2話「ユリカの過去」
*1
私はアルリ界のお姫だった。母はアルリ界の女王アルリ。万能の魔女と呼ばれいた。
そして、私は母さんに産まれたのではなく母さんのクローンとして作られた。いわば予備機。しかし、母さんからの愛情は本物で愛してくれてありがとうといいたい。
ある日だった。母さんが反逆者を捕まえたそうだ。なんでも魔法、異次元渡航、無効化を使える魔女であり「無効化の魔女」と呼ばれていた。無効化の魔女の名はハギー。ハギーは一つの大陸を制圧し母さんに戦いを挑もうとした。母さんと戦い接戦で母さんの勝利。母さんはハギーを公開処刑することにした。
処刑方法は「ギロチン」。
断頭台につながったハギーは民衆の見世物となった。怒りの形相でハギーはうなった。
「聞けぇ愚かなる女王よ! お前はいつか裁かれるだろう!! 今こうして罪なき少女たちをさらい私腹を肥やす。そんな貴様を世界が許すものか!
いずれ、貴様に罰が下るだろう。私が死んでもそれを引き継ぐ者たちが来る。そう遠くない日にな!」
と、言い終わるとギロチンが降ろされてハギーのクビが飛んだ。ハギーは元々賢者だったらしく異次元について詳しく知っていた。そのため、何か異次元に保険を打っておいたのではと考えた。しかし、何か不明だった。母さんを除いて。
一年後だった。ガラガラが記憶を失って母さんに引き取られ使用人として働く。名前は覚えていたらしく「ガラガラ」と名乗った。
*2
ガラガラが使用人として働いて3年後、アルリ界は未曾有の危機に陥っていた。
アルリ界に「生命の守護者たちの神メノス」による宣戦布告という紙が都市、町、村、森、山、熱帯雨林、雪原、砂漠と各所にばらまかれた。そう、メノスたちオリジンが攻めてくる狼煙である。当初、誰もが気にもとめなかった。私も暇な魔女のイタズラかと思っていた。
宣戦布告を取り消す内容は「二度と多世界に対して少女たちの誘拐をしないこと」であった。これを守っておけば今頃、あんなことにならなかった。
母さんの頼れる宰相である万策の魔女ミクリがメイドに殺されたそうだ。しかし、母さんはありえないとうろたえていた。ミクリおばさんはメイド一人一人に洗脳をかけており絶対メイドに殺されることはないのだ。なのに起きた。殺人犯となったメイドは逃走し行方不明となる。今思えばあれはオリジンだっただろう。
魔女軍隊を所有する大都市に向かって空から大量の宇宙戦艦が落ちてきて大都市が壊滅した。何らかの質量攻撃らしいが魔女たちの攻撃が一切使えず一方的に終わったそうだ。異能「無効化」による魔法の無効化だ。
魔女たちの使う空路に謎の船があらわれて寸断される。船を攻撃しても一切傷がつかずびくともしない。魔女たちを攻撃するわけでもなく動いている。空路を邪魔するため。
エネルギー施設の海上都市に突如巨大な蜂が出現。海上護衛をしている魔女たちが挑む。しかし、ある者は触れてもいないのに骨を砕かれて死亡、ある者は全身の血が固まり死亡、ある者は突如出現したがん細胞が全身を蝕み死亡、ある者は臓器が全て狂い死亡。
音楽家と人形師と呼ばれる二人の人間が大陸にあらわれ人々を扇動し母様を倒し政治を変えるよううながす。反乱軍は連日連勝と破竹の勢いであった。
しかし、これら5つの事件が起きても母様はやめなかった。
そして、私の身近にも起きた。ガラガラが記憶を取り戻して母様を殺そうとした。
私はガラガラを止めるため動くも通じなかった。ガラガラは私なんかで立ち向かえるわけがないほど強大だった。魔法は無効化され影を使い私と母様を縛り上げた。
母様を殺そうとしたその時、私は叫んだ。
「やめてえええええええええ!!」
ガラガラは手を止めた。使用人としての記憶が足を引っ張った。ガラガラは手を止め影を解き私達に言った。
「判断はメノス様に委ねる。だがな、お前のお袋を今すぐ退位させろ!」
ガラガラは逃げ去った。
母様に退位を私は勧めた。しかし。
「わらわは退位などせぬ! たとえ原初神であろうとも進むのみ!!」
母様は退位を拒否した。その時だった。
母様の体が突然消えて服だけが残った。そして、アルリ界全体に声が響いた。
「聞け、アルリ界の生命たちよ! お前たちの王は死んだ。私、原初の守護神メノスの手により消滅した。
お前たちが世界に迷惑をかけるから私が手を出した。これ以上、被害を出したくないから我々は関わりたくない。
ただ、もしお前たちが世界に再び危害を加えるのなら我々はお前たちの敵となりさらなる被害を出す! そして、お前たちがそれでも反省しないのならこの世界を壊す!!
