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第百八十話

(´・ω・`)たぶん子孫

「あ、あー……よし」

「その魔導具も凄いですよね。さすがはR博士作です」

「ええ。声の変質は違和感が出やすいと聞きますが、このように肉声となんら変わりません。それに装着されている肉体にそっくりなスーツも、人体にしか感じられませんし」

「……それもなんですが、ユキの演じ分けも凄いですね」

「そうでしょうか?」


 いやもう慣れました。前回、正直かなり難易度の高い潜入任務をユキとして完遂したお陰か、もう完全に俺のユキとしての演技は完成したと言える。気持ち的には微妙だけど。


「しかし幸いでした。取り上げられたのはあくまでユウキだけでしたから。私もオーストラリアでかなり派手に動いてしまいましたから、もしかしたら……とも思っていたのですが」

「そういえば、オーストラリアでの一件の話はまだ聞けていませんでしたね。後で聞かせてください」


 そんな会話をしつつ、バスで商業区へと向かう。

 海上都市はその性質上殆どが『企業や研究所』であり、そうなると必然的に今の時期は人が少なくなる。

 所謂里帰りってヤツだ。まぁ観光客がその分多いけれど、今の時期はそこまでの数ではない。まぁ寒いとみんな外出たくないよね、分かる。


「……しかし、想像以上に大ごとになっていたのですね、ユウキは」

「そうですね。息子があまりにも有名になると、親としては複雑です」


 いや他人事みたいに言ってるけど内心ストレスでどうにかなりそうです。

 今さ、バスから外の風景見ていたんだよ。ビルに設置されている巨大モニタに普通に俺が映っていたんだよ。

『ササハラユウキ君が地球に帰還していた』ってテロップまでついてさ。

 これBBの動画の所為ですよね。


「幸い、海上都市はメディア関係者の取材に関しては厳重に取り締まっていますからね。無断で侵入でもしない限り私生活が脅かされる事はないでしょう」

「なるほど。ですが先日のように一般の方からの接触もあるかもしれませんよ? 学園の新学期は大丈夫でしょうか?」

「学園内ならばむしろ安全ではないでしょうか? 理事長がそういった野次馬行為を許すとは思えません。それこそ、厳しい学園ですから」


 ほら、去年とかナシアに付きまとっていた生徒を完全に退学させたりしていたし。

 それ以前に進級試験で相応しくない生徒を大量に退学にする学園だしな。


「次で降りましょうイクシアさん」

「はい。しかし妙ですね。映像に私の顔は映っていないのに、妙に視線を感じます。それにユキも先程から人に見られています。まさか……映像が新たに公開されたのでしょうか」

