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第百四十三話

(´・ω・`)お待たせしました

「じゃあこっちも本気で行くよー。一応術式保護フィールドだけど、たぶん私とユウちゃん戦ったらダメになっちゃうから、程よく威力は抑えてねー」

「分かった! んじゃリミット無しはだめだから……二〇〇くらいにしてと」


 やってまいりました、ついにリオちゃんとのリベンジマッチ。

 もう、随分と昔の事のように感じてしまうが、たった二年前なんだよな。

 いやまぁ十分昔だとは思うけど。

 リオちゃんはあの日と同じ、青い光の刃を生み出す大剣型デバイスを構える。

 ただ一つ違うのは、あの時は自分の身長よりも大きな武器だった物が、今ではリオちゃんの方が大きい。というか……リオちゃんのその姿、普通にかなり身長高いよね。一七〇は確実に越えてるし。

 そんな分析も一先ず置いておき、俺もデバイスを腰だめに構え――って。


「……あ! 俺のデバイス壊れてるんだった」

「え! 嘘、もしかして前回の任務で?」

「友達が召喚したグランディアのアーティファクトの射出防ぎまくってたら……」


 鞘から抜き放つと、もう完全に折れた跡が浮かんでいる刀身があらわになる。


「えー……んじゃ試合中止する?」

「ん-……いや、もう一本武器があるからそれ使う」


 俺はデバイスを隅に置き、リミッターに収納されているコンバットスーツやユキの変装用道具一式、その中に含まれている『ユキ用の武器』としての、銀色の大剣を取り出した。

 これ、黒くない時は普通に殺傷能力もあるんだっけ? あ、違う、ちゃんと刃が魔力に覆われてる。


「ほら、むしろ今の俺ならこれくらいの大剣の方がやりやすい」

「……ユウちゃん、それどこで手に入れたの?」


 すると、リオちゃんがおもむろにこちらに歩いて来た。

 その表情はどこか暗く、怒っているようにも見える。


「ええと……確か秋宮で装備の調整する時に……用意されていた武器の中にこれが紛れていて、それを俺が選んだんだったかな……」

「ん……そっか。ユウちゃんがそれを選んだんだ。ユウちゃんごめん、今日の訓練はやっぱりなしで。一緒にリョウカのところ行こ。デバイスの件とか相談したいし、私も話しがあるから」

「えーーーー! 二年越しのリベンジマッチなのに!」


 そりゃあんまりだ! 今必死に脳内で戦略組み立てていたのに。


「ユウちゃんだって一番慣れてる得物でやりたいでしょー?」

「まぁそうだけど」

「んじゃまた次回って事で。ほら、行くよユウちゃん」


 なんとなくだけど、リオちゃんの表情が気になった俺は、そのまま彼女と共にリョウカさんの元へ向かうのだった。




「リョウカ、ちょっと顔貸してよ。大事な話があるんだけど」

「……あの、見ての通り着替えている最中なのですが……ユウキ君、目を瞑ってくれて感謝します」

「アンタえげつない下着つけてるんだね。まぁいいや、着替え終わったらラボに来て」

「……言わないで下さいよ。分かりました、ラボですね」


 リョウカさんの私室に突撃するとは思いませんでした。そして……その、一瞬見えました。

 確かにめっちゃエロいっす。本当にああいうの着る人いるのか。

 リオちゃんに連れられ、この別館の中にあるラボへと連れられて行くと、そこはもう完全に他の通路や部屋とは別世界だった。

 材質も機材も最新だと一目でわかる、そんな雰囲気。

 秋宮の研究所と比べても遜色のない場所のようだった。


「あら? ユウキ君にリオさん。訓練はもう終わったのかしら」

「あ、ニシダ主任。いえ、ちょっと今日は中断して……」

「あー、ニシダさんだっけ。確か秋宮にいた人なんだよね? ちょっとこれ、ユウちゃんの武器について聞きたいんだけど」


 すると、ラボにいたニシダ主任にリオちゃんが俺の剣を差し出す。


「これが何か?」

「これ、どこで手に入れたの?」

「ええと……私は詳しくは知りませんが、秋宮所属の部隊が、グランディアの各地で入手した武具ですね。これは確か……どこかの貴族でしょうか、没落した家から回収された、と聞いています」


