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第百七十三話

(´・ω・`)steamの積みゲー消化するかだな……(26本

 ユウキがセリアと和解を果たしていたその頃、リョウカは国王と共に、編集の終えた事件の映像を確認していた。


「……実際にこの目で見ると、さすがに響くものがあるな。我が国の秘密、聖女についての隠匿、感謝する。して……非常に気になる点があるのだが、このリョウカ殿の従者……このエルフの女性は一体何者なのだろうか?」

「それはこちらの開示できる情報ではありません。ですが、現王家と繋がりのある人間ではありません。ただ、ユウキ君の里親で、大切な家族です。くれぐれも……彼女を探るような事はしないようにお願いします。最悪、ユウキ君は一夜にしてこの国の敵になるかもしれませんから」

「……肝に銘じておこう。では、この映像をまずは議会の出席者に公開、その後の会議にて、これをそのまま世界中に発信するか否かを決める、という事で良いだろうか」

「はい、お願いします。私も、近々地球に戻り、自身の立場を回復しなければなりませんから」

「で、あろうな。……お互い、ここからが大変であるな」

「私は、近々一足先に地球へ戻るつもりです。無論、映像が地球にまで届いたのを確認してからになりますが。生徒達は私の後に地球へ向かう事になるでしょうから、それまでどうか生徒の事をお願いしても?」

「ふむ……共に戻る事は出来ないのか?」

「はい。少々特殊な方法での移動となりますので、定員が限られているのです。『魔神龍』に関わる方法、とだけ」

「……まさか、空を?」

「ご想像にお任せします」


 そう、グランディアでの事件が終わったとはいえ、依然ユウキは地球における大罪人であり、リョウカも秋宮に追われている身。

 それを解決する為には、映像が地球全土に公開される必要がある。

 グランディアでの自分の仕事は一区切りがついたと判断したのか、再びリョウカは地球に目を向ける。

 必ず、再び地球で返り咲く為に。








「さて、こうして現在この国にいるSSクラスの人間が揃った事で、まず最初に決めなければいけない事がある」


 セリアさんと和解してから一夜明け、ようやく揃った……とはいえ、アラリエルとコウネさんはいないのだが、ともかくSSクラス全員が一之瀬さんに招集されていた。


「我々の今後の身の振り方について、みんなの意見を聞きたいんだ」

「そんなの地球に戻るしかないじゃないか。こうしてユウキも戻って来たんだし」

「ええ、それが一番だと私も思いますわ。ですが、現状私達は『秋宮理事長の妹』から離反してこちらに来ています。ユウキ君の疑いがこの先晴れたとしても、秋宮の状態が今のままでは学園生活にも支障が出るでしょうね」

「僕としても、今は無暗に動くべきではないと思う。でも、結構タイムリミットギリギリなんだよね。ほら、もうすぐ進級試験だし」

「「「あ」」」


 カナメ、お前凄いな。学園の行事の日程覚えてたんだな。

 ああああ……そうだよなぁ……そもそも留年なんてない学園だし、どうしたらいいか……。


「今回、理事長が私達の方についているんだよね? 私はまだよく状況を分かっていないんだけど、今学園にいるのが偽物の理事長なら、本物の理事長さえ復権したらどうにかなるんじゃないかなぁ」

「どうでしょうね……それでも進級試験は受けるべきだって、平気で言いそうなのが恐いところですわ……」


 ありえる。なんかリョウカさんならそういう事普通に良い笑顔で言いそうだ。


「映像が公開されたら、そのタイミングで国を出るのはどうだろう。たぶん、俺達が船で移動するよりは映像伝達の方が早いだろうし。それで、地球側に映像が伝達されるまで、ファストリア大陸で待機する。これなら最短で地球に戻れるし」

「なるほど、確かにササハラ君の案は良さそうだな。だが問題は、ファストリアでの拠点だ。映像が伝達しても、それが一般の人間に知れ渡るまでは君は無暗に動けないだろう?」