「……いえ、恐らく無関係ですよ、映像とは」


 そりゃ貴女が美人だからです。……あと認めたくないけど俺も。

 いや凄いっすねリョウカさんの学生時代の姿って。今でも美人だけどあの人。




 園芸店はPCで調べた時から知っていたが、おしゃれな外観の所謂『ガーデニングショップ』ってヤツだった。

 店頭に飾られた大きなバスケット、そこに飾られている色とりどりの花。

 綺麗な陶磁器のような鉢に植えられた小さな花。

 もうね、俺が想像していた店とは全然違うの。ガーデニングガチ勢の為のお店でした。

 ごめんね、ここに俺が買いに来たのは除草剤と肥料なんです。お洒落と程遠いんです。


「ふむ……綺麗なお花ですね。畑の一角を花壇にするのもありかもしれませんね……」

「いいですね、賛成です」

「では、花壇用のレンガやブロックを注文しておきましょうか」


 後日宅配して貰えるようにお願いし、目的の物を購入しお店を後にする。

 結構な荷物だし、このまま他のお店を周るのも面倒だな……。

 コインロッカーにでも預けようかと、大通りから外れて小さめの路地を進む。

 さすが都会。結構な頻度でコインロッカーを見かけるのだよ。場所も忘れないようにスマート端末のアプリと連動して場所が表示されるという優れもの。


「むむ……やはりスマート端末を使いこなすと便利なのですね。私もメッセージと電話とカメラ以外の機能をおぼえるべきでしょうか……」

「必要に応じて少しずつ覚えていくと良いですよ。その都度教えますので安心してください」


 大きな事件も終わったのだし、一連のゴタゴタが一段落ついたら、ゆっくりイクシアさんと過ごす時間も作れそうだな。

 そうだ。来学期までもしも自由な時間が取れるなら、一度実家にも戻りたいな。

 リフォームが終わってから一度も行ってないのだし――


「っ! ユキ、誰かの争う声がします」


 その時、こちらの思考を遮るざわめきが路地の奥から聞こえて来た。


「イクシアさん、どうします。ここを離れますか? それとも――」

「確認をしに行きましょう」


 微かに聞こえて来たのは、女性の嫌そうな声。

 誰かに追われているのか『しつこい』『来ないで』という言葉も聞こえて来た。

 脳裏を過ぎるのは、かつて同じく路地裏で遭遇したノルン様の狂言誘拐。

 どうやら海上都市の路地裏は、思っていたよりも治安がよろしくないようだ。


「状況的に片方を悪と断じるのは早計かもしれませんが、一先ずこの騒ぎを収めてきます」

「気を付けて下さい、ユキ」


 場所こそ違うけども、なんだか懐かしいな。

 あの頃、俺は自分の力が六光に通じなくてかなり驚いたっけ。

 でももう、あの頃の俺じゃない。

 路地を駆け抜け、視線の先で二人の男に追いかけられている女性へと向かう。

 男二人の脇を一瞬で駆け抜け、女性との間に割り込む。


「止まりなさい。私は海上都市における警察権限を所有しています。そちらの身分を明かしなさい」


 これ本当。これはリョウカさんではなく、リョウコの方に俺が使われていた時、自由に動けるようにと海上都市限定で与えられた権限だ。

 例のレストランで暴れたりもしたからね。そういう時の警察の介入に備えてこういう権限を持っているのだ。


「な……! 俺達は犯罪者じゃない! ただその人に話を聞きたいだけだ」

「そうですか。では名前と身分証明書を提示してください。このまま警察署に同行願う事も出来ますが。……ああ、私からは決して逃げられませんよ」


 さすがに非戦闘員に逃げられる俺じゃあないです。いや戦えても逃がしはしないけど。

 男達は観念したのか、自分の財布の中から名刺を取り出した。


「『週刊スクープ記者』ですか」

「そ、そうだ! ただの取材だ!」

「だからそっちの勘違いなんだよ」

「ではすぐに海上都市入りを本日許可されている報道関連の人間と照会してみます」


 海上都市は元々報道関係には厳しい。グランディアからの要人来客や各種メーカーの研究所がある関係で、情報の持ち出しには常に目を光らせている。

 ましてや、今は俺ことユウキの件もあるのだ。

 すぐさまスマ端で秋宮のネットワークを確認していく。


「……ありませんね。言い逃れ不要、このまま警察の人間が来るまでここにいてもらいます」

「っ! 逃げ――」

「諦めなさい」


 はい、捕縛。ぱっと見ただの女に見えてもこちとらダーインスレイヴだぞ。


「イクシアさん、警察に電話をお願いします」

「はい。見事なお手並みでしたね。追いついたらもう終わってしまっていたとは」


 イクシアさんが肥料や園芸道具を持ってやってきた頃には、男達は観念した様子で座り込んでいた。

 さて――


「申し訳ありません。貴女にもお話を聞く必要があります。同行をお願い出来ますか?」


 振り返ると、呆気にとられた女性がようやく再起動したのか語り出す。


「え? あ! うーんちょっと困るかなー……? 急いで会わないといけない人がいるんだけどー」


 見るからに怪しい。サングラスにマスク、そしてニット帽。絵にかいたような不審者だ。

 ふむ……記者に追いかけられていたって事は……有名人なのか?


