイッチ」
みんなお弁当持参です。ただ、残念ながらキョウコさんはサークルの方で集まって食べながら作業中だそうです。最近物凄く生き生きしてるんですよね……。
いやね、アリアさんと二人きりでいるとなんか面倒な事になりそうな予感がしているんです。
「く……! み、皆さん? 初めまして……ですよね。ミササギ・アリアと言います」
しかしやはり礼儀正しいのか、それとも外面を取り繕っているのか、若干ひきつった笑顔で自己紹介を始めるアリアさん。
うむ、たぶん後者に違いない。
「初めまして! いつもテレビで見てました! ヤナセ・カイです。ユウキとはライバルだと自分では思っています」
「カイ先輩ですね。今は一後輩でしかありませんが、宜しくお願いしますね」
「へー、本当にあの女優さんだね。僕は映画とかはよく見るけどあまり役者さんの名前は憶えていないんだ。でも君の事は印象に残ってるよ『蓮と暁の呪い』っていうホラー映画の主演だったよね。僕、あれ好きだよ」
「まぁ、それは光栄です。あの作品は私のデビュー作でしたので、少し恥ずかしいのですけど……」
「あ、名前言うの忘れた。カナメです。吉田カナメ。同じくユウキ君のライバルを自負してるけど、いいかな?」
「勿論いいとも。仮にもカイもカナメも俺に一度勝ってるんだから」
カイはあれな、引き分け+この間みんなで一斉に挑んできて勝っただけだけどな!
「その、私はあまり芸能には疎くてだな……初めまして、一之瀬ミコトと言う」
「一之瀬先輩ですね。知っていますよ、一之瀬流の師範代なんですよね」
「む、知っていたのか」
「はい。神事を任せられる事もあると聞いています。私も、そういった仕事に携わる家の出ですので」
「そうだったのか。ふふ、意外な共通点だ」
確かに一之瀬さんが芸能人に詳しいイメージは湧かない。
が、なるほど……このお狐様はもしかして巫女かなにかなのだろうか?
狐で巫女とか凄いマッチする属性じゃないですか。
「初めまして。ユウキ君の元婚約者のコウネ・シェザードと言います」
すると、次に名乗ったコウネさんがとんでもない自己紹介をし始めた。
おいおいおい、事実だけど別に言わなくても良いじゃないですか。
「な……! 元婚約者……で、では今は破局……?」
「ふふふ、どうでしょう? 学生の内はそういうしがらみなく、好きにアプローチをしかけているだけ……かもしれませんね」
「な、なるほど? へぇ……コウネ先輩ですね。覚えましたから」
なにこれ恐い。
「ぐいぐいいくなー……アリアちゃんだっけ。たぶん『ホンレイ』ちゃんの妹だよね? たぶん見かけた事はあるけど……私は『セリア・ハーミット』これからよろしくね?」
「ふぁ!? 何故私の姉の名を!?」
次に名乗るセリアさんは、いきなりアリアさんのプライベートを言い当てた。
「お姉さんと私、同じ聖女候補だったんだよ。幼年期は一緒に暮らしていたからね、妹さんの話はよく聞いていたんだ」
「く……まさかこの学園に姉の関係者までいたとは……」
どうやら、自分の過去や家族に関してはあまり触れられたくはないらしい。
「で、早速僕は菓子パンを食べ終わった訳なんだけど、寂しいのでみんなのお弁当を分けてもらえないかな? お礼にお菓子あげるから」
「カナメいつの間に。ほい、じゃあ今日はイクシアさんが気合いを入れて作ったバゲッドサンドを贈呈しよう」
「いいのかい? これすっごく美味しそうだけど」
「大丈夫。バスケットいっぱいに持ってきたから」
自己紹介も終わり、昼食タイム。今日はイクシアさんがバゲットサンドだけでなく、ベーグルサンドからロールサンド、さらにミートパイまで持たせてくれたのだ。
『友達とお弁当交換しながら一緒に食べるから少し多めに作って欲しい』とお願いしたら、『ユウキが私にリクエストをしてくれるなんて……! 気合を入れて沢山作りますからね!』と、昨日の晩から準備してくれたのだ。
「美味しいねこれ。このチーズ、すっごい美味しい」
「あ、カナメ君私にもそれ下さい。これたぶん、BBチャンネルで紹介していたカッテージチーズですよ」
少しだけ空気が危ぶまれていたが、今は和気あいあいと時間が過ぎる。
出来ればアリアさんもしっかり同期生と過ごせるようになってもらいたいが、今しばらくは俺達と一緒の方が良いのかもしれないな。
「ユウキ先輩、口開けてください」
「ん?」
「はい、あーん」
「むぐ……あ、美味しい」
「ふふ、実は私も料理には自信があるんですよ。おいなりさん、美味しいでしょう?」
不意打ち気味に食べさせられたのは、なつかしの稲荷寿司だった。
確かに美味しい……俺、結構これ思い出の料理に分類されるから、かなりポイント高いっす。婆ちゃんがよく作ってくれたっけなぁ……。
「あー……普通に美味しくて感動してる。アリアさんありがと」
「そ、そこまでよろこんでくれるとは。私の地方ってこのおいなりさん、代々伝わっているんですよね。文献によると『原初の魔王が伝えた』そうです。知ってます? 神話の魔王って実はサーディス大陸に関りが深いんですよ?」
「へー、そうだったんだ。セリアさん知ってた?」
「うん、知ってたよ。そもそも友好国としてずっと関りがあったくらいだしね」
ほほう。そういえばそんな話も聞いたような。
でも……ヨシキさん、なんでおいなりさんなんて伝えたんですかね?
