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第百一話

(´・ω・`)これにて八章終わりです

 ユウキとは別人とされている以上、大義名分が与えられるまで、ダーインスレイヴはただの密入国者。

 故に、目撃されるわけにはいかず、対処する場合は相手を一瞬でスタンさせる他ない。

 知ってはいたけれど、さすがに……こういう施設の警備体制は、以前のハワイ合宿の時とは比べ物にならない。正直、ここまで来るだけでも精いっぱいだ。


「高負荷のスタンは最短でも二時間は意識を奪う。そしてその後、身体に痺れを残し暫く満足に動けなくなる……か」


 黒く染められた大剣に持たされた機能を使い、どうにか見つからず施設内部に侵入する事は出来た。けど……定期巡回の人間に侵入を察知されるのは時間の問題だ。

 なら、もういっそのことスタンさせまくって強引に深部に向かい、何か決定的な証拠を見つけてしまえばいいのではないだろうか?


「……見つからなかった場合は一気にお尋ね者、そのまま世界経済恐慌に突入、か」


 リスクがデカすぎる。けど、このままじっくり侵入していてもいずれは同じ結末になる、か。


「……いいさ、やってやる」


 駆ける。仮に海にゲートが出来かけているのだとしたら、どこかに海底に続く、地下施設への入り口があるはずだ。

 なら、まずは深部にエレベーターがあるかが肝だな。

 ただひたすら、兵士に気が付かれる前に無力化する。

 幸い警報はまだ鳴らされていないし、どういう訳か監視カメラの類が見当たらない。

 いや……そうか、この場所は魔力の濃度が高いんだよな……だからこそ地球の機械は満足に仕えない……と。


「最悪、エレベーターでなく階段を下るハメになる……か」


 背後に転がる無数の人。これが、もしかしたら死体に変わるかもしれないと思うと、胃が少しだけ痛んだ。

 ……でも、俺はダーインスレイヴ。伝説通りなら『収めるまで殺戮を止めない魔剣』。

 なら……俺を収め、諫める番人、ジョーカーが現れるまで俺は――




 予想通り、どこまでも下に伸びる螺旋階段を見つけた俺は、自分の察しの良さを恨みながら、一息に底を目指し飛び降りる。

 帰りは面倒だけど、降りるだけなら今の俺なら問題ない。

 そうして、何百メートルか分からない階段を数回に分けて降りた俺は、そこで初めて自分の身体の異常に気が付いた。


「これは……身体が成長している?」


 魔力の濃度が上がると身体が変化する、と聞いた。

 なら……やはりこの場所はグランディアの魔力に溢れているという事になる。

 装備の調整をし、変化した身体に合わせる様に可変させる。

 よし、違和感なしだ。


「海底にゲートがあるなら……絶対に作業をしやすいようにゲート付近の水を抜いてダムみたいにしているはずだよな……なら魔物は……軍が外海に放っていた……?」


 研究の障害物になる魔物を一時的に海へ放ち、その後軍が自分で討伐。

 が、想定以上の数に膨らんだ結果、対処しきれずに被害が大きくなり始めた……ってところかね。

 さらに施設を進む。ここまで来るとすでに兵士の姿はなく、時折白衣の人間を見かける程度になっていた。

 正直、海底にこんな研究施設がある段階で証拠なのではないかと思ったのだが……。


「……非戦闘員に手を出すのは気が引けるな」


 もう何人目になるか分からない白衣の研究者を通路に転がす。

 そして、自分に伝わって来る探査機からの信号がどんどんと大きくなる事に、目的の場所は近いのだと確信する。

 やがて――そこに辿り着く。

 まるで、水中に巨大なガラスのショーケースを沈め、それをさらに巨大な窓越しに観察しているかのような大きな部屋に着く。

 そしてそのショーケースのような物の内部には……青く光る、穴のような物が出来ていた。

 紛れもない、ゲートだ。グランディアに繋がるゲートから、海水が流れ出している。


「それに……隣にも造船所のような物が出来ているな。……潜水艦か?」


 まさか、グランディアに海底から侵入するつもりだとでも言うのだろうか?

 目的は分からないが……明らかにあの潜水艦には『決して放っていけない兵器』のような物が搭載されているように見える。

 まさか……まさかお前達はあの世界に……!

