5話「漆黒のメイド」
*1
「まさかな……」
ガラガラは少し考え込んでいた。先歩いていた町中で知っている人を見かけたそうだ。でも、どうしてその人が町中にいるのかわからなかった。
ただ、ガラガラはわかっている。自分のやっていることはオリジンにとって不満を持たれていること。
「どうしたの?」
「……知っているやつがいた。もし、そいつだったらやばい」
「どんな人?」
ガラガラは息を呑んでその人について話す。
「メイドみたいなやつだ。
と言ってもえげつい能力を持っているのは確か……」
その時だった。
「何をしているガラガラ?」
鋭くとがった声が聞こえた。ガラガラと私は後ろの方に向いた。
*2
「やべぇ……」
ガラガラはそれをみて戦慄した。
その人は黒い長髪をした黒いメイドだった。先のメイドである。しかし、最初にあった時のまるで別人。
優しかった雰囲気から一変して殺伐した雰囲気をかもし出している。
「やはりか! オリジン……赤の軍勢のモリア!」
「モリア?」
「ああ。赤の軍勢の中でもやばい方に位置する……。
それに、お前の所でメイドが突然要職の人間を殺す事件を起こしたっていうニュースあったろ」
「ええ」
確かそんなニュースがあったはず。魔法でメイドの意思を縛り付けたはずなのにメイドが殺しに来たという事件。まさか、そんなことあるのかと思ってた。
でも、オリジンのことで可能と考えた。オリジンは意思を縛る魔法が効かない異能「無効化」を持っている。どれだけの魔法があっても効かないものは効かないからだ。
「まさか……」
「あいつがやった」
「!」
やっぱり、そうなんだ……。
「ガラガラ、その娘は何?」
「……俺が異次元渡航を持っていないから連れてきたガキだ」
「そう……」
モリアは疑っている。あきらかにガラガラが何かを思っていると考えている。
「じゃあ、聞くけど……」
「なんだよ」
「どうして、その娘をこの世界から帰さないの? もう、異次元渡航は終わっているのに必要ないでしょ?」
「!?」
*3
「……いや、観光旅行が必要でさ」
「それはない。それなら我らが神メノス様の許可がいる。事前にメノス様から許可がおりて観光は許される。
なのにない。それに……」
モリアが私に視線を合わせた。
「この娘、この間に制圧したアルリ界のお姫様のようね」
「……!」
情報が知られている!? まあ、そうね。知られてもおかしくないし……。
「……」
モリアはゆっくりと私に視線を合わせた。
「怖がらなくていいわ。別に攻撃する気はないよ。
ただ、こっちの質問を答えるだけでいいから」
「え?」
質問を答える? 何を?
「あなた、何しにこの世界へ来たの?」
「……復讐です」
「誰に?」
「……メノス」
その言葉を聞いたモリアの顔が歪んだ。
「は、は、は、ハハハハ!! メノス様へ復讐がしたいと? バカバカしい」
けたたましい笑いが荒野に響く。それは嘲笑を思いっきりを入れたものだった。
「笑わないでください!」
「笑うわよ。だって、たかが大したこともない人間がどうやってメノス様を倒すという? アホくさいぞ」
わかってるわよ。だって、相手は原初神。どんなにあらがっても勝てるような相手じゃないのは、十分理解している。
でも、それでも許せない。母さんを殺したのはあいつだから!
「だって、母さんを殺したはあいつ……」
「いいことを教えてあげる。お前の母は他世界を荒らし回った。100以上も荒らし回った」
世界を荒らし回った? なんのこと?
「知らないようだな。アルリ王は魔法少女欲しさに世界中から罪もない子供を誘拐し魔法少女として教育し私兵、貴族とした。
当然、他の世界からひんしゅくを買うも無視。生命の守護者が登場して最早、逃げ場はない。
だが、アルリは生命の守護者を殺してしまった。
そして、我らが派遣されたのだ」
「……そんな」
「世界中からお前の母はこう呼ばれている。「ゲスな魔女アルリ」とな」
母さんは世界中の人々を敵に回していたなんて知らなかった。だから、オリジンとの戦いに備えて防衛設備を拡充していたんだ。でも、負けたけど。
「……それでも」
「ん?」
「それでも、私はメノスに一矢報いたい! 母さんが殺したのはあいつだからせめて復讐したい!!」
そう、絶対に許さない! 母さんを殺したのはあいつだから……!
「……始めてだ。メノス様を殺したいとほざく人間がいたとは、な。
いいだろ」
その時だった。ガラガラの下に黒い魔法陣があらわれて魔法陣から鎖が伸びた。
「!? モリア、テメェ!」
「しばらくそこで、立っていろ。後で解放する」
ガラガラが苦しでいる。でも、なんで?
オリジンなのにどうして魔法が使えるの?
「さあ、来い異世界の魔女。お前にメノス様を殺せるのか実力を計らせてもらう!!」