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第百七十五話

(´・ω・`)なんかコウネ好きって人多いね

『セリュミエルアーチから発表された一本の動画が波紋を呼んでいる』

『公開された映像に映されていた人物について我が国では一つの噂が立っている』

『ササハラユウキとは別人の可能性』

『コウネ・シェザード様の婚約者であるユウリス様と酷似』

『セリュミエルアーチからの説明を求める声が相次いでいる』


 ……うわ! 俺に関係する記事ばっかり!

 そうだよ、俺あの姿でコウネさんとの婚約騒動で割と人の目に触れていたじゃないか。


「どうやら、思わぬ形で話題になっているようですわね……ですが、このユウリスという人物は……」

「そっくりさんがいるのかな? っていうかコウネって婚約者いたんだ……」

「ふむ……私も初耳だが、彼女の家の事を考えれば違和感はないか……だが、想定外の形で広まってしまっているこの状況は……」

「最悪、あの映像の信憑性も失われるかもしれないよね? このそっくりさんっていうのも気になるけど、ユウキ君何か知ってる?」


 やばい。説明しようとすると全部言わないといけないよなこれ。

 さすがに国の事情をペラペラここで言う訳にもいかないし。


「ああ、それでしたら以前――」

「ストップ! 一応国の機密に関わるから、向こうに着いてからで」

「そうですね。皆さん、今は秘密なので気にしないで下さいね」


 イクシアさん、逆効果です。なんだか最近イクシアさんが抜けているような気がします。

 いや、実際俺も気が抜けているんだけどさ。やっと……日常に戻れるかもしれないんだ。


「ふむ……君の立場からすれば、何かあってもおかしくはないか」

「秋宮のエージェントとしての任務、でしょうか。分かりました。ですが、この状況は少々面倒ですわね。いずれ、どこかで説明をしなければいけないでしょう」

「それは俺もそう思う。どのみちコウネさんの家に行かないとだね、これは」

「なぁ、これって下手したらユウキの手柄じゃなくなるかもしれないんじゃないのか? 絶対キチンと説明した方いいだろ」


 そうだな、少なくとも……公王様とディースさんには打ち明ける必要があるな。

 そうして俺達は列車に揺られ、コウネさんの故郷『首都ガルデウス』に向かうのだった。






「広い……っていうか宙に道が浮いてるぞ!?」

「驚いた……地球じゃここまで発達した駅なんてないよ」

「これが、グランディアの最新鋭、その一つの完成形なのですわね」

「初見の時の俺と同じ反応、有り難うございます」


 到着した駅で、初のガルデウスであるカイとカナメ、キョウコさんが俺と同じようにこの発達した魔法文明の有り様に驚きの声を上げていた。

 だよなぁ、直近で過ごしていたのが古き良き魔法都市であるブライトネスアーチだったから特にそう感じるはずだ。


「でも私、未だにこの駅って迷うんだよね。ミコトちゃん大丈夫?」

「ああ、問題ない。ふふ、伊達に幼少期からここで過ごしてきていた訳ではないからな」


 一之瀬さん、それフラグです。

 俺達は一之瀬さん先導の元、この広すぎる駅構内を進んでいくのだった。




「一之瀬さん、駅から出られないね」

「……待て、案内板があちらに見える。そこまで向かうぞ」




「ミコト、これ案内板じゃなくて時刻表みたいだぞ」

「すまない、見間違えたようだ。む……ああ、あそこが出口のようだ」




「ミコトちゃん、これ増築工事の現場みたい。頑張れば出られそうだけど、改札口通らないと」

「そうだな……すまない」




「皆さん、こちらに着いて来て下さい。先程列車が到着した様子ですので、人の波についていけば出られるでしょう」

「お、さすがイクシアさん。その案試そう」


 いやーー……一之瀬さん見事に迷ってしまいましたね。いやそれも仕方ないと思うんですけど。

 未だに増築で駅の内部構造が変化しているみたいだし、ある意味日本の新宿駅みたいなものですな?