もう、これ以上は被害を出させないでくれ」
声が消えた。次の日に国葬が始まり母様の葬式は盛大に執り行う。家族が私だけであり母様の服だけがせめての遺品だった。
アルリ界はオリジン及び他の原初神によって統治された。各原初神から知恵者の部下たちを呼び話し合いをしてどう運営させて教育するのか原住民を交えて協議した。私はその席にいなかった。もう、除け者にされた。
それから一週間後、アルリ界保守派がアルリ女王は間違っていないとして立ち上がった。大勢の保守派が集まりアルリ女王は間違っていないと言おうとしたときだった。
保守派が突然消えた。それだけじゃない。アルリ界全体にいた保守派が皆消えた。どういう理屈で消えたんだ?
まるで母さんが消えた時と同じだ。
そして、あの声が再び聞こえた。
「聞け、アルリ界の生命たちよ。私は約束を守りお前たちに被害を与えた。
いいか、今まで悪事を反省しこれ以上、世界に迷惑をかけないでくれ。我々はお前たちと戦う気はもうない。
お前たちが反省すれば攻撃などしない。
わかったのならアルリのやったことが正しいなど言わないことだ」
私はここで思った。
保守派と合流してオリジンを打倒しようと思った。親友もそこにいたけど死んだ。もう、戦えるのは私だけだ。
私は途方に暮れた。どうすればいい? どうすれば私は戦える?
町を歩いてきた時だった。
ガラガラが私の影からあらわれた。
私は思わず杖を取り構えた。しかし、ガラガラは戦う気がなかった。
「……すまないことをしたな」
ガラガラは謝罪したい気持ちでいっぱいだった。
「お前、これからどうする気でいる?」
「メノスを殺したい!」
「何のために?」
「母さんが殺されたからよ!」
「母親の意思を継ぐ気か?」
「そうじゃない! 私の……この世で……大事な愛してくれた人だ!!」
ガラガラは私の言葉を聞いて喜んだ。
「……それを待っていた」
ガラガラは私の前で土下座した。
「すまない! 俺をオリジンワールドへ連れて行ってくれ!!」
私は「え?」と思った。どうして?
「おかしいと思っただろう。今の俺はな、異次元渡航ができないんだよ。
影の中に入れたとしても移動できるのはこの世界の中だけでこの世界が壊れれば疑似異次元渡航が可能だ。
だから、異次元渡航可能なお前を探していたわけさ」
でも、腑に落ちない。どうして私に声をかけるの? 他の人に大金をはたいて雇えばいいのになぜしない?
ガラガラなら金を汚い手段で作ってできるはず。なのにしないのは生命の守護者だからか?
それに、私に声をかけたとしてもあの質問はなんだ? 意味があるのか? 私は疑問に思いながら異次元の扉を開いた。
「……ガラガラ」
「……どうした?」
「座標は?」
「言っても無理だ。俺がすべてやる」
紫の穴である異次元の扉を開き中へと入った。
「いいか、オリジンワールドはオリジンが先頭に立つしか入れない。座標を知ってもオリジンワールドには入れない。
メノス様の無効化で入れない。無理矢理入ろうとしたらとたんにオリジンや警備隊がわらわらやってくる。
これが唯一の正攻法だ。いくぞ、オリジンワールドへ!」
私はガラガラの指示を得てオリジンワールドへ来た。母さんを殺した神を殺すために。