 すかさず渡されていた装備に含まれていたカメラで写真を撮り、さらに近くの端末から盗めるデータを盗む。

 だが、それを外部に送信するには、いささかこの場所は深海に近く、そして厳重なセキュリティに囲まれ過ぎていた。


「この場から送信は不可能、か」


 けど……これで、俺は大義名分を得た事になる。なら――


「行きはよいよい帰りは恐い……これじゃあ意味が変わってしまうな」


 帰りは殺しながら。こわーいこわーい本物の魔剣としてのお帰りです。

 心を殺し、通路に転がる人間を一人、また一人と殺しながら戻る。

 そろそろ上の施設でも侵入者を察知したのだろう。階段の遥か上の方が騒がしい。

 らせん状になっている階段。そこの中央を一気に飛び上がりながら、まるで自分が竜巻になったかのように、大剣を振り回しながらきりもみ回転と共に飛び上がる。


「な――!」

「侵入――」

「伏せ――」


 階段の途中にいた人間を、残らず切り殺す。

 綺麗に階段を並んで駆け下りてきた人間が、階段を染めるただの赤になる。

 もう、自分で殺した数すら数えられない状態になりながら、ようやく俺は地上の施設に戻って来る。


「ははは……ははははは! 何人死んだ、何人斬った……! データの送信は……くそ、回線が細すぎるだろココ」


 酷く通信の遅い端末に悪態をつきながら、今度は生きてこちらに駆けてくる兵士達を返り討ちにしながら進む。

 さっき、助けた人間も混じっているかもしれないのに。

 もしかしたら一緒にバーベキューをした人間が混じっているかもしれないのに。

 それも等しく全て――切り殺す。

 だがその時、ふいに施設内のスピーカーから女性の声が流れ出した。


『そこまでよ、秋宮の魔剣。貴女は我が国への侵犯行為、そして軍施設への襲撃の疑いがかけられているわ。大人しく投降なさい』


 それは、どこか高圧的な若い女性の声。

 聞き覚えのある声だった。

 それを無視して先に進む。だが、一際広い、元々は資材倉庫だったであろうその場所に、連中はいた。


「コードネームダーインスレイヴ。大人しく投降なさい」

「条約を破りグランディアへの侵犯行為をしていた施設の人間だ。ここでお前も殺されても文句は言えないはずだが?」

「……そう。ならもう貴女は自分がここから出られないと分かっているようね? ええ、そうよ。貴女にはここで消えて貰う。この狂った世界のパワーバランスを正すのよ」

「それは、自分達の愚かさを正当化する為の大義名分か?」

「ふん、秋宮の猟犬に言ってもわからないでしょうね。敗戦国の一企業如きが」


 なるほど、それが本音ね。確かこの人……クレッセントとかいう名前だったような。


「悪いけれど、ここで貴女には消えて貰うわ。発動なさい!」


 その瞬間、急激に両肩に重りを乗せられたような感覚と共に、膝が僅かに崩れる。

 これ……夏休みの合宿で味わった環境再現の!?

 いや違う……あの時とは負荷のレベルが段違いだ……かなり……俺でも辛い。


「へぇ、驚いた。まだ立っていられるのね。けれども……もうただの止まった的よ」

「舐めるな、政府の犬が」


 まだ、動ける。展開していた兵士からの一斉射撃を、大剣で防ぎながら、剣圧と同時に風の刃を放ち切り伏せる。


「っ! さらに負荷を上げなさい! それと……貴女秋宮の人間よね? なら当然――」


 すると、今度は兵士ではなく、何かコンテナのような物がこちらに勢いよく滑って来た。

 ……次の瞬間、強力な重力によりそれがひしゃげて、扉が吹き飛んだ。


「んな!? 何故……!」


 ……コンテナの中には、這いつくばり、既に息絶えそうになっている……クラスメイトがいた。


「貴女ほど強くはないようね。この負荷中では体の形を保っているのがやっとじゃないかしら? ……どういう訳か、この子達も侵入していたのよね。どうする? 今なら貴女一人でこの子達は救ってあげる。雇い主の学園に通う子供を見捨てるのかしら」

「目撃者は全員殺すのだろう? そんな提案、信用出来るか」


 まずい。なんでだよ、なんでお前らここにいるんだよ。

 おかしいだろ、想定外すぎるだろ……ここに来る理由あったか? ないだろ……!