 ほら、あそこも年中工事してるし……。


 イクシアさんの機転により無事に駅から出られた俺達。

 後は貴族街に向かうのみだが、ここからはさすがに一之瀬さんも大丈夫そうだった。


「面目ない……まさか数年でここまで変わっているとは思ってもみなかった。だが、さすがに都内の様子は大きな変化も見られない。私に名誉挽回の機会を与えて欲しい」

「大丈夫大丈夫、気にしていないから。っていうか正直誰でも迷うよあれは」

「確かにあれは無理だよ正直。じゃあ貴族街の案内はお願いね、あっちは私も行った事ないもん」




 道中、一応俺はローブのフードを深くかぶり、久しぶりにコウネさんの実家へと向かう。

 貴族街の検問所に差し掛かると、案の定通行を止められるのだが――


「こちらを。シェザード家にどうかお取次ぎ頂けないだろうか。我々は、彼女の学友です。数年前までシェザード家にお世話になっていた『イチノセ・ミコト』と申します」

「これは確かに……直ちに連絡をさせて頂きます。少々お待ちください」


 なるほど、ミコトさんはしっかりここに入る為の証明書のような物を持っていたのか。

 すると、イクシアさんが小さな声で話しかけてきた。


「ユウキ、今回は黙っていたのですが、私とユウキも同じ通行証を発行されていますよ。私がこちらの世界に逃亡してくる際に置いて来てしまいましたが」

「そうだったんですか。コウネさん、今実家にいるといいですね」


 そうして暫く待っていると、貴族街の奥地から、怒涛の勢いで一台の魔車が走って来た。

 俺でも分かる、あれは間違いなくコウネさんの家の紋章だ。

 すぐに開門され、俺達も貴族街の敷地内に通され、目の前に魔車が停まる。

 それとほぼ同時だった。扉が勢いよく開かれると同時に――青い風のように、コウネさんが飛び降りて来た。

 それは一瞬で、ローブ姿の俺を見分けたのだろう。

 勢いよく飛びつかれ、地面に押し倒される。


「ユウキ君! 来てくれたんですか!」

「コウネさん退いて……肺が潰れる……」

「これは失礼。……映像は見ました。まだ不明な点も多いです。でも……みんなと一緒にいるという事は」


 コウネさんは周りを見渡し、もう一度俺の顔をしっかりと見つめる。

 え、コウネさん泣いてるんですが……いや……まぁ……心配かけたんだもんな、俺。


「ユウキ君は悪人なんかじゃなかった、そういう事なんですよね!」

「ふふ、そうだな。少なくともここにいる人間はそう思っている。コウネ、公爵家令嬢がはしたないぞ」

「そうですね、ごめんなさいユウキ君。皆さん、是非このまま我が家にお越しください。今後の話や、そちらのお話も聞きたいですから!」


 そうして、用意されていた魔車に乗せられる。

 まさかこんなに大人数で来るとは思っていなかったのか、中はギュウギュウ詰め状態だったのだが――


「コウネさん、何故俺の上に座る」

「そこにユウキ君がいるからです。私を心配させた罰です」


 こっちの膝の上にコウネさん。さすがに子供じゃないのでビジュアル的によろしくないです。というか恥ずかしいです。視界いっぱいにコウネさんの髪が……ああ、良い匂い……。


「コウネさん、さすがにはしゃぎすぎではありませんか? 他の人に見られたらどうするんですの」

「大丈夫です、問題ありませんよ。そうでしょう? ユウキ君」

「……まぁ、一応問題にはならないけど、恥ずかしい」


 一応、婚約者って事になってるんで……。

 そしてカイの顔が恐い。なんでや、お前には一之瀬さんがいるだろ。

 さらに何故かキョウコさんも恐いです。大目に見てあげてください、かなり心配させてしまったのだし。


「今、お父様は登城中ですので留守なのですが、戻るまで屋敷で待って貰っても良いでしょうか? 現在公王を始めとした我が国の貴族の間で、ユウキ君の事件に関係する議題で連日会議が開かれているんです。この状況でユウキ君が来てくれたのは本当に助かります」

「やっぱり問題あり、だよね」

「そう、それなんだよコウネ。なんだかコウネの婚約者? とかいうヤツと間違えられているんだよユウキが。このままだとあの映像の信憑性やユウキの功績が奪われるんじゃないかって心配してるんだよ」


 いやぁ……それはないっす。でもさすがに説明はすべきだよな。


「まぁそれは……大丈夫です。お父様を含めて全て説明しますから」




 コウネさんのお屋敷に通され、そのまま談話室へ。

 家令のお爺さんが出迎えてくれたのだが、何故かイクシアさんの来訪にとても喜んでいました。

 ダメだぞ! イクシアさんはこの家に奉公に出したりしないから!