もしかして当時もお狐さんがいて、なんとなくおいなりさんが似合いそうだから伝えたとかじゃないですよね?
久々に賑やかな昼食を摂れた俺は、気力をたっぷり充填して午後の講義に臨むのであった。
なんでこうなるのよ。そりゃ二人きりって言わなかった私も悪いけれど、普通私と二人きりになれるチャンスを自分で潰す!?
「と、いうわけです。お邪魔しますね、ミササギ・アリアさん」
「す、すごい……本物だ……ユウキ知り合いだったのかよ……」
「それよりみんなお弁当持ってて僕だけ菓子パンなの寂しいんだけど。カイ、そのお弁当どうしたのさ」
「わ、私がコウネの家で作った……。あまり慣れてはいないのだが」
「私もコウネのとこで作ったんだー。春だからね、菜の花のサラダサンドイッチ」
紹介されたユウキ先輩のクラスメイト。知っている、英雄の通うクラスの人間の情報くらい、軽く目を通しているのだから。
けれども……女子のレベルが高い。私程ではないにしろ、恐ろしく高い。
もし、この中にユウキ先輩を狙っている子がいたら……アドバンテージは確実に向こうにある……!
内心の困惑を悟られまいと、平常心で先輩方と自己紹介を交わす。
正直、男子二人はあまり気にしなくても良い。特にこのカイという人は、大多数のファンと同じか、少し興味がある程度のミーハーといった印象だ。
でも、見た感じユウキ先輩とかなり親しい様子ですね。
……悪い人ではないように見えます。
このヨシダカナメさんも、少し掴めない感じの印象を受けますが、逆に好感が持てます。
それに私の映画を評価してくれましたし。
正直、人間換算でこの学園の適正だから通っていますが、生きて来た年月、置かれた環境的に、ここの生徒にこういった方面で負けるつもりは端っからないのですが、一人だけ厄介な人がいます。
『コウネ』先輩です。
この人、確実に私の狙いに気がついています。それに……元婚約者というのもブラフじゃないです、真実っぽいです。確実に私の恋敵になる相手です。
……先制パンチは貰ってしまいましたが、今日から少しずつユウキ先輩を篭絡していきますからね……。
が、まるで私の恋を神が邪魔だてしているかのように、更なる試練が待ち受けていました。
あろうことか、姉様のご友人も通っていたのです。どうしてですか、もうそんな年齢じゃないはずです! と思ったのですが、どうやら最年少で聖女候補に選ばれた大天才様でした。正直、同じ長命種である彼女も警戒の対象ですが、何よりも下手に動いて姉様の耳に入る事を考えると……迂闊な事は出来ませんね。
どうしましょう。ユウキ先輩に対してこっそり魅了でも使って徐々に好感度を上げていくしか……。
「じゃあ、俺達は午後の講義に行くよ。一期生はまだ午後に講義はないはずだよね?」
「ふむ、アリア嬢はどこかサークルに入ってはいないのだろうか? 恐らく二期生、三期生に合わせてサークル活動の開始は少し遅れる事になると思うが」
考え込んでいるうちに時間がだいぶ過ぎていた。折角ユウキ先輩においなりさんを食べさせられたのに、もっと沢山お話をするべきでした。
「いえ、サークルには入っていません。皆さんはどこかに所属しているのでしょうか?」
「俺はどこにも入ってないなー」
「お、俺はバトラーサークルに入ってる! 興味があれば見学も歓迎するよ」
「私も同じくバトラーサークルに所属していますねー。女子の入団は歓迎しますよー」
ふむ……ユウキ先輩もどこにも所属していないなら、チャンスありです。
コウネ先輩、ミスりましたね? これで放課後のユウキ先輩は私の物です。
「僕も入っていないね。企業に呼ばれる事もあるし。ユウキ君も似たような物じゃない?」
「だなー。今でこそ大っぴらに俺が秋宮の人間だってバレちゃったけど、実は結構一期生の頃から忙しかったんだよね」
……そうはいかなかったみたいです。さすがは英雄。
「私も所属していないな。アリア嬢も未所属なら、今度裏の町の案内でもしようか。あれで中々入り組んだ町でな、実は私も把握していない店が幾つもあるんだ」
「あ、それは助かります。あの町ってちょっと特殊な結界に包まれていて、私でもうまく探索出来ないんですよねー」