 あ、確かそんな事言ってたな。


「その没落した家の名は『エンドレシア家』。かつてエンドレシア大陸の名家が所持していた剣です」


 すると、着替えを終えたリョウカさんがやってきた。

 あれ……エンドレシアって貴族じゃなくて王族じゃ? だってそれ大陸の名前じゃん。


「……やっぱり。リョウカ、ちょっと悪趣味じゃない? これ、家を滅ぼすだけじゃなくて資産も没収していたって訳なんだ? ちょっと流石にイラっと来たんだけど」

「今は別な家がエンドレシアを名乗っていますね。あの大陸は、王家を継いだ家がエンドレシアを名乗る。強き者こそがエンドレシアを導く。そして初代エンドレシア家は、今から約四〇年前に滅びた」

「……そ。神話時代から続く偉大な家。それを潰したのは、今のエンドレシアを名乗る家と、そこに助力したセミフィナルのシュヴァインリッターと秋宮の私兵。ちゃっかり家宝の剣まで持ち去っていたなんてね」


 え……じゃあこれかなりの貴重品なんじゃ。


「ユウちゃん、それ大事にしてね。ただ与えただけならぶん殴ってやろうと思っていたけど……ユウちゃんが選んだのなら勘弁してあげる」

「ええ。ユウキ君は我々が用意した数多の武器の中から、真っ先にこの剣を選び取りましたよ。……ある種の運命も感じますね」


 いや……ただちょっとファンタジーチックな武器が混ざっていたんで、とりあえず近くにあった剣を手に取っただけです。

 結果として大当たりだったとは思うけれど。この剣、自己修復も出来るんだよね確か。


「ま、それはもういいや。こっちが本題。ねぇ、ユウちゃんのデバイス壊れちゃってるんだけど、どうにかならない?」

「あ、そうでした。ニシダ主任、すみませんこれ」


 俺は、完全に折れる寸前になっているデバイスを見せる。


「は!? え、これって折れる物なの!? ユウキ君これどうしたの!?」

「……世界樹の苗を破壊した際、クラスメイトのみんなと戦闘を行った時に」

「……なるほど。カイ君の剣とカナメ君の槍、ミコトさんの刀の攻撃を何度も受け止めたのでしょう」

「……はい」

「さすがに、神話時代でも最高位に属する武具ですからね。現代の技術の粋を集めても負けるのは必然……ですか」


 俺は負けてない。でも、武器は負けた。

 それだけは紛れもない事実だ。


「幸い、今回はユキとして動く以上、メインとして使う武器はこの大剣です。デバイスは今回使う場面はありませんよね?」

「あ、それはそうですね。でも……治せますか?」


 いつか、地球に戻った時の為にも。

 本気で戦う時の為にも。

 俺は大剣よりも、やはり刀の方がずっとずっと得意だから。


「うーん……材料がかなり特殊だから、ちょっとここの設備じゃ難しいわね……」

「そのようですね……同じ材質をどこからか調達できればその限りではありませんが、現状秋宮の研究所に潜入しても、手に入るかどうか」

「なるほど……あ、じゃあこのデバイスの本来の鞘ならどうです?」

「ああ、そういえばユウキ君、鞘だけ換装したんだったわね。ええ、元の鞘があれば同じ材質だし修復の助けになるわね。冴えてるじゃない、じゃあ鞘と一緒に預けてくれる?」


 ……ごめんなさいあの鞘家に置いてあります。

 俺の部屋の机に台座として。鞘の上に参考書とか結構のっけてました。


「……ユウキ君、海上都市に行ったらついでに回収していらっしゃい」

「は、はい」

「ふむ……ユウキ君はやはり大剣より刀の方が得意なんですね?」

「はい。流石に一年以上ずっと練習してきていますから。あ、でもこの大剣でも問題なく戦えますよ。こっちだってダーインスレイヴとして任務で使って来ていますから」

「リオさん。確か大剣のデバイスを使っていますね?」

「うん。私元々大剣の特訓して生きて来たからね。ユウちゃんのその剣、本当はいつか私が引き継ぐ物だったくらいだし」

「え!? あれ、だって王家の剣って……」

「うん、王家。没落した元王家の生き残りが私。あれ? 言ってなかったっけ」

「初耳過ぎる。え、じゃあリオちゃんこの剣使う?」

「いやいや、私が使っちゃったらユウちゃん使う剣なくなっちゃうじゃん。それ、自慢じゃないけど私が全力で使っても壊れない優れものなんだよ? ユウちゃん、もう地球での姿ですらそのレベルの武器じゃないと満足に使えないと思うけど」