「さて……では改めまして、おかえりなさいユウキ君。それに……どうやらセリアちゃんとも和解出来たみたいですね?」

「うん。色々話すと複雑だけど、セリアさんの感情に介入していた術式があったんだ。勿論、セリアさんの怒りは正当な物だと俺は思っているけど」

「ユウキ……うん、私はユウキに認めて貰って、許してもらって、それで今、ここにいる」


 ソファにかけ、これまでの話をコウネさんにもする。

 とはいえ、おおよその事実は既に映像として出回っているので『俺が地球を破壊する為に仕組まれた世界樹の苗を破壊した』『黒幕はセリュミエルアーチの研究院だった』という事実は既に知られているのだが。


「ユウキ君、一つ聞きたい事があるんですけど、良いですか?」


 するとその時だった。話を聞いていたコウネさんが、俄かに表情を真面目な物にし、どこか神妙な調子で聞いて来る。


「いいよ、何か気になる事があったら聞いて」

「はい。実は私も、早い段階でこの国に戻り、我が家の独自の情報網でセリュミエルアーチ界隈で暗躍していた組織を元々調べていました。その情報を元に、あらゆる手段でユウキ君の足取りを追っていたんです」

「マジでか。……いや、さすがは元騎士団長の家だよね。それで?」

「残念ですがユウキ君の正確な足取りは掴めませんでした。ですがロウヒさんと六光、そして『リオステイル』様が恐らくどこかの組織に所属しているのは予測出来ましたが――」


 本当油断ならないな。リオちゃんの本名だよな、確かそれ。


「ユウキ君は『USM』と『原理回帰教シャンディ』そのどちらに身を寄せていたのですか?」


 ふむ。片方は聞いた事がない名前だ。でも……ロウヒさんが言っていた『もう一つの組織』というのは、恐らくこれの事だろう。


「USMだね。三人はUSMに所属していて、俺はそこでお世話になっていたんだ。元々、先に理事長とイクシアさんが保護されていて、そこに合流する為に彼等に協力した」

「え? それ初耳なんだけどユウキ。イクシアさんって確か仕事で出かけて……」

「ああ、そっかセリアさんには説明していなかったね」


 俺は『イクシアさんが重病を患い、治療の為に秋宮に協力していた』と話を少し濁しながら、何故俺が秋宮の人間として急に精力的に働いていたのか、その説明をしてやる。


「なぁユウキ、その話俺達も初耳だぞ? 確かに理事長の偽物がいるって話は聞いたけど」

「……それで合点がいきましたわ。昨年度の夏休み明けのササハラ君は……あまりにも見るに堪えない憔悴ぶりでしたもの」

「ユウキ……それも全部口止めされてたんだ。私が聞いた時も」


 ありゃ? 言ってなかったっけ?


「私は地球に戻ったら、まず初めに偽のリョウカさんとお話をする必要があります。いえ、今回ばかりは……話し合いで……済ませるつもりは毛頭ありませんが」


 あ、待ってこの話蒸し返したらダメだ! 隣でイクシアさんが小さな声で俺にだけ聞こえるように恐ろし気な事を囁き出した……!


「落ち着いて、今はリョウカさんに任せよう」

「ですが……正直今回ばかりは良い大人でいられる自信がありません。もしも目の前に現れたら……確実に手を出してしまうでしょう」


 イクシアさんの視点からすれば……そうだよな。いや、正直俺だって一発くらいぶん殴ってやりたいところだ。けど、イクシアさんの場合は勢い余って殺してしまいそうだ。

 ……少なくともロウヒさんに対するあの反応を見ているとそう思ってしまう。


「事情は分かりました。ユウキ君はUSMの皆さんと協力関係にあった、ということですね」

「そうだね。あとこれは……本来教えて良いのか分からないけど、USMと秋宮……この場合はリョウカさん個人だけど、元々協力関係にあったみたいだよ」

「なんと……秋宮の人脈は本当に侮りがたいですわね……」


 キョウコさんが思わずそう漏らす。俺もそう思います。なんかしかもこっちのシュヴァインリッターの総帥? とも面識があるみたいだし。

 一通り話し終えると、コウネさんはどこか緊張を解いたように息を吐き出し、ソファに寄りかかる。


「ふぅ……安心しました。もしも『原理回帰教』と協力関係にあったのだとしたら、このままユウキ君を王国騎士に連行させるつもりでしたから……爺や、騎士達を下がらせなさい」

