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8話「瞬殺のゴート 後編」

*1

 ゴート、ガラガラのにらみ合いが続いていた。しかし、動いたのはガラガラの方だった。

 ガラガラの影からあらわれた無数の鎌がゴートに襲いかかる。四方から襲いかかる鎌。もう助からない。

 しかし、私の目に予想外のことが起きた。ゴートは突然消えた。いや、正確には砂煙が吹き出し消えた。

 ゴートは瞬間移動したのか?

 だが、ガラガラは動じずガラガラは影に覆われた。突然、刀が強く叩かれる音が聞こえた。

 目を疑った。消えたゴートがガラガラに峰打ちをしていた。しかし、ガラガラは影に覆われてダメージはない。



「……やはり効きませんか」


「当然だ。俺は防御面において無敵の異能を持っている。お前がどれだけ攻撃を加えても軟らかく受け止める。

 異能「柔軟」でな」



 ガラガラは影を柔軟な鎧にして斬撃や打撃を吸収したんだ。体に傷がついていないはずだ。



「さてと、一方的にボコってやるか。攻防一体の戦法を見せてやろう」



 ガラガラの影から多数の影の鎌があらわれた。攻撃に転じるつもりだ。



「そうですか」



 しかし、ゴートはこのような状況になっても動じない。それどころか待っていたようだ。



「いいですか、兄さん。戦いにおいて楽しいこと。それは……相手が余裕と思っていることです」


「で?」


「今がその時……」



 なんとも恐ろしいことが起きた。ゴートは目にも止まらぬ速さでガラガラを峰打ちしてゆく。何回やっているんだ? どうなるんだ?

 いや、何が起きているのかすぐわかった。

 ガラガラの影が後退している。ガラガラが耐えきれないんだ。一度の攻撃は防げるとしても無数の攻撃、それも強い攻撃をいくら受けても耐えきれるわけではない。

 ゴートは1回がダメなら何度も打ち続けることにしたんだ。



「どうしたのガラガラ兄さん? 降参したら?」



*2

 ガラガラは沈黙している。影がまだ動いているので生きているのは確か。その時だった。ゴートは何かに気づいてガラガラから逃げた。

 距離をとってガラガラを凝視している。

 すると、ガラガラの影が消えた。え、ガラガラは中にいなかった? じゃあどこに?



「いるんでしょ兄さん?」



 え、どうしたんだろう?



「潜影時間は1ヶ月だろうけど、1つ言っていいかな?」



 ん、ゴートが……。



「やあ」



 ゴートが私の後ろに……!



「出てこなかったらこの子を殺していいかな? 大事そうな子だよね。

 もし殺したらどうなるのかな?」



 ゴートは私を殺すと脅してガラガラをおびき寄せる気だ。でも、ガラガラなら私を影の中に入れてどうにか……。



「言っておくけど兄さん。わかっていると思うけど僕の反射神経や素早さは兄さんより上だ。

 少しでもこの子を影に入れようとしたら……わかってる?」



 つまり、殺すということか。さすがのガラガラも外に出ないといけないな。



「さあ……」



 その時だ。ゴートの影の中から何かが飛び出しゴートにからみついた。同時に私の影から足のような物があらわれて私を蹴り飛ばしゴートと距離をとらせた。

 なんだろう? と、ゴートが倒れて誰に馬乗りされている。

 馬乗りをしているのはガラガラ。



「な、なんで?」



 ゴートは慌てふためいた。しまった、うかつと思うぐらい慌てている。



「やれやれ、これだから馬鹿な弟を持つのは困る」


「兄さんハメたな……なんで?」


「教えてやろうか? お前はいつでもバカだからだぁッ!!」



 ガラガラはゴートを思いっきり殴った。



*3

 ゴートは馬乗りされた状態でガラガラに思い切り殴られ続けている。



「てめぇはあのクソ兄貴に認められたいと言ったな! できるわけねえだろマヌケ!!」



 殴って罵りながら喋るガラガラ。



「いいか、クソ兄貴はオリジンの中で崩壊戦争で活躍しまくって七人の内一人だ!

 俺らは防衛についていたがあいつただ一人が戦線に行って敵をなぶり殺しにしまくったやばいやつだ!

 最上級神たちが死にまくる戦場であいつは死ななかった。

 そんな化物兄貴に認められるって言うんだ!」



 崩壊戦争だって!? あれって確か果ての神と新世界の神エレメント・ワンの戦争。長い戦いで終わりが無いと言われ多く世界が崩壊して「崩壊戦争」と呼ばれている。

 果て側で最も活躍した七人はいずれ果ての神と合流してエレメント・ワンを討ち勝利すると誰もが思っていた。しかし、果ての神は自らの力で選出した無名の6人を率いてエレメント・ワンを討ち新世界へ撤退させた。当然、他の神々によるひんしゅくをかうが勝利したとして賛否がわかれた。

 その内の最も活躍した七人の中にオリジンのワイルドがいたなんて……。



「おい、こらぁッ!! なんか言ってみろよクソ野郎!!」



 ガラガラがゴートの顔を殴っていた時だった。ゴートは力いっぱいガラガラを押し倒しガラガラを殴りはじめた。

 それも泣きながら無言で。悔しかったんだ。泣き声を上げながら必死にガラガラを殴っていく。認められたいからこその悲しみなんだ。



「兄さんに……兄さんに……何がわかるっていうんだ! 僕はワイルド兄さんに認められたい!!

 あの強い背中を見ていたらそう思ってしかたがないんだ! あの背中に追いついたといつもいつも思うんだ!!

 いずれ追いついてやるぞと! それを兄さんに……わかってたまるか!!」


「うるせぇッ!」



 ガラガラは起き上がり再びゴートに馬乗りして殴りはじめた。



「てめぇにできるかクソ野郎ォッ!!」


「いやだァッ!」



 再び馬乗りするゴート。



*4

 そのころ、荒野にある一軒家。一人の男が扉を開けた。



「……うるせえな」



 男は顔を覆う黒いヘルメットを被り黒いゴム製の作業服を来た男であった。



「どこの野郎が喧嘩している。迷惑だ」



 男は歩きはじめた。そして、男が見たのは殴り合いをしている兄弟だった。



「兄さんの馬鹿野郎!!」


「クソ野郎がァッ! くたばれェッ!!」



 兄弟を見て男は思った。



(あいつら、何やってんだ? 止めないと)




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