「ぐ……ぁ…………あ……」


 中でも、キョウコさんは不味い。あの人戦闘向けの力はないだろ!

 身体強化で対抗する事だって出来ないだろうし……! それに他の皆にだって限度が――


「どうして……どうして来た! お前達!!!!!」


 つい、つい、感情のままに声を張り上げてしまう。どうする、助けられない。

 これ、もう俺じゃ助けられない。環境発生を止める? どうやって? どこが発生元かすら分からないのに? みんなを環境の影響を受けない場所に飛ばす? いやダメだ、そのまま射殺されるかもしれない。


 なんだ、これなんだ。積んだぞこれ。

 心臓が強く脈打つ。その鼓動よりも激しく、探知機から信号が送られてくる。

 そりゃそうだよ、こんな魔力の中じゃあ……反応も強くなる。


「……いや……でも」


 もし、一瞬で建物を破壊しつくすことが出来たら……。

 体が熱い。窮屈だ。これは……濃密なグランディアの魔力に満たされているから……?

 だったら……あの時のように……ディースさんと戦ったあの時のような力があれば――


「どうなっても……知るか。くそ……助かるのかこれ」


 スーツの圧迫感が増す。これは恐らくもう――少なくとも俺の命は燃え尽きるんじゃないかなって。

 なんか、実感が湧かない。前みたいにR博士の協力もないみたいだし、これはもう――








「ジャスト四分か。もう少し早める事も出来るか?」




 装備を解除し全ての力を、命を削る覚悟をしようとしたその時だった。

 何者かの声が場内に響き渡り、その瞬間恐ろしく大きな轟音と共に、施設の屋根が消え去った。

 全身の圧迫感が止む。そして……吹き抜ける潮風の香りと、星と月光の輝きがこの場所に届く。


「……ジョーカー……そうか、通信完了したのか……」

「……さて。そこにいる親愛なる善意の協力者により、私の元に面白いデータが送られてきてな。どうやら貴国は……グランディアとの戦争を望んでいるようだ」


 ヨシキさんことジョーカーが、空から舞い降りてきた。

 そう、空だ。

 まるで、騎士甲冑のようなスーツを身に纏い、素顔を隠したヨシキさんことジョーカーが、底冷えするような声色で語りながら静かに舞い降りる。


「戦争、おおいに結構。文化や価値観の違いはいずれ摩擦を大きくし争いを生む。だが……これは略奪戦争、条約破り、奇襲、騙し討ち。実に『正しくない』。そうは思わないか、クレッセント・ユエル・ジョブス。飼っている犬の名前はメアリー。母親の名はムーラ、父親はアムル。なるほど、恋人はなしか。初恋は……そうか、初恋はたったの二年前、それも人の男か。大切な物は……ほう、オルゴールか。家はどこにある? そうか、こちらの方角だな」


 なんだ、なんだ突然。ジョーカーが突然、意味のわからない事を語り出した。

 この女の情報? いや、それにしては内容が……細かすぎる。

 おもむろにジョーカーが誰もいない方角に手を翳す。


「な……お前は……ジョーカー!? 何故!? 何故ここにお前がいるの! ここはアメリカ、先進国、愚かな欲深い国とは違う! ここはお前が来る場所では――」

「ああ、こっちか。では手始めだ。巻き添えで何十万人、何百万人が消えるかな?」


 その瞬間だった。一つの方角に向かい、音もなく光の帯が奔る。

 ただ、それだけで、進路上にあった全てが消えた。

 建物の壁も、地面も、木も、何もかも。


「狙いが上に逸れたか。喜べ、消えたのはこの施設の壁とヤシの木数本、それと罪もない渡り鳥と羽虫だ」


 なんだよこれ。

 なんだよこれ、意味が分からない。なに? 上に逸れた? 逸れなかったらどうなっていたんだ? まさか……進路上の全てが消えていたのか?