「な!?」


 すると、コウネさんが談話室の扉の外に向けてそう声をかける。

 ガシャガシャと鎧甲冑の鳴る音が響き、外に騎士が待機していた事がすぐに伝わる。


「……コウネさん、今回はちょっと手厳しいね」

「ごめんなさいユウキ君。原理回帰教は明確に我が国の敵として、見つけ次第連行する事になっているんです。正直、皆さんを相手に騎士が太刀打ち出来るとは思っていなかったのですが、それでも『動き』だけは示さないと、我が家まで敵と見なされてしまいますから」

「……正直その原理回帰教って名前は初耳なんだけど、USMの人達はその連中かな? 他にある組織がかなり過激派で、水面下でやりあってる風な事を言っていたよ」

「なるほど、それは良い情報です。……USMの人間は、またユウキ君に接触を図る事があるでしょうかね?」


 これは、正直に答えるべきだろうか。いや、答えるべきだろうな。

 たぶん嘘ついても見抜かれそうだし。


「たぶんあると思う。リョウカさんが地球で返り咲いたらの話だろうけど」

「ふむ……やはり私も地球に戻るべきかもしれないですね。ユウキ君が戻る以上、私がこちらに留まる理由もありませんし。いずれグランディアの人間として、USMと秋宮の人間と話し合いの場を設ける為にも私も復学すべきでしょうね」

「お、そりゃ嬉しいな。じゃあシェザード卿、コウネさんのお父さんにも話、通さないと」


 よし! これでアラリエルだけだ、残るは。けど……正直アラリエルの事だから、ひょっこり戻って来て普通に馴染んだりしそうだ。


「なぁ、それよりさっきの俺の話、コウネの婚約者についてはどうするんだよ」

「ああ、そのことですか? でしたら安心してください、私の婚約者である『ユウリス』さんは、ユウキ君の事ですから。ね? ユウキ君」


 あ、普通にぶっちゃけたぞこの人。


「んな……! コウネ、お前いつの間にササハラ君と……!」

「コウネさん!? ササハラ君!? お二人はいつの間にそんな仲に……!」

「そ……そうだったんだ。ユウキ、コウネ、おめでとう……」


 ほら女子組が信じちゃったでしょうが!


「お前……そうか……式には呼んでくれよ、絶対」


 カイ、お前もか。


「ん-……それ、何かの任務の一環?」

「お、カナメいい線ついてる」

「やっぱり。コウネさんとユウキ君が良い雰囲気なのは知ってるけど、婚約する程じゃないっていうのは見ていたら分かるからね」

「おい節穴」


 いや……正直節穴とも言い切れないんですけどね……。

 コウネさんにときめいたことも一度や二度じゃないんですけどね。


「ま、元婚約者、ですけどね」


 コウネさんが悪戯をした子供の様に、笑いながらネタばらしをする。

 去年の年末に起きた一連の婚約騒動をかいつまんで説明する。

 とりあえず偽名で婚約者としてこの国で認知されている、と。


「ま、婚約者というか恋人って扱いだし、そのうち破局してもいくらでも言い訳出来るって寸法で国民を騙したって事にもなるね」

「そうですねー。私としてはユウキ君のお嫁さんになるのはやぶさかではありませんよ?」

「ほらまたそうやって茶化す。でも、どこかであの映像のユウリスがユウキ、つまり俺がユウキだってどっかで発表した方がいいよなぁ……」

「なるほど……コウネはだからササハラ君が悪人であるはずがないと、当初から強く主張していたんだな。確かに見上げた根性、いや……この場合は騎士道精神だろうか」


 よせやい……照れるじゃないか。

 事の真相を皆にも伝え、とりあえずカイの不安も取り除けたというところで、談話室に第三者の声が聞こえて来た。


「まったく、僕もまんまと騙されたよ。裏で糸を引くのはこちらの領分だと思っていたんだけどね、まさかこういう方法で国民全員を騙して僕の裏をかいていたなんて」


 談話室の扉が開かれ現れたのは……まさかのディースさんその人だった。

 え、今の聞かれて……?


