7話「瞬殺のゴート 前編」
*1
オリジンワールドに滞在して一ヶ月、私たちはジバの領域を超えることができた。
ガラガラ言うにはメノスへ会いに行く領域はヘイム、ウリア、ヨミリの3つ領域を超えてメノスが鎮座していると言われるメノスシティに行けるという。しかし、メノスシティには強力なオリジンが5体も存在し侵入したら確実に捕まると言われている。
ゆえに出来る限り他のオリジンに会わず行かなければならない。
*2
ヘイムの領域へ入った。しかし、何だろう?
荒野が広がっているけど、何よりあちらこちらに首無しの石像が点在している。1つの石像に文字が刻まれている。
「1201体目のクズ神」
え? なにこれ?
「見たかユリカ。これが、ヘイムの領域特有の習慣。超越的存在や、神を殺したら像を作って飾る」
なにそれ? トロフィーのつもり?
「ヘイムは邪神とか悪神を許容できない。一体も生かしておけないし一秒でも早く殺しておかないと気がすまない。
たとえそれが秩序に反しようが関係ない。徹底的に悪しき神々を皆殺しにしたいあらわれさ」
「……」
この石像たちは殺した神の数にして悪に対する怒り。悪というのが許せぬヘイム個人の怒りのあらわれ。早く一体でも殺したい。この世にのさばっているクズどもを根絶やしにしてやりたい塔怒りのあらわれか。
「それに、有名な話がある。
最上級神がこの領域を見て「気味が悪い」と言ったのさ。そしたらヘイムはこういった。「いい眺めじゃないのか? 悪党の墓標にはちょうどいい」とな。
最上級神はそれを聞いてここへ二度来なくなった。
神々からすればおざましいものらしい……」
神に嫌われても引かないなんてどういうことだろう? やっぱり、怒りがおさまらないのかかな?
「でも、あいつはもうオリジンなんかやっていない」
「え?」
「あいつは出禁を言われたのさ。メノス様直々に」
どういうこと? オリジンに外へ出てはならないこともあるの?
「ヘイムはメノス様の言うことを聞かず2500体の神々を異能「時間」で自身の体を高速化させ殺し回ったそうだ。
邪神を大量に殺したのはいいが逆に世界の補正に関して歯止め効かなくなり逆効果となった。
メノス様が直々におもむいて無効化で時間が無効化され捕縛。以後、この領域に引きこもっている。
仕事は警備と物の作成。ここ最近、結構いい物を作っているという噂を聞いたぜ」
オリジンから転落して職人か。オリジンもルールに厳格なんだ。
*3
荒野を歩いていると道端に一人の男が立っていた。黒いスーツに黒髪。ガラガラと違い刀を携えている。
「やあ、ガラガラ兄さん」
「……ゴートか」
「ええ。お婆様からの命令で来ました」
「へえ……」
ガラガラはゴートをじっと見ている。というよりも先から私を見ていない。
「それ、本当に婆様の命令か?」
「もちろん」
「なるほど……俺とお前の勝負をここでもするのかと思ったぜ」
「?」
突然、ゴートの顔色が変わった。と言うもまるで触れてはならないところを触れた感じだ。
「……まあ、そうだね。そういうのをふくめてきたよ兄さん。
だって、兄さんとはどっちが強いのかまだ決めていないからね」
「だろうな、クソ弟。てめえは兄貴に褒められたいからな?」
それを聞いたゴートはさらに顔色を変えた。
「……兄さん。確かに僕はワイルド兄さんに褒められたいからね。ガラガラ兄さんやガン兄さんに褒められたくないんだ」
「相変わらずのブラコン野郎だ……」
ガラガラが前に出た。
「ここは俺がやるか。さがってろよユリカ。このバカは俺と戦いたいらしい」
ガラガラの影から無数の黒い鎌が伸びてきた。
「へえ、やる気なんだ」
ゴートは右手で刀のつかをつかみ抜き取る。左手もつかを握り戦う準備ができた。
「じゃあ、始めようか。ついてこれる?」