「ふむ……実感が湧かないか? ならこれでどうだ?」


 今度は、俺の背後に向かい手を翳していた。

 海底施設のあった方向だ。なんだよ、何する気だよ。


「まずは……ここが海に面している事。そして隣の大陸が遠く離れている事に感謝するんだな。少しだけ手加減してやろう」


 その瞬間、通路の先がすべて消えていた。

 通路も扉も、階段もその下に広がる施設も全て消え、それどころか海すらも消えていた。

 消えた周囲の海水が、何もない空間に流れ込む。まるで、そこにあったもの全てを飲み込みかき消すように。


「さて……貴国はグランディアに対して敵対行為を不当に働いた。よって――この世界には不要と判断した」


 まるで感情が込められていないかのように、ただ淡々と言葉を紡ぐジョーカー。

 そしてその規格外過ぎる破壊の意思と力を向けられたあの女は……床に座り込み、虚空を見上げ笑っていた。


「クレッセント。返事はまだ出来るな? ホワイトハウスの方向はどちらだ?」

「待ってください……待ってください……どうかお話を……弁明の機会を……世界が……世界が貴方を敵とみなします……」

「そうか、ならこの世界は『いらない』な」


 その瞬間、鳥肌がまるで音を立てるかのように全身に広がった。

 脅しじゃない! これは脅しじゃない! 脅しじゃない! 本当にこの人は――!


「ジョーカー……! それは……それはダメだ!」


 つい、口を挟んでしまう。恐怖を押し殺し、この人に踏みとどまるように言葉をかける。


「……そうだったな。それはさすがに『正しくない』。それで、ホワイトハウスはどこだ? 分からないのなら全てを薙ぎ払う事になるが」


 なんだよ……本当に終わりじゃないか。俺が力をつけたところで、戦いなんて成立しないじゃないか。

 なんだよ……そんな力……まるで神様じゃないかよ。そんなのってアリかよ……一人の人間が握っちゃいけないだろ……そんな力。


「あ……あちら……です……」

「安心しろ。まだ壊さない。少しだけお話をさせてもらうだけだ。では行くとしよう。クレッセント、お前は通行許可証だ。持って行く」


 そう言うと、ジョーカーはまるで荷物の様にクレッセントを背負い、そのまま再び夜空と浮かぶ。


「命が惜しいのなら、今日の事は忘れると良い。お前達雛鳥が触れられる世界の話じゃあない。そして……雛鳥がこちらの世界に首を突っ込んだ結果がこれだ。ダーインスレイヴ、そこの愚かな雛鳥を飼い主の所に送り届けてやれ」

「……了解した。ジョーカー……貴方の力は、世界を文字通り壊す。どうか……もうその力を振るわないで欲しい」

「……そうならないように努力しろ。ではな」


 最後にそう言い残し、ジョーカーは物凄い勢いで空を駆けていってしまった。

 誇張表現なんかじゃなかったんだ……リョウカさんの言っていた言葉は全部本当だった。

 それに『たとえ話』も言いえて妙じゃないか……『言葉だけで殺してしまう』本当にそうじゃないか。

 ただのワンアクションで全てを破壊してしまう……そんなの、存在していいはずがない。


「なん……だったのだ……」

「これは一体……」


 だが、その考えを今は収めよう。今はこの……大馬鹿なクラスメイトを無事に送り届けないといけないのだから。


「どうしてお前達がこの場所にいる」

「それは……」

「どうしてこの場所にいる。お陰で全員死ぬところだった」

「この場所に、今回の事件の謎があると思ったんですよ」


 カナメがそう答える。

 正解だよ、正解だよそれは。ここに謎の答えはあった。けどそれは――


「魔物の発生の謎か? そんな物……事件の本筋にはなんの関係もない。お前達はなんのつもりだ? 与えられた任務はなんだ? お前達秋宮の生徒は、任務外の行動を独断で行い、他部隊を命の危機に晒す事を是としているのか?」

「それは……違います」

「全員、これ以上何の疑問も口にする事を禁ずる。私の任務におもりは含まれていない。いますぐ余計な事を知ったお前達を殺してしまう事だって許可されるだろうさ。だが……ジョーカーに言われた。だからこそお前達をここから出してやる。反発した者は遠慮なく殺す」