 そ、そうなのか? ……確かに一度、鞘の換装の時に一般的なデバイスレンタルしたけど、あの時ですら鞘がダメになっていたような。


「いえ、ユウキ君の言う通りこの剣はリオさんに使って貰います。リオさん、貴女そのデバイス、全力で使用する度にメンテナンスが必要なようですね?」

「……まぁね。これ、オーダー品だけどそこまで良い素材じゃないから。でもダメだよ、ユウちゃんが戦えない方がよっぽど損失だよ」


 確かに、俺が素手で戦うとなると、リオちゃんがデバイスを使うよりも更に戦力ダウンだ。


「……本当は証として以上の使い方をするつもりはありませんでしたが、私が頂いた以上、自由に使っても構わないでしょう。ニシダさん、例のモノを持ってきてください」

「あれですか? あれって武器として使える物なんですか……?」

「はい、間違いなく」


 え、なになに。何か俺の為に使えそうな予備の武器あるの?

 するとニシダ主任は、綺麗な装飾のされた鞘に収まる、一本の剣を持ってきてくれた。

 ……儀礼剣。俺がそれを見た時に思い浮かんだ感想はそれだ。

 淡い空のような色の鞘に、銀細工のような装飾がなされ、ところどころ青い宝石が散りばめられている。

 柄も銀色の糸が綺麗編み込まれており、どこからどうみても儀礼剣にしか見えない。


「ユウキ君。貴方は今回の任務でだけ、この刀を使ってください」

「え、刀? あ、確かに反ってる……抜いてみても?」

「ええ、どうぞ。気を付けて下さいね」


 鞘から引き抜くと、なるほど確かにこれは刀だ。

 刃の形や波紋の入り方も刀のそれ。

 だが刀身が水色だ。俺よりむしろリオちゃんの方が似合いそうだ。


「……リョウカ、それ何? 刀のアーティファクトなんて一本しか知らない。そしてそれはコレじゃない」

「ええ。あれは一之瀬ミコトさんが使用しています。それは、現代で生み出されたアーティファクトです」

「不可能だよ、今の時代にこんな化け物なんて作れっこない。ユウちゃん、これたぶんヤバイ。その大剣ですら切り裂ける。リョウカ、こんな物騒な物どこで手に入れたの」


 そんなヤバい刀なのかこれ……めっちゃ綺麗。RPGで出てきたらたぶん最強の武器どころか隠しダンジョンのクリア報酬にでもなってそうな雰囲気あるぞこれ。


「『偽神刀“流江”』ジョーカーがこの世界の空を飛ぶ際、その刀があれば魔神龍が許してくれると言っていました。R博士が作り出した、恐らく現代で生まれた唯一のアーティファクトです」

「うへぇ! ジョーカーからの贈り物って……確かにそういう風格あるや。ユウちゃん、それ使ってみる?」

「えーと……戦力的に必要なら?」

「今回だけ、です。一応デバイスとして使えるように調整されていますが、それでもこの力は異常です。過ぎたる力は身を亡ぼす……今回の任務が終わり次第、返却して頂きます。ですが鞘さえ回収してもらえたら、しっかりユウキ君のデバイスは修復してみせます」

「ええ。ここの設備なら十分にそれが可能よ。ユウキ君、その刀は一応……私の義姉の大事な物らしいから、無くさないようにね? 無くしたらたぶん一週間は不貞腐れるだろうから……」


 あのあの。そんなとんでもない武器なのに無くしても一週間不貞腐れるだけで許してくれるんですか。

 ていうかR博士がヨシキさんのお嫁さんなのか。


「へー……凄い人がいるもんだねー……んじゃユウちゃん、気を取り直してソレで試合してみよっか?」

「いや……さすがに不味いでしょ……さっきこの刀ならその大剣切れるって自分で言ったじゃん」

「あ、そうだった。ん-……じゃあ適当に組手してカンだけ取り戻させて? とりあえず武器の心配はもうしなくていいみたいだし」

「確かに。んじゃ、ちょっと調整したら、出発に向けて準備始めようか」


 一先ず任務での不安は一つ減った。

 後は二日後、再びファストリアに向かい出発するだけだ。


「はぁ……リョウカさん。これ、給料とか出ませんよね……?」

「私がいつか秋宮に戻り、貴女も再就職したあかつきにはしっかりお支払いしますよ」

「うう……結構これでも緊張してるんですからね」


 ニシダ主任、すんませんでした。

 パイロット、宜しくお願いします。


(´・ω・`)本日より章の終わりまで毎日投稿します

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