「そういう訳にもいきません」

「お願い! そこをなんとか! 今から会う人が口添えしてくれたらなんとでもなっちゃうから! ね!」


 はて、なんだ? お偉いさんのお客さんなのかこの人。


「ユキ、この方はどうやら……ふむ……偶然とは凄いですね……」

「何がでしょう、イクシアさん」

「今日着ている服の参考にした方ですね、恐らく。海上都市にフォクシーテイルがいるとなると、可能性は一つでしょう」


 イクシアさんに指摘され、女性のお尻のあたりを見てみると――あ。

 尻尾だ。まごう事なき尻尾だ。綺麗なモフモフ尻尾だ。

 え? 変装の意味なくない? 一目瞭然では?


「参考までに、会う約束になっている相手のお名前をお願いします」

「秋宮リョウカさんっていうの。シュヴァ学の理事長って言えばわかるかな?」






 えー凄い。俺芸能人生で見たのたぶん初めてなんだけど。

 今朝テレビで見た人がすぐ隣にいるとか結構緊張する。

 まぁ表情には出さないけど。今ユキだし。


「うーんワタシってばラッキーね。理事長さんの知り合いに偶然会えるなんて。それに危ないところも助けて貰っちゃったし。やっぱりワタシ『持ってる』のかなー」

「そうですね、幸運でしょう。しかしシュヴァ学に入学出来る実力があるのならば、逃げ切る事も容易だったのではありませんか?」


 少なくとも俺が入学決めた時ですらあんな記者二人に苦戦なんてしなかったろうし。


「ワタシ地球にいる時はリミッターかけられちゃうのよねー。今はただの女子高生って訳。学園の中でならもう少し融通を効かせられるって言われているんだけど」

「なるほど」


 へぇー、俺以外でリミッターかけられている生徒なんてカナメくらいしか知らなかったから珍しいな。

 密かに感心していると、この女性……名前、なんだっけ? テレビで肝心な部分見てなかった。とにかく、この女性が俺の顔をじろじろ見つめて来た。


「なにか?」

「ん-? いやお姉さん綺麗だなって。それにもう一人の貴女も。もしかして同業者かな?」

「生憎、私は秋宮の職員ですよ、ただの」

「え、そうなの? てっきり学園の先輩かと思ったんだけど」

「私は生徒ではありませんよ。後ろの彼女も学園の生徒の母親です」

「へー、やっぱりエルフって若く見えるわね……母なんて」


 それにはうん、同意。ただこの場合養子です。


「はい、お母さんなんです」

「じゃあワタシが入学したらお子さんの後輩ですねー」

「ふふ、ご縁があれば仲良くしてくださいね」


 そうして、さすがにこれ以上目立ってはいけないからと、タクシーを拾い学園に向かうのだった。








 学園は今の季節は短いながらも冬季休暇に入っている。

 が、当然進級試験の兼ね合いで通い詰める生徒も多く、今も訓練場に向かう生徒がまばらに見える。

 そんな中理事長のいる第一校舎へ向かおうとすると、丁度校舎から三人の人間が現れた。

 ……えー……なんか凄い気まずいんだけど。


「ユキさん!? お久しぶりです、その節は……自分の未熟さを思い知る良い経験をさせて貰いました」


 現れたのは、カイと一之瀬親子だった。

 ああ……何か言われそうだ。

 すると、まるで代表するかのように一之瀬さんのお父さんが一歩前へ出た。


「ご無沙汰しております、ユキさん」

「お久しぶりです、蒼治郎さん。その節はお弟子さんに剣を向けてしまい、申し訳ありませんでした」