「いや、この今の俺の姿は知られていないよ。あくまで地球での俺の姿が指名手配されているんだし」


 こういう時、地球とこっちで姿が別人なのは助かるな。


「そうか、そういえばそうだったな……」

「そっか、ユウキ地球だとちっちゃいもんね」

「ちっちゃい言うな」

「……なんだか、こちらの姿に慣れてしまいましたわ。でも、あちらの姿も久しぶりに見たい、というのが正直なところですけれど。……戻って来た、と実感出来ますから」


 ……複雑です、キョウコさん。そう言って貰えるのは嬉しいけど。

 あああああああ一九〇台の生活があああああ!


「一先ず私達の考えはまとまった、という事で良いだろうか? この事をジェン先生と理事長に報告に向かおうと思う」

「そうだね、とりあえず城の人にリョウカさんやジェン先生に話しを通してもらおうか」






 俺達は、ジェン先生ではなくリョウカさんの元に案内された。

 ジェン先生は現在、今回の事件に関係したと思われる兵士や研究員つまりセシリアの残党を、部下を率いて追走して首都から離れているそうだ。

 だから俺達はリョウカさんに進級、復学の意思を告げ、それが可能なのかどうかを問う。


「それは願ってもない申し出です。現状、秋宮の実権は握られていますが、私はそれらを一足先に向かい取り戻すつもりでいます。そうですね、貴方達が船で向かうのなら……軍用船なら二週間程でしょうか。それまでの間に向こうでの地盤を固めておきましょう」

「固めてって……まるで先に地球に戻る事が出来るような口ぶりですわね」

「ええ、少々駆け足で戻らせて頂きますよ、私は。方法は秘密、ですけれど」


 なるほど、つまりヨシキさんの飛行機で戻ると。


「明日、議会の映像がこの国の出席者に公開されます。その結果次第で、三日後には世界に発信するつもりです。まだ皮算用の段階ですが、復学を希望し地球を目指すのならば、今すぐに便を手配しておきますが」

「……秋宮はなんらかの独自航路を……? 分かりました。確実に、映像を世界に公開させる自信がおありなのでしたら、我々はすぐにでも出発するべきでしょう。皆さんもそれでよろしいでしょうか?」


 キョウコさんの問いに皆が頷く。


「では、便の手配をしておきます。ああ、それとセリアさん、身体の最終チェックが必要との事ですので、この後すぐに研究院に向かって貰えますか? もう問題ないとは思いますが、国を離れる以上、念には念を入れて」

「あ、了解です。お手数をおかけします」


 あ、そっか。そうだよな、セリアさんは事実上直接的な被害にあった唯一の人だもんな。

 セリアさんが一足先に退室したのを見計らうように、今度はリョウカさんが俺達に声をかけた。


「皆さん、少々お待ちください」

「まだ、なにか?」

「ええ、皆さんに口止めをしておこうかと思いまして」

「……どうしたんですリョウカさん。ちょっと不穏な響きですね」


 口止め……今回の事件の詳細の事だろうか? そんなの言われるまでもないのだけど。


「セリアさんが目を覚ました時の事です。あの場には姿を変えた聖女の残滓である彼女も同席していましたが、彼女の素性、および聖女のシステムについてはセリアさんには教えないでおいてください。セリアさんは、共に聖女になるべく訓練を受けて育ってきた魔導師です。それが、本当は最初から聖女になる人間が決まっていたと知るのは酷ですから」

「でも、ナシアの不在からセリアさんが真実に辿り着く可能性だってあるじゃないですか。それに……もしかしたら、支配されていた時の記憶だって戻って来るかもしれません。俺は、特別隠したりするのは反対です。何か聞かれたら正直に答えるつもりです」