 半分本気の言葉。半分は悲しみ、失望。

 まるで、本当に死人のような顔色になったクラスメイト達を、俺はぐちゃぐちゃになった心のまま、セーフハウスまで送り届けたのであった。








 予定では、俺は作戦終了と同時にニシダ主任と共に帰国する事になっていた。

 一夜明け、ダーインスレイヴとしての装備を外し、ユキとしての姿になった俺は、秋宮のプライベートジェットがやって来るのを待っていた。


「……ユウ……いえ、ユキ……今回は本当にお疲れ様でした」

「はい。……とても、とても疲れました。心が、凄く疲れました」

「っ……ごめんなさい。生徒達の心情を汲み取れば、暴走してもおかしくはなかった。目を離した私達教員にも責任はあります」

「……はい。でも……もしかしたら私が……俺が余計な情報を与えたのかもしれません。そうじゃなきゃ……あの場所に辿り着けるはずがなかったんです」


 想像以上に、他のみんなが真実に辿り着く為の力を身に着けていた。

 間違ってはいたけれど、場所は間違っていない。いや、本質的には正解ですらあった。

 ある意味では……『正しく成長している』証拠でもあるのだ。


「全員、帰国し次第理事長に呼び出しを受ける事になるでしょうね。そして密約を交わされる。ジョーカーの存在は……生徒が知って良い物ではないから」

「そう、でしょうね。……あれは、存在してはいけない力だ」

「っ! ……そうよ。あんな力……兄さんは望んでいるわけがない……!」

「あ……」


 そうだった。ジョーカーは……ヨシキさんはこの人の兄なんだ……。

 間違っても力の化身や、悪魔でも神でもない。一人の人間でしかないのだ。

 あんな力……手に入れてしまって良い物なのか? 一人の人間が扱いきれる物なのか?

 分からない。俺には分からないよ、絶対に。


「なんにしても、任務は成功よ。胸を這って理事長のところに行きなさい」

「……結局、ジョーカーとアメリカの間でどんなやり取りがあったんですか?」

「それは兄さんしか分からないわ。ただ……今日もアメリカは存在している。それが全てよ」

「……そうですか」


 迎えのジェット機が着陸する。

 様々な因縁が渦巻き、力とは何かを考える事になった、あまりにも大きな事件が起こった地、アメリカ。

 一刻も早く、家族に会いたいな。

 そんな事を考え、胸中に渦巻く気持ちを全て抑え込み、搭乗したのだった――








「本日はどのようなご用件でしょうか……何分、突然の事でしたので歓迎の準備もままならない状態ではありますが……」

「ふふ、そう畏まらなくても良いわ。ただ……ちょっとお願いをしに来たの、シェザード卿」

「は、はぁ……」

「近々、地球の学園……例のシュヴァインだったかしら? そこの生徒をこの国に呼ぶという算段を進めているそうね?」

「ええ、さすがお耳が速いですな、セシリア殿」


 グランディア、エレクレア公国にて。

 コウネの実家であるシェザード家に、珍しい客が訪れていた。

『セシリア』。かつてユウキが守った、グランディアにおける代表とも言える国『セリュミエルアーチ』の権力者。

 それが今、隣国の重鎮であるシェザードの屋敷を訪れていた。


「地球との関りを強くするのは結構だけれど……それ、私に譲って下さらない? 再来月に向こうの生徒を召致するそうだけど、先に我が国の問題を解決してもらいたいのよ」

「な……それを突然申されても……」

「ただとは言わない。公王への謁見の予定も既に入れている。向こう数十年は良い思いが出来ると確約するわ。だから、再来月の実務研修……だったかしら? それをこちらに回して欲しいの」


 傍若無人なお願い。だが、それを可能にする程の手札をすでに用意していると仄めかす女帝の言葉に、シェザード卿は――


「……明日、公王を交えてお話ししましょう……さすがに私の独断では決定出来ません」

「ふん、それで納得してあげる。悪いようにはしないわ」


 また密かに、SSクラスの実務研修の地が変わろうとしていた。

 それは、もはやリョウカが自分の組織の行く末を決める事が難しくなってきた事の表れであるかのように――


(´・ω・`)幕間の小さい話と登場人物紹介を後日掲載する予定です

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