「いえ、それも戦場に身を置く以上仕方のない事でしょう。しかし……まさか、貴女も地球に戻ってきていたとは」

「……そうですね、今回はまぁ……色々と動き過ぎて疲れましたので、少々お暇を貰おうかと思い、総帥に交渉をしようと」


 ついでだ。そろそろ終わらせるべき事を終わらせよう。

 流石に、カイの感情を惑わすのもアレだしな。


「と、言いますとついに裏の世界から足を洗うと?」

「まぁそんなところでしょうか」

「ならば、貴女も学生になるというのは如何ですかな?」


 蒼治郎氏がそんな提案をすると、まるで興奮するようにカイが追従する。


「そ、そうですよ! ユキさんならシュヴァ学にだってきっと入学出来ますし!」

「いえ、少々込み入った事情がありまして。……そうですね、蒼治郎氏にはオーストラリアの一件を直接説明する必要があるでしょう。私の事も含め、後日ご説明に向かいたいと思います。本日は客人を案内中である為、時間を取る事は出来ませんが、いかがでしょう」


 これは、俺が取れるけじめとしても必要な事だ。オーストラリの事件の時だけじゃない、カイの事も含めて。


「それは是非とも聞きたいところですね。ふむ……明日、ミコトを迎えに向かわせましょう」

「お時間を割いて頂き感謝します。出来れば、ミコトさんやカイ君にも同席して頂けると幸いです」

「了解した。カイ、お前もミコトと共に道場に顔を出してくれ」

「分かりました!」

「では、明日私はどこへ向かえばよいでしょうか?」

「今はユウキとイクシアさんの家で休ませてもらっています。そちらに来て頂けると」

「了解しました。では、また明日そちらへ伺います」


 三人とはそこで別れ、理事長室へと向かう。




 理事長室をノックすると、すぐに返事が返って来た。だが、意外にも――


『蒼治郎さんですか?』

「いえ、ユキです。先程連絡した女性をご案内しました」

『入ってください』


 ふむ? さっきまでここに一之瀬さん親子とカイがいたって事なのかね?


「よく来てくれました『ミササギ・アリア』さん。少々トラブルに見舞われたそうですが」

「ご無沙汰していますリョウカ理事長。ちょっと面倒な記者が追いかけていたみたいですねー。まぁたぶんあそこの編集者、二度とこの街どころか……芸能界に関われないでしょうけど」

「当然です。私の治める都市で不貞行為を行った人間が表の世界で大腕を振るって歩けるはずがないでしょう」

「おー恐い恐い……」


 どうやら、元々既知の間柄のようだ。じゃあ俺はこの辺りで失礼しますかね。


「理事長、私はこれで失礼します。後日、お話がありますのでお時間を頂けると幸いなのですが」

「了解しました、後で連絡をください。ユキさん、本日はありがとうございました」


 さーてイクシアさんに説明しないと。




 自宅に戻り、何故一之瀬さんの所に向かうのか説明する。


「いつまでもカイが存在もしない相手に好意を抱くのは不憫だと思うので、オーストラリアでの一件の説明と一緒に、うまくカイにはユキの事を諦めるような話を聞かせてくるつもりなんです」

「なるほど……カイ君はユキに好意を抱いていたのですか。……ええ、その方が良いでしょう。それで、リョウカさんに話というのは?」

「同時に、今回限りでユキは封印しようかと。元々、俺が注目される事を回避する為に生まれたキャラクターですから、今みたいに俺が有名になった以上……もう、架空の存在に色んな責任を負わせて逃げるのは、止めようかと思ったんです」