「……ユウキ君、ではそれでセリアさんが大きく傷ついてしまったり、ナシアさんが戻った時の関係が壊れてしまったらどうするんですか?」


 リョウカさんは少しだけ俺達を甘く見ているような、過保護のような、そんな気がする。


「そんなに弱くないですよ、セリアさんは。もしも仮に関係が壊れたとしても、すぐに修復出来ますよ、彼女なら必ず」

「……分かりました。ええ、きっとそうなのでしょうね。やはり、私は教育の現場には向かない人種のようです。ユウキ君、それに皆さん。この先もきっと貴方達ならば乗り越えられるのでしょうね。過分な口出し、謝罪します」


 けれども、それが彼女の善意だと、本当の気持ちなのだと、俺達も知っている。

 そうして、俺達はセリアさんに続き退室し、地球へ戻る為の準備をするのであった。








「言われてしまったな。リョウカ、転送の準備はもう済ませてある。飛行機もファストリア大陸にチセ共々待機させておいた」

「っ!? 来ていたんですか、ヨシキさん」

「まぁ事の顛末くらいは見に来たさ。どうやら、お前も地球に戻る算段がついたみたいだな。それに、喜ばしい事に『正しく起きる戦争』のきっかけを未然に防げたようだ」


 ユウキ達が退室したのを見計らうように、リョウカの自室に唐突に現れるジョーカーことヨシキ。


「結局、なんだかんだ言って貴方は今回、私を手助けしてくれましたよね。飛行機や刀、感謝しています」

「……まぁ、チセが世話になっている以上相応の礼はするさ」


 ヨシキは照れ隠しでもなんでもなく、ただ平然とそう答える。


「ええ、そうでしょうね。貴方は私を甘やかしませんから」

「まぁな……この騒動が終われば、残るのは地球での面倒事だ。その時はまぁ『相手の出方』次第では俺が動くさ」

「助かります。正直、私もお遊びが……舐めプが過ぎたと思っています」

「ま、気持ちは分かるさ。俺もお前も『本気になればなんでも出来てしまう』からな。それじゃあ人生はつまらない。では俺は屋敷に戻る。準備が出来たらメールをくれ」

「はい。恐らく、ここ数日中に映像が全世界に流れます。そうしたら私も地球へ向かいますよ」


 そう最後に告げると、ヨシキは一瞬で室内から姿を消す。

 一人取り残されたリョウカは、誰にも聞かれていないのを確認してから一人ごちる。


「本当にままならない。きっと貴方は本当に『家族』の為だけに動いたのでしょうね。今度こそ……貴方を私の物に出来ると思っていたのに」


 リョウカは、窓に手を当て景色を眺める。

 発達した魔法都市。行き交う人々。多種多様な人種。

 それは神話時代には見られなかった光景。

 多くと交わり、地球とグランディアが交じり合い発展したからこその景色。


「どこまで行っても、私と貴方は交わらないのですね……ヨシキさん」








「えー、では地球に帰還するにあたり、今のうちに進級試験の対策について会議したいと思います」

「だよな……正直俺達は今年あんまり通常の講義は受けられなかったし、進級試験にもしも筆記も含まれていたら……」


 リョウカさんに報告を終えた俺達は、俺の部屋に集まり、目下の問題である『進級試験』について作戦会議を始める。


「大丈夫じゃないかな? 少なくとも筆記はないと思うよ。間違いなく実技だよ、学園のスケジュール的にも」

「そうですわね、私も学園の進級試験で筆記があったという話は聞いた事がありませんわ。ヨシダ君も私も企業に携わる身ですからね、学園の卒業生とも多少は関りがあります。けれどもそういう話は聞いた事がありませんもの」

「うん、そういう事。実技だったって話だよ。内容はその年によって変わるけどね」

「実技か……去年みたいに技を作るとか……?」

「いや、さすがに同じ物にする事はないだろう。二つ目以降は難易度が大きく下がる。なにせ他の生徒の技を沢山見てしまっているからな。それに、作るのは楽でもオリジナルと言い張るのが難しくなる。試験として成り立たないんだ」