「ディースさん!? え、いや……」

「ああ、大丈夫怒ってないよ。既にシェザード卿から真実を聞いていたからね、あの映像を見た後すぐに」

「うむ、そういう訳だ。いずれは国民にそれとなく伝わるように噂を流すつもりであったが、ここにユウキ君が直接現れてくれたのは行幸だ。後程、公王にも説明をするが、同席してもらおうか」

「お父様! おかえりなさいませ。会議はどうなりましたか?」


 さらに、シェザード卿まで一緒に現れる。


「映像の件はそこまで大きな波紋にはならないだろう。いずれ、私も地球側の代表団と会談をすべきだろうな。だが、全ては秋宮の家が元の地位に着いてからになる。コウネ、お前は一足先に地球に渡り、学生として秋宮の動向をすぐ傍で監視していてもらえないか?」

「それでしたら是非もありません。私も復学を考えていましたので」

「で、あろうな。ユウキ君の無実が晴れた以上、そう言うだろうとは思っていた」


 あれよあれよと話がまとまっていく。え、でもさっき何気に俺に公王様に会えって言ってましたよね……?


「……しかしユウリス君、いやユウキ君か。君の映像の中の活躍は目を見張る物が――む、君はセイメイの妹さんじゃないか。ミコト君だったかな? 覚えているかな?」


 すると今度はディースさんが一之瀬さんに反応した。


「む! ミコト君か! なぜそんな後ろに隠れているのかね。我が家に来るのは何年ぶりだ。いや懐かしいな、君が我が家にいるのは。部屋はそのままにしてある、滞在するなら是非使ってくれたまえ」

「は、はい」


 あー……さては苦手なんだな、一之瀬さん。親戚のおじさんみたいな感じか。

 いや、みたいな感じじゃなくて一応親戚なんだったか……?


「そうかそうか、君もユウキ君と同級生だったんだね。セイメイは元気かい? 彼と最後に会ったのは何年も前になるけれど」

「は、兄とは我々がグランディアに渡る際、手助けして貰いました。現在は我々をこちらに送り届けた後にそのまま異界へ向かったので、今も異界で調査中かと」

「ふむ……そうだったんだね。……つくづく君達が羨ましいよ。僕がもう四歳くらい若ければ一緒に学園に通えたかもしれないのに」


 いやぁ一緒だったらそれはそれで面倒事が増えていたと思うんですよ。


「折角ユウキ君が来ているのだから、一つ手合わせでもお願いしたいところだけど、今は状況が状況だからね、もしも父上と話して時間があまるようなら声をかけて欲しいかな」

「いやー……さすがにちょっと手合わせ感覚でディースさんとは戦えないんで……」

「ふふ、そうかい。さて、じゃあ僕は一足先に父上に君の事を報告しておくよ。大丈夫、そう酷い事にはならないさ。『ただ偽名を使っていただけ』っていう話だからね?」

「ふふ、そうですよね?」

「恋人かどうかなんてこの先幾らでも変化していくのだしね。ただ僕としては――そのままシェザード家に婿養子になってくれると、国力増強にも繋がるし歓迎なんだけれどね?」


 ディースさんまで何を言ってるんですか……。

 そう言って飄々と去っていくディースさんを見送る。

 相変わらず掴みどころがない人ではあるけれど、悪人ではない……よな?


「あーびっくりした……改めまして、お久しぶりですシェザード卿」

「ああ、久しぶりだなユウキ君。今回の事件、本当にお疲れ様。恐らく今開示されている情報が全てではないのだろうが、明日、改めて公王の元へ私と一緒に赴いてもらえないだろうか」

「それは勿論。コウネさんにも沢山迷惑をかけてしまいましたし、俺が負うべき責任は果たすつもりです」

「そうか、分かった。他のクラスメイトの諸君も、滞在中は我が屋敷を使って欲しい。長旅で疲れているだろう、すぐに部屋の用意をさせよう」


 そうして、コウネさんもクラスに戻る事が確約され、俺達もようやく一息付けたのであった。

 じゃあお言葉に甘えて……少し部屋で仮眠でも取ろうかな。




 用意された部屋で一息つく。

 相変わらずの豪華な部屋で落ち着かないのだが、それでもベッドで横になっていると、部屋の扉がノックされた。

 はて、誰だろうか?


『ユウキ君、コウネです。少しお話をさせて貰えませんか?』

「どうぞー」


 そうして、俺はコウネさんを部屋に迎え入れて――


(´・ω・`)まぁ僕も思い入れあるんだけど

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