 そう、だからユキはもう、二度とこの世界に現れないようにしなければならない。

 全て、俺が俺として責任を負う為にも。


「しかし……先程学園から出て来たお三方が少々暗い表情をしていたのが気になりますね」

「え?」

「気がつきませんでしたか? ユキを確認してすぐに表情が変わりましたが、明らかに深刻そうな表情をしていましたよ。何かあったのでしょうか」

「うーん……ちょっと想像が出来ませんね。今回の事件の余波で何かあったんですかね……」

「各ご家庭の事情もあるかもしれませんし、あまり詮索はしない方が良いかもしれませんね。さて、では畑の手入れに入りましょうか」

「了解です。じゃあ俺が雑草とか除去するんで、肥料とか土の準備、お願いしますね」








 ユウキ達が去り、件の女性『ミササギ・アリア』と二人残された理事長室。

 どこか楽しそうな様子のアリアと、少しだけ深刻そうな表情を浮かべたリョウカ。


「お疲れみたいですね、理事長」

「ええ、少々不測の事態が続きましたので。貴女の入学も含めて、ですけれど」

「酷い言い草ですねー。そちらからお誘いしたというのに」


 彼女の入学は『リョウコ』が学園の知名度と人気を復活させる為に行った計画の一つだった。

 リョウカがグランディアに逃亡中に進められた計画であり、それを今更リョウカが自分の都合で取り消す事などは出来ない。

 だが、あまりにも知名度のある芸能人の入学は、それだけで学園に混乱をもたらし、さもすれば海上都市の治安問題にも発展しかねない。

 現にこうして、不法侵入を果たした記者によるトラブルも起きているのだから。


「そうでしたね。さて……今日のような事件があった以上、なるべく都市部には一人で出歩かないようにお願いします。貴女の力は、常時リミッターを掛けなければいけませんからね。戦闘力は落ちますが、学園内ではその制限も緩和されます。これは特別措置ですので、その辺りの事は了承して頂けますね?」

「勿論。いやー、噂に名高いシュヴァ学に入学できるのは願ってもない事でしたから。正直故郷の学院は古臭くて、出来るだけ長くこっちの世界に留まりたかったんですよねー」

「……ミササギ家の御令嬢の発言としては少々問題がありますが、今は目をつぶりましょう。して、既にご自宅の用意は出来ているとの事ですが、そちらへの警備の件はいかがいたしましょう?」

「あ、それなんですけどー、必要ないかなーと。ほら、私がリミッターを掛けられていても、結界系の術式はしっかり動きますから」

「なるほど。確かに貴女の結界を破れる人間はそう多くありませんからね。では、入学に関するその他注意事項の説明を」

「えー? 私ってそんなに信用ないですかね?」

「ええ、正直貴女の事をよく知る程、手放しにはしておけませんね」


 リョウカが珍しく疲れた顔を浮かべ、それに対しアリアは頬を膨らませる。


「まず、軽率な行動は控える様に。自身のファンを扇動するような事も、です。何か起きた場合の責任は貴女にありますからね」

「大丈夫ですよー、ちゃーんと手綱は握ってますから」

「そしてもう一つ。SSクラスの人間には極力関わらない事。あのクラスは『たとえ貴女でも』おいそれと手出し出来ない出自の人間ばかりです。弁える様に」

「あ、例の英雄さんのクラス? えー、ちょっと興味あったんだけどなー、あそこの人達。だって一応、故国の危機を救ってくれたんですよー?」

「それでも、です」

「……ま、正直その程度の興味しかないんですけどね。私、年上にあまり興味ないんで」

「……貴女の方が年上でしょう」

「人間換算だとまだ一八ですー」

「……警告はしましたからね」


 だが同時にリョウカは思う。この自由奔放な娘は、一度痛い目を見た方が良い経験になる、とも。


「そういえば、後日行われる討論会のMCを担当してくださるんでしたね」

「あ、そうそう。一応英雄さんの事を近くで見ておこうかなと思って引き受けました。流石の風格でしたよねー、例のササハラユウキさん? 正直あまり他の人に興味ないんで、世界樹事件の時とかスルーしてたんですけど」

「……本当に貴女という人は。世界樹に思い入れはなかったのですか?」

「正直あまり。けど、しっかりお仕事はしますよ、なんていったって芸能人としての最後のお仕事ですから。そこのところはプロなので安心してください」

「ええ、その部分だけは信用していますよ、アリアさん」


 そうして、着実にユウキの討論会の日取りが近づいていく。

 が、この時アリアの認識に大きな齟齬がある事に、リョウカは気がつけなかった。

 それが後に、少々面倒な事に発展するとは知らずに……。


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