「ん-……じゃあオリジナルの魔法とかどうかな?」

「セリアはそれなら余裕で合格できそうだけど、そうなると魔法適正が低いと進級は無理だしなぁ。何か他の課題じゃないか?」


 ううむ、正直ある程度はお目こぼしもありえるんじゃないかと思うのだが、どうなることやら……。


「考えられるのは、シンプルに対人戦ではないだろうか? 去年はいわば人に見せる為の演武のような物だと私は思っているのだが、今年は実戦を想定した試験になるのではないか?」

「入学試験と同じように、という訳ですわね?」

「それなら俺達は余裕じゃない? 正直地球で俺達と戦える人間っていないよね?」

「そうだね、一応テロリスト扱いの六光とロウヒ選手はいるけど、さすがにね」


 そうだ、あの組織の扱いはどうなるんだろう。

 まぁさすがに裏の世界の組織だし、もう表舞台に出てくることはないだろうが……。


「まさか……クラスメイト同士で戦かわせて、勝った方だけ進級とか……?」

「恐い事言うなよセリア……そうなったら絶対に半数は進級出来ないだろそれ……」

「あ、そっか」

「もしそうなら、ユウキ君と当たったら退学確定だよ?」


 いやまぁ……確かに。でもさすがにそれはないよなぁ。


「結局、今私達に出来る対策は何もない、という事ですわね……」

「そうなってしまうな……」

「あ、だったら別な議題出して良い?」


 俺は、船で地球に戻る事についてある提案をする。


「全部を海路にするより、セカンダリア大陸は大陸縦断列車を使った方が速いと思うんだ。で、その時に出来れば……」

「なるほど! ササハラ君の言いたい事が分かった。コウネの事だな?」

「そういう事。彼女にも会っておきたいんだ。今もあの大陸の首都にいるのなら、顔を出して、それで俺達が復学するって教えておきたいんだ」

「そうだな。彼女とは別行動だった事もふまえて、情報の共有は必要だからな」

「コウネも独自にユウキの事を追いかける、みたいな事を言ってたからな、教えておくべきだよな」

「そうなると、アラリエル君もそうなんだけど……さすがに航路的に難しいよね」


 確かにそれはさすがに無理か……アラリエルは今どうしているのだろうか。


「なんにせよ、後は今回の事件の映像が無事に世界に公開されてから、だね」

「だな。……マジで今回ばかりは天に祈るしかないんだよな……」


 そうして、俺達は無事に映像が世界に公開される事を祈りながら、まるで悪あがきのように、もう一度試験に筆記はないのかと確認を取ったり、持ち込まれた教科書を読みふけったりして過ごすのであった。






 それから二日後。今日、正午から再び国議会が開かれ、件の映像が出席者に公開されるそうだ。

 そんな中、俺達は一足早くこの大陸を旅立つ為、朝早くに都市の正門に集められていた。


「では、私は引率として同行出来ませんので、道中はイクシアさん、大人は貴女だけです。どうか生徒達の事を宜しくお願いします」

「はい、リョウカさん。船の上以外では私にお任せください」

「……ええ、お願いします。本来であれば担任であるジェンを同行させるつもりでしたが、彼女は少々『所用』が立て込んでいて、今しばらくこの土地に留まらなくてはいけないので」


 俺達の引率は、イクシアさんになった。ジェン先生は随分と忙しいらしく、今はまだ実家に拘束中だとか。


「私も、映像が公開される算段が付き次第地球に戻ります。皆さんは予定通り、セカンダリア大陸の港から、大陸縦断鉄道でガルヴェウスに向かってください。シェザード公にはくれぐれもよろしくお伝えくださいね」

「了解しました。では、行きましょうか皆さん」


 イクシアさんが御者を務める馬車に乗り込む。

 助手席のような物はなく、残念ながら俺もみんなと客車に乗る。


「では、私も議会の準備に向かいましょう。次に会うのは、きっと学園になるでしょう。道中の無事をお祈りしますよ、皆さん」


 そうして、俺達は陰謀の舞台となったこの王都ブライトネスアーチを後にしたのであった。


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