ミコト先輩は、正直ノーマークでも問題ない。というか、是非ともお友達になりたい。
少し、姉様に似た雰囲気で、一緒にいると落ち着きます。それに……この人はユウキ先輩狙いじゃない。一目で分かりました。
「では、私は空いている教室で自主勉額に励んできます。午後の講義も頑張ってくださいね、先輩達」
先輩方を見送る。……少々予定外ではありましたが、一気に沢山の情報が手に入りましたね。
それに……私が先輩方に混じっているお陰で『厄介な生徒』に追われずにすみましたから。
「はぁ……私は私より背の高い男に興味はないんですけどねぇ……」
最近、自分が目立つ事は仕方がないとあきらめていたが、一人だけ過度な接触を図る男がいる。
それを避ける為にも、もう少しユウキ先輩や他の先輩と一緒に行動した方が良いかもですねぇ……。
「少し良いか、カヅキキョウコ君」
「お、カズキ先生じゃん。そういえば苗字と名前が同じだよね二人って」
放課後、今日は一緒に昼食を取れなかったキョウコさんに、お昼の様子を話しながら次回は一緒にどうだろうかと声をかけていたところ、カズキ先生に声をかけられる。
「はい、どうなさったのでしょうか?」
「次回の君の個人指導なのだけど、予定を変更してある生徒と組手を行って貰いたいんだ。まだ二度ほどしか指導はしていないけれど、それでも皆徐々に変化しているしね。ここで、特異な能力を持つ相手と戦った場合の対応力を見る為にも、これから皆には一人ずつ定期的にある生徒と戦って貰いたいんだ」
お? それってまさか? いやいや、まさかね?
「対人……ですか。私の戦闘力は本当にアテにできないレベルですが、それでもよいのでしょうか?」
「ふむ……自己評価の低さはマイナスだぞ。君は確かに司令塔としての適正が高く、能力も情報戦に特化している。けれど、君のポテンシャルは少なくとも同年代の中では上から数えた方が遥かに早いんだぞ?」
「そう、なのでしょうか。分かりました、組手をお受けします。予定は次回の指導と同じ明後日でしょうか?」
「そうなるね。午後の講義は入っていなかったはずだけど、問題はないかな?」
「はい。その日は予定を空けてありますので」
確かにキョウコさんは強い。周囲にいるのが俺達SSクラスの人間だから、いまいち直接的な戦果は出ていないが、そもそもこの人は進級試験を突破してきているのだ。
それに……あの電気ハムちゃん。あの扱いに『応用が利く』と最近カズキ先生に教えられて、飛躍的に戦闘力を上げてきている。
「カズキ先生、組手の相手って誰? もしかして一期生だったりしない?」
「お、知っていたのかな? そうだよ、一期生のディオス君だ。彼は少々特殊な体質でね、君達が戦った事のないタイプだ。これは、将来の為に良い経験になると俺は踏んでいる」
「えー……まさか全員に勝ったら編入させるとか約束してません?」
「ああ、しているよ。……が『少なくとも君だけは絶対に負けない』だろう?」
……ふむ。先生ってもしかしなくても裏の人間なのか。
俺がどこまで強いのかを正確に把握出来ているような物言いだ。
「キョウコ君も、恐らくうまくやれば勝てる。だがまだ指導が始まって間もないからね、相性的に厳しい戦いになる。正直、コウネ君も危ういかもしれないと俺は思っている相手だ。あまり気負わずに戦って欲しい」
「……なるほど。どうやら『魔術』に対して何らかの対処法を持っている相手のようですわね? 良いでしょう、善戦して後続に情報を与える事にしますわ。これはいわば『団体戦』ですものね」
「そういうことだ。ディオス君は七人抜きするつもりだけど、逆に君達は誰か一人でも彼を止められたらそれで勝利だ。ま、建前上は『君の戦いぶりを見て最終的な判断を下す』とは言っているんだけどね」
なるほど? しかし……出回っている映像を見た上で、俺達全員に勝てると思っている以上、警戒しておくに越したことはない、かな?
(´・ω・`)いやぁ、ゼノブレ3面白かった
ストーリーかなりシリアスだから2から入った人間には